何で迷宮に潜った2パーティーが遭難したかというと、目的の違いとコミュニケーションからである。
『風を追う者』はここに入ったジェスレンの救出、新人パーティは『炎の心臓』を取ってきてくれというもので、新人パーティーは今回の冒険の為にかき集められたものである。
パーティー間のコミュニケーションどころかパーティー内のコミュニケーションすらとれていなかったのだった。
結果、中に入って別行動となって遭難したと。
ある意味冒険者あるあるである。
その日暮らしの冒険者にとってお宝独り占めの欲望を抑えるのが難しく、ある程度経験を積んだ冒険者にとって、新人冒険者が足を引っ張るのを避けたいという下心を責めるのは酷と言うもので。
中で分かれた結果、新人パーティーは美しい女性の幻影の部屋でライトニングを食らって壊滅。
一方『風を追う者』は扉の罠解除に失敗して油をかぶり、トーラムが炎上して泉に入ったら底が抜けて行方不明に。
ここで、新人パーティーの悲鳴が聞こえてトーラム救助の為に仲間がそこに残りつつ、シーフのマートに様子を見に行かせて、なんとか気絶せずに済んだバラムとエリディンを救助して入り口に送ろうとする所でラダが降りてきたという訳で。
「で、残ったみんなは生きているの?」
「ああ。とりあえず意識があった儂とエリディンを回復させたはいいが、回復魔法で全員を回復するには足りなくてな。
そんな時に彼が来て、ひとまずの避難を進めてくれたのだ」
話を聞いたラダがジーンと共に今頃残りの人間を回復させてこっちに連れて来るだろう。
私の質問にバラムが用意した昼食を食べながら返事をしてくれた。
新人パーティーにとってライトニング直撃はトラウマだろう。
とりあえず、ルーファスと共に下の遺跡に降りてみる。
『風を追う者』とはありがたい事に廊下越しに連絡が取れた。
「そっちは大丈夫?」
「落ちた仲間を助けたいんだが、マートを戻してくれないか?
探索が続けられないんだ」
「わかったわ。
新人冒険者の救助はこっちで行うわ」
そんなやり取りをしていたら、新人冒険者たちがラダとジーンに連れられて戻ってくるところだった。
彼らも上にあげて休憩させてあげよう。
「なぁ。思ったんだが」
「なに?」
ルーファスが顎に手を当てて呟く。
彼のつぶやきは言われてみるとという疑問だった。
「この迷宮、駆け出しには厳しくないか?」
「そうよね。
古代魔法王国の遺跡でトラップが生きている。
これだけでもある程度のベテランを雇うわよ」
口にしなかったが『風を追う者』ですら一人遭難者を出しているのだ。
だとしたら、新人冒険者に頼んだセリオンという男のリスク管理が失敗している。
私は、結論をあっさりと口にした。
「使い捨てでしょうね。
罠潰し要因として使いつぶして、後で彼自身が率いる連中がこっちに来るつもりだったんでしょう」
ただ、そうなるとセリオン到着後に面白い動きが発生する。
この迷宮に向かった冒険者が三組も居る事を彼はそこで知る訳で。
使い潰すつもりだった冒険者がお宝を持って帰る可能性が出てくる訳だ。
そして、宿には『最後に来る者』ギーストたちが居る訳で。
「下手したら、彼らも来るかもね。ここ」
「彼らからすると初冒険失敗はきついだろうなぁ……」
ルーファスが同情するが、この世界そういう冒険者はたくさんいる訳で。
彼らの未来は、彼らしか決められないのだ。
結局、彼らは休息の後、再チャレンジを選んだ。
「丁度いい窪みがあったわ」
レンジャーのリーマが遺跡から少し離れた窪みを見つける。
私たちは装備を持って足跡を消しながらその窪みに隠れる。
もちろんばれないように草などで窪みを隠しつつだ。
「私たちも迷宮を探索したらよかったのでは?」
マティアラの質問に私は村の方向を眺める。
誰かが来ているようには見えなかった。
「新人冒険者を雇って使い潰すような人間がすなおに報酬を払うとも思えないしね。
狭い迷宮で、背後から襲われるって嫌でしょう?」
入るならば、背後の奴の排除をしてから。
私たちが待ち伏せている事を悟られないようにという訳で。
窪みに隠れて一・二時間ほど経ってからだろうか?
村の方からこっちに歩いてくる集団が現れる。
(……いやぁ、大量だ。
まさか、ハードロックを解除するだけで、これだけの金塊を手に入れられるとは)
(……さすが、魔術師様。
我々にもおこぼれを頂き感謝しております)
(……まぁ、こっちもこの迷宮を探索するのに盗賊が欲しかった所だ。
報酬は弾むから頑張ってくれよ)
シャミナのウインドボイスで奴らの声を聴くとこんな会話である。
案の定、置いて行った金塊はしっかりとギーストに取られたらしい。
アンロックをかけたと言っていたという事は、かけた人間がセリオンなのだろう。
「さてと。
あいつらが、迷宮に入ったら背後からぶん殴るわよ」
こうして、私たちの逆襲が始まる。