マフォロ島で海賊を潰して、ルゼリアを救出した時点で私たちは一旦テレポートでザラスタに戻る事にした。
船もザラスタに向かうように指示を出しているが、海賊と出会ったら交戦は避けるように言ってある。
マフォロ島滞在が軽く一月以上経過していたので、大陸からの次の船団がザラスタに来ている頃なのだが結果は最悪だった。
「うわ。海賊の奴らアザーン諸島を封鎖する腹ね」
オランから出港した船二隻とザラスタから出港した六隻の船の内、ザラスタに到着したのは二隻のみ。
その二隻のうち一隻は今にも沈みそうな状況で、積み荷を捨ててなんとかたどり着いた有様である。
「海賊の奴らが容赦なく襲ってきて……スカルロードの姿も見ました……」
生存者の報告に渋い顔をする私。
このシナリオ、これがあるから厄介なのだ。
今回、海賊による航路襲撃を選んだが、守りを固めている虹の谷が攻め落とされた場合クリスタルドゥームの封印が解かれかねないという恐ろしさ。
それでも、事件を解決する為にアザーン諸島をあちこちうろつかないといけない上に防衛要員を置かないと全てがひっくり返りかねない。
「少し足元を固めないと先に勧めないわね」
今や私たちのアザーン諸島での拠点となっているザラスタの魔術ギルドの一室にてみんなを集めて私は宣言する。
この海賊襲撃の成功は私たちに色々な対処を強いていた。
沈んだ六隻だが、これは私が委託していたダーヴィスの船で、降伏した海賊や買い取った奴隷で運行していたのだ。
結果、ダーヴィスも大損害を受けていたのだが、こちらが損失を補填したがガレオン船一隻とガレー船五隻、失った船員は降伏した海賊に私が買った奴隷込みで360人を数え、彼らがアンデッドになったと考えると相手側の戦力強化まで見えるから頭が痛い事この上ない。
オランの冒険者やアノスの聖騎士たちに全ての船に護衛をつけるのは不可能な以上、最低でもアンデッドたちを操る死の導師シュバードを倒す必要があり、私たちが彼を倒している間に、他の場所で海賊たちが策動するいたちごっこ。
「手が足りないのでみんなを鍛えるわ」
特に、このシナリオのラスボスのヴァンパイアはモンスターレベル10という強敵である。
レベルを上げられるのならば、上げた方がいい。
「ちょうど、ダーヴィスから蒸留酒を作る水源に異変があったって調査の依頼があったわ。これはアシュレイたちに任せるわ。
テレポートで10日ごとにここに来るから、それまでに解決しておいて」
とにかく彼らをもう少し使えるようにしておきたい。
この手の依頼をアレクラスト中で受けて、レベルを上げる事を決意する。
「カルダモンとスィートゲイルはナイトシェードとナイトウインド、ダバール、マーティ、カインズでオランに戻すから、鍛えて置いて頂戴。
同じく10日後に顔を出すわ」
「それはいいとして、師匠はどちらへ?」
カルダモンが問うてきたので私はあっさりと行先を告げた。
「西部諸国」
「おかえりなさい。ゼラ姐さま」
「ようこそ。半分耳の森へ」
別れてそれほど経過していない事もあって、マティアラとリーマは私たちをあたたかく迎えてくれた。
なお、私が買い取ったハーフエルフたち1160人と壊れたエルフたち21人を私とラヴェルナでテレポートで運び、丸二日、魔晶石144個をぶっ壊す超力業で解決した訳で。
これだけの人数が一挙に住める訳もないので、後で転移ゲートを繋いでゴブリンを掃討した上で修復したオランのホープにある地下都市に大勢を住まわせる事に。
とりあえず、竪穴住居跡を急増しても追いつかないので、テントとかで仮ぐらしをしてもらう事に。
移転後にここで魔力の塔建設を進めると同時に、ルーファスの忠実な国民兼兵士になってもらいたいと思っていたり。
とはいえ、千人のハーフエルフを食わしてゆくのは結構な苦労がある訳で、近隣のベレーヌの村領主サムソン卿とオーファン第一の商人であるアウザール商会、更にエルフやハーフエルフが多いタラント王国の支援が無ければ早々に破綻していただろう。
なお、人間奴隷の男子469人はアザーン諸島にて水夫として働かせ、奴隷女子540人もザラスタにて娼婦兼牝家畜として働かせることに。
沈みかけの船を買い取って住居として使っているが、彼らもいずれは地下遺跡に移して住まわせる事になるだろう。
話がそれた。
「で、元気にしていた?」
「実は、私たち王宮の侍女になりました♪」
「私がメレーテ王妃付きに、リーマがジェニ様付きなんですよ♪」
「あっ……」
察した私に二人はにっこりと微笑む。
老いてもなお盛んというか、若返った二人にあてられたオーファン国王リジャールだが当然足りる訳もなく。
そんな所に私が育てた高級娼婦二人が居る訳で、これ幸いと掻っ攫っていったと。
おかげで、この半分耳の森も王宮の庇護下にもあるような状況だった。
「立派になって……私は嬉しいわ」
「で、こっちには何をしに来たんですか?
私たちの顔を見に来た訳じゃないでしょうし」
私たちの新たな仲間を見ながらマティアラが尋ね、私がちょうどこの森に降りようとしている飛行船を見ながら目的を告げる。
「タラントに行くの。
遺跡を解放しにね」