※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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ここから本格的に歴史を歪めてゆく予定


青き像の眠る丘 その1

「おやじ。久しぶりじゃないか!」

「こっちで活躍していると聞いてな。

 行商ついでに顔を見に来たのよ」

 

 ロマール『奇跡の店』の親父はそう言って、ドノバの酒場でルーファスと盃を交わした。

 こちらでの冒険譚ついでにあの親父に私のアンバーローブを見せると、おやじの顔色が変わった。

 

「こりゃすごい。

 これで城が建つかもしれんな……」

 

 他にもこちらでの冒険譚を語り酒を交わしていたのだが、おやじが本題に入る。

 

「実を言うとだな。

 少しロマールから離れたほうがいいと思って離れたのが真相でな」

 

「戦か?」

「多分」

 

 ルーファスの顔が厳しくなり、私も酔いを覚ます。

 それは、明確な戦の予兆だった。

 

「穀物を始めとした食料が値上がりしつつあってな。

 こちらへの荷留も起こりつつある。

 まだ影響は無いみたいだが、備えたほうがいいかもしれんぞ」

 

 ロマールの穀物の輸出先はファンドリア、ラムリアース、そしてここオーファンである。

 その供給が止まる場合、ファンドリアを挟むラムリアースとオーファンは荷留が直撃することになる。

 もちろん、止まった所で直ぐに飢える事はないが、大規模な軍事行動は行えなくなるだろう。

 

「次に市場から武器と防具が消えた。

 質の悪いショートソードですら、今は高く売れる始末だ」

 

 これほど明確なサインはないだろう。

 装備更新を誰かが大規模にやっているから武器と防具が消えた訳だ。

 そんな大規模にやる組織は騎士団クラスの戦力を持っているとしか考えられない。

 

「で、最後。

 ロマールだけでなく、レイドの傭兵団が新規契約を止めた。

 多分王宮が雇ったのだろうよ」

 

 これが決定打。

 ロマールは主力騎士団の他に傭兵団も用いる事で大戦力を用意できる。

 問題は……

 

「問題は、何処を攻めるかだな」

 

 私の考えている事をルーファスが口にする。

 ロマールは自由人の街道の中央に位置しており、西部諸国、ファンドリア、ザイン、ドゥーデント半島と四方に伸びている。

 私が知っている知識だと多分ドゥーデント半島への拡大なのだろうと思っていた。

 

「西部諸国じゃないかと噂しておる」

 

「え?」

 

 おやじの言葉に私は思わず声をこぼす。

 それを気にしないおやじは、酒をあおりながらその話を続けた。

 

「ここ最近、オーファンとファンドリアの仲が悪化しておるだろう?

 最初はファンドリアに加勢すると思っていたのだが、騎士団まで動くとなると違うと思ってな。

 ザインは国が安定しているから外し、ファンドリアを外すと西と南しか残らんだろう。

 ドゥーデント半島への拡大も騎士団が動く必要があるかと思えばな」

 

 オーファンとファンドリアの関係悪化については、その中心に居たのが私達である。

 ラムリアースを巻き込んだユニコーン騒動に、ターシャスの森で発見された遺跡のゲートの存在によって、オーファンはその最前線になったこのドノバを城塞都市化しようとしていた。

 城壁まではまだできていないが既にファンドリア方面に向けて空堀と柵がつくられ、建設ラッシュで多くの人間がこの地に集まっていた。

 そんな中には、ゲートの先を探検したい冒険者たちも含まれる。

 勝手にターシャスの森に入って猟師やエルフの迷惑になりつつあり、その対処は私に任せられて頭の痛い問題になっていた。

 

「西部諸国には『タイデル』の盟約という同盟がある。

 何処かが攻められたら、皆で助けるというやつだ。

 攻めるとしたら、ベルダインだろうな。

 根こそぎ動員して五千。各国からの援軍を考えると一万は届くだろう。

 ロマールと戦える兵ではあるが……」

 

「各国の援軍というのが厄介ね。

 各個撃破されるというか、それを狙うんでしょうね」

 

 ルーファスの言葉に私が付け足す。

 とはいえ、ここまで歴史が歪むかという私に、飲んでいた酒場の冒険者が現実を突きつける。

 

「そういえば知っているか?

 西部諸国でタイデルの盟約が発動したってやつ」

 

「ああ。

 ヤスガルン山脈の端からゴブリンが大挙してタイデルに押し寄せたんだろう?

 たしかゴブリンロードギュラランって奴に率いられた数千のゴブリンを排除するために西部諸国は応援の兵を出したとか」

 

「ゴブリン討伐に西部諸国は大規模な懸賞金を出して冒険者を集めているらしい」

 

「悪くないな。

 そっちに行ってみるか」

 

 たしかに、あのゴブリンロードだろう。

 そして彼は約束を守った。

 そんな彼に率いられたゴブリンたちが西部諸国に侵入し、タイデルの盟約が発動。

 西部諸国がタイデルの方に兵を向けたのだ。

 大規模動員ができるロマールがそれを見逃す訳もなく。

 

 

 

 

「ゼラ。

 気にすることはないさ」

 

 帰り道。

 私にルーファスが声をかける。

 私の情けが大乱の引き金となった事を心配しているのだろう。

 その心遣いは嬉しかった。

 

「違うのよ」

 

 口に出して思考をまとめる。

 ロマールにとって西部諸国各個撃破のチャンスが目の前にあった。

 その時、そのロマールを止められる存在はこのオーファンしか居ない。

 オーファンが西部諸国を助ける行動に出た時、ロマールがそれを放置するか?

 そして、都合がよい事にロマールと仲が良いファンドリアは、オーファンと仲が悪い。

 

「多分、ファンドリアが何かしてくるのでしょうね」

 

 それだけを私は口にした。




シナリオ『ソード・ワールドRPGシナリオ集5 闇からの脅威』より。

ゴブリンの大軍は『熱血爆風プリンセス』五分間シアターの『踊る人形たち』より。
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