「ゼラ姐さん冒険に出るんですか?」
「ええ。
みんなはどうする?」
ターシャスの遺跡管理とドノバの城塞都市化とオーファン魔術ギルドの講義の掛け持ち生活が一月ぼと経ち、次の冒険の準備をしている最中にみんなに意思確認をしてゆく。
「私はついていきますよ」
「私も」
「当然じゃないですか」
今やドノバの街の有名娼婦となった三人、シャミナ・マティアラ・リーマの意見である。
知ってた。
「俺も行くぞ」
「私も」
「ルーファスが行くなら、ついていくしかないじゃい」
ラダとジーンも参加。
クリシィもルーファスが来るので参加と。
「少し私は勉強します。
遺跡の記録もまとめたいですし」
カルダモンは不参加。
フェリーナが来たことで、師事しながらターシャスの遺跡がらみの資料を纏めることに。
なお、遺跡にあるゲートの調査も始めることになり、その選考偵察メンバーを私の一存で選んでいた。
羽根頭冒険者と先の冒険で知り合った面子である、ヨツ・ミック・サロウ・バジャー・スィートゲイル五人である。
「けど師匠。彼らに任せて大丈夫なんですか?」
「大丈夫と思うわよ。
あの手の調査で一番大事なの何だかわかる?」
カルダモンの質問に私は苦笑して質問で返す。
カルダモンは首をひねってしばらくして口を開いた。
「調査能力?」
「はずれ。
まずは帰ってくる事。
その後で、調査などを行うの。
彼らならば、無理をして帰ってこなくなる事はないでしょうね」
ぶっちゃけると炭鉱のカナリアである。
その安全性を確認しないときちんとした調査はできないのだ。
そして、そういう安全性を確認するうえでも、羽根頭冒険者たちは信用があった。
「大変だ!」
そんな声がオーファン魔術ギルドに聞こえてきたのは、昼過ぎ。
その声が王都ファンで木霊する少し前の事だった。
「大変だ!
ロマールが西部諸国に攻め込んだ!!」
戦争には大義名分が必要である。
西部諸国がタイデルにゴブリン連合と決戦をしようとしていたという隙があったのは否定できないが、攻め込む大義名分がないと後々苦労するのも事実である。
それをロマールはこんな形でその大義名分を用意した。
『ベルダイン王国建国王の転生体が現れ、ロマール王国は彼を本物と認め、その復位を支援する』
転生魔法があるこの世界での厄介な所は、こういう過去からのぶん殴りに対して人間社会が対応できない所にある。
そして、さらに厄介なのが、ロマール王国がレイド帝国を併合した事で、レイド帝国の歴史や過去からその転生体の知識が本物であるという事がわかったのも大きい。
かくして、押しとどめる事無く、ロマール王国はベルダイン王国に宣戦布告。
事がベルダイン王家のお家争いという事もあって、西部諸国はその対応に揺れることになる。
「……居ますね。
ロマールの大軍が。
これは傭兵団でしょうね。主力の騎士団は見えないという事は、あくまで傭兵で支援という建前かもしれませんね」
当然遠見の水晶球を使える人間が居たというか私なので、そのままそれを使って情勢確認を。
この使用には最高導師カーウェスだけでなく、オーファン騎士団長ネフェルもこれを見ている。
映しているのはレイドの街で、大軍がベルダインに向けてまさに出陣しようとしていた。
「兵の数はざっと見て、数千という所か。
騎兵が見えないのが救いだな」
「西部諸国は慌てて兵を戻すでしょう。
問題は、ベルダイン救援にどれだけの国が動くかですね」
困ったことに、このフォーセリア世界に実例があるから困る。
ロードス島で発生した魔神戦争。モスで発生した竜の盟約の不発動である。
魔神戦争からおよそ三十年ぐらい経過しているので、そのあたりがアレクラストに流れている可能性も否定できない。
「ガルガライスは全力で支援するでしょう。
ベルダインが滅んだら詰む場所に彼らの国はあります。
ザーンも支援するでしょう。ベルダインが滅んだら次は彼らです。
タラントは一応細道が繋がっているので、少しは支援するかもしれません」
そこで私は口を閉じる。
多分そこまでで止まるからだ。
厄介なのがドレックノールで、あの国の盗賊ギルドがザーンの盗賊ギルドと暗闘をしていたのを知っているだけに、ベルダイン支援をどこまで本気で考えるのか私でもわからない。
「陛下にこの事はご報告するが……」
ネフェル騎士団長はまだピンと来ていない。
という訳で、私は懸念を伝える。
「何、他人事のように言うんですか?
ロマールから見て、西部諸国に介入できる力があるのはこの国じゃないですか。
ファンドリアはロマールの要請に基づいて仕掛けてきますよ。
ターシャスの森を奪う絶好の機会ですから」
ベルダインほどではないが、オーファンもピンチではある。
何しろ同盟国ラムリアースとの間でユニコーンで波風が立ったばかりである。
ファンドリアは、全力でオーファンを殴れる格好のチャンスを手にしているのだ。
「最高導師。
あとはお任せします」
「導師ゼラニウムよ。
お主はこれからどう動くのだ?」
その声と顔には有無を言わせぬ凄みがあった。
だからこそ、私は敬意をもって答える。
「この国にはそれ相応にお世話になっていますからね。
恩返しぐらいはしておこうかなと」
元ネタ
『熱血爆風プリンセス』 五分間シアター 『王の記憶』