※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

64 / 140
四大魔術師の塔 その14

 という訳で後始末を語ろうと思う。

 

「貴様はこうなる事を予想していたな」

「……ご想像におまかせします」

 

 実に苦々しい顔で皮肉を吐くフォルテス導師だが、魔法装置そのものと研究資料が無事だった事で、嬉しさを隠しきれていない。

 ファンドリアのシアルド師が権利を主張すれば渡すつもりだが、ファンドリアはそれをしない確信が私にはあった。

 中が分裂しているファンドリアにとって、効果と研究資料がそろって使える魔法装置を一勢力に持たせて内部バランスが崩れる事を恐れるからだ。

 その効果は帰ったシアルド師とベラが各勢力に告げているだろうから、取りに行く時点で壮絶な足の引っ張り合いが発生するだろう。

 さらに、ロマールやドレックノールも装置のことを知れば介入してくる可能性があるので、表向きはまだ敵でないオーファンの魔術ギルドが回収するのであれば、それに越したことはないのだ。

 

「という訳で、装置の方はお任せします」

 

「わかっておる。

 それと、陛下からこの地の管理を委任する旨の書状をもらってきた。

 サムソン卿もこの遺跡の森については領地ではないという事を確認しておる。

 良いのか?」

 

 その管理者は生き返らせたマイシリカの名前が書かれている。

 彼女はダークエルフに殺された事を周知させる為に生き返らせたので、必然的にダークエルフに狙われる事になる。

 それが分かっているので彼女は帰国を拒否し、私の取引に乗ってこの遺跡の管理者として暮らす事になった。

 

「私はターシャスの遺跡で手一杯。

 ここは装置を外すとはいえ、力のある土地で管理者は必要じゃないですか。

 それに、ハーフエルフについての迫害は放置する訳にもいかないでしょう?」

 

 この遺跡がある森の遺跡管理をマイシリカに任せると同時に、彼女を長とするハーフエルフの村の設置を許可してもらったのである。

 うちのパーティーにいるマティアラやリーマ、知り合いのミックやサロウの故郷を作ってやろうという軽い気持ちだったのだが、話すとマティアラとリーマの嬉し泣き、ミックやサロウの心からの感謝、話を聞きつけたフレアの参加にマーカスやシムシャーラの協力であれよあれよと話が大きくなってしまったのだ。

 かくして、ハーフエルフの入植者まで決まって修復された遺跡を中心に一つの村ができる事になる。

 後に『半分耳の森』と呼ばれるようになるこのハーフエルフの里はこうして出来上がった。 

 

 

 

 

「ええい!離せ!!

 こんな動力など儂の発明で強化して……」

 

 何処から聞きつけたのか……まぁ『死神』の討伐はオーファンとタラント、さらにエルフが絡んだ計画だったのでジョン・ベインズが停泊していた飛行船にやってきてルーファスに押さえられてるのは当然なのかもしれない。

 魔法装置をフォルテス導師に任せたのはこれであり、魔法装置でないこの飛行船を私が管理してファンまで飛ばす事になっていた。

 

「なんともったいない!

 これは、魔法を一切使わずに空を飛べるのだぞ!!

 それを無視して魔法を使うとは……」

 

「仕方ないじゃないですか。

 詳しい人間死んでいるんですから」

 

 飛行船製作者の飛行船の船長のシーヴァ、助手のラッシド、設計者のエフレム、協力者のリーバーが殺されていた以上、運搬は魔法でという事になった。

 具体的に言うと、飛行船中央のストーブの火で飛行船を浮かせて、移動をアイソラ・セレシア・スィートゲイルの三人のエルフの操るシルフに任せるつもりなのだ。

 『明日に吹く風』やうちのシャーマンを使わないのは、装置護衛のためとまだ潜んでいるかもしれないダークエルフの為である。

 

「なんという事だ!!

 ストーブに石炭を入れるのはいいが、石炭入れ係とプロペラ係が竜牙兵だと!?

 儂が発明した蒸気機関があればこの問題は解決するのに……離せ!離さぬか!?」

 

 もちろん離す訳もなく、客室の一室に監禁する。

 そして、飛行船はゆっくりと浮かび上がり、少しずつ動きだす。

 

「こ、これは……凄いな……」

 

 乗ってもらったローンダミスはそれしか声を出さない。

 近衛騎士ならばわかるだろう。

 この高所を支配するという意味が。

 理解しているだろうルーファスも視線はずっと厳しかった。

 

「これで、ロマールはコリア湾の海賊を退けたそうですよ」

 

 高さにして数百メートルというあたりを飛行船はゆっくりとファンの街に向かって進む。

 それでもシルフの風に乗った飛行船は今日中には王都ファンに着くだろう。

 それが何を意味するか分からないローンダミスとルーファスではなかった。

 

「この船は王宮が管理することになるだろう」

 

「当然です。

 ですが、お気を付けを。

 ロマールとドレックノールはこの船を作り出していますよ」

 

 技術はそれを隠しても原理を理解すればいずれ到達する。

 ましてや、その技術が軍事的に有効なのならば、各国は必然的にその技術を導入するだろう。

 そして、私は一つ確信する。

 これらの技術革新で、最もそれを有効に使えるのが、まだプリシスに居る『指し手』ルキアルだろうと。

 かくして、王都ファンの住民を驚かせ、騎士団の出動まで発生したこの飛行船はオーファン王室の所有物となった。

 そして、オーファンに来てしまったジョン・ベインズによって、技術革新は一気に加速する。

 

 

 一月後。シエント川を渡河しようとしたロマール軍と、ドレックノール・リファール・ゴーバの三か国軍が戦いに及び、魔獣軍団を投入したドレックノール軍によってロマール軍が敗北し侵攻が阻止される事になった。

 それは、ドレックノールの隠していた力の露呈であり、西部諸国の戦乱が混迷する始まりでもあった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。