※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

28 / 140
オーファン魔術ギルドでの公演

「まず、魔法という概念についてだけど、上位古代語及び下位古代語の違い……」

 

 オーファン魔術ギルドの講堂で私は講義を行う。

 ただの肉便器がどんな講義をするのやらと始め蔑みの目で見ていた魔術師たちも、講義が進むにつれて目の色が変わってくる。

 そりゃそうだ。

 古代魔術王国で貴族階級だった死霊魔術師の記憶を継いでいるのだから。私は。

 私のターシャスの迷宮管理については魔術ギルドだけでなく王国内部からも異論が出たらしく、だったらその迷宮の管理にふさわしい証拠を見せろという事でこの講義と相成った訳で。

 最高導師カーウェスにフォルテス導師とハーフェン導師、王宮からきた何人かの人間はファンドリアでもらったドレスを着た上にアンバーローブを羽織って講義をする私を見てなんとも言えない顔になったのは言うまでもないだろう。

 なお、ローブの下は裸でストリップでもしながら講義をしようと冗談を言ったら、自称弟子のカルダモンに泣いて止められた事も付け加えておく。

 

「古代魔法王国において、永遠というものはそれほど難しい技術ではありませんでした。

 むしろ難しいのはその永遠の維持であり、そのためには莫大な魔力が必要になります。

 魔力の塔の建設理由はそういうものの維持から始まったものなのです。

 ……まぁ、ここにいる皆様はご存じの通り、古代魔法王国の最後はその魔力を派手に使っての自滅だったのですが」

 

 さてと、ここからが本番である。

 一旦会話を切って周囲を眺める。

 あ。ルーファス発見。理解しているのか顔が真剣である。

 私の身内枠で来ているシャミナ・マティアラ・リーマあたりは寝てやがるし。まぁ興味がないとそんなものである。

 で、一番前の席で一心不乱にメモをとっているのがカルダモンとミックと羽根頭冒険者のチェペルの三人。

 ユニコーン護衛の任務を受けていた羽根頭冒険者の彼が何でここに来ているかと言うと、そのユニコーンがターシャスの森からここファンに運ばれたからである。

 オーファン側でユニコーンを奪おうとした輩が出た事でラムリアースの不信感は拭えず、羽根頭を始めとした冒険者にラムリアースから来た森林衛視隊が出て王都ファンを経由してラムリアースに向かう事になっており、そのファン滞在時にこの講演を行ったという訳。

 そんな理由からか、ラムリアースの学園の生徒もユニコーン絡みの増援で来ているらしい。

 

「私が継承した記憶では、ディアネー嬢は古代魔法王国の名門の家系の当主でした。

 その家門の魔術は死霊魔術で、秘奥まで教えられていたそうです」

 

「死霊魔術だと!?

 遺失魔法が多いあの!?」

 

 あ。ラムリアースから来た学園の若者が食いついた。

 たしか、アルミンとか言っていたな。彼。

 

「ええ。

 ただ、私、大地母神の信徒にて、あまり使いたくないんですよ。

 とはいえ、私の信仰と知識は別物です。

 今は気が向いた時ですが、彼女の知識と歴史をまとめて本にしようとは思っています」

 

 私は壁に椅子を立てかけて椅子に座る。

 小さく呪文を唱えると、ふわっと浮遊した感覚に捕らわれる。

 講堂の全員がざわめく中、幽体となった裸の私は皆に一礼して見せた。

 

「死霊魔術の秘奥義の一つ、レイス・フォームです。

 これでもまだ、疑う人はいますか?」

 

 すっと体に戻る。

 あの感覚と解放感はまずい。

 多くの魔術師たちがレイスになったが、下手すると望んでなった人もいるかもしれないな。

 

「その本は何時できる?

 いや、その魔法は覚えられるのか!?

 だったら、教えてくれ!!」

 

 おーおー。

 アルミンが興奮して取り押さえられている。

 そんな醜態を見なかったことにして、私は優雅に一礼して見せたのである。

 

「ご清聴ありがとうございました」

 

 

 

「君は、本当にゼラニウムなのかね?

 もしかして、ディアネーではないのかね?」

 

 醜態を晒したアルミンは気づかなかった事に気づいた最高導師カーウェスがこっそりと私を呼んでそんな質問をした。

 記憶だけで魔法は使えない。

 それの意味する事は二つしかない。

 一つは、ディアネーが私の体を乗っ取っているという形。こっちの方がある意味わかりやすいだろう。

 もう一つのケースをカーウェスは危惧したのだ。

 つまり、私が元々の高位魔術師であるという事に。

 

「さあ?

 ディアネー嬢の魂と融合した時点で私は純粋な意味で私ではなくなっていますし」

 

 私はわざととぼける。

 カーウェスはそれ以上は突っ込んでこなかった。

 

「君がまとめようという本は何時できるのかね?」

「それこそ、気が向いたらですよ。

 あのアルミンとかいう魔術師に何か言われましたか?」

「『その本を頂けるならば、ラムリアースとオーファンの外交問題を無かった事にしてもいい』とな」

 

 その物言いに思わず苦笑してしまう。

 いくら魔法王国ラムリアースの学園の人間でも、二国間の外交問題を解決する権限などない。

 だが、オーファンはユニコーンがらみの失態でそのあたりを突っ込める空気ではなかったのも事実である。

 まぁ、そのあたりを分かって、わざと炸裂させたのだが。あの話を。

 それだけ、実際に持っている私の手札が大きくなることを意味しているのだから。

 

「君が一体その魔法を誰から学んだのか今は問わない事にしよう。

 だが、覚えておいてほしい。

 古代魔法王国は、その魔法の力によって滅んだという事を。

 君が、正しき道を歩むことを私は祈っているよ」

 




アルミン
 『走れ!神秘の大森林』の敵役。
 学園入りたての学生として登場。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。