※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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四大魔術師の塔 その8

 移動の制約がないのは高位魔術師の特権である。

 それでも、用意した大人数を移動させるのは少し骨が折れる。

 テレポートで塔に戻り、アイソラ・セレシア・スィートゲイル・シャミナの四人をまずはベレーヌの村に送り込む。

 リビング・ドールは毒薬なので治療が可能なケースもあるのだ。

 そういう時にアイソラのヒーラー知識と、エルフ三人が使える『リフレッシュ』は強力な武器になるだろう。

 ジェドンとラダの『トランスファー・メンタルパワー』を駆使して彼女たち三人とマルダーとフレアで即席パーティーを作り、隣村に送って治療と防衛に専念するためだ。

 

「陽動よね」

「でしょうね」

 

 ラダの体力回復を待つ間、酒場の近くの民家を借りて、私とジーンが話す。

 村への厄介事の対処が終わるまで留まってほしいとシアルドにお願いし、一日という譲歩を引き出したのだ。

 佇んだアイアンゴーレムに村の子供たちが近寄っているが、制御下においているので暴れる訳もなく。

 

「隣村のあれが陽動として本命は?」

 

「そりゃ、ここでしょう?

 お宝の部屋が固められているならば、そこから警備を引きずりださないといけない。

 その下準備でしょうね」

 

 私が尋ね、ジーンが笑いながら言う。

 それが分かっているからこそ、私もルーファスもローンミダスもこの村に留まっているのだ。

 

「思っていたのだけど、ゼラ。

 これ、いつから考えていたの?」

 

「これって?」

 

「『死神』とシアルドたちと『明日に吹く風』の共倒れ」

 

「そりゃもう最初から」

 

 ぶっちゃけるが、隠れているかもしれない『黄金の車輪』のシーフが隠れて聞いている事を考えての会話である。

 ジーンも中堅シーフだけど、向こうのシーフはジーン以上だしなぁ。

 それでもこういう会話をするのは、相手に聞かせる事で誘導する為である。

 

「これ、内緒にしてね。

 オーファン王宮は『死神』がここに拠点を構えるか警戒しているのよ。

 騎士団も動いて『死神』潰しに動いているわ」

 

「あー。だから『明日に吹く風』を雇った訳だ」

 

「そう。

 『死神』がこういう手を取ってくるのは想定していたから、確実にこちらについてくれる彼らを雇った訳」

 

「お宝くれてやるけどいいの?」

 

「いいわよ。

 あのお宝は私には管理できないし、ちゃんと研究してくれる弟子が来たのならば、そっちに譲るわよ」

 

 とても白々しく言いながら、私は居るかどうかわからないシーフに語りかける。

 

「ただ、ここの領主を始めとしてオーファン王宮には、ここのお宝を渡したくない意見があるのは知っておいていいんじゃない。

 こっちとしては、彼らに説明できる言い訳があると嬉しいのだけど」

 

 もちろんそこに人がいたかどうか分からない訳で。

 

「いたと思う?」

「さぁ?」

 

 

 

 回復を待って、私たちは一旦塔に帰る。

 『明日に吹く風』の面子を残して私たちのパーティは塔から撤退し、翌日シアルドが雇った『黄金の車輪』と入れ替えて撤退という形となる。

 一方で隣村の状況だが、幸いにも間に合ったらしく今のところは被害が出ていないらしい。

 

「ちょっと待った。ゼラ」

 

 ルーファスが剣を構えて私をアイアンゴーレムの後ろに隠す。

 それにつられてラダとジーンも構えるが、敵の姿をまだ確認できておらず、ルーファスの視線の先を見る。

 なんでシーフより先に敵を見つけているんですかね……

 

「待って!殺さないで!!

 降参するから!!!」

 

 森の方から女の声が聞こえる。

 まぁ、普通の人間はアイアンゴーレムと戦おうとは思わないよなぁ。

  

「スリープ・クラウド」

 

 一言私が呪文を呟いて声のする方に放つ。

 ドサっと倒れた音は二つ。

 警戒しながらそっちに行くと、女魔術師と女ダークエルフが倒れていた。

 

「『死神』の仲間か?」

 

 二人をロープで縛るラダの言葉に私は首をすくめた。

 この二人はアイアンゴーレムで運ぶ事にしよう。

 

 

 

「ほぅ。シアルドの奴が来たのか」

 

 塔に到着後、バナール師にシアルドの手紙を渡して引継ぎの手続きを取る。

 弟子が来て研究を引き継ぐ事の嬉しさ半分と、私たちが周辺の『死神』討伐で出る事に対する不満半分という所だろうか。

 

「そんな顔をなさらずに。

 そのまま去るなんて不義理はいたしませんから」

 

「その言葉、違えるでないぞ。

 おぬしらが来て、こんなに研究が進むとは思わなんだ。

 もっと早くに賢者の学院の門を叩けばと思っておるよ」

 

「それで、実験の方は?」

 

「一週間後を予定しておる。

 シアルドの奴に色々伝えたいことがあるので少し待ってくれないか?」

 

 その間、馬車にて私たちのパーティは撤退の準備をする。

 ただ一人、それに反対してる人間がいた。

 

「嫌だ!

 俺は残るぞ!!

 あと少し、あと少しでこの写本が終わるんだ!!!

 何かを掴めそうなんだ!

 頼む!導師ゼラニウム!!

 あと一日!あと一日だけ待ってくれないか!!!」

 

 もはや私の方すら見ずに写本をしているアルミンの姿には鬼気迫るものがある。

 どうしようかと考える私に、バルアーが助け舟を出した。

 

「私たちと一緒に帰らせます。

 彼はこの実験で何かを見つけるかもしれないのです」

 

 きっとそれは、元の物語で得ることができなかったものなのかもしれない。

 悪人になったアルミンではないアルミンの将来の分岐点がここならば、それを邪魔する訳にはいかない。

 私はバルアーに竜の牙を渡して頭を下げた。

 

「彼をお願いします。

 良い方向に導いてあげてください」

 

 

 

 ベレーヌの村に向かう途中、縛られた女二人を馬車内で警戒していたカルダモンが私に声をかけた。

 その声は重大な示唆を示していたから私も振り向かざるを得なかったのである。

 

「見ると片方の女は導師みたいですが、奴らが装置を動かす場合、誰がそれを動かすのでしょうね?」




捕まった『死神』二人

 豹 ハーフダークエルフ 女
 シーフ4 セージ1

 マーヴェル・テリストリア 人間 女
 ソーサラー6 シャーマン6 ファイター4
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