「メリークリスマース!」
苺のホールケーキを運びながら、私、美凪ささらはパーティーの始まりを告げる声を上げた。
机には私が腕によりをかけて作ったクリスマスメニューの数々。
今日はクリスマスイブ、私にとって一年に一度の特別な日。
「おぉ、今年は一段と豪勢だな」
「今年は私とお父さんの二人きりだからさ、ちょっと奮発しちゃったんだ」
「そうか…あれからもう一年経つんだな…」
父と母が離婚してから一年。
今は私が学校に通いながら家事、父が仕事を分担してなんとか生活している。
最初の頃はもう二度と会えない母のことを思い出して泣いてしまうこともあったけど、そのたびに父が優しく慰めてくれた。
騎士を目指す私の憧れであり、心の支えだった父。今日はその父に感謝を伝える日だ。
「はいこれ、プレゼント」
綺麗にラッピングされた黒い箱を父に差し出す。
突然のことに驚いた様子だ。
「すまん、父さんなにも用意してなくて…」
「いいのいいの、今日は私がお父さんを労う日だから。ホントにこの一年ありがとね」
「そんな…父さんもささらに家事頼りっきりで申し訳ないと思ってるんだ…それに元はといえば俺が…」
「いいって、お父さんだけの責任じゃないし。」
「ほら、開けてみて」
私に急かされるままに、父が箱を開ける。
箱の中には、控えめに柄の入った紺色のネクタイ。
この前の放課後に明日香に頼んで一緒に選んでもらった、ちょっと高めの品物だ。
「おぉ…」
「友達にファッションに詳しい子がいてさ、その子と一緒に選んだからきっと似合うと思う」
父は感極まっているのか、しばらく黙り込んでいる。
「…ありがとな、ささら」
「うん…」
「……でさ」
料理を食べ終わり一息ついた後、私は意を決して口を開いた。
「もう一つ、あるんだ…プレゼント」
そういって私は立ち上がり、父の目の前に。
きょとんとしている父をじっと見据えた後、私はおもむろに服を脱ぎ始める。
一枚一枚、見せつけるように。
私を「作って」くれた人の前で、私は再び、産まれたままの姿になる。
「プレゼントは、私。」
「ささら…」
「今日ってさ、お母さんが出ていっちゃった日でしょ?だから、これから先もこの日になるとどうしても去年のクリスマスイブのこと思い出しちゃうよね」
「……」
一年前のクリスマスイブ、あの日は最高の一日だった。
朝からイルミネーションを見に行って、夜は母が美味しいケーキを焼いてくれて、家族三人で楽しく料理を食べて、本当に最高の一日だった。
だからこの一日をもっと最高にしたくて、私は父を部屋に誘った。
その場面を母に見られた。
たぶん前々から私達の関係を疑ってたんだろう。
母は先に寝たふりをして父を油断させ、私と父が愛し合っている最中に、私の部屋の扉を勢いよく開けたのだ。
それから先は地獄だった。母は怒りのままに食器を壊し、ツリーを倒し、私達を激しく罵った末に家から出ていった。
最高の一日が、最悪の一日に変わった。
それから母には一度も会っていない。
母がいなくなってから、私は毎日泣いていた。
なんで我慢出来なかったんだろう。なんで母の気持ちを考えてあげられなかったんだろう。
いくら後悔しても、もう母には二度と会えない。
父はこんな私を毎晩慰めてくれた。
私が求めることに全て応じてくれた。
これがいけないことだと分かっていても、母の想いを裏切り続ける行為だとしても、私は父を求めることをやめなかった。
やめられなかった。
「…でもさ、どんなに後悔しても、もうお母さんが帰ってくることはないと思う…。だから…」
私のせいで今も苦しみ続ける父、そんな父を放っておけなかった。
…ちがう、私が耐えられなかっただけだ。
愛しい人が、他の女のことを想い続けることが。
だから私は、詭弁を弄し、この人を繋ぎ止める。
「上書きしちゃおうよ。あの最悪の一日を、最高の一日にさ」
「んっ、んぅ……んん…」
父の身体に跨がり、唇を合わせ、夢中で舌を絡め合う。微かに残ったケーキのクリームの味が、私の脳髄を揺さぶる。
長いキスが終わり、父は私を組敷き、首筋から肩、鎖骨へと舌を這わせ、赤く膨れた乳首を口に含み、乳房を揉みしだく。
その手は徐々に下へ伸びていき、水気を帯びた割れ目に指を沈めていく。
「くっ…ああっ……、はぁ…」
私のあられもない姿を月が優しく照らす。
イブの夜は、まだ終わらない。
「…入れるぞ」
「うん…」
充分に潤った秘部に、父のそそりたった男根をズブズブと潜らせる。
嬌声を上げ、父にすがり付く私。
「あっ、ああぁっ、んぁっ、はっ」
激しく腰を打ちつける父。私も負けじとその逞しい胸板に口付ける。
レスキュー隊として人々を守るために鍛え上げられた身体。私が憧れ、目標にしてきた人が、今、私を悦ばせるためだけにその身を動かしている。
「ささら、もう…」
「うん、一緒にイこ!お父さん…好き…愛してる…!」
父は私を激しく抱き寄せ、口付けた。私もそれに応えるように、口腔を這い回る舌に私の舌をぴったり合わせ、私の唾液を父の舌に染み込ませる。
同時に父の唾液を飲み込み自分の中に取り込んで、身も心も父と一つになる。
壊れるほどに固く抱き締め合う私と父。
瞬間、限界まで膨張した肉棒から欲望が一気に射出される。
肉棒を締め付けていた肉の壁が一層凝縮し、父の
欲望を吸い上げ、びくびくと身体を揺らす。私達は絶頂した。
「はぁ…はぁ………おとうさん……」
父の耳たぶを甘噛みし、愛しい人の名前を呼ぶ。
「……さん」
呟いたのは、父の下の名前。
今日まで育ててくれた父親の、一人の男としての名前。
今この瞬間だけ、私は、この人の“女”なのだ…。
「やっぱり何か買ってくるよ」
「え?」
「プレゼント。父さんだけ何もなしっていうのもなぁ…」
ベッドの上で微睡む私の隣で、父が優しく話しかける。そんなの気にしなくていいのに…
「冬のボーナスもあるし、ささらのほしい物なんでも買ってやるよ」
なんでもって言われてもなぁ…私がほしいものはお父さんだけ……
そう思いかけて、私の中に一つだけ浮かんだものがあった。
でも、それは…
「…ホントに、なんでもいいの?」
「ああ」
「ホントにホント?」
「ああ何でもだ」
「じゃあ…」
本当に、こんな私でも、許されるのなら…
願っても、いいのなら…
「指輪…」
指輪。それは契約の証。
魔法少女として世界に身を捧げる契約とは違う、愛しい男ただ一人に人生を捧げる契りの証。
「指輪……か…」
「ほ、本物じゃなくてもいいの!露店で売ってるような玩具でもいいから…指輪…が…ほし…ぃ…」
言いかけて我に返る。
いくらなんでも重すぎる。こんなのお父さんを困らせるだけなのに…。
「ご、ごめん!やっぱりいいや!忘れて…」
「いいよ」
「え…」
「明日買いに行こうか。」
「いいの!?ホントにホント?」
「ホントにホント。そんなに高い物は買えないけどな」
私は嬉しくなって父に抱きつく。
「ありがとう…お父さん」
触れるだけのキスを交わし、私は父の腕の中で、深い眠りについた。
この人は私の理想の男性だ。
強くて、かっこよくて、優しくて…。
この人のためなら、私はなんだって捨てられる。
世間体も、友達も、母親も…。
ごめんね、お母さん…。
お母さんにしたことを考えると、きっと私は地獄へ落ちても足りないよね。
私のこと、憎んでるよね…。
でも、それでも私は、この人のことを愛している。
父親としてじゃない、一人の男性として…。
たとえ何を壊しても、たとえ何を失ったとしても、この気持ちだけは捨てられない。
だから…
さよなら、お母さん――