20日目。
カルダモンたちはパダに行くと行ったのでアシュレイたちの様子を見にオランへ。
落ち合う予定の『古代王国の扉』亭に行っても誰も来ないので、まだ依頼遂行中なのだろう。
仕方ないので、戻って西部諸国でクリアしたいシナリオを攻略する事に。
遠見の鏡で目的地を指定して、ディメンションゲートで出た場所はゴーバの近くの休火山。
「ゼラ姐さま。街には寄らないんですか?」
そのままついてきたリーマが尋ねる。
飛行戦艦て代物をオーファン王宮が知ったら衝撃を受けるのだが、寝床でマティアラとリーマに囁かれた国王リジャールは、
「どうせあれは取り上げても別のものを見つけるのだろう。ほおっておけ」
と、聞かなかった事にしてくれた。
既にミスリルゴーレムや飛行船とかでオーファンに多大な貢献をしているからこそなのだろう。多分。
とはいえ、それをゴーバの王宮がしてくれるとは思えない訳で、こっそりと遺跡に忍び込んで、目的のものを頂く事にしようという訳だ。
「で、今度はどんなものを見せてくれるんだ?」
ルーファスの楽しそうな声に、期待に沿えるだろうという事で私も楽しそうに目的のものを告げた。
「ドラゴンよ」
入り口を見つけるのに5日。
中に入って探索する事2日。
動かないゴーレムたちを後目に、奥へ奥へと私たちは進む。
最下層の制御室。
そこにお目当てのドラゴンが居た。
(何者だ?)
荘厳な声が響く。
そのドラゴンはダイヤモンドの鎧に身を包んでいたが、精神まで呪縛されて遺跡の門番として長い時間この地に留まり続けていたのだ。
(殺してくれ……)
荘厳な声なのにその言葉は疲れ切っていた。
私が行うのは呪われた島で聖女が行った儀式。
「あなたを解放する」
ディスペル・オーダーを唱え、呪いの線も考えてリムーブ・カースを唱える。
更にリジェネレーションとリフレッシュを唱えて、ドラゴンをできるだけ元の姿に戻して行く。
(人の子よ。何故我を助ける?)
ドラゴンもその気になれば私たちを攻撃しても良かったが、ルーファスやローンダミスやジェニたちが警戒し、この遺跡に置いてあった対竜狩猟用ゴーレムに乗り込んだラヴェルナとマイシリカがドラゴンを攻撃できる位置に居た。
そして私はドラゴンの必殺距離に居ながら、容赦なく魔晶石を砕いて魔法を行使し続ける。
「この遺跡の制御装置に用があるの。
それに、話せば分かり合える事もあるわ。
これであなたは自由よ。
去るも良し。今までの恨みを私たちにぶつけるもよし。
もちろん、私たちもただでやられるつもりはないけど」
(……)
長い沈黙の後、ドラゴンが羽根を広げる。
あたりに響く咆哮と共に、ドラゴンが火口から飛び去ってゆく。
「ゼ、ゼラ……」
めずらしくルーファスの声が震える。
私がルーファスが指さす方を見ると、そこには去ったドラゴンとは別のドラゴンが居た。
あ、死んだなと皆の心が一つになるのを知った上で、このドラゴンは私たちに告げる。
(私の名前はアクシズ。
よくぞ、我らの仲間を助けてくださいました。
そのお礼を言いに来たのです)
少なくとも私たちを殺すつもりはないらしい。
というか、エンシェントドラゴンを相手にする気なんて御免である。
(けれども、この遺跡は我らを狩る為の技術が眠る場所。
できれば灰にしたい所ですが、なにゆえにこの遺跡を欲するのか。
それを問いたいのです)
なるほど。
現在の西部諸国はきな臭くなっている訳で、竜を狩れる戦力は戦場に投入すれば絶大な力を発揮するし、竜を操れるのならばその竜を使って戦争が有利になると考える輩も出るだろう。
ドレックノールの闇の王子やロマールにやってきた軍師とかならば。
「アクシズよ。
私が欲するのはこの装置なのです。
溶岩からマナを吸い取るこの装置で、星の海に漂う船に魔力を送りたいのです。
一月だけこの遺跡を壊すのを待ってもらえないでしょうか?」
(……いいでしょう。
その間、私がここに居て見守る事にしましょう)
「ありがとうございます。偉大なる竜よ」
私が頭を下げると、エンシェントドラゴンはなんとも珍しそうな声をあげた。
この竜にとって、五百年の時間も遠くない出来事なのだろう。
「この地に王国を築き上げた傲慢な人間と姿形が同じなのに、その敬意を私は感じます。
人は少しは学んだのかもしれませんね」
それが、エンシェントドラゴンの皮肉である事に気づいて、私は乾いた笑いを浮かべる事しかできなかったのである。
ドラゴンは約束を守り、一月後ゴーバの休火山が噴火したというニュースが届く事になる。
既にお宝やゴーレムなどは飛行戦艦に移した後だったので、その時に私はおらず、この遺跡を巡ってドレックノールやロマールがどれだけの暗闘を行い、その愚かさの代償をここに居たエンシェントドラゴンに支払っていたのか、私は知るつもりもなかった。
「解放された恩は返す。
そなたが助けを求めし時は我を呼ぶがいい。
我が名はアダマス。
ダイヤモンドに身を包みし唯一の竜よ」
あ、束縛が嫌だっただけで、ダイヤモンド装備は嫌じゃなかったと。返しておこう。
多分アクシズあたりが教えたのだろう、この助けられたドラゴンはわざわざその時滞在していたオーファンまで飛んできたものだから、ドラゴンにトラウマのあるオーファン王宮は臨戦態勢に入る始末。
王宮と魔術師ギルドにこってりと絞られたのは言うまでもない。
帰ってきたドラゴンの五分間シアターより『ゴーレム、暴れる!』