プラードを出て6日後。
既にアレスラスト大陸の姿はなく、目印の無い航海を続けている。
「しっかし、飽きないわね?」
「ほんと。朝から夜まで喘ぎ声が途絶えないの凄くない?」
勝手に乗り込んできたアネリーとシャルミナ姉妹こと、ナイトシェードとナイトウインドの姉妹の呆れ声に私は気する事無く一言。
「別にいいじゃない。これでなんとか回っているんだから」
裸で。
さっきまで使われていたので太ももから白いのが垂れているが気にしない方向で。
まぁ、お宝狙いでナイトシェード一行は忍び込んで来たみたいだが、結局こっちが用意した金の延べ棒とか首を横に振って一言。
「そんなちんけなお宝じゃなくて、もっと大きなのを掻っ攫うつもりなのよ」
これ一本で数十万ガメルなんだからという手下二人を肘で黙らせて言い切ったが、その財宝『世界の危機』って言うんだけど大丈夫なのだろうか?
「船だ!前方に船が見えるぞ!!」
見張りの声に私たちの前方を見る。
海賊船ではなさそうだ。
「じゃあ、ちょっと飛んで情報をもらってくるわ」
私が飛行魔法を発動しようとしてナイトシェードとナイトウインド二人に両手を押さえられて一言。
「「その恰好で?」」
あっ……
船はアザーン諸島からのガレオン船で、オランへ香辛料などを運ぶ途中だという。
航路情報の提供ついでに、体で奉仕すると持ち掛けたら、一日ほど航路から西にそれた所にある小島の場所を教えてもらった。
「ここは嵐が来そうな時に避難する為の島なんだ。
こうやって入り江があるし、そこそこ植物も生えているが、水が無い。
嵐を避けるには十分だが、住むには不向きな場所だよ」
4日のロス(往復2日、半舷上陸)で向こうの船員たちに私を含めた肉便器たちが奉仕した結果、いい避難場所を見つける事ができて満足である。
幸いなことに、休んでいる時に本当に嵐が来たので、船が無事なのは嬉しかった。
この島を整備して灯台でも建ててアノスにでも提供する事ができれば、オランとアノスの航路の海賊の進出を大きく下げる事ができるだろう。
更にそこから7日後。
そろそろアザーン諸島に着くかどうかというあたりでまた船が見える。
「サメだ!キラー・シャークが出たぞ!!」
海の戦闘が低レベル冒険者にとって鬼門なのがこれである。
船体をかみ砕く大きさ、潜られると手も足でせない敵の行動範囲、船が沈められたら終わりという敗北条件の追加。
「シャミナ!『ウォーター・ウォーキング』をルーファスにかけて頂戴!
私は『フライト』で飛ぶから!!」
高レベルだとこれで片付く訳で。
かくして私たちはついにアザーン諸島に到着した。
ザラスタはアザーン諸島の玄関口にあたる港であり、豪商などは船を居館にしているので船の数もオランよりも多いかもしれない。
航路もオラン・アノスの大陸航路だけでなくイーストエンドにエレミヤ、更に呪われた島にすら行く船があるとか。
この港というか海上交易が主軸になりえないのは、先のキラー・シャークみたいな海の化け物に対する対処が追いついていないというも一つはあるのだろう。
「船だ!船が来たぞ!!」
「見た事が無い船だな」
「女が多いが何で裸なんだ?」
桟橋に船を寄せて上陸。
当然やってくる港の役人に金を握らせて私たちの入国は黙認された。
半分の乗員を船に残して、私たちは『海蛇の牙亭』に宿をとる。
地面があって揺れていないというのはこんなにも落ち着くものかと感慨深くルーファスたちと酒を交わしていたら、護衛を連れた裕福そうな中年男性が私たちの所にまっすぐ向かってやってきた。
「さっき港に入ってきた冒険者たちは君たちか?」
「そうだが」
ルーファスが返事をすると、ダーヴィスと名乗った商人が依頼を頼んでくる。
酒場の全員に酒を奢りながら、彼は少し夢見ごちでその依頼を口にした。
「この島のどこかにいつでも虹がかかっている谷があると言う。
おとぎ話なんだろうが忘れられなくてな。
で、先ごろその谷の記述がある古文書を手に入れてね」
何も言わずにダーヴィスはすっと古文書を私の方に差し出す。
この人多分やり手だな。
先にこちらの情報集めて依頼を持ってきたと見た。
「拝見しても?」
「もちろん」
私は古文書を手に取って中を見る。
「……古代アザーン語ですね。
『黒い獣が見つめる先 三本の弓立ちならぶ 弓より矢飛びて白き壁を射ん 白き壁を貫き 虹の谷へと届かん』」
「さすがですな。
大陸稀代の賢者と名高い魔術師ゼラニウム導師。
貴方がこの地に来たのはこの為ですか?」
「まぁ、その通りなんですけど、それは理由としては半分で、もう半分は大陸航路で暴れている海賊対策です」
私のあっさりとした本音暴露に、今度はダーヴィスの顔が険しくなる。
彼はこのザラスタを運営する評議会の評議員もやっているから、私の言葉にオランとアノスの影を感じざるを得ないのだろう。
「という事は、あの二か国が『赤き血の兄弟団』討伐に本腰を入れるという話は本当だったのか」
「そのために私たちが来たとご理解いただけるのならば」
ダーヴィスを魔術師の顔で歓迎したら、今度は娼婦の顔である人物の所に行く。
ルーファスはクリシィとシャミナとジェニに任せるとして、いつもの卑猥な恰好でザラスタの街を目的地まで歩く。
「よー。ねーちゃん。俺とやらないか?」
「俺と遊ぼうぜ!寝かせないからよ!」
「そんな格好しているんだから、俺たちが使ってやろうじゃねーか?」
声をかけてくる連中を笑顔と体であしらいながら『南風の誘い』亭に行くと、入り口の近くで殴られたらしい片腕の男が蹲っていたので抱きかかえる。
「よー。ねーちゃん!そんな陰気な男とより俺たちと……」
私にからもうとした男たちの言葉が止まったのは神聖魔法のフォースを地面に撃ったからである。
『南風の誘い』亭の店主に宝石を投げて二階の部屋を借りると、彼を寝かせて彼が持っていた結晶化した腕を元あった場所においてその呪文を唱えた。
「大地母神よ。彼を健康な体に戻したまえ……」
神聖魔法『リフレッシュ』。
これで結晶化が治るという事を確認しておきたかったのである。
万一こうなったとしても治す手段があるのとないのでは選択肢が違ってくるし。
「あ。お、俺は?」
「あら?私を買ってこれから抱くという所で寝ちゃったんですよ。グレン」
朦朧としているグレンの前で裸になって、そのままベッドに。
ただ、冒険者にたいした情報を与えずに死ぬという役割を与えられた男を救ったのは、私の善行なのか、それともわがままなのかは私にも分からず、彼が寝るまで彼の上で腰を振り続けたのだった。