※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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設定回


蒸気機関その後

 蒸気機関の設計図についてだが、その使い方を囁いた結果食いついた人間が出たのは言うまでもない。

 オーファン第二の都市グードンの商人ギルドである。

 蒸気機関による動力を用いた鉱山からの鉱物の取り出しこそが現状こいつの一番賢い使い道である。

 グードン商人ギルドは私の囁きに乗ってドワーフの職人を送り出し、試作品はゼラ教室総出で設計図よりも安全性を持たせて完成した。

 オーファン魔術ギルドの庭で行われた実験は完全に成功しており、遠目から魔術師や計画に参加したドワーフなどが見つめていた。

 

「何で爆発しないんだ?」

 

 発明博士ジョン・ペインズの事を知っていて、招いたオーファン第一の商人となったアウザール商会の当主が呆然と呟く。

 私はそれを聞いて実にわざとらしく苦笑して見せた。

 

「むしろ、私からすればなんでこれを放置していたか不思議でしょうがないのですけどね。

 『爆発する所まで持って行った』んですよ。魔法を使わずに」

 

 蒸気機関の構造上、爆発するという事は蒸気に容器が耐えられない事しか考えられない。

 つまり、容器の強化ができるのならば、この蒸気機関は稼働するのだ。

 

「何よりもこれの素晴らしい所は、魔法を一切使っていない点です。

 つまり、知識と技術で魔法使いを超える第一歩になるでしょう」

 

「気に入らんな」

 

 招いたフォルテス導師は不機嫌そうに不満をぶちまける。

 ある意味、魔法の否定とも受け取れるからだ。

 

「フォルテス導師がそう思われるのは当然です。

 我々魔術師は世界を手にしましたが、古代魔法王国の滅亡と共にその座を明け渡しました。

 魔法の復権も大事ですが、我々はこの時代を生きる魔術師という事をお忘れなきよう」

 

「それも理解しているから、こうして出向いて愚痴を言っておるのだ」

 

 フォルテス導師と私の関係は実は悪くはない。

 気に入らないだろうが、私が古代魔術王国の魔術師であるディアネーの魂と融合して知識を継承し、ミスリルゴーレムを始めとした遺産を発掘しているのが理由である。

 今や、オーファンの魔術研究は魔法王国ラムリアースから留学生を招くぐらいに発展しようとしていた。

 そういう流れの中の中心にいる私をフォルテス導師は悪く思えない。

 

「この素晴らしい技術をいくらで売っていただけるのだ?」

 

 話に割り込む形で、グードン商人ギルドのラーセンが口を開く。

 使い道を提示していたので、彼にとっては金の生る木なのだが、招いたオーファン一の豪商アウザール商会にこれを掻っ攫われるのを警戒しているのだろう。

 

「知識と技術は止めようがないんですよね。

 ただで差し上げますよ。

 まぁ、お願いをする事があるかもしれませんが、その時に」

 

 この世界に特許の概念は無いだろうからなぁ。

 蒸気機関の成功は広がってゆくだろう。

 次に使われるとしたら西部諸国のゴーバやタラントあたりだろうか。

 

「ただ、これの普及については莫大な資金がかかります。

 という訳で、アウザール商会をお招きしたんですよ。

 後の話は商人同士でどうぞ」

 

 まぁ、この蒸気機関は撒き餌みたいなものだ。

 これでアウザール商会にコネができたならば、そこからバナール師を紹介してもらう事にしよう。

 

 

 

「よかった。探していたのだ」

 

 カーウェス最高導師の召喚という事で、そのままフォルテス導師と共にカーウェス最高導師の部屋に行くと、そこには彼と一人の少女が居た。

 

「ラヴェルナと言います!よろしくおねがいします!!」

 

 ギルドにはこうやって魔法適正のある子供がやってくる事がある。

 後に魔女と呼ばれるだろう彼女と出会う事を考えなかったと言えば嘘になる。

 

「私の元で育てるつもりだが、何分女性ともなるとな。

 時々でいいので、気にかけてやってくれないだろうか?」

 

「まぁ、できる事はしますけど、情操教育上よくないと思うのですが?」

 

「最高導師はそれを改めろと暗に言っているのだ!愚か者め!!」

 

 フォルテス導師のツッコミに私は肩をすくめる事で返事をした。

 せっかくなので、いくつかの報告をする。

 

「私が管理している遺跡の一つの第一次調査が終わりました。

 ゲートの向こう側はケイオスランドの可能性が高いです」

 

 フォルテス導師は驚愕の顔を浮かべたが、カーウェス最高導師の表情は変わらない。

 なお、当たり前のようにいるラヴェルナは理解しているのかしていないのかよく分からない。

 

「で、問題なのはここからです。

 ケイオスランドの遺跡に繋がっていたんですが、そこにもゲートがあったそうで。

 何処に繋がっていたと思いますか?」

 

 私の意地悪そうな声に、ラヴェルナが首をかしげて一言。

 

「どこに繋がっていたんですか?」

 

 それを尋ねているのだが、まぁいいか。もったいつける事もないだろうという事で、私はそのゲートの先を告げた。

 

「落ちた都市。

 まぁ、古代魔術王国だったらある意味当然ですか」

 

 つまり、パダを経由してオランに向かう事ができる。

 数か月かかるオランまでの旅が下手すれば一週間ほどにまで短縮できるという事。

 ターシャスの遺跡を通じてケイオスランドだけでなく、東部に行けるという事実は、オーファンの地位をさらに強固にしてゆくだろう。

 私の意図に気づいた二人の魔術師は何も言わず、少女ラヴェルナはその意図が分からずにきょとんと私を見ていたのだった。

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