塔からの撤退は何もなく終わった。
『明日に吹く風』と『黄金の車輪』は交代し、アルミンも渋々ながらベレーヌの村に戻ってきた。
捕まえた『死神』の二人は領主の屋敷の牢に入れて尋問したのだが、出てきた名前は大物魔術師だった。
「死霊魔術師シャーリラかぁ……そりゃ大物だわ」
オランの賢者の学院でもトップクラスの魔術師だったのだが、己の永遠の美貌に取りつかれて賢者の学院から追放されて西部諸国に流れてきたという。
そこで『死神』と接触したのか接触されたのかは知らないが手を組んだという訳で、その手を組んだ条件というのが……
「まさか、ゼラ本人だったとはなぁ……」
ルーファスのぼやきに私も苦笑するしかない。
古代魔術王国の死霊魔術の名門当主の魂と融合した私。
ただでさえ叩かれる死霊魔術を極めるならば、私の体というか魂を狙うのはまぁ分からなくはないだろう。
「けど、おかげで動けなくなったじゃない」
問題は、この尋問を領主の館、つまりサムソン卿とローンダミスも聞いていた訳で。
『死神』討伐が最優先である彼らにとって、私が出向く事は危ないという判断で領主の館に滞在という名前の監禁を食らう事になった。
現在の私はルーファス相手に、領主館の客室にて愚痴っている最中である。
「彼らの言い分も分からなくはないさ。
捕まえた魔術師とダークエルフの少女はここの兵士たちでは手に負えないし、俺たちのパーティは『明日に吹く風』と比べても連携に欠けるが数は多い。
何かあった時の為に動けるように待機してくれというのは筋が通っているだろう?」
なお、もう一人逃亡中の『死神』メンバーが居る。
ウェイリンというシーフが居るのだが、彼の行方がまだわかっていなかった。
一方で隣村のリビング・ドールの騒動を解決した結果、思わぬ情報が転がり込んできた。
隣村の近くにある谷で空飛ぶ何かを見つけたのだ。
間違いなく『死神』が用意した飛行船だろう。
かくして隣村に派遣したアイソラ・セレシア・スィートゲイル・シャミナに『明日に吹く風』のメンバー六人とローンミダスとオーファンの騎士マルダーと雇われ精霊使いのフレアが制圧の為に向かっている。
この戦力だから制圧はできるだろう。望むならば無事に飛行船まで入手してほしいのだが。
ジーンが飛び込んできたのはそんな時だった。
「ゼラ。精霊たちがおかしい!
なんだか明らかに変なの!!」
予想された結末であり、起こってほしくなかった結末でもある。
つまり、『黄金の車輪』が負けたのだ。
かくして装置はシャーリラによって起動され、狂った精霊たちによってこの地は凍土に……とさせないように私が来たのである。
「残っているみんなを集めて頂戴」
ゼラ
ルーファス
マティアラ
シーフ3 シャーマン2 レンジャー1 セージ1 コーティザン3
リーマ
シャーマン1 レンジャー2 セージ2 コーティザン4
カルダモン
セージ1 ソーサラー2
ラダ
シーフ3 セージ4 プリースト2 (ラーダ)
ジーン
シーフ4 レンジャー2 ファイター3 コーティザン4
クリシィ
シーフ2 バード4 ダンサー4 フォーチュンテラー1 コーティサン2
アルミン
ソーサラー3 セージ3
サムソン
ファイター5 セージ2 ノーブル1
従兵 五人
ファイター1
「状況は切迫しています。
『死神』はおそらく装置を起動させました。
このままだと、この地はろくでもない事になるでしょう」
「ろくでもない事というのは何……」
サムソンの言葉が止まったのは、窓の外に小雪がちらついたからだ。
猶予はあと5日。
「従兵が隣村に知らせを送って、連中が戻ってくるのは明日。
塔に突っ込む前に一日の猶予はほしいだろう」
「その猶予が与えられるならね」
ルーファスの言葉を私が遮る。
ルーファスの言葉だと、隣村に送った連中が塔に行くのが三日目。
多分雪で進めなくなりかねない。
「もう一つあるな。
牢に捕らえているあの二人だ。
多分、あの二人意図的に捕まったぞ」
ラダがあっさりと言う。
尋問にやけに従順だと思ったらそういう理由か。
たしかに、今のこの館にあの二人を抑えられる人間は私とルーファスしか居ない。
私たちが塔に向かった所を脱走してベレーヌの村で暴れたらそれはそれとして大惨事である。
「ウェイリンだっけ?
そのシーフの行方も気になるわね。
見張ってて伝令を潰されたら目も当てられないわよ」
クリシィの言葉も無視できない。
現在の私たちは、見事に戦力を分散させていた。
「ならば、二人を処刑するか?
領主としてそれを命じてもいいが……」
言いにくいことをサムソン卿がはっきりと言う。
少なくとも彼が領主として慕われているのはこういう所なのだろう。
「ただ、あの二人は降伏してきたんだ」
「尋問も素直に答えたし、それで殺すってのはねぇ……」
ラダとジーンが困り顔で述べる。
このあたりは、信義の問題だ。
降伏した連中を問答無用で処刑すれば、当然村に不信感が残る訳で。
サムソン卿は先に言ってくれたが、元騎士として顔はやりたくないとはっきり物語っていた。
「ギアスをかけるのではだめなのか?」
アルミンが質問をしたので私は話を逸らす意味で返事をした。
「だめ。
たとえば『魔法を使うな』とギアスをかけても、魔法以外の手で悪さをしたら対処しきれない。
たとえば、井戸に毒を入れたりしたら?
たとえば、村の住人を人質にとったら?
じゃあ、悪いことをするなとかけてもこれが微妙でね。
今まで、捕虜だったのに悪い事しませんという事で協力してもらってもそれを信じられると思う?」
まぁ、本音はあの二人は更生する可能性があるからなのだが。
言うつもりもないが。
「とにかく、今日のうちに馬車で出ます。
ラダとジーンは牢の二人をしっかり縛る事。
縛る前にスリープクラウドをカルダモンとアルミンがかけて眠らせるようにね。
彼ら二人は私たちが戻らなくて5日後。領主サムソン卿にお任せします」
そして私はルーファスに微笑む。
隣村の件を解決して戦力を引き抜くのだ。
「ルーファス。空の旅って好き?」
「ゼラとならばどこへでも」
『死神』メンバー
ウェイリン シーフ6 セージ3
『アルバトロス追撃』より。
シャーリラ
ソーサラー・セージ9
『世界の果ての壁』シナリオ『失われたデュエット』より。
ソーサラー9しかないが生身設定なので、セージ9もつけた。