むせ返るほどの汗のニオイが、真由美には蜜の匂いに感じられた。遥の身体から発する蜜の匂いが纏いつくように真由美の全身に沁みこんでいく。
一回、また一回と舌が交わるほどに、快感は痺れるほどに深まっていった。底なしの沼の果てに、さらに別の底なしの沼が待ち構えているのに似た果てしない失墜感。
甘美な気怠さの中に、まだ燃えくすぶっている真由美の身体があり、真由美は先ほどから愛おし気に遥の背中に爪を食い込ませていた。
一度、男……遥の身体を知った真由美は大胆に、淫らになっていた。今や自分から遥の舌を求め、口腔内の唾液を吸い尽くす。
事の始まりは、新人戦女子バトル・ボードの予選に出場したほのかが、一高の天幕にいる真由美たちの元へ報告に来たことだった。
報告を終えたほのかは、しばらくの時間『魔法誌』という雑誌のインタビューを受けることになり、
暇を持て余すことになった遥が、天幕の奥で真由美と逢瀬を楽しむことに……。
さすがに壁が薄く、出入りが自由にできる空間では危険が多すぎるため、キスまでに留まったが、それがいけなかったのだろう。真由美のスイッチが入ってしまった。
雑誌のインタビューを終えたほのかと一緒に遥はホテルの部屋に戻り、しばらくの間、雫を加えて情熱的な時間を過ごした。
夜になり、虚無感から復活したほのかと雫は、一年女子による女子会に呼ばれて部屋を空けることに。
一人になった遥はその足で真由美の部屋に赴くと、今に至るというわけである。
遥の制服が部屋に脱ぎ散らかされ、組まれるように真由美の身体がベッドへと沈む。
「くっ、ぁッ……ンンッ」
濡れ声が真由美の口から漏れる。
真由美の肢体から奏でる恥戯は遥から教わったもの。遥の身体に触れられて、体温が高まるのは当然と言えた。
キスだけで真由美の心は満たされていく。
「んあぁっ……しあわせ……」
身体が昇りつめていき、肢体を震わせてぐったりとしたあと、真由美は汗ばんだ髪の毛をかき上げながら呟いたのだった。
「ふぅ。凄いにおい」
遥は獣のように真由美の身体を舐めまわす。唇から首筋へ、耳朶に移ると、服の上からほどよい膨らみのある胸を唇で這わせる。
真由美はざらつく舌を身体中で感じながら、執拗に胸を舐めてくる遥の頭を両腕で抱いた。そして髪の毛に顔をうずめると、恍惚とした笑みを浮かべる。
「臭いですか?」
胸の谷間に顔が埋まりながら遥が問いかけてくる。まるで赤ちゃんのように胸を吸い尽くす遥が可愛らしく、途端に母性が強くなるのを感じた。
「ううん、はるか君のにおい」
「シャワーは浴びたつもりだったんですけど」
ほのかや雫と乱れた後、部屋のシャワーで汗を流した遥だったが、この時期は否が応でも汗をかいてしまう。特に汗っかきの遥の身体は、キスしただけで大量の汗が浮かび上がっていた。
「私は好きな匂いだからいいのに……ちゅぅ……」
遥の首筋から鎖骨部分にかけて真由美が汗を舐めとる。そしてすぐに唇を離すと、真由美の顔には歓びのあとの満足感だけが強く漂っていた。
「はるか君の味がするわ」
つい先日、男を知ったばかりの真由美の変わりように笑みを浮かべる遥。天性の好色がそうさせるのか、もしくは十師族だからなのかわからないが、真由美は二人きりになると大胆になっていた。
類まれな美貌と幼さが残るモノの、成熟した肉体が遥の前で露になる。
静まり返った部屋。現在、摩利はバトル・ボードでの事故で負った怪我のリハビリを兼ねて身体を動かしているため部屋を留守にしている。
鬼の居ぬ間になんとやら、とはよく言ったもので、しばらく摩利が帰ってくることのない二人だけの空間で、生まれたばかりの男女が交わろうとしていた。
「隠さないでください。綺麗ですよ」
遥に衣服を脱がされ、さきほどの乱れようは消えた。羞恥の表情が浮かんでいる。ベッドシーツで胸元を隠しながら真由美は言った。
「で、でも……ねぇ、電気を消してくれない?」
「わかりました。真由美ちゃんの綺麗な身体が見られないのは残念ですけどね」
明るい場所で痴態を晒したことがあっても、羞恥心はあるらしい。羞恥の色が頬を染めている。
遥は素直に従い部屋の電気を消した。互いの姿は確認できるが、表情や顔色はわからなくなる。
「んぁあッッ……」
暗闇の中でもわずかに胸部の色の濃い部分を突くと、固く尖っていた。羞恥心から解放された真由美の喘ぎ声が部屋に響く。
「乳首がコリコリしてます」
「だめぇ、言わないで……っぁ」
真由美の腰が揺れながら浮いた。そして、薄い腹斜筋が伸びた下腹も、すぼめられた太腿が汗ばみ、期待したように何かを待ちうけていた。
「ここを触ってほしいんですか?」
「ひゃっんんぁああッッ!!」
遥は真由美の心を読んだかのように、触ってほしいタイミングで素早く指を、真っ白な太腿の間、甘い蜜を垂らした奥へと潜り込ませた。
「ぁっ……ンンゥゥ……ッッ」
既に真由美の秘口はたっぷりの蜜で溢れていた。
叫びの中に艶やかな潤いが含まれているようだ。喘ぎながらも真由美は遥の名前を呼び続ける。充分濡れていることを確かめた遥は、真由美の喘ぎに答えるように足の間へと身体を割り込ませた。
「んっ……熱いの……ぅんっ……ね、ぇ?」
「はい?」
「挿入る時は、キスしてくれない?」
「いいですよ。じゃあ舌だしてください」
手探りで互いに互いの頬を両腕で包みこみながら、キスをしようと顔を近づける。真由美の吐息が遥の顔を撫で、上下の唇が塞がれようかという瞬間、ガチャリと部屋のロックが解除される音が響いた。
「えっ!?」
驚いたような低い声。
「なんだぁ? 真由美の奴、もう寝たのか?」
「ッッッ!!?」
見えなくとも真由美の焦りが伝わってくる。真由美は急いで起き上がろうとするが、遥に組み敷かれてベッドに押さえつけられた。そしてそのまま……。
「んんんんぅぅっッんンゥゥゥウウッッ!!!」
希望通りキスしながら遥の勃起した逸物が一番奥まで突き刺さった。刹那、響き渡る真由美の甘声。いくらキスしているとはいえ防ぎきれないくぐもった喘ぎ声が、ロックを解除した摩利の耳にも届いた。
「真由美?」
親友の声が真由美の声にも入る。しかし、親友にこの現場を見られる事よりも、身体を襲う快楽の虜になってしまっていた。
自分が堕ちてゆくのを感じながら、満たされていく快感に身を任せる。
「あれ、なんだ、起きてたのか。真っ暗だったから寝てるのかと思ったぞ」
「……ぇっ?」
「どうした? 顔が真っ赤だぞ。熱でもあるんじゃないだろうな?」
快楽が身体を支配しながらも、普段と変わらぬ摩利の態度に目を開けた。恐る恐る自分の身体を見下ろすと、きちんと布団が掛けられており、遥の姿と自分の痴態は布団に隠されていた。
「……だ、だいじょうぅぶ。えっと、お風呂入ってて逆上せちゃったみたい」
「そうか、ならいいが、さっきの悲鳴みたいな声は何だったんだ?」
「えっ……あ、あれは、そう! お、お水を飲もうとしてむせちゃったのよ」
「ったく、普段はしっかりしてるくせにこういう時だけは抜けてるんだよなぁ」
さすがは七草真由美といったところか。これまでどれだけの修羅場を潜り抜けてきたのかがわかる対応だった。
「で、でも摩利はどうして? 練習は?」
「あぁ、あたしは大丈夫だと言ったんだが、練習に付き合ってくれた花音や中条たちが病み上がりだから早く帰れとうるさくてな。少し早いけど切り上げてきたんだ」
「……そう、なのね」
「真由美はもう寝るのか?」
「そうね……ええ」
「そうか。じゃああたしはシャワー浴びてくるから、電気はどうする?」
「……消してもらえるかしら」
「わかった」
「ごゆっくり……んぁっ……んんっ……」
摩利が浴室へと向かうと、真由美の身体が震え、口から生温かい声が洩れた。
「はる、かくんの……ばかっ」
「でも俺のおかげで摩利ちゃんにバレませんでしたよ?」
「それはそうだけど……んぁっ……気づかれてたらどうするつもりだったのよ」
「その時は摩利ちゃんも入れて三人で……って嘘ですよ。今は真由美ちゃんしか見ていません」
キュッと脇腹をつまんでくる真由美に微笑みかけると、繋がれた腰に足が絡まってきた。
「摩利ちゃんがシャワーから戻ってくる前に終わらせないといけませんね」
「……え、まだするの?」
「当然です。水音で聞こえにくいとはいえ声を我慢してくれないと摩利ちゃんに気づかれるかもしれませんよ」
「声を我慢するなんて無理よっ」
「大丈夫です。声が出ないようにするので」
「どうやって?」
遥の含み笑いは真由美を不安にさせた。
下腹部から全身に回る快楽と共に、動揺が胸に走る。
「ングッ……んはぁっ……ぁ、ぁっ……はるっぅか、くん?」
「首を絞められるの久しぶりですよね? 絞められてる時の真由美ちゃんってすごく可愛いですよ」
「ぁっ……ぁぅっ……んくぁ……ぁあああっっ」
遥の両手が真由美の首に伸び、見る見るうちに首から上が紅潮していく。
それほど力は入れていないが、指先が首の皮膚を捉え、徐々に締まっていくのが伝わってきた。
「首絞めプレイが好きなの忘れてました。今日は短い時間なので、短時間で極上の快楽をプレゼントしてあげます」
「ああ、あ……」
絶え間なく真由美の喉が震え、何かを訴えかけてくる。しかし遥は首を絞めたまま腰を動かし始める。
「ああ、すごく締め付けてきます。一緒に胸を弄ってあげられないのがもどかしいくらいに気持ちいいですよ」
真由美は身悶えながら声にならない叫びをあげる。拒絶しようと遥の方へ手を伸ばすが、下腹部から波打たれる衝撃に、真由美は新たな快感に目覚める。身体を反らし、低い呻き声を上げた。
きつく閉じた目、半ば開かれた唇。扇形に広がった髪のしどけなさからは、昼間の真由美を想像することはできない。
理性の欠片もなく、真由美はうっとりと遥にされるがままになっていた。
「あぁっ……あっ……かっ……ィクッッ……ぁぁッッ……ぁっ」
欲望のせきが切れたように、真由美はベッドの上で妖しくくねり、ヒクヒクと呻き、かすれた悲鳴を上げ続けた。
普通のプレイの時よりも感じやすくなった身体は、どこに触れても魚のように跳ねるだろう。
「きもちぃぃ……ぁぁっ……ぁぁ」
叫ぶように乱れながら絶頂する女性にはエロスを感じるが、今の真由美は生命の美しさを感じられた。
狂ったように真由美の指はシーツをかきむしり、もっと快感を貪ろうとして腰を突き上げた。
一つの波が終わると、また別の波が湧き起こるのか、弓なりになったまま真由美は二度、三度と高みにかけあがる。
「すごい、綺麗だ……」
幾度か登りつめて、ベッドに倒れ伏した真由美の、汗で湿った身体を抱き起すと、座位のまま真由美の唇を啄んだ。
「クチュっ……チュッ……ちゅぱぁ、ちゅっ……チュチュッ……ぁぁ」
遥は柔らかく白い身体を抱きながら、立ち上がり、隣のベッドへと移動する。
「俺もイキます」
「うん……きて?」
そそり立ったものは、真由美の熱い襞に締め付けられ、ひりつくような快感を脳天にまで送り込んでくる。
「ああ……もっと楽しみたいのに、終わりが近づいてきたようです。もっとこの素敵な身体と繋がっていたいのになあ」
胸に押し付けられる乳房の柔らかさといい、首元に吸い付いてくるときに見えるうなじの繊細さと言い、真由美の身体はほのかや雫、エリカや美月にはない何かがあった。
「あうっ……ごめん、なさいっ……わたしも、もぉ……」
「いいよ、一緒にいきましょう」
「ああっ……」
絶え絶えの声を洩らしながら、真由美は遥に抱かれて背中をそらせた。頬には、歓びか苦痛か、涙が伝っている。
遥は、その真由美の高みに合わせて激しく体を動かした。長い、細い悲鳴と同時に、恐ろしい勢いで真由美は身体を震わせた。
「イクッッッ!!!」
もう、と遥も耐えきれなかった。熱い迸りが、火花のように真由美の中で散った。と、同時に真由美の身体はぐったりとなっている。
「あぁぁ……すごぃ……んぁぁぁ~」
白色の髪の毛、前髪の間からもたげた整った顔、その顔の表情に、真由美は嬉しそうに笑った。
まだ、荒々しく息を弾ませ、頬を紅潮させながら快楽の名残の中にいた真由美だったが、愛する者が、自分の身体で気持ちよさそうな顔をしているのを見ると、セックスの快楽とはまた別の幸福感が宿るのを感じていた。
繋がれたまま、結合部分から濃い白色の液体がベッドへと垂れているが、真由美は遥の顔に夢中だった。
自分のベッドではなく、親友のベッドの上にいるというのに気づくことなく、真由美はそのまま目を閉ざした。
それから数分後、汗を流し終えた摩利が浴室から出てくるが、匂いで遥がいたことを察し、自分のベッドに垂れている粘り気を帯びた液体を見て固まるのだった……。
【次回の投稿は3月22日19時予定です】