実験を手伝えと言われて「はいよろこんでー」と言ったとしても、その実験を知らないと手伝えない訳で。
そして、古代魔法王国の遺跡の施設なんてものは一人で動かす自体が間違っている訳で。
ナバール師の雑務を押し付けられた私たちは即座に一つの結論に達した。
「うん。これ無理」
まずマンパワーが足りないので、私がテレポートで飛んで、ゼラ教室の人間を引っ張ってくる。
フェリーナ・アルミン・ジャギー・エゼットである。
ミックとチェペルは冒険に出ているらしく捕まえることができなかった。仕方ない。
この四人にカルダモンを入れた五人は雑務担当で、フェリーナをリーダーに研究の整理と分類を行う。
やってくるシアルド師に研究を引き渡す事については、アルミンあたりから異論が出たが、この時間で写本ができると察した彼はすごい勢いで雑務をこなす事に。
それでも大部分は分からずじまいで引き渡すのだろうが、この装置がどういうものかぐらいは理解したいものである。
一方で、こちらの方針について王宮には説明してあるのだが、ディーター卿率いる銀の弓騎士団の追加派兵が決定していた。
『死神』対策の名目だが、シアルド師に魔法装置を渡す事を妨害しろというのも入っているのだろうなぁ。
そんなこんなで、私達が塔に入ってから三日後。
状況が動いた。
「ベレーヌの宿にシアルドと名乗る魔術師と護衛冒険者たちが入ったらしい」
その報告をくれたのは、交代で実験の手伝いをしていたバルアーである。
彼は使い魔のカラスを使って、ベレーヌの領主館と定時連絡をしていたのである。
その宿帳に書かれた名簿を見て私はため息をつく。
「うわ。やっぱり『黄金の車輪』かぁ……これは向こうも本気ね……」
『黄金の車輪』とはファンドリアで名を轟かせている冒険者集団である。
その実力はバルアーたちが所属する『明日に吹く風』と遜色ないので戦うと大損害が出る事は必至だろう。
「サムソン卿が捕縛しようとしたみたいだけど、近衛騎士ローンダミスが止めたそうだ。
『死神』の動きが分かっていないから、戦闘を避けられる彼らについては手を出したくないのだろうな」
バルアーの言葉に私は通りかかったカルダモンを呼び止める。
雑務についての確認をするためだ。
「ねぇ。
雑務についてはどれぐらい進んでいるの?」
「研究の概略と目録については既に終わっています。
写本ですが、あと二週間は欲しいですね」
かき集めたかいがあったというものである。
最低限の成果は得た。後は集めた人間を無事に逃がす事だ。
「いいわ。
ここまでにしましょう。
逃がすから、みんなを集めて頂戴」
なお、アルミンがごねにごねた。
予想通り、激しく声を荒げながらも写本を止めなかったのは見事という他ない。
「導師ゼラニウム。正気か!?
ここまで来て、写本を打ち切れだと!?
この素晴らしい研究を!莫大な資料を諦めろと俺に言うのか!?」
「いや、だって、この資料と研究、ラムリアースの学園なら確実にあるわよ」
「え?」
やっと彼の手が止まった所で、ネタばらしをする。
彼が書いた写本を手に取って眺めるが、さすがラムリアース出身。
ちゃんと下位古代語文法が整っているのが素晴らしい。
「古代魔法王国は天災を避ける為に精霊を制御する魔法を王国各地に配置したわ。
この手の制御装置というのはアレクラスト大陸の各地にあるのよ。
という事は、この手の文献は歴史のある魔術ギルド、ラムリアースやオランあたりならば探せば見つかるという訳。
それでも、この資料の中で一番大事なのが、実はこの日記。
この遺跡の価値はね、生きた魔法装置を今の私達がどうやって動かそうとしたか?
その試行錯誤にこそ価値があるのよ」
なお、整理分類の過程で気づいたのだが、バナール導師の資料の多くが写本、つまり原本がある資料を写したもので成り立っている。
元が私塾を開いていた魔術師であり、ファン王国の内乱で保護した資料もあるのだろうが、大本が古代魔法王国に行くのならば、ラムリアースなりオランなりで調べるのが可能という訳で。
だからこそ、カルダモンに確認をとった時に、概略と目録をまっさきに写本したのである。
「導師ぐらいならば、調べるのは簡単だろう!
だが、俺程度だと調べる事すらできんのだ!!
俺はギリギリまで残るぞ!!
残って、この知識を吸収しきってやる!!!」
鬼気迫る勢いで写本を再開するアルミン。
こうなってはどうしようもないので、放置して他の人間をテレポートで逃がすことにした。
さて、彼がどこまで書ききることやら……
翌日。
朝の寝起きは、遠くからの爆発音によってもたらされた。
「誰かが戦っている!」
かくして、魔法装置を巡る各勢力の戦いの幕は切って落とされた。
黄金の車輪
ベラ
シャーマン7 シーフ6 レンジャー6 ダークプリースト4(ファラリス)
ジョルジュ
シーフ7 レンジャー6
パルコッサ
ファイター7 レンジャー4 シーフ3 セージ1
ドルダーテン
プリースト6(ラーダ) ファイター6 セージ2
マイシリカ
ソーサラー6 セージ7
……これを陰謀で葬るのだからそりゃファンドリア滅ぶわ……
シアルド
ソーサラー7 セージ4 ファイター1
スケルトン・ウォリアー×5
各勢力
ぜラたち
装置の成功後シアルドに譲渡。ファンドリアとの開戦を避ける。
ローンダミス
シアルドへの魔法装置譲渡への妨害。ファンドリアとの開戦は避ける。
『死神』掃討。
シアルドたち
装置の入手。強硬手段も辞さず。
『死神』
装置の誤作動によるオーファンと西部諸国の街道封鎖。
ドレックノール工作員
オーファンとファンドリアが開戦する事でファンドリアの同盟国ロマールが戦力を西部諸国から引き揚げさせるのが目的。
シアルドたちを利用して開戦を企む。
ロマール盗賊ギルド
ドレックノール工作員の掃討。