四大魔術師の塔を管理するついでにその周辺の森も管理下に置いているのだが、これはっきり言うと領主である。
ただ、上が王様というより、王様から委託された魔術ギルドから委託されたという訳で、実に中世っぽい。
「ちょっと、聞いているの?」
「聞いているわよ。なんで私が呼ばれるのよ?」
「そりゃ、こんなの押し付けられたんだから当然でしょう?」
四台魔術師の塔の部屋でマイシリカが睨み、私がやる気なさそうに目を逸らす。
管理というか統治をするという事は、報告が発生する訳で。
そこに私がアザーン諸島からハーフエルフ奴隷を連れてきた訳で、めでたくキャパオーバーになってしまった訳で。
「お金も食料も数年は暮らせる分渡したでしょう?」
「はいそうですかで上が納得すると思う?」
マイシリカの正論に私、撃沈。
魔宮の門と無限のバッグコンボで金も食料も莫大にあるのだが、はいそうですかと納得できないのも人という訳で。
オーファン王室とオーファン魔術ギルドからそのあたりをせっつかれ、とりあえず持続可能な環境になんとか落とす必要があった。
ため息をついて私はマイシリカの方を見て議論を始める。
「元々、この森ってマティアラとリーマの為に用意したものだし」
「ああ。今、あの二人王様相手に腰振っているわね」
マイシリカの突っ込みに目を逸らす私。
すっかり覇気が戻ったオーファン国王リジャールの侍女としてあの二人王都ファンにいることが多くなっているのだった。
まぁ、それでも戻れる時にこっちに戻っているみたいで、いつかはここを故郷として生活するのだろう。多分。
「で、全部の管理私にやってきているんですけど!!!」
「おーけーわかったから杖を置いて話し合おう」
マイシリカをなだめながら、書類を作ることに。
統治には書類が欠かせないので、私とマイシリカで話し合いながらこの森の方向性を固めてゆく。
「要するに村全体が娼館みたいなものよ。ここ」
「だから、意図的に産業とか作らなかった訳ね」
「そうすれば、ベレーヌの村と仲良くできるでしょう」
王都ファン、ドノバの街、ケイオスランドあたりに娼婦を送り出し、その金で生活物資をベレーヌの村から購入するというのがこの半分耳の森の商業サイクルの予定だった。
それが崩れたのは、私が連れてきた300人ものハーフエルフ女奴隷たちだ。
腰を振るだけの生活から普通の生活をするにも時間も手間もかかる。
住居はとりあえずゴーレムたちを駆使して作った竪穴式住居でなんとかし、無限のバッグよりしばらく食えるだけの食料もある。
とはいえ、この人数が持続的に暮らせるかという所を王宮や魔術ギルドは気にしている訳で。
「森の調査はしているの?」
「ダークエルフが潜んでいるかもしれないから、ベレーヌの村の狩人や冒険者に依頼を出して調べたわよ」
私の確認にマイシリカがこの森の地図を手渡す。
鹿や猪の存在確認。木の実や蜂蜜、畑に可能な土地確認。水もあるので畑も可能だろう。
「ここはゴーレムがたくさんいるから困らないけど、本来ならこれに馬や牛なんかの家畜用牧場用の草地が必要なんだけど、そのあたりはベレーヌの村が既に開拓していたわ」
「わざわざ喧嘩をする事もないでしょう。
このままでいいんじゃない。
で、持続可能な生活なら100人ぐらいが限界か……」
自給自足を前提とする村社会において、足りない物資があるという事は近隣との争いの種である。
それを、町の論理こと『足りなければ買う』で押し通すつもりだった。
このあたり、四大魔術師の塔の事件でベレーヌの村の領主に恩が売れたのが大きい。
「森の奥が未開拓地みたいなのよ。
水源の川を挟んだ向こう側になるけど、開拓をするなら残り200人を吸収できるんじゃない?」
「やめときましょう。それをすると手が回らなくなるのマイシリカよ」
「まぁ、私は嬉しいけど、残り200人どうするのよ?」
「私がなんとかするわよ」
オランのホープの村にある遺跡の地下都市の管理権は私が握っている。
魔力の塔の建設ついでに、この手の住人を住まわせるだけならなんとかなるだろう。
そんな事を思っていたら、マイシリカの声が低くなる。
「これは王宮からだけど、このあたりで盗賊や夜盗の類が集まっているらしいって。もちろん盗賊ギルドの連中じゃないけど、ダークエルフでもない」
「純粋にここにあるお宝狙いでしょうね。
王都で名をはせている娼婦たちに遺跡から得たお宝がここにあるなんて噂を聞いたわ。うまく盗んで国を出れたら大金持ちという考えでしょう?」
「噂があながち嘘じゃないのが困るのよ。
警備はゴーレムや竜牙兵に任せるけど、こいつら融通がきかないから人間は必要になるわよ。
ここのアイアンゴーレムは切り札として、ウッドゴーレム10体、ストーンゴーレム4体が使えるけど、平時に私が全部管理するのは無理よ。
あんたが連れてきた奴隷たちの中で使える連中は居る?」
この『使える』というのは『戦える』という意味だ。
ここに連れてきた際に、自己申告だがある程度は把握していた。
「使える連中は19人。
ファイターが5人、レンジャーが5人、シーフが2人で、シャーマンが7人。
駆け出しの冒険者程度の実力はあるでしょう。武器と防具は用意しておくわ」
なお、ベレーヌの村の兵がファイター5人でもちろん全員レベル1だ。
流れの盗賊団2-30人ぐらいなら排除できるだろう。ダークエルフが襲ってきたらその限りではないが。
王宮用とギルド用の書類を二人で手分けして書きながらマイシリカがぽつり。
「言っていい?これ、あなたが長じゃないの?」
「言わないでよ……自覚しているんだから……」