昼食後。
今度は洞窟ではなく遺跡の方から調べる。
理由はもちろん安全のためだ。
「洞窟は安全が確保できたから、隠し扉を開けなければ大丈夫。
次は上の遺跡を調べて、もらえるものをもらっちゃいましょう」
という訳で、森の中の遺跡に向かう。
改めて見ると、たしかに屋敷らしいが、一階部分が地面にめり込んでいた。
考えられることは、地下があって、その地下部分に屋敷が落ちたと見るべきだろうか。
「ここから入れそうだ」
一階の窓部分らしい穴を見つけて、ジーンが入ってみる。
元が屋敷という事で、たいまつでなく今度はランタンを選択する。
下手に火がついて燃え広がったら逃げ道がないからだ。
「天井から光が漏れているけど、ランタンはあった方がありがたいわね」
まずはこの部屋から調べる。
シーフ技能を持つ四人が部屋の安全を確認する。
シャミナに異変が起こったのはこの時だった。
「きゃっ!」
床が抜けて下に落ちたのだ。
慌ててラダが声をかける。
「大丈夫か?」
「なんとか……けど痛くて動けそうにありません……」
とりあえず、ロープでランタンをシャミナが居る下の部屋に降ろして灯りを確保すると、ラダがロープから降りて、シャミナを回復させる。
「大いなるラーダ神よ……」
一方でルーファスが部屋の中で警戒しつつ私に声をかけた。
「どうする?
下に降りるか?」
「先に上を全部調べておきましょう。
屋敷が無事ならば下に降りる階段があるはずよ」
ラダとシャミナがロープを伝って上ってから、地下部分の探索を始める。
思ったよりお宝が多かった。
「あ。魔晶石みっけ」
隣の部屋でジーンが魔晶石を見つける。
そこそこの大きさで10点ぐらいの魔力が入ってるみたいで回復魔法を使ったラダに渡しておく。
更に、主の部屋らしい場所で廃墟に埋もれた銀の剣をラダが見つける。
「これはお宝だな。
両手剣らしいが誰が持つ?」
「そりゃ、ルーファスでしょう?」
あっさりと私が言う。
戦力強化と持ち逃げの可能性があるのだが、ルーファスぐらいの男になるとそれを考えなくていいのが楽である。
ルーファスは剣を抜いて状態を確認し、問題なく使えると分かって鞘に直して一言。
「分かった。この冒険の間借りておこう」
「見て!
こっちに階段があるわ!!」
マティアラが階段を見つける。
それは地下と二階に通じる階段だった。
マップを羊皮紙に書き込んでいたジーンが声を出す。
「考えるならば、多分地下を探せばあの洞窟まで続いているはず。
ただ、建物の装飾を見ると、大事そうなのは二階みたいなのよね」
屋敷は中央の中庭みたいな所を中心に広がっていた。
この真ん中の樹が魔法樹なのだろう。
階段のあたりをランタンで照らすと、明らかに華麗な装飾が二階への階段にあるのに対して、地下へは質素な通路になっていた。
ただ、洞窟の隠し扉の事を考えたら、先に地下を探索するのは悪くない。
「地下へ行きましょう」
私の決定に皆が頷く。
地下は倉庫みたいになっており、家具や食器等使えそうなものがかなり残っていた。
馬車を用意してきて良かった。
もって帰ればかなりの財になるだろう。
「……?これは何です?」
シャミナが地下を調べていて見つけたものをラダが調べて感嘆の声をあげる。
私はそれを聞いて顔をしかめざるを得ない。
「それはお宝だぞ。
竜の牙。
竜牙兵を作れる優れものだ!」
魔術師ならば高く買い取ってくれるそれは、裏返せばそういうのが使える魔法使いがここにいた事を示している。
それが見えないならば、何処に置いているというのか?
決まっている。
万一の秘密の出口だろう。
「こっちに来て!
書庫があるわ!!」
思わず額に手を当てて天を仰ぐ。
元の物語は装置などがそのまま残っていたからもしやと思っていたが、完全に未発掘の遺跡だったか。
「ゼラ。
ちょっといいか?」
ここでルーファスが厳しめの声で私に声をかける。
ただならぬ空気に気づいたシャミナが私の前に出て守ろうとしたのを手で制して私は笑顔でルーファスに返事をする。
「何?」
「そろそろ、君が隠している事を話してくれないだろうか?」
来た。
隠していられるとは思っていなかったが、それでも私はとぼける。
「何を?」
「ラダとジーンから聞いた。
この遺跡の依頼、君は財宝はいらないと言ったそうだな。
そして、遺跡に入る前に君は『この国を出るためにもお金は必要』と言った。
矛盾しているよな?」
「あ!?」
聞いていたジーンが思わず手を叩く。
ラダは顔色を変えていないあたり、気づいていたかそれともそれをルーファスに流したか。
「ゼラ。
もしかして、君の狙いはこの遺跡を利用したロマールへの復讐か?」
そうとられても仕方ないか。
ため息をついて手を掲げる。
『灯りを』
ライトの魔法が部屋を照らす。
驚いたのはシャミナとマティアラのみ。
さすがにラダとジーンとルーファスは気づいていたか。
「という訳で、私魔法使いなのよ。
ここにある知識が本当の狙いなんだけど……それで誤魔化されてくれる三人じゃないわね。
全部話すわ」
マントを床に敷いて座る。
けどみんなは立ったままだ。
「この遺跡の奥に、古代王国時代の魔術師の亡霊が居るわ。
それが私の本当の目的。
その亡霊にこの体を与えるのよ」
「亡霊に体を与えるって!?」
ラダの声に怒気が篭る。
神官だとこの考えは認められないだろうからなぁ。
うちのラーファ様もアウトラインの気がするが亡霊の浄化はするのだ。これだと。
「体を差し出すと、魂が混じって亡霊の知識を得る事が出るわ。
古代魔法王国の魔術師の知識よ。
十二分な報酬でしょう?」
「嫌です!」
シャミナが私にしがみつく。
彼女は泣いており、涙が私の頬につく。
「ゼラ姐さんがゼラ姐さんでなくなるのはダメです!
私、まだゼラ姐さんに何も返していないのに!!」
「私もよ!
私とリーマがどれだけゼラ姐さんに感謝しているか!
ハーフエルフって迫害せずに優しく声をかけてくれたのはゼラ姐さんが初めてだったんです……
ゼラ姐さんが居なくなったら……私、私……」
いつの間にかマティアラにも抱き着かれていた。
ジーンが呆れ声で私に尋ねた。
「こんなに慕われていた訳だけど、どうやって亡霊の所に行くつもりだったのよ?」
「安全確保して、お宝馬車に積み込んだら夜でしょう?
そしたら、眠りの雲を放って、みんな眠らせて一人でという予定だったの。
だから、こうやって、安全を確保しつつ足止めをしていたって訳」
泣きじゃくる二人の頭を撫でるのを見て、ルーファスがやっと笑みを見せた。
ラダとジーンも苦笑していた。
「諦めな。
生きた遺跡の報告だけで、ギルドはあんたを大事にするよ」
ルーファスの一言に、私の初冒険は失敗に終わった事を認めざるをえなかった。
その後、遺跡を出た私たちはシャミナを呼んで馬車に詰め込めるだけ家具や食器や本などの財宝を詰め込み、ロマールに帰る事になる。
リサルト
魔晶石 10点
ゴブリンの財宝 700ガメル相当
銀のグレートソード 筋力 (18×40+60)×5=3900ガメル相当
銀の食器類 1200ガメル相当
家具 600ガメル相当
書物 算定不能 魔術ギルドに対して絶大な評価
竜の牙 算定不能
経験点
ゼラは失敗扱いで500点
ゼラ以外は成功扱いで1000点
竜の牙の価格が分からないけど、ゼラがそのまま使う事にする。