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時は少し遡り、愛梨と別れた遥はその足で一高の控え室に向かった。
そこには試合前の最終調整をしていた司波兄妹の他にもう一人、本来であればここにいられないはずの美月が部屋の端の方で二人を見ていた。
「はるか君」
「あれ、どうして美月ちゃんがここに?」
遥の姿を見るや否やホッとしたように駆け寄ってくる。
「もしかして警備員を誘惑して入れてもらった?」
「そ、そんなことしてませんっ!」
「ははっ、冗談だよ。怒ると可愛い顔が台無しだよ」
ポフポフと美月の前頭部を撫でると、美月は唇を尖らせながら上目遣いで遥の事を見つめる。
「それでどうしてここに?」
膝に手を付き、美月の目線と高さを合わせる。レンズ越しに綺麗な水晶が遥を捉えた。
「えっと、ですね……」
そわそわと落ち着かない様子で美月の瞳が揺らめき、その瞳につられて遥の視線は美月の胸元へと移った。
胸元には大きな二つの双丘が……ではなく、大切そうに両手で抱きしめている巾着袋に視線が向かう。
部屋の反対側からは、CADの調整を行っている達也の後ろに立っていた深雪が、遥と美月のやり取りに聞き耳を立てている。
「それは?」
「え? あ、これは、その……」
「大丈夫だよ落ち着いて。深呼吸して……はい、すーはー」
すーはーとたわわな胸を上下運動させると、決心したような目つきへと変わった。
「これ、はるか君に、どうぞ!!」
「ん、俺に?」
「はいっ!」
大切そうに持っていた巾着袋を遥へと押し付けた。遥は顔を傾げながら受け取ると、近くの椅子に置いて結び目を解いていく。
「これは……着物?」
「はい。着物の中の袴というお召し物です」
巾着袋に包まれていたのは、手触りの良い正絹の生地の袴だった。手に持つと雫模様がほのかに光る薄蒼色の生地と、白と灰色の縞袴が姿を現した。
「……あ、もしかして」
「はい。よければ、アイスピラーズブレイクで着て頂けたらなと思いまして」
「着るよ! 立派過ぎて汚したらどうしようって勿体ないけどね」
「いえ、とんでもないです。はるか君に着てもらうことが一番の幸せですので」
遥が出場するアイス・ピラーズ・ブレイクは通称『棒倒し』と略される競技だ。
選手は自陣奥に設置された櫓の上に立ち、自陣に配置された氷柱十二本を守りながら、敵陣の氷柱十二本を先に倒す、あるいは破壊するという競技。
アイス・ピラーズ・ブレイクは純粋な遠隔魔法のみで競い、何回戦も戦うため体力は必要だが、肉体を使うことはない。
そのため、この競技に参加する選手のユニフォームは自由で、規則はただ一つだけ。
『公序良俗に反しないこと』。結果、昨今では女子のアイス・ピラーズ・ブレイクは九校戦のファッションショーとも言われている。
仮装するのは女子の役割、とばかりに男子で仮装する選手はいない。過去には男子でもいたらしいが、その人物が優勝したという史実は存在しない。おそらくは男子で仮装した選手は優勝できないというジンクスでもあるのだろうか。
だがそんなことお構いなしと、元々遥は何かに仮装するつもりで同じ種目に出場する雫に相談していた。しかし、雫からは『絶対に仮装しちゃ駄目』ときつく言われてしまい断念した経緯がある。
「あぁ、だから雫ちゃんは……。この事を知ってたのか」
「はい?」
「ううん、何でもない」
九校戦のフリークである雫が例のジンクスを知らないはずがないが、遥ならそのジンクスをも打ち破れるという厚い信頼関係がなせる業。雫なりのメッセージなのかもしれない。
「これは美月ちゃんが縫ったの?」
「……文化部の皆さんと一緒に作りました。はるか君がアイスピラーズブレイクに出場することが決まったって知って、みんなで大急ぎで作ったんですよ」
よーく見てみると所々縫い目が荒かったりするが、これほど心のこもった袴はこの世に存在しない。職人顔負けの上等な代物が出来上がっていた。
「そうなんだ……。みんなが……」
「はるか君にはお世話になってますから……皆さん喜んで協力してくれました」
「世話になってるのは俺の方なんだけどな」
打算のつもりで入った美術部だったが、今ではかけがえのない大切な場所へと変わっていた。
「エリカちゃんやほのかさんたちも手伝ってくれたんですよ。そこがエリカちゃんが縫った場所ですね」
「ははっ、へったくそだなぁ……」
縫い目が荒い部分を指さす美月。
裁縫などできそうにないエリカが他の人に教えられて愚痴を言いながらも縫っているところが容易に想像できる。
遥の目に光るものを見て、美月は慌てふためいた。しかし、喜びが弾けたような満面な笑みを浮かべると、美月の身体をギュッと抱きしめる。
「ふぇっっ!?」
「ありがとう。凄く嬉しいよ」
「はははは、はいっ」
まるで恋人同士のような濃厚な抱擁。これにはたまらず聞き耳を立てていた深雪が手を伸ばしかけるが、達也が制止した。
「お兄様? 止めなくていいのでしょうか?」
「美月が嫌がっているなら遥を咎めるべきだが、深雪にはあれが嫌がっているように見えるかい?」
遥は普段から甘い言葉でナンパをするが、深雪が直接遥のセクハラ行為を見るのはこれが初めてだった。過去に暴漢に襲われそうになったところを助けてほのかと雫に抱きしめられていたところは見たことがあるが、遥からの抱擁は初めてだ。
気弱な美月が突然抱きつかれて拒否する間もなく固まっているだけにも見えたが、二人をよく観察してみると、遥だけではなく美月の両手も抱きつくように背中に回っていた。
「お兄様……」
「あいつも罪な男だ」
二人は遥と美月の関係を知らない。だからこそ、あの美月がここまで気を許す相手の存在に憂いていた。
叶わぬ恋ならば友として忠告するのも優しさ。しかし、遥の胸に抱かれて、幸せそうに緩んだ美月の表情を目にすると、深雪の声は喉を通らなかった。
それと同時に、複数の女性に気持ちを向けられている男の事を不思議そうな目で見つめる深雪だった。
「本当に……唯一無二のプレゼントだよ」
「ンッ……はぃっ」
耳元で呟かれて悶えるように喘ぐ美月。二人だけの空間が形成され、遥の手のひらが美月の頬をそっと撫でる。
「絶対に勝たなきゃいけない理由がまた一つできた」
匂いと温もりに中てられたように、美月の目がトロンと惚けてくる。両手が遥の背中に食い込み、首筋に吐息がかかる。
「これを着て、表彰台の一番上に立つと約束するよ」
「……はい」
ドクンドクンと、高速に胸が脈打ち、美月の顔から耳、首元までもが真っ赤に染まっていく。それを見かねた深雪が二人の傍までやってきて、遥へ声をかける。
「宮守くん、そろそろ準備をしないといけないのではありませんか?」
「ん?」
深雪に言われて時計の針を見ると試合まで一時間を切っていた。
遥の試合は男子の一試合目。まだ余裕はあるとはいえ、着替えや準備ですぐに時間がきてしまう。
「そうだった」
「……」
遥は美月の身体を離すと、美月は名残惜しそうに抱きしめる手を緩めた。
遥の元から離れ、冷静になったのだろう……深雪と目が合うと美月は恥ずかしそうにいそいそと乱れた髪の毛を整える。
「ほら、美月もここに来た本当の理由を忘れては駄目よ?」
本来であれば美月はここにいることができない人間だ。遥に袴を渡すという目的があったにせよ、部外者は立ち入り禁止。しかし美月の胸元には入場許可証のプレートがぶら下がっていた。
「本当の理由って?」
「はい……袴を一人で着るのは難しいと思いまして、着付け役として私が代表で来ました」
毎年アイス・ピラーズ・ブレイクでは多くの女子選手が様々なコスチュームで試合に臨んでいる。そのため舞台裏では着替えの準備に手間がかかり、試合時間が押すという問題が起こるのだ。その問題を解決するために、特別に着付け役が一人このエリアに入場が許可されるようになった。
有線放送でもアイス・ピラーズ・ブレイクの女子部門は人気が高く、その要因でもある仮装を止めさせることができないという運営の判断。
今回は文化部を代表して遥と仲が良い美月が選ばれたようだ。
「なら美月ちゃんが着させてくれるの?」
「はいそうですけど……」
「そっかぁ、じゃあ更衣室いこっか」
「え、ここじゃ駄目なんですか?」
「ここには深雪ちゃんがいるしね。今、クラウドボールに出てる人もここに戻ってくるかもしれないし、女の子に裸を見せるのはまずいんじゃないかな?」
「あっ」
美月は深雪の方を見る。
「俺としては深雪ちゃんに裸を見られてもいいんだけどね」
ニコリと微笑みかけるが、深雪は涼し気な表情で美月の方へと振り返る。
「美月、一人で大丈夫?」
「えっと、どういう意味ですか?」
「深雪ちゃんは俺と二人きりになった美月ちゃんの心配をしてるんだよ」
「はるか君と二人きり……? はっ!?」
何を想像したかわからないが、治まりかけていた頬の赤らみがまた上昇してくる。
「美月?」
「だ、大丈夫です! もし何かされそうになったら大声で叫べば誰か来ますよね!?」
「ええ、何なら私が隣の更衣室で着替えてると思うから、何かあればすぐに駆け付けるわ」
深雪と美月は同盟を組んで別れた。だが、深雪の心配事は無事起こることに……。
控え室同様更衣室も各高校ごとに分けられている。そのため今、遥と美月がいる更衣室には一高の男子生徒しかやってこない。しかしクラウド・ボールに出場していた男子達は既に全員敗退済み。遥以外のアイス・ピラーズ・ブレイクに出場する男子は制服で試合に望むため更衣室を使わない。という事はつまり……。
「そ、それでは、脱がせますね」
「お願い」
二人だけの空間。美月は緊張したようにゆっくりと遥のブレザーへと手を伸ばす。
「それにしてもこんなすごいモノ作ってるなんて気づかなかったなぁ」
「な、内緒で作っていたので」
「練習期間中に俺が美術部に顔を出そうとして美月ちゃんが止めたのってこれが理由だったりする?」
「は、はい。はるか君を驚かせようとして……驚きましたか?」
「うん。凄く驚いたよ。それと同時に凄く嬉しかった」
「そうですか……」
「本当に感謝してるんだ、ありがと」
「い、いえ……最初にはるか君に衣装を作ろうと言い出しのは美術部の部長ですから」
「でも俺のサイズとか調べたのは美月ちゃんでしょ?」
「ど、どうしてそれを!?」
美月はシャツのボタンを外していると、遥の言葉に驚く。
「だって俺の部屋に泊まった時、色々と俺の服を弄ってたからね」
「気づいてたんですか?」
「もちろん。ニオイでも嗅いでるのかと思ったけど、あれは服のサイズを調べていたんだね」
遥のヤリ部屋に美月が泊まった時の事だ。二人は身体を重ね合い、愛し合った後の事。美月にしか調べられない方法である。
「でも他の人にはどうやってサイズを調べたのかとか聞かれなかった?」
「はい、聞かれました」
「なんて答えたの?」
「えっと……はるか君は制服のジャケットを脱いでおくことが多いので、その時にこそっと隠し見ましたって」
「あぁ、なるほど。それなら怪しまれないね」
遥は暑がりで汗っかきだ。そのため冷房が効いた教室にいようと制服のジャケットを脱いでおくことが多い。学校ではそのジャケットをほのかが着ることが多く、そのせいで学校でいちゃつくなと男子からのヘイトがとんでもないことになっているのは言うまでもない。
「ありがとう」
ワイシャツのボタンをすべて外し、上半身が裸になる。
九校戦に向けて鍛錬を重ね、過去の人生含め、一番鍛え上げられた状態の肉体が美月の前に露になった。
最近は美月を抱いていないという事もあり、美月の視線が遥の肉体に釘付けとなっている。
「下も脱がせてくれるの?」
「へっ、あ、はい、そうですね」
「ごめんね」
「いえ、これも私の役割です……か、ら……」
ベルトを緩め、ズボンを下ろすと当然目に入ってくる遥の盛り上がった股間。美月はしゃがんだまま、遥の方を見上げてきた。
「え、っと……はるか、くん?」
「あ~試合前だから興奮してるのかな?」
「そう、なんですか……」
「それと、美月ちゃんと二人っきりなのが嬉しい、って言うのもあるけどね」
「ッッ……」
美月の鼻が、盛り上がりの頂点に触れそうなほど近い。布一枚ではソレの濃厚な匂いまでは防げないだろう。徐々に美月の頬が紅潮してくる。
「あの、このままだと袴を着ることはできませんし、試合にも影響しますよね?」
「そうだね」
「……私ははるか君の着付け師に選ばれました」
「うん」
「ですので、しっかりと袴を着つける責任があります」
美月の口が開き、ソレを覆う下着ごと口に含んだ。
「ンンンぅぅ~~っっ」
「っ……随分と、美味しそうな顔してるね」
「ふぁいっ……んふっ」
あむあむと金魚が餌を食べる時のような口の動き。唐突に遥の下半身に快感が走った。
「……袴はおちんちんが大きいと着られないので……お手伝いしますね?」
着られないことはないが、遥の手が美月を止めることはなかった。
「んはぁ……良い匂いです」
盛り上がりに鼻を擦りつけ、布一枚隔てたソレのニオイを堪能する。
香水などの良い匂いではない。日本最高峰が近いからといって神秘的な匂いでもない。ましてや竹林と木々が吹き抜ける薫風でもなかった。
ソレは美月の欲情をそそるような妖しい匂いを醸しだし、甘い蜜のごとく美月の唇が吸い寄せられていく。
「あぁ……こんな、カチカチで……」
目を瞑りながら下着を下ろす。最初は触覚と嗅覚だけで勃起したソレを味わうと、顔を横に傾けて竿の部分を甘噛みする。
唇でソレを確かめ、目を開けると美月の表情が喜色に染まった。
恍惚の笑みを浮かべながら、天を向く巨大な肉棒を視界いっぱいに捉える。
しめやかな喘ぎを洩らす美月の肉体は徐々に汗ばんでいき、やがて歓喜の時を迎えて唇を大きく開いた。
「はぁっむっ……」
「ぁぁっ……美月ちゃんの口の中、温かくて気持ちいぃ」
妖しい昂ぶりに包まれ、美月の舌が亀頭を刺激するたびに淫欲が湧き起こってくる。
鼻から零れる美月の吐息が、遥の股間の熱を更に昂らせ、あっという間に射精欲がこみ上げてきた。
「んハァッ……はる、かくんのおちんちん、すごく熱くて硬くて、逞しいです」
ビクビクと震える巨大な肉棒の根元を押さえながら、美月の舌がチロチロと可愛く亀頭の割れ目を舐めまわす。
割れ目からは美月の唾液なのか先走り液なのかわからないほど光沢を帯びた液体が垂れ落ちてきた。
「ねえ、胸で挟んでくれない?」
「……はいっ!」
求められる喜びに浸りながら、美月は笑顔で胸のボタンを外した。
「下着つけてないんだ」
「……はい」
「ヘンタイ」
「~~~~っッッ」
露出癖なのは変わっていないようだ。魔法科高校の制服には形状記憶効果が付加されているとはいえ、何万もの人が集まる場所で下着を身に付けない変態具合に辛辣な言葉をかける。
しかし美月は不貞腐れることなく、むしろ恍惚とした笑みを浮かべて肉棒を胸で挟んだ。
谷間に粘り気のある唾液を垂らし、クチュクチュっ淫靡な音が更衣室に響き渡った。
「あぁっ、気持ちいいッ」
「ホントですか?」
「うん、もう出そうなくらい、気持ちいいよ」
「出してもいいんですよ?」
清純そうな美月からは想像もできない淫らな姿。必死に男の肉棒を胸で挟みながら、上下に扱く姿を見ていると、そのギャップが余計に遥の射精欲を昂らせていき、弾力ある肉の温かに包まれると膝が震えだした。
「たくさん出してください」
その言葉に頷き、巨根の雁首まで迫り上がった灼熱の精液を一息に解き放つ。
「あっ、でるッ!」
亀頭が膨らみ、いっそう熱く充血した。遥が唸りながら身を震わせ、豊満な胸に大量の白濁液をぶちまけた。
「ンッ……すごぃっ……あぁッ」
美月は脈打つ遥の肉棒に妖艶な視線を送っていた。
今も収まらない絶頂に、美月のたわわな乳房や白い首筋や肌、艶やかな黒髪に、ねっとりとした白濁液が降り注ぐ。
強烈な牡の臭いが部屋中に充満し、美月は肉体的な快感というよりも、むしろ精神的な歓びを感じたのだった。
「はるかくんの、ニオイ……すごいにおいです」
胸の谷間に溜まった精液を指ですくい一舐め。美月は艶美な笑みのまま上目遣いで遥の反応を確かめながらお掃除フェラを始めた。
「ぁあ、エロい顔が堪らないなぁ」
「んふっ」
試合時間は刻々と近づいてきているが、二人は濃厚な交流を続けるのだった。
クラウド・ボールの試合と並行してアイス・ピラーズ・ブレイクの試合が始まろうとしていた。第一高校の主な出場選手は、男子の一試合目に遥。女子の三試合目に雫、続いてエイミィ、最終試合に深雪と続く流れとなっている。
試合は複数の会場で行われ、遥の試合が行われる会場は空席が目立っていた。
「まあこんなもんでしょ」
エリカが客席を見回しながら呟いた。
「何がこんなもんなんだ?」
「無名の選手の試合なんて誰も見ないってことよ」
レオの問いに膝の上で頬杖しながらぶっきらぼうな返事をする。
「七草会長や渡辺先輩の試合で感覚が麻痺してるせいだね」
そんなエリカの態度に苦笑いしながら幹比古も会話に加わった。
新人戦自体本戦に比べて観客の人数は少ない傾向にある。花形競技であるモノリス・コードやミラージ・バットはその限りではないが、特にアイス・ピラーズ・ブレイクに関しては女子部門の人気が高すぎて男子の観戦に来る人はマニア位なものだろう。
今年は十師族の一条将輝が出場するため、彼の試合に関しては例外かもしれないが、現地点で無名の遥の試合を見に来る物好きは限られていた。
「エリカちゃん!」
「は~い美月、おかえり」
「ただいまです」
着付けを終えた美月がエリカたちの元に戻ってくる。エリカの隣に座ると、手に持っていたハンカチで額の汗を拭う。
「はるか君喜んでくれました」
「当たり前でしょ。あんな大変だったんだからいらないとか言ってたらぶっ飛ばしてたわよ」
「エリカちゃんが縫ったところを教えたら下手くそって笑ってましたけど」
「はぁ~~!?」
クスクスと笑う美月と激怒したようにあんにゃろ~と口を尖らせるエリカ。
「でも嬉しそうでしたよ。嬉し泣きなんでしょうか、目に涙が浮かんでました」
「……ふぅん、そうなんだ。ま、アレ着て負けたりしたら許さないんだけどね」
そんなことを言うエリカだが、美月の目には嬉しそうに頬を緩めているように見えた。
「ところで美月」
「どうしたのエリカちゃん?」
エリカは美月の頭を見ると、美月を呼んで耳元で呟く。
「髪の毛に精液ついてるわよ」
「ええっっ!?」
「どうしたんだ?」
「何でもないわよ!」
とばっちりを食らうレオ。しかし今は美月の頭を見られるわけにはいかなかった。
「取ってあげるからハンカチ貸して」
「う、うん」
「ったく、試合前に何やってんのよ」
「ごめん」
「美月が謝る必要なんてないんだから、悪いのは全部アイツよ」
遥の性欲に呆れながら美月の髪の毛に付いた白濁液を取っていく。
「で、最後までしたの?」
「ふぇ?」
「どうなの?」
「……うん」
「はぁ……帰りが遅いと思ってたけど、とんだ道草を食ってたわけね」
「……ごめん、なさい」
「顔が赤いのは走ってきたわけじゃなくて、それが原因ね?」
「……顔赤い?」
「赤い。色っぽいせいでさっきからミキが美月の事チラチラ見てるわよ」
「え?」
美月とエリカは幹比古の方を見る。すると幹比古は恥ずかしそうに目を逸らして会場中央に設置されている氷柱へと視線を移した。
「惚れられちゃったかもね」
「ええ!?」
「どうするの美月? もしミキに告白されたら」
「どうするも何も……私は、別に何も思わないけど」
「でもアイツは気にするかもよ?」
「え?」
一瞬深刻そうな表情になるが、美月は決心したようにエリカを見た。
「私には好きな人がいるから」
「……そっ、なら大丈夫そうね」
美月の告白にホッと一息つくと、いきなり会場がざわつきだした。
「どうしたんでしょうか?」
「さぁ?」
美月とエリカはわけがわからず辺りを見渡した。
「あれのせい?」
エリカは本部席近くのスタンドが発生源だと突き止めた。そして本部来賓席に座る二人の人物が視界に飛び込んできた。
「九島閣下と……四葉家当主、四葉真夜……」
たかが新人戦一回戦の試合にまさかの大物二人が登場。会場全体が異様な空気に包まれだした。
そんな中、ついに選手の入場が始まる――。
次回は本当に試合が始まります汗
色々と忙しい時期の為、投稿が遅れました。次回の投稿も時間を頂くかもしれません。
3/30 18時追記
次回の投稿は3月31日19時予定(4月1日19時が濃厚)