※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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アザーン諸島攻略戦 その7

 有名冒険者ともなると、必然的に国家なり勢力の紐がつく。

 私たちの場合、オーファンでありオラン、賢者の学院となる訳だが、そういう人間が他所から来た場合待っているのは歓待の宴である。

 

「高名なるゼラニウム高導師に来てもらえて、魔術ギルド一同歓迎しますぞ」

 

 アザーン諸島の魔術ギルドのレベルは低い。

 その理由はそのままオランに行ってしまうからで、ある意味過疎状態の所に有名人がやってきた訳で、導師から学生に至るまで講堂に集まる始末。

 

「これ、何か講演しないと収まらないわよね?」

「むしろ、何でやらないんですか?」

 

 私のため息にカルダモンが突っ込む。

 ただの冒険者として振舞うには、アザーン諸島はオランから近すぎた。

 という訳で、軽めの公演を行う事に。

 

「ゼラニウムと申します。

 色々な名前を持っているのですが、一番名乗りたい名前を言うと押しかけ弟子が怒るので今回はただのゼラニウムとして」

 

 その一言で会場の笑いを誘う。

 側で控えているカルダモンのしかめっ面もいい味になっている。

 ナイトシェードとナイトウインドの姉妹も来て興味津々で聞き出しているので、大まかな話をするとしよう。

 

「古代魔法王国における魔法の行使。

 特に、その魔力供給は魔力の塔によって無尽蔵の力を得る事ができました。

 その結果、古代魔法王国は、空に都市を浮かべるほどの繁栄を遂げる事になったのです。

 その残滓はこのアザーン諸島にも残っています……」

 

 アンバーローブを羽織って、真面目かつ面白く授業を行うと、とたんに会場からざわめきか消える。

 歴史から魔法の定義をしつつ、新世代の魔術師の在り方を軽く語ると次々に質問が出てくる。

 

「高導師!

 我々が古代魔術王国の過ちを犯さないようにするにはどうすればいいのでしょうか?」

 

「残念ながら、人は過ちを犯すものです。大事なのはその過ちを乗り越える事であり、乗り越えられるように過ちをコントロールする事ではないでしょうか?」

 

「未熟な魔術師の生計が成り立たないのです。

 どうすれば、魔術を極められるでしょうか?」

 

「残念ながら、多くの魔術師にとって、魔術を極める事はできないでしょう。

 ですが、学ぶことによって、多くの先達たちが我々に道を示してくれます。

 たとえば、人に教える事で賢者としてその地に根ざす人もいれば、薬学を学んで故郷で病や怪我を治して感謝されるという道もあります。

 ここアザーン諸島は航海に魔術師をという需要もあります。

 我々は星の動きや計算を学びますが、それは航海や商売に必要でもあります。

 また、我々の呪文の発声は吟遊詩人……」

 

 質問に答えながら会場の人間をチェック。

 見るからに怪しい人間が一人。

 カルダモンに後で尋ねると、ベノールの魔術ギルドの魔術師らしい。

 私達がここに来たばかりなのに、北にあるザラスタから島の南側にあるベノールから来るというのが怪しい。

 そういう情報網を持っている事と、そういう移動手段がある事を意味する。

 そんな彼が私に質問をぶつけた。

 

「高導師ゼラニウムは死霊魔術師として有名と聞いているのだが、その秘奥義をお教えいただくことは可能なのか?」

 

 場が見事なまでに凍る。

 死霊魔術というのはそういう魔術なのである。

 なんとなく確信する。こいつ、赤き血の兄弟団の死の導師シュバードだろう。

 ここで戦うと間違いなくこの場に来ている魔術師の卵を巻き添えにする。

 笑顔のまま、私は彼の質問に答える。

 

「ええ。私は古代魔術王国の死霊魔術を極めています。

 ですが、この魔術は今の世において歓迎されないのもこの空気を見ればお判りでしょう。

 とはいえ、オランの賢者の学院は魔術を極めたい者に対して門を閉める事はないでしょう。

 オランで私の所に来たのならば、その技術を教える事もやぶさかではありませんが、その力の持つ意味はちゃんと考えてくださいね」

 

 講演終了後、カルダモンと共に控室に居た私達の所にナイトシェードとナイトウインドの姉妹がやってきてぼやく。

 

「授業ってこんなに面白かったんだ」

「本当よね。私が学んだのなんて堅苦しくて眠たくなるんだから」

「あら?じゃあ、ちゃんと魔法を学ぶ?」

 

 私の誘い水になんとも微妙な笑顔を浮かべる二人。

 今の冒険者が楽しいのと、魔法が便利なものであるという事が分かるだけに悩んでいるのが丸わかりである。

 

「まぁ、いいわ。

 一緒にいる間に適当に盗んて行きなさいな」

 

「そんなこと言っても……」

「あなた、喘いでいるだけだったじゃない?」

 

 何も言い返せない私に姉妹二人が楽しそうに笑っていたら、ドアが開いてクリシィが入ってくる。

 

「駄目ね。あれは危ない。

 護衛が居たから引き返した」

 

 シュバードをつけてくれと頼んだのだが、案の定護衛が居たらしい。

 クリシィを相手に危ないから引き返したと言わせる相手となると、片目の女ダークエルフのサジェイアだろう。

 向こうも手を出さなかったのは、我々が虹の谷を見つけた後で掻っ攫うつもりなのだろう。

 

「あ。そういえば、ゼラが昨日抱いていた客だっけ?

 こんなのをよこしてきたわよ」

 

 グレンか。

 抱いている時にやり直すなら私の名前を出してダーヴィスを紹介したのだ。

 病み上がりで、すぐ気絶した詫びみたいなものだったが情けはかけておくものらしい。

 

「で、その彼は?」

「多分今頃海の上。

 ダーヴィスの船に乗って大陸でやり直すんだって」

 

 小さな紙に書かれた盗賊の暗号文字。

 クリシィに読んでもらったらこんな言葉だった。

 

『気をつけろ。ザラスタの、アザーン諸島の盗賊ギルドは赤き血の兄弟団の支配下に入っている』

 

と。

 

 

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