使ったお金は回収しよう。
これはそういう話である。
「シースルー……あった!!」
レイアたちと入った古代王国の遺跡。
隠し扉があったのだが、遺跡の仕掛けが地盤変動で動かなくなっていた為である。
つまり、途中までは通路なり遺跡があった訳で。
さらに言うと、ドワーフの一部隊を動員しないと掘り出せない宝があった訳で。
高位魔術師というものがドワーフの一部隊より上な訳で。
ガチ編成にレイアを加えたパーティで入ってみたら、これが大当たり。
大量の宝石に貴重な魔術書と一振りの剣。
ルーファスが見て一目で惚れたあたりあの剣だなぁと当たりをつける。
どこかで入手するんだろうなとは思っていたが、こんなところにあったか……
「ソリッドスラッシュ。
いい剣でしょう?」
「ああ。これ、もらっていいか?
金は必ず払うから」
後のルーファスの愛剣である。
これでドラゴンが出ても安心という訳だ。なお、本当に出られると私たちが死ぬ。
「いいんじゃない?
うちのパーティーでこれ使えるのルーファスぐらいしか居ないし」
「同感。
ルーファスとゼラが倒れたらうちのパーティー崩壊するし」
ラダとジーンがあっさりと賛同する。
残りの面子も文句を言う輩もおらず、かくして凱旋する事になった。
なお、魔術書や宝石などを売り払った結果は、換金した金塊三つ分になった。
その日パダの街の内壁の『掘り出された秘宝亭』での乱交騒ぎにさりげなく抜け出そうとしてルーファスに捕まる。
「どこへ行くんだ?」
「ちょっと散歩」
実に苦しい言い訳である。
飛んで行ってテレポートで帰る予定だったから、乱交とは程遠いガチ冒険者装備だったり。
まったく言い逃れができそうもない。
「ほら。オランから賢者の学院の調査隊が戻って来るじゃない。
それまでに、少し善行をしておこうかなと思って……」
「へぇー善行ねぇ……
で、何処の遺跡に行くんだ?」
「遺跡には行かないわよ。遺跡には。うん」
「なるほど。
だからシーフはいらないと」
「あ!?」
完全に間抜け声を出してがっくりとする私。
まぁ、魔法で出入りできなくもないが、今回みたいにそのあたりの力技を使うぐらいなら不測の事態を考えてシーフを仲間に入れた方がスムーズなのは間違いがない。
そんな私の手をルーファスが掴む。
「まぁ、続きはみんなの所で聞こう。な」
「あれ?もしかして、ルーファス。怒ってる?」
「もちろん」
という訳で、また乱交場所に戻されて、全部ゲロした。
お仕置きと称して男性陣が朝まで私を輪姦したのはご褒美でしか……げぶんげふん。
翌日。
パダの街を馬車で発つ私たちの姿が。
目的地まではパダからおよそ三日の所にあり、馬車でも一日がかりという場所である。
「ねぇ……これそろそろ外していいでじょう?」
「ダメ。喜んでいるじゃない。あんた」
私の懇願はジーンににべもなく却下された。
首にぶら下がっているプレートに『私は抜け駆けをした肉便器です』と共通語で書かれてパダの街を歩くというご褒美……げふんげふん。屈辱が。
「何で師匠は自分を顧みないんですか!」
ガチ説教モードなのはカルダモンである。
パダの遺跡がらみの引継ぎの為に賢者の学院の調査隊が来るのがあの冒険から大体一週間後。
その翌日にあの枯れた遺跡の冒険があり、次の日がその遺跡からのお宝発掘である。
引き継ぐ為には私たちが居なければいけない為に、一人でという気づかいをみんなはまったく理解してくれなかった。
「この師、俺たちがそれをしかかった時は止めたのに、自分は安全と踏んでいるのが……」
アルミンもいい感じにボヤキ、ラダが苦笑しながら返事をする。
「仕方ないさ。ゼラだし」
なお、女性陣の嫌味は結構辛辣だった。
「というか、お仕置きで朝まで一人犯され続けて凄く楽しそうでしたねー」
「あれ、絶対わざとでしょ?ゼラ姐さんぐらいだったら、きっと姿消せるし」
「ああやって男を惑わすのかー勉強になるなー」
シャミナ・マティアラ・リーマの三人の言葉が棒読みである。
ロマールで似たようなことをしたのでトラウマ直撃みたいになってて、結構容赦なく責められた。
ジーンとクリシィは私をほおっておいて、馬車の中のレイアの話に移っていた。
「彼女大丈夫かしら?」
「無理でしょう。私もルーファスに突かれてああなったし」
「あはっ♥あひっ♥……」
馬車内から失神中のレイアの声が聞こえる。
体を不老化するのはオランに着いてからなのだが、私たちの乱交を見て参加したのが運の尽き。かくして、かつてのクリシィよろしく失神してまだ回復していなかったのだ。
「で、ゼラ。
改めて聞くけど、遺跡じゃないんだよな?」
「ええ。
私が行こうとしたのは墓地よ。
あの遺跡の中にエリサーナという名前があってね」
その名前はこれから行く街の名前であり、吟遊詩人たちの聖地と言われていた。
かつて古代魔法王国滅亡時、その歌で街を守ったエリサーナ。
彼女は古代魔法王国の魔術師でもあったのだ。
その彼女が起こした悲劇によってこれから行く街は一人の少女を残して滅亡する。
それを思い出して、救おうという気になっただけである。
ちょっとで片付く善行の予定が、ゲロった事で色々ばれてしまった。
「そのエリサーナ。まだレイスとして街の地下に居るみたい」
「まさか、その知識狙いか?」
ルーファスの声が少しきつくなるが私は苦笑して首を振る。
「同門です。同じ知識を得るのにわざわざ危険を冒す必要はないわよ」
そんなわけでエリサーナの街に到着したのは夜になってからだった。
街の灯りがついている事でこの町が生きている事に安堵のため息をつく。
「ここね」
「ちょっと待って。調べてみるわ」
街の中心にある大地母神の墓地の石板をジーンとマティアラが調べると地下への階段が見つかる。
こういう時のシーフの便利さはたまらない。
夜なので人気もなく、これ幸いと中に入ると結構な空洞が広がっていた。
「さてと。
レイスが出るけど攻撃してきたら判断は任せるわ」
街の人間を全滅させる呪歌である。
できれば連れてきたくなかったと輪姦されながらゲろったのだが、もちろん対策を用意してこの場に居る訳で。
「で、何をするのですか?」
カルダモンの質問に、私はパダの街で買った竪琴を鳴らした。
「歌うのよ」
鎮魂歌。死者を弔う歌によってこの街は救われた。
だが、先の未来ではこの歌によってこの街は滅ぶことになる。
もの悲しく、切ない私の歌声が空洞内に響く。
気づいてみたら、クリシィが私の歌に合わせて踊っていた。そういえば、ダンサーでもあったな。彼女。
どれぐらい歌っただろうか?
私とは違う音と声が鎮魂歌に重なる。
それは、いつの間にか現れた白い骸骨で、明らかに魔法がかかった竪琴を奏でている。
『何者です?私の眠りを覚ますものは?』
『エリサーナ殿。この地に住まう蛮族でございます。
眠りを起こした事をお詫び申し上げます』
そこから、ゆっくりと私は骸骨になったエリサーナに語る。
古代魔法王国が滅んだことを。
それから五百年の月日が経った事を。
彼女の子供の子孫がこの街に住んで暮らしている事を。
『ああ。私は、何のためにここに残っているのか……』
『貴方が守りたい者は守られました。
どうかそこからは貴方の子孫たちにお任せください。
親は子に追い越されてこそ一人前になるというもの』
『ええ。私の願いはかないました。
ありがとう……』
骸骨が崩れ、後には竪琴とペンダントが残った。
骸骨ペンダントを埋めて空洞を出ると空が開けかかっている。
「さてと、穴をふさいでパダの街に戻りましょうか?」
私の一言に一同が怪訝な顔をしてカルダモン代表して尋ねる。
「この街に泊まらないんですか?」
竪琴をもった私はかるく竪琴を鳴らす。
澄んだいい音が聞こえた。
「今の事言って信じてもらえると思う?
だから一人で来たかったのよ」
強行軍でなんとか賢者の学院の調査隊が来るまでにパダの街に帰ってきた。
さすがにその日は宿でみんなおとなしく寝た。
エリサーナ
『ただひとたびの軌跡』の『鎮魂歌幻想』。
あまりに救いがないので、助けたかっただけである。
ただ、街の住人全滅の処理が分からないので竪琴をマジックアイテム化した。
すると、住民をレイス化し、地下から呪歌を届けるという化け物性能になる訳で……細かな性能は後で決めるとして、頭を抱えている。