冒険終了後、ロマール盗賊ギルドは揺れた。
生きている魔法装置、魔法樹の存在、それを守る古代王国時代の魔術師の亡霊化。
どれをとっても世界に残る大事件であり、盗賊ギルドはロマール魔法ギルドと連携して遺跡を封鎖。
信頼できる者たちの手にて慎重な調査が行われる事になった。
それは私たちが遺跡にアクセスできない事を意味する。
まぁ、信頼できない底辺冒険者にとってはそれでも大成功なのだが。
「さてと。
お前さんたちが得た宝物を見ていこうかの」
『奇跡の店』のおやじはルーファスに預けた銀の剣を手に取る。
「見事な剣だな。
実用にも使えるし、装飾としてもいい。
4000ガメルの価値があるだろうよ」
そのままおやじはゴブリンの宝物を見る。
「こっちはガラクタのようでそこそこ価値のある物があるな。
700ガメルって所だな」
その次は銀の食器類を調べる。
一つ一つ手に取って価値を確認してゆく。
「これは全部そろっているのがいいな。
1200ガメルって所か」
今度は家具を眺める。
古い棚やテーブルは数百年は経っているのに未だ形をとどめてしっかりとその用途に用いれる事を示していた。
「この家具は装飾もいいな。
600ガメルという所だな」
そして、おやじが竜の牙を手に取る。
「物は何度か見たことがあるが、時価だな。
魔術ギルドの魔術師ならば大金を出して買うだろうよ。
とはいえ、これは魔法使いが居るならば持っておくといい」
皆の視線が一斉に私を見る。
魔法使いとばれているからなのだが、そんな視線を気にすることなく一番のお宝である本を手に取る。
「しかし、凄いな。この量は」
「馬車で行ったのを良い事に読めそうな本は全部掻っ攫ってきたのよ」
数えてみたら90冊もあった。
中についてはこれから確認という所なのだが、どうせ読めるので写本して売っても構わないという所で来客が来た。
「その本に触らないで頂戴!」
結構大きな声で入ってきた杖を持った少女が、づかづかと店内に入って店のおやじに一枚の羊皮紙を突きつける。
「ロマール魔術ギルドのジョウイ高導師の命によって、ここにある全ての本は、ロマール魔術ギルドが接収します」
おそらくは、ロマール魔術ギルドきっての天才なのだろう。
で、年の若さが災いして、こんな仕事を押し付けられたと。
その後に魔術ギルドの魔術師や魔術師見習いが入り、本を接収しようとするのをジーンが手で払いのける。
「ちょっと待った!これは私たちが命をかけて手に入れたお宝だよ!
それを紙一枚で接収しようたぁ、どういう了見だい!!」
「この件は、ロマール盗賊ギルドも了解しています。
もちろん、ただで奪うつもりはありません。
適正な価格をお支払いする事をお約束します」
「適正な価格……ねぇ……」
底辺冒険者だから、これらの本が読めないと高を括っているのがありありと分かる。
安く買い叩かれるのもしゃくなので、私は一冊の本を手に取ってその内容を読み上げようとして……
「魔法樹『マグナ・ロイ』を用いての付与魔術。
それは付与魔術師一門の……」
あ。これやばい。
あの魔術師の日記だ。
それは、あの生きた魔法装置の取り扱い説明書みたいなものである。
その意味を理解したのは少女、名前はミシェールと後で知ったのだが彼女だけだった。
彼女も顔が真っ青である。
私はにっこりと微笑んで彼女に問いかけた。
「で、一冊当たりいくらでこの本を買い取ってくれるのかしら?」
一冊1000ガメルでこれらの本を引き取ってもらった。
つまり、90000ガメルであり、生きた魔法装置の説明書ならばこれでも安い所だろう。
ミシェールと魔術ギルドの連中が本を持って帰った後には、10000ガメル相当の宝石が九個ほどテーブルで光っていた。
「じゃあ、とりあえず報酬を分けるわよ」
私が宝石を手に取って一人に一つずつとりあえず渡す。
残ったのは、宝石3つと2500ガメルと銀の剣と竜の牙である。
「あれ?
ゼラ姐さんは宝石いらないんですか?」
「だって竜の牙みんなが押し付けて来るでしょう?
だったらもらえないじゃない」
「俺もこれ以上はいらない。
代わりに、この銀の剣を貰いたいがいいかな?」
アンデッドなど銀装備でしか倒せない敵がいるので、この銀の剣はそういう時に役に立つのだろう。
私が頷くと、他の人も異を唱えなかった。
「宝石二つはラダとジーンにあげるわ。
結婚祝いよ」
「悪いわよ」
「そうだ。さすがに俺たちだけもらい過ぎだろうに」
二人は拒否するだろうが、結婚して足を洗うなら色々出るものがあるだろうという事で強引に押し付けた。
「だったら、この宝石は姐さんが受け取ってください!」
「そうです!ゼラ姐さんほとんどもらってないじゃないですか!」
「ゼラ姐さんももっと受け取るべきです!」
シャミナ、マティアラ、リーマの三人が残った宝石と銀貨を押し付けられる。
圧が凄くて断り切れない私が居た。
「で、お前さんたちは、次は考えているかい?」
親父の声に、私はマティアラとリーマの頭を撫でながら次の冒険を告げた。
「少し休んでからだけど、この二人の里帰りの支援かな」
ジョウイ
セージ8 ソーサラー7
『死者は弁明せず』に出た最高責任者。
ロマールでこのレベルはちょっとと思った。
そういう所からも、ロマールの魔術ギルドの弱さが見える。
ミシェール
セージ6 ソーサラー5
『死者は弁明せず』のヒロイン。
24歳でこのレベルなので、多分ロマールで出た天才なのだろう。
この話では少女として登場させているのでセージ4 ソーサラー3で設定。