ただ買うと原稿を書く時間が。が……
「ゆっくり降ろしてくれ。
家畜を怯えさせて落とすなよ」
「荷物は馬車に積んでくれ。
ベレーヌの村に集めて、そこから半分耳の森に運ぶから」
今でもオーファンと西部諸国の一国タラントを結ぶ飛行船交易は続いており、四大魔術師の塔はその飛行船の灯台としての機能も持たせていたりする。
その結果、いろいろな物資がベレーヌの村に入って来やすくなっていた。
「これは凄いな……」
「今後の友好の証に差し上げますわ。サムソン卿」
サムソン卿がオラン産の魔法剣+1を見てうっとりとしていたのて、私は即座に献上することにいる。
いくらでも手に入るし。この程度の魔法剣は。
有り余る金を利用してこの飛行船をチャーターして手に入れた物資は、
魔法剣+1 15本
高品質槍 30本
高品質盾 10枚
高品質皮鎧 19領
高品質金属鎧 5領
高品質弓 14張
矢 200本
馬 6頭
牛 5頭
山羊 7頭
鶏 20羽
衣類 440着
etc.
初期開拓村にあるまじきお大尽アタックだが、王都ファンやタラントからだけでなくオランからも買い付けができたからこそのこの物量である。
裏返せば確実に夜盗たちが狙って来る訳で、すでにオーファンにて冒険者たちを雇い、討伐を依頼していた。
「王宮からの話だと、夜盗の人数は20人ほどらしい。
周辺の村で被害が出て騎士団が探しているがまだ見つかっていない」
サムソン卿が来ているだろう夜盗たちの情報を口にする。
ベレーヌの村は兵士が三人しかおらず、その士気も装備も練度も低い。
いざとなったら兵士たちだけでなく、村人を武装させて夜盗退治をしなければならないだろう。
今回、これらの装備のいくばくかはベレーヌの村に献上して装備の強化に使ってもらう予定である。
「馬と牛はすべて差し上げます。
金属鎧もサムソン卿が持っていた方がいいでしょう。
協力して夜盗を撃退できればと」
半分耳の森には沢山のゴーレムたちがいるが、その命令ができるのがマイシリカしかいない。
そして、牧草地はすでにベレーヌの村で開拓している以上、ベレーヌの村の牧畜を強化した方が手っ取り早いのである。
ベレーヌの村に馬と牛を渡す代わりに、山羊と鶏は全部持ってゆく。
この二つは森林地帯でも飼うのが比較的容易なのだ。
「その提供に感謝するが、いいのか?
隣の領主が言う言葉ではないが、これだけのものがあれば、未開地すら広げられるだろうに……」
サムソン卿の言い分はもっともだ。
望めば領主どころか、爵位すらもらって大領主すら夢ではないだろう。
ただそれではそこで終わってしまう。
ルーファスは王にはなれないのである。
「いいんですよ」
私はすっきりした笑顔で言い切る。
この国の国王にすら言った戯言だが、サムソン卿の顔色が変わる。
「ルーファスはいずれ王になる人です。
それをオーファンに閉じ込めるのはもったいないじゃないですか」
「その言葉、もしかして陛下にも言ったのでは……」
「言いましたよ。もちろん。
笑って許してくださいましたけど、ルーファスと試合がしたくてウズウズしているんですよ。陛下」
まぁ、不敬罪ものだが、冒険者上がりである上に、その武がこの戯言を放置していた、
ドキッとしたサムソン卿だが、彼も陛下を知っているだけに私の意図を察して苦笑する。
「冒険者というのは、いつまでも冒険者なのかもしれぬな……」
「得たものが最後は重しになるのですね。
名声も、栄誉も、富も最後は冒険者から冒険を取り上げる」
ロードス島でも大国となるフレイム王国。
その国王になる未来を邪魔したくはないのだが……いろいろな縁やしがらみによってそれが頓挫したら私が私を許せなくなる。
だからこそ、この一線だけは守らないと。
「すまん。話がそれてしまったな。
夜盗が来た際には村の男10人ばかりをこれで武装させるが、お主の所はどれだけ出せるのだ?」
「ファイターが5人、レンジャーが5人、シーフが2人で、シャーマンが7人。
ファイターとシーフに盾と槍を持たせ、レンジャーに後ろから弓で支援をしてもらう予定です。
シャーマンたちもレンジャーと並んで後ろから支援を。
あと、塔の管理者のマイシリカがゴーレムを率いるので並みの夜盗なら大丈夫でしょう。並みなら」
あえて強調する所に、この戦力の問題点がある。
マイシリカが討たれた場合、指揮する人間がいないのだ。
もし、指揮を代行できるとするならば、マティアラとリーマなのだが、この二人は王都ファンの王宮で王様相手に腰を振っているからこんな所に連れてくる訳にもいかず。
かといって、サムソン卿が指揮をした所で数が倍増する烏合の衆なので、半分耳の森の連中が崩れたらそれに巻き込まれる可能性も高い。
ぶっちゃけると、サイレンスの魔法でマイシリカの言葉を封じられただけでいろいろまずくなるのだ。
「だから、冒険者か。
使えるのか?」
「大丈夫でしょう。かつて雇った事もありますので」
かつて雇った羽根頭冒険者+αの連中である。
信頼できて、能力もそこそこあるのがよい。
万一にもマイシリカが使えなくなった際にも自ら動けるだろうという事で、大金を持って頭を下げて雇ったのである。
「ただいま……なんでいるの?ルーファスたち???」
四大魔術師の塔に物資満載のゴーレム馬車をひっ張って帰ってきたら、ルーファスたちが書類相手に格闘していた。
それを監督していたマイシリカがとてもいい笑顔で告げる。
「おかえり。ゼラ。
派手なお買い物もいいけど、それちゃんと報告した?」
「え?私のお金でかき集めたものをなんで報告……」
私の弁明は最後まで言えなかった。
マイシリカの笑みがとても怖かったからだ。
「派手に買い叩いた事が商人からの直訴で王宮に行ったらしくて、魔術ギルドに釈明を求めたのだけど、その報告なんてしている訳がないわけで……フォルテス導師ブチギレ。呼びに来た彼らにここの実情を素直に言ったら自発的に働き出してね」
「……おのれ軍師……」
そこまで軍師ルキアルの手は長くはないだろうが、私も一介の肉便器ではなくなったと認めざるを得ず、後日フォルテス導師から報連相の大事さを懇々と説教される羽目になった。
かくして、ルーファスたちは後の統治のいろはをこの半分耳の森で学ぶことになった。