※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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オーファン王国軍制改革 その3

 『爆ぜ実』。

 この実は極めて油脂が多く、火をつければたやすく爆発する実。

 それを大量に用意するのだから、使う目的は一つである。

 

「頼まれたものはこれでいいのか?」

「ええ。十分よ。博士」

 

 発明博士ジョン・ペインズに頼んだのは馬車の荷台に固定した青銅の筒。

 ぶっちゃけると大砲である。

 オーファン王都郊外に国王リジャールだけでなく、メレーテ王妃、リスラー宰相、ネフェル騎士団長、ジェニ最高司祭、カーウェス最高導師を招いたお披露目において、その効力は十二分に発揮された。

 爆ぜ実の爆発力に大砲の筒は耐え、その力によって押し出された青銅の球体は城壁と同じ作りの石垣を難なく粉砕して見せたのである。

 

「見ての通り、これは戦争を変えます」

 

 私はさも当然のように言って見せる。

 城を落とす場合、城壁をどうするかというのはこの世界でも問題となる。

 高レベルソーサラーによるメテオストライクという一撃に耐えられる城はまずないのだが、そんな高レベルソーサラーを用意できる国が少ないものまた事実。

 そんなソーサラーを用いなくても城壁を崩す投石器や破城槌もあるが、人出もかかるし、組み立てる手間がかかる。

 こいつは、投石器や破城槌よりも扱いやすい。

 皆呆然とする中で、ついてきたルーファスやローンダミスやラヴェルナはその応用方法に気づいた。

 

「ゼラ高導師。

 この実は投石機で投げる事は……」

 

「もちろんできますよ。

 こっちの方が簡単でしょうね」

 

 私が合図すると、発明博士ジョン・ペインズが投石器にて爆ぜ実を投げる。

 そのまま地面に落ちるが、そこに私が魔法を放つ。

 

「ファイア・ボール」

 

 通常のファイア・ボールとはけた違いの爆発が爆ぜ実が落ちた先から発生する。

 もちろん、通常の兵でこれを食らって無事な奴は少ないだろう。

 ネフェル騎士団長がたまらず叫ぶ。

 

「何故だ!

 なぜこのような物を生み出したのですか!!」

 

 多分気づいたのだろう。

 城壁が崩れる威力に人は耐えられない。

 これがあれば、どの戦場でも高レベルソーサラーがいるのと同じ対応をしなければならず、それは必然的にオーファン王国の主力である騎士団の損害につながるという事を。

 だから私は毅然と言い放つ。

 

「決まっているじゃないですか。

 騎士団だけで戦えないって教える為ですよ」

 

 騎士の時代の終わり。

 英雄の時代の終わり。

 それは、火器の登場と共に、数の時代への移行を促す。

 軍師ルキアルが望み、英雄リウイによってできなかった事。

 

「ファンドリアとロマールがこの国を攻めた場合、その兵力は万を超えるでしょう。

 騎士団のみでは苦戦は必至。

 ですが、これがあれば戦は変わります」

 

 既に発展したドノバの町の城壁にはこの大砲を据える砲台を用意している。

 真っ向からこの町を落とすのは至難の業になるし、戦力を分ければしめたもので、王都ファンから出陣するオーファン騎士団は減ったファンドリア・ロマール連合軍と戦えるからだ。

 攻城戦は三倍の兵力が必要だが、冒険者たちが千人ほど滞在しているドノバの町を囲むならば三千は最低でも欲しい所。

 軍師ルキアルはその分散を前提に作戦を組まねばならない。

 

「これは秘蔵せねば……」 

「え?広めるに決まっているじゃないですか」

 

 リスラー宰相の懸念を私はぶった切る。

 これはルキアルに知られる事が前提の策なのだから。

 

「これ、爆ぜ実じゃなくてもできるんですよ。

 たとえば、炎晶石とか。

 そうすると、面白い事が起こるんですよ」

 

 大砲を戦力化すると、その起爆に炎晶石を用いる場合、各国は嫌でもその確保に走る必要が出る。

 そして、その炎晶石が失われた技術な以上、戦力化すればするほど、爆ぜ実とそれを自由に使えるオーファンが有利になる。

 さらに、この罠のとっておきの核心を私は楽しそうに口にした。

 

「あと、失われた技術である炎晶石の製造ですが、私、できますよ」

 

 伊達に古代魔術王国の知識を得てはいない。

 現在のロマールは西部諸国征服、特に対ドレックノール戦に注力している。

 ドレックノールを落とすのにこの火力は魅力的に映るが、それは同時にオーファンを敵に回したらこれらの物資を止めるという恫喝に化けるのだ。

 まぁ、最終的にはルキアルはロマールを去るのだろうが、彼が去った後のロマールは火力優位のオーファン相手に戦う事になるので、さぞ悩むだろう。

 

「宮廷魔術師よ。

 そなたは散々ロマールへの脅威を説いてきた。

 ここまでしてなお戦が起こるのか?」

 

 国王リジャールが私の名前でなく私の役職で呼ぶ。

 それは公的な見解となり記録に残る事を意味する。

 だからこそ、嘘偽りなく私は王に告げた。

 

「起きます。必ず。

 この国は嫌でもファンドリアの崩壊に巻き込まれます。

 その為に、ロマールと戦う事になるんですよ」

 

「我々がその戦に関わる事を拒んでもですか?」

 

 メレーテ王妃が横から口を挟むが、私は痛々しく首を横に振った。

 なお、関わる羽目になる理由の大部分がファン王国の血を引く王妃のせいなのだがそれは言うつもりはない。

 

「我らが関わらずロマールがファンドリアを併合した場合、あの中の勢力のいくつかがオーファンに逃げ込むでしょう。

 そしてその大部分を我々は拒否できません」

 

 さすがにファラリス教団とかは追い返せるだろうが、根が同じ貴族や商圏を持つ商人、ロマール盗賊ギルドに吸収されるのを嫌がったファンドリア盗賊ギルドなどはこちらに逃げたら保護しないまでも知らん顔はする方が都合がいいのだ。

 そして、それをロマールが許容できるかどうかだが、多分できない。

 レイドや西部諸国を征服した征服国家になったからで、ファン王国復興という大義で戦争が出来るオーファンを放置できないからだ。

 

「この国を守るためにも、攻められたら容赦しないという姿勢は示し続けないといけないのです。

 今まではそれが騎士団でした。

 それを動けない策を軍師は考えているでしょうが、こうして新しい手を出す事で軍師の考える事が増えます。

 彼が策を考え続けて動けないようにするのが、この策の肝なのでございます」

 

 結局、この大砲は通り、オーファン騎士団内部に大砲部隊が攻城兵器部隊の中に編成される事になる。

 飛行船。ゴーレム軍団。ドノバの町の砲台にドラゴンなど立て続けの戦力強化にファンドリアとロマールは表向きは沈黙で応じたのである。

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