「迷宮?」
それはエルフの里で足止めをされて一週間ほど経った時の事。
オーファン王国の混乱は未だ収まらず、私たちの体をただ抱くのも飽きてきた頃合いに私がなんとなしに言ってみた言葉にクリシィが乗ってきた。
なお、ロマールの遺跡絡みを知っているルーファス・シャミナ・マティアラ・リーマは露骨に顔をしかめている。
「近くに未発掘の迷宮があるのよ。
どうせ暇ならば行ってみない?」
「ゼラ、一応確認するが……」
ルーファスが顔をしかめながら言うので私はあっさりとバラす。
事、ここに至ってこのあたりの隠し事を隠す必要もないだろう。
もっとやばいのは隠しているし。うん。
「そう。
実は、ロマールの遺跡と同じで候補だったやつ。
結局、ロマールの方を選んだんだけどね」
「駄目です!ゼラ姐さん!」
「あんなことしないでください!!」
「私たち、ゼラ姐さんに何かあったら……」
言ったとたんに、シャミナ・マティアラ・リーマにしがみつかれる。
他の面子も何やらかしたこいつらという顔をしている。
「何をやったんです?師匠?」
皆を代表してカルダモンが尋ねる。
彼は抱いている時に私から魔法絡みの事をうまく聞き出した結果、いつの間にか押し掛け弟子になっていた。
なお、ルーファス以外に私を正座させられる人間として評価されている。
「姐さん、レイスに体を渡そうとしたんですよ」
「師匠。正座」
ここで正座する私も私なんだが、最近分かったが、私はものすごく押しに弱い。
という訳で、ロマールの冒険を暴露させられ、参加者以外皆ドン引き。
「そこまでして知識が欲しいのかしら?魔法使いって?」
「分からないではないですよ。
古代魔法王国の生きた魔法使いから教えてもらうなんて、魔法使いにとって最高の勉強です。
我々はあの時代の魔法をまだ完全に復元てきていませんから」
羽根頭のリーライナが呆れた声を出し、それを同じ羽根頭の魔法使いであるチェペルがフォローする。
そこにヨツが突っ込みを入れる。
「けど、ゼラは空を飛べるほどの魔法使いなんだろう?
そんな凄い魔法使いが欲しがる呪文って何なんだ?」
キッと睨むカルダモン。
こいつオランの賢者の学園に入っていながら、そこから出た冒険者なので地頭が良いのが凄く厄介だったりする。
「皆さん知ってますか?
空を飛べる魔法はオランの賢者の学園でも導師や賢者クラスでないと使えないんですよ」
「……そろそろ足がしびれてきたんだけど……」
私のSOSは無事に黙殺された。
皆の視線がとても痛い。
「そういえばこの人、竪琴の鑑定とかもしておったな」
「魔法の絵についても鑑定しましたね」
「で、竪琴は一度泉に沈めたのに、また見つけたのよね。
魔法を使って」
バジャー・カルダモン・スィートゲイルの言葉の節々に乗る棘が痛い。
私は嘘泣きをしてごまかそうとした。
「みんなひどい!
私は、みんなの暇つぶしの為に、遺跡探索を提案しただけなのに……」
私の嘘泣きをルーファスは一言で切り捨てる。
「つまり、ゼラにとっては未発掘遺跡は暇つぶし程度なんだな?」
「……」
それでも、みんながこの探検に乗ったのは、暇だった事と未発見遺跡という興味があったのが大きいのだろうなぁ。きっと。
「あった!
ここ、たしかに不自然な窪みがあるわ!!!」
マティアラの叫びに皆が集まる。
元ゴブリンの巣は死体が片づけられていた。
そこの調査とかもまだしておらず、探索はゴブリンが持っていたおたからもついでに見つける展開となっていた。
魔晶石が六個。
ガラクタも1500ガメル相当のものがあった。
竜の牙も4つ見つかり、ここが元遺跡であるというのを確信する。
まぁ、そんな遺跡の中で私たちはひたすらゴブリン相手に腰を振り続けていたのだが。
話がそれた。
ランタンでは見つけられない窪みは私が洞窟の隅々までライトをかけた結果である。
サロウとバジャーとオスターのドワーフ三人がかりでやっと開ける事が出来た。
「一応ここからは危険な事があるので気を付けてね」
私の確認に皆が頷く。
数は力とはよく言ったものだ。
これだけ数が居ると、レンジャーが居なくて森で迷うなんて事もないし、シーフが居なくて遺跡探索で罠とかを調べる事ができないなんて事もない。
万一の為に、食料も水も持てるだけ持ち込んでいた。
それでも全滅するのが未発見遺跡というものの恐ろしさなのだろう。
皆が遺跡の中に入ると、扉が閉まる。
閉じ込められたとパニックになる前に、前方に半裸の女性の幻影が姿を現した。
(長い間待っていた。もう帰さない)
そんな下位古代語が響く。
カルダモン・ミック・チェペルがぎょっとするが、私はまったく動じずに先に進む。
奥に潜るように進むと、遺跡は円状の通路になり、五個の外側の扉と一個の内側の扉があった。
警戒しつつ、内側の扉の前で休む。
「罠はないみたいね」
「同じく」
シーフ技能を持つマティアラとクリシィが共に確認する。
リーライナが扉に書かれた下位古代語を読む。
「『二人の禁断の愛の為に』……って何これ!?」
「そのままの言葉よ。
ここは、とある魔術師たちの禁断の愛の場所。
そこから先は、この迷宮の主に説明していただこうかしら?」
私がそういうと、先ほどの半裸のレイスがすっと姿を現す。
皆が戦闘態勢に入る中、私は手を出さないように命じて、レイスの前に恭しくお辞儀をしたのだった。
「貴方様の眠りを覚ました事をお詫び申し上げます。
ディアネー様」
私の下位古代語に、ディアネーと呼ばれたレイスは驚きながらもその礼を受け入れたのである。
魔晶石のMP
9 10 17 15 9 7
遺跡
『ふたりのラビリンス』より