ドノバの村はオーファンとファンドリアの国境沿いの村であり、領主が治める村として国境警備と防衛の最前線を担っていた。
それは、ターシャスの森に居るらしいユニコーン捜索の基地として使われている事を意味していた。
私たちは領主の館にて尋問を受けるが、この国出身のヨツやターシャスの森が故郷のスィートゲイルが居た事で、尋問は穏やかなものだった。
「なるほど。
仲間の里帰りのついでに、ロマールから雑貨を売りに来たと」
「はい。騎士様。
私たちはユニコーンに興味はありませんが、ファンドリアにて密猟団の誘いを受けました。
それを断って、こちらに逃げてきたのでございます」
私の会話を新領主イールナムと従者バートランドは黙って聞いていた。
顔を赤めてだが。
そりゃあ、マントの下はビキニアーマーですし。
「確認させてくれ。
密猟団のボスはディランで、人数は君たちが誘いを受けた時点で14人。
その中にはダークエルフが居たのだな?」
「はい。
確か四・五人居たかと。
彼らは森に入りユニコーンを捕らえる組と、ユニコーンが他の冒険者が捕らえて、ラムリアースに送り返す道中を狙う組とに分かれるのだと思います。
森に入るには人数が多すぎるし、森で活動するにはダークエルフの数は少なすぎます」
バートランドの確認に私はよどみなく答える。
憶測込みだが、当たらずとも遠からずの説明に二人は疑ってはいなかった。
おそらく、今日中には早馬でファンの王宮に送られるのだろう。
「なるほど。
そちらの情報提供に感謝する。
これは少ないが報酬として受け取ってくれ」
イールナムの声にバートランドがガメル銀貨の入った小袋を差し出す。
後で数えた所、300ガメル入っていた。
「もし、君たちがユニコーン捜索に参加したいというのならば、私から王宮への紹介状を書くがどうする?」
ここで少し私は考えるそぶりをする。
そして、申し訳なさそうにそれを告げたのだった。
「申し訳ありませんが、私たちの仲間の里帰りに便宜を図って頂けるだけで十分でございます」
そのまま言いにくそうに理由を告げる。
少し恥ずかしそうに、少し自然と誘惑する感じで。
「この姿で分かると思いますが、実は、私どもは体で路銀を稼いで旅をしております。
ディラン達に誘われた時も、彼らに体を売っておりました。
もし、ダークエルフに何かされていたのならば、騎士様たちの足を引っ張る事になりかねません。
里帰りが住むまでは、おとなしく隣のシュクバの村にて待つつもりでございます」
最前線だからこそ、情報漏洩や裏切りは困る。
それを自ら明かして、穏便にユニコーン探索を断ると、二人はそれ以上も勧誘はしてこなかった。
「そうか。
持ってきた雑貨は、雑貨屋で売るとよい。
店主のルファードに『少し高く買う』ように頼んでおこう。
君たちの情報提供、本当に感謝する」
この村の宿である『羊の蹄』亭は満室だった。
ユニコーン捜索の為に多くの冒険者が泊っている証拠である。
馬車を宿がある広場にある雑貨屋に止める。
そこの店主は騎士と共に居たチャ・ザの神官戦士だった。
「また会いましたね。旅の方。
領主様より話は届いております。
貴方がたがロマールより買い付けた雑貨を全部引き取らせていただきましょう」
ロマールで雇ったヨツ・ミック・サロウが片道500なので1500。
バジャー・スィートゲイル・カルダモンが往復1000なので3000。
それを差し引いて、馬車に積み込んだ雑貨は6000ガメル分。
相場より少し高めに買ってもらった結果、こんな価格になった。
「これらは9000ガメルで引き取りましょう」
「ありがとうございます。
あと、弓とかありますか?」
「猟師用の弓ならありますが?」
「それを3つください。矢つきで。
あと、ネットも3つ」
「構いませんが、旅の方はユニコーン探索はしないと聞いていたのですが?」
「ええ。
ですが、仲間が里帰りでターシャスの森に入るのです。
その装備をと」
なお、基本都会派エルフ・ハーフエルフだったので、慌てて勉強したというのは内緒だ。
ついでに言うと、里帰りするマティアラとリーマはエルフ語を覚えたという念の入りよう。
男の上で腰をふるだけではないのである。
閑話休題。
「あ。来た来た。
とりあえず乾杯しましょうか」
「「「「「乾杯!」」」」」
宿は取れないけど一階の食堂では食事がとれる。
という訳で、私たちが入ると、集まった冒険者たちで大宴会が始まった。
今、この宿屋に居るのはこんな面子である。
ゼラ
ルーファス
シャミナ
マティアラ
リーマ
ヨツ
ミック
サロウ
バジャー
スィートゲイル
カルダモン
クリシィ
ここまでが私たちのパーティである。
で、他の面子がこんな感じ。
スナイプ
ミランディ
バートランド
ルファード
イールナム
スナイプ以外ははこの村に家を構えているので私たちの宴に来た後は家に帰る予定である。
ミランディなどは、馬車寝をするならと家に来ないかと誘ってくれるあたりありがいのだが、同時に大地母神神官なので色々とややこしい事になりそうだから、出発準備を言い訳にお断りをしている。
今日はこの広場の裏手に馬車を止めて休むことになる。
ライス
チェペル
リーライナ
オスター
この宿に泊まっていた冒険者グループで全員兜や頭に鳥の羽をつけているのが特徴である。
本当の駆け出しで、ここにはユニコーン保護の為に着ており、明日にもターシャスの森に入るらしい。
で、酒を飲み、食事をしながら情報交換は行われた。
「なるほど。
里帰りですか。
こちらは明日森に入る予定です。
良ければ一緒に入りませんか?」
「いいんですか?
ユニコーン探索には協力できませんが、エルフの里までならばご案内しますよ」
羽根頭のリーダーであるライスと里帰りの案内役であるスィートゲイルが話をまとめていた。
一方でハーフエルフのリーライナは、他のハーフエルフたちと話で盛り上がる。
「迫害されていたんだ」
「ええ。貴方はどうなんですか?」
「私は迫害を受けなかったけど、外が見てみたくて飛び出したのよ」
一方で、ハーフエルフ組は話が弾む。
リーライナは迫害されなかったらしいが、とはいえハーフエルフあるある話とかは経験があるらしく、まぁ明日の里帰り組と羽根頭組は大丈夫だろう。
「では、密猟団は明日にはこの地に来るかもしれない訳だ」
「彼女たちが逃げ込んだことは奴らも分かっているだろう。
ここまで来ずに、ターシャスの森に入るかもしれん。
むしろ、背後に回るだろうダークエルフの方が気になる」
「早馬を出したので、王宮の方でも対処はしてくれると思う」
あくまで宴会という形にして情報を皆に共有させようというのが、わざわざ領主が出向いた理由なのだろう。
なお、この宴会も領主持ちになっている。
さりげなく恩を売られているな。これは。
羽根頭冒険者は『ユニコーンの探索』でなく『神官戦士が六人』のサンプルキャラだが、年齢を確認したら出せそうなのでユニコーン探索の依頼を受けた形にしている。