※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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パダの冒険その7

 今回は石巨人の迷宮に入る事が目的ではない。

 翌日、そのままオランに向かっても構わないのだ。

 

「まぁ、それで終わるとも思わないんだけどねー」

 

 そんな事を言いつつ私は宿の部屋にハードロックをかける。

 金塊にアンバーローブ、ソリッドスラッシュという小国が買える財産を狙わない方がおかしい。

 なお、その盗賊たちから娼婦としてお呼ばれされているのだが、さすがにお断りした。

 

「え?行かないの?」

 

 まるで明日は雨だと言わんばかりの物言いのジーンだが、さすがに冒険を前に気力体力を消耗するほど私も馬鹿ではない。

 

「え?行かないんですか?」

 

 こっちの言葉はカルダモンで遺跡に潜らないと言ったのだ。

 まぁ、そのあたりの話をするために部屋に戻ったという訳で。

 

「大丈夫。聞いている奴はいない」

 

 ラダの確認を待ってから私は口を開く。

 話は結構厄介なのだった。

 

「遺跡に潜らずにオランを目指してもいいけど、そうなったらあの盗賊たちついてきそうなのよね。

 多分私たちがどれぐらい財宝を持っているか知っているだろうし」

 

 ルーファスは酒場でもソリッドスラッシュを手放さなかったし、私の事を知っていたらアンバーローブを着ていることぐらいは探れるだろう。

 

「師匠。

 賢者の学院に逃げ込んでしまえばいいのでは?」

 

 カルダモンの質問にアルミンも頷く。

 ある意味正しいのだが、私は首を横に振った。

 

「そしたら、学園に籠らないといけなくなるじゃない。

 できれば、ここで意図だけは確認しておきたいのよね」

 

「意図?」

 

 シャミナの声に私が頷く。

 私たちのパーティーの他に二組の冒険者たち。

 近くには遺跡。

 ハイエナをするには格好の状況である。

 

「ねぇ。

 あいつらが、一番おいしく獲物を掻っ攫うとしたらどういうパターンだと思う?」

 

 私の質問にルーファスがあっさりと答えを告げた。

 

「そんなの簡単だ。

 ゼラ。君を堕とせばいい。

 そうすれば、遺跡も財宝もすべて手に入る」

 

 あ。これは盲点だった。

 ある意味で難易度が一気に落ちるからだ。

 たとえば、あのギースト率いる盗賊たちが信念のネックレスみたいなものを持っている場合、私は自ら望んで彼らに全てを捧げる事になる訳で。

 

「そういうのを持っていそうね。あいつら」

 

 考えてみればギーストは『最後に来る者』なんて名乗って今までなんとかやっている時点で、策がない訳がない訳で。

 それを思い知ったのは早朝。

 出発しようとした馬車が何故か壊れている事を様子を見たマティアラから知った時だった。

 

「何かおかしいわね」

「やっぱり?」

 

 クリシィが朝食時にぼやく。

 食堂で食べる危険を避けて、部屋の中で保存食を食べていた。

 彼女はフォーチュンテラー、占い師のスキルもあったりする。

 おそらく、何かを感じたのだろう。

 天気の様子を見ていたリーマが戻って来る。

 

「天気もおかしいです。

 オランの方向が大嵐みたいに真っ暗な雲で覆われていて……あれじゃ出ない方がいいですよ」

 

 つまり、オランに行くなと言っている訳だ。

 これ、パダの街に戻ったらとも考えたが、ある意味都合がいいのだろう。

 遺跡は無数にあるのだから。

 私の疑念が決定的になったのは、石巨人の迷宮に向かう事になった冒険者たちが出発する前にセインにギーストがいつ頃接触してきたからを聞いてからだった。

 

「ああ。確かナムゴーの村で殺人事件に巻き込まれてからだったな。

 あそこで、賢者の学院に『幸運の燭台』を渡した後だったと思うが……」

 

 そういう事か。

 謎が解けた。

 あれは、ろうそくに火を灯し続けている限り幸運が訪れるという古代魔法王国のアイテムである。

 なお、代償として火が消えるとありとあらゆる不幸が襲い掛かるという。

 悪い予感は当たったが、同時に疑問もわく。

 

(あれは天候操作すらできるようなアイテムだったか?)

 

と。

 仕方がないので、私たちも石巨人の迷宮に向かう事にする。

 

「ゼラ姐さん。あれ置いてゆくんですか?」

「あれで済むなら安い物よ」

 

 シャミナの確認にアンバーローブを羽織った私はあっさりと言いきる。

 あれとは今まで稼いだ金塊三本で、うまく換金できれば百二十万ガメルにはなるだろう。

 一応部屋にはハードロックをかけておくが、『幸運の燭台』の幸運で開くのだろうなぁ。多分。

 そこで満足して盗賊連中が去ってくれるなら話は早いのだが、そうはならないだろう。

 とはいえ、解決策もなしで突っ込む訳にもいかないので、ひとまず時間稼ぎに彼らが望む動きをするしかない。

 馬車が壊されての徒歩の冒険は結構な時間がかかり、アンブランの丘に着いたのはお昼になるかならないかあたりの時間だった。

 

「とりあえず、お昼は上で食べましょう」

 

「潜らないのか?」

 

 ルーファスの質問に私が苦笑する。

 マティアラ・リーマ・ジーンのレンジャーもち三人が野草や野うさぎを狩って昼食の鍋を作っていた。

 遺跡の入り口はあっさりと見つかり、その中の井戸にロープが繋がってた。

 井戸の中を眺めると、棒で何か罠みたいなものが発動しないようしているのが見える。

 

「無理して潜る必要はないわよ。

 既に冒険者が二組入っているんだから、お宝横取りみたいに言われる方が心配……」

 

 私の言葉は井戸の下を軽く調べに行ったラダによって否定された。  

 その後、引き上げられたバラムとエリディン、マートによって中のパーティーが分断されて遭難したという情報が私たちに届くことになる。




幸運の燭台
 『石巨人の迷宮』収録シナリオ『不幸の燭台』
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