翌日。
私たちは分かれて、それぞれの目的地に向かう。
ターシャスの森 里帰り組
マティアラ
リーマ
ミック
サロウ
スィートゲイル
ターシャスの森 ユニコーン探索組
ライス
チェペル
リーライナ
オスター
ドノバの村警戒組
イールナム
バートランド
ルファード
ミランディ
スナイプ
従兵8人
シュクバの村への移動
ゼラ
ルーファス
シャミナ
ヨツ
バジャー
カルダモン
クリシィ
私たちは命令されてはいないが、ユニコーン探索の予備兵力扱いである。
ディランがターシャスの森に入るのならば里帰り組が危害を加えられないし、良くない輩がユニコーンを奪ったのならば、邪魔ぐらいはしてやろうという意気込みである。
「で、具体的には何をする訳?」
ルーファスの隣でクリシィが私に向けてきつめの声で質問する。
元が密猟団なので逃げても捕まるのが分っているし、ルーファスから離れたくはないのだろう。
一応こちらの指示には従っているが、装備は持っていたハード・レザーなので堕ちてはいないのだろう。多分。
「助けてくれ!!」
声が聞こえたのはそんな時だった。
どうも誰かが戦っているらしい。
「どうする?」
そんな事を言いながらルーファスは腰の剣に触れる。
戦う気満々らしい。
「何かの縁でしょう。
助けるわよ!」
声の方に向かうと、一人の吟遊詩人が木に登って、ゴブリンたちから逃れていた。
その木にゴブリンたちが群れていた。
「ゴブリンは何匹!?」
私の声にヨツが弓を放ちながら確認する。
森の外れなので、ヨツの弓がゴブリンの一匹に当たり、彼らの警戒がこちらに向く。
「ゴブリンが8匹!
ホブゴブリンが3匹!
ゴブリンロードが1匹!!」
ルーファスが突っ込み、クリシィが突っ込む。
「スリープ・クラウド!」
カルダモンが魔法を唱え、二匹のゴブリンと一匹のホブゴブリンが寝る。
私がラージシールドを手に持って前に出ようとして……
「何しているんです?ゼラ姐さん?」
マントを押さえられて、真顔でシャミナに突っ込まれる。
というか、バジャーが呆然とした声で確認する。
「お主、魔法使いと聞いたが?」
「できるけど、前衛が足りないのよ。
前に出ないと囲まれ……」
「いいから!ゼラさんもスリープ・クラウド撃ってください!!」
「……はい」
冒険者としては経験があるカルダモンに怒られて、呪文を撃つことにした。
別の呪文なのだが。
「ファイヤーボール!」
唱えた呪文はゴブリンの群れの奥で炸裂して、六匹のゴブリンが爆裂音と共に宙に舞った。
その一撃でゴブリンたちは森の奥に逃げてゆく。
「え?」
「え?」
「え?」
シャミナ・バジャー・カルダモンが私の顔を見る。
放ってから、私は自分の魔法の威力に驚いていた。
「ゼラ姐さん。何です?あれ?」
「何ですってファイヤーボール……」
白目のシャミナの視線が痛い。
バジャーの呆れ声が耳に届く。
「あれで前に出る必要はあったのか?」
「いや、元々貴族の生まれとして前に……」
ぽんと肩を叩かれる。
そして、そのまま掴まれた握力が結構きつい。
「……ゼラさん。
正座」
ルーファスとクリシィが逃れていた吟遊詩人を助けている間、私は三人の冒険者たちのお説教を正座で受ける事になった。
「原因はこれね」
正座させられたので地味に足がしびれるのを我慢して、私は原因を指摘する。
それは、吟遊詩人が持っていた竪琴で『名手の竪琴』と呼ばれるマジックアイテムである。
問題は、この竪琴についている鈴で『妖魔の鈴』という妖魔を呼び寄せるこちらもマジックアイテムで、この二つが対になっているのが問題で、離すと両方の魔法が使えなくなる。
「なんてこった!
とんでもない物を拾っちまった!!
よかったら、あんたたちにあげるよ」
ヨツとカルダモンが知らないものをあっさりと鑑定する私。
そのせいか、カルダモンとバジャーとシャミナの視線が凄く痛い。
「こんなのどこで手に入れたのよ?」
「この先に本当の持ち主だろうな。
吟遊詩人が、多分あのゴブリンに襲われて死んでいた。
埋めてやった時に、これを見つけてな。
埋葬代としてもらったんだが、そんな呪いの品ごめんだね」
クリシィの質問に吟遊詩人はそう言って、ドノバの村に去っていった。
彼はユニコーン探索の顛末を歌にしたくてあの村に向かうつもりなので、領主のイールナムにゴブリンロードが出た事を伝えてもらおう。
「で、だ。
俺としてはこのままゴブリンロードを放置するのはよくないと思う」
「そうね。
魔法については大丈夫でしょうし」
クリシィの言葉にはしっかりと棘があった。
ルーファスはめずらしく私が責められているで苦笑を隠そうともしない。
「じゃあ、ゴブリンロードを掃討しましょうか」
「……ゼラさん。
貴方の魔法の知識について終わったら色々聞かせていただきたいのでそのつもりで」
カルダモンには完全にばれたっぽい。
わざわざ使い魔を使わないでおいたのになぁ……
ゴブリンたちは廃屋っぽい所を拠点にしていた。
その間、ゴブリン9匹とホブゴブリン6匹が掃討された。
安全を確保して、玄関に入る。
「……ただいま、留守にしております……」
「っ!?」
「待った!
それを傷つけないで!!」
警戒する皆の前に手を出して攻撃を止めさせる。
私の目の前には、綺麗な侍女らしい絵が飾ってあった。
確信した。ここ。あの遺跡だ。
「これも古代魔法王国時代のマジックアイテムよ。
害はないし、そこそこ高値で売れるわ」
ありがたい事に、絵を切り裂く人間はいなかった。
絵をひとまずそのままにして、次の部屋に進むと、たどたどしい共通語が我々に届いた。
「どうする?」
「話だけは聞いてみましょう」
という訳で、私はゴブリン語を駆使してゴブリンロードと話すとこんな感じである。
彼の名前はギュラランといい、ターシャスの森に巣を構えていたのだが、ゴブリンシャーマンとの間で仲間割れが勃発。
彼と彼を支持する一族は敗れて森を追われた所であの竪琴に誘われたらしい。
「シャーマンは儀式を行い、我らの神を復活させる。
そのためにエルフをさらう。
体痛い。腹減った。助けてくれ。なんでもする」
「……だそうよ」
「殺さないんですか?」
シャミナの質問に私は迷いを口にした。
「気分の問題ね。
殺してもいいけど、ターシャスの森でゴブリンシャーマンが邪悪な儀式を行おうとしている。
そして、そんな儀式にうってつけのユニコーンが、今、あの森に居るのよ」
つまり、マティアラとリーマたちが危険に合うかもという事だ。
こいつを見逃せば、迷うよりストレートにゴブリンの巣を突ける。
「貴方たちの巣の場所を教えなさい。
そして、ここには戻らない事。
食べ物をおいて行くけど、明後日までにはここから去りなさい」
「ゼラさん。
ゴブリン語まで話せるんですね……」
カルダモンの呟きを私は無視した。
ゴブリンロードとの取引を終えて、私たちは遺跡から出る。
「さてと、入るには許可証が必要で、往復すると早くて一週間か。
ゴブリンたちがそれまで儀式をしないとは思えないわね。
ルーファスたちは、ドノバの村に戻って許可をもらって入ってきて頂戴。
私は先に行っておくわ」
とりあえず私は『名手の竪琴』と『妖魔の鈴』を持って、シャミナにマントを引っ張られる。
「ゼラ姐さん。
何をするか知りませんけど、ついていきますからね」
「何をするか知っているの?」
「知りません。
けど……」
シャミナの耳打ちに私は苦笑して一言。
「負けたわ。
しっかり捕まっていなさい!」
そして、私は呪文を唱えた。
「フライト」
私としがみついたシャミナはそのまま空を飛ぶ。
もう私たち以外に会話を聞く人はいない。
「ずるいですよ♥
ゼラ姐さん。ゴブリンたちに嬲られに行くつもりなんでしょう?」
「もぉ……多分百匹以上に輪姦されるんだけど?」
「あはっ♥じゃあ、マティアラとリーマも連れて行かないとすねちゃいますよ。二人とも♥」
すっかり頭が色で狂っているシャミナに苦笑しつつ、己の下半身が熱くなるのを私は自覚していた。
そう。ゴブリンたちの肉便器になるのが楽しみと考える私も十二分に駄目だなと思いながら、私たちは空を飛び続けた。
なお、ほぼ裸なのでかなり寒かった。
今回のイベント
『神官戦士が六人』冒険後の展開の一つ「鈴を持つ旅人」
『ユニコーンの探索』より「追放された王」
『つかめ!明日への大勝利』より「踊る!ゴブリン御殿」