騎士の国オーファン。
そう呼ばれるこの国だが、その軍事力は諸国と比べて低い。
新興国というのもあるが、冒険者上がりのリジャール王にファン王国からの貴族が従わないというのもある。
そんな訳で、軍事力の弱かったこの国だが、軍制を改変する事になった。
その席での話である。
国王 リジャール
王妃 メレーテ
宰相 リスラー
騎士団長 ネフェル
最高司祭 ジェニ
最高導師 カーウェス
オーファン王国首脳部に王妃揃い踏みで何でか私が説明しているのですが。
なーぜーか、ラヴェルナとローンダミスとルーファスもいるのですが。
ハーフェン導師とフォルテス導師はお目付け役と見た。
「……ですから、現在の騎士団の戦力ではファンドリアと互角に戦えてもロマールが援軍に来た場合厳しいかと」
「それが、騎士団以外の戦力強化の理由ですかな?ゼラ高導師」
騎士団長ネフェルの声に棘があるのは、グードン太守の息子セルジェイに戦力強化のアドバイスをした事が理由だろう。
独立性が高い封建国家において地方領主は王から見ると家来であると同時に、いう事を聞かない存在でもあるのだから。
「今の騎士団の戦力は全力出撃で一万は無理すれば出せるでしょう。
ですが、その出撃の後国は大いに疲弊します。
西部諸国の戦乱と動向が読めないファンドリアに備える為にも、出せる戦力の整備は必要でしょう」
なお、この場において私が用意した戦力は以下のとおりである。
グードン太守軍 四百
半分耳の森 ハーフエルフ 二百
ストーンゴーレム 7体
ウッドゴーレム 20体
ターシャスの森 エルフ 百
ドノバ守備隊 冒険者 百
魔術ギルド ミスリルゴーレム 2体
アイアンゴーレム 10体
ストーンゴーレム 15体
ウッドゴーレム 36体
竜牙兵 90体
合計 兵士八百
ゴーレム180体
小国の軍事力に匹敵する戦力である事は言うまでもない。
特にゴーレム操作ができる魔術ギルドの戦力化にネフェル騎士団長だけでなく、リスラー宰相も懸念の声を示す。
「魔術ギルドの戦力強化に諸侯だけでなく民からも懸念の声が上がりつつある」
「だったら、宮廷魔術師を置いて、魔術ギルドと分割して管理すればいいじゃないですか?」
私の一言に『何言っているの?こいつ?』な顔をする一同。
私が首を傾げると、見かねたフォルテス導師が後ろから指摘した。
「ゼラ『宮廷魔術師』どの。
それは、貴様の所に戦力が集まると分かって言っているのだな?」
「へっ?私??」
素で声が出る私。
それを見てリジャール王とジェニ最高司祭とカーウェス最高導師が察した顔になり、リスラー宰相とネフェル騎士団長の顔が険しくなる。
「あれ冗談じゃなかったんですか!?」
「何であの場所で貴様に儂が冗談を言わねばならんのだ!!
おまけに、お主は使う事を考えずにギルドにホイホイとゴーレムを置きおって!!!」
「操作コード渡したから好き勝手使っていいって言ったじゃないですか!」
「だからそれを扱う人間の事を考えんか!!!愚か者が!!!」
唐突に始まる私とフォルテス導師の醜い痴話喧嘩。
そっかー。この会議の理由は私がみんなの為にとポンポン用意した戦力が、私しか扱えないからそれに危惧を抱いた事が元凶かー。
「分かりました。
ここはラヴェルナを宮廷魔術師に推薦……」
「何でゼラ高導師が居るのにそれを差し置いて宮廷魔術師にならないといけないんですか!!」
お子様姿でラヴェルナが抗議すると私の分が悪い。
いつもはオトナボディで男の上に乗っているくせに、こういう所で子供に戻りやがって。
「では、ハーフェン導師とフォルテス導師に宮廷魔術師を……」
と言ったとたんにハーフェン導師は胃を押さえ、フォルテス導師は殺気まで漂わせて拒否する姿勢を示してやがる。
「そもそも、ゼラ宮廷魔術師が懸念するほど戦力強化は必要なのですかな?」
リスラー宰相の確認に私は断言する。
茶番など吹き飛ばす勢いで冷酷に、容赦なく。
「むしろ遅いぐらいです。
下手したらこの国滅びますよ」
少し先の未来、軍師ルキアルの扇動に大陸諸国は揺れる。
その時王の出陣にこいつらは付き添えるのだ。
万を超えるファンドリア・ロマール連合軍を相手にするには正直な所これでも足りないと踏んでいる。
「ロマールに来た軍師ルキアルはその知恵でブリシスを長く支えたお方。
その知略でロマールで働く場合、ロマールの目の上の瘤であるオーファンに対して策を十重二十重にかけて動けなくするでしょう。
そう……」
そこで、私の声が止まる。
今、リスラー宰相は何と言った?
(魔術ギルドの戦力強化に諸侯だけでなく民からも懸念の声が上がりつつある)
「……やられた……」
がっくりと首をうなだれて椅子に座る私。
状況が分かっていない皆を代表してラヴェルナが尋ねる?
「何がやられたのですか?
ゼラ高導師?」
「この席そのものがルキアルの策って事。
覚えておきなさい。ラヴェルナ。
いずれあんたがこの策を捌く事になるんだから」
ルキアルにとってはあいさつ程度の策とも呼べない代物だろう。
だが、この席で疑心暗鬼がオーファン王宮に広がればしめたもの、何もなくても私のオーファン王国での立ち位置が確認できるという訳だ。
畜生。あの軍師、私の事をまったく侮ってない。
結局、私の宮廷魔術師の辞職は受理される訳もなく、魔術ギルド側が折れる形で戦力の強化の抑制が約束させられる事になる。
もちろん、これは表向きで、これらの戦力はターシャスの森や半分耳の森に隠蔽する事になり、管理するマイシリカが悲鳴をあげるのはもう少し先の話である。
「で、何で呼んだのです?ルーファスを」
会議が終わって、気になったのでリジャール王に尋ねる。
ルーファスが来たのは王のご指名だったからだ。
返ってきた返事は実に元冒険者らしいものだった。
「どうせお前はあれの為に国を作り兵を揃えるのだろう?
だったら、未来の王にそれを見せてやったまでの事だ」
と。