※この作品はR-18です。

ソードワールド1.0転艶記   作:北部九州在住

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魔宮の門 あとしまつ その1

 国が買える財宝とは何か?

 その一つを私はテレポートで返していた。

 

「じゃあ、お返しします」

 

「元は自ら手に入れたものだろうに……」

 

 私の報告にオーファン魔術ギルドの封印の間に鎮座したミスリルゴーレムを眺めながらフォルテス導師はなんとも言えない顔になる。

 無限のバッグコンボで入る物の限界は5m四方。

 なんと、このミスリルゴーレムが入ってしまうのだった。

 もちろん、それだけでなく金塊や魔晶石や宝石までオランで借りて詰め込むだけ詰め込み、返済しても金塊66個、宝石527個、魔晶石451個という莫大な財宝が手元に残る結果に。

 さらに、ソリッドスラッシュやアンバーローブがもう一つ手に入っているのだから、国が買えるというのは嘘ではない。

 

「で、お主はかの遺跡で何を手に入れたのだ?」

 

「決まっているじゃないですか。

 知識ですよ」

 

 古代魔法王国水上都市太守ハラドの知識と技術。

 その全てを得た私はディメンジョンゲートすら覚える事ができたのだ。

 まぁ、レベルが足りないのでもう少し修業は必要なのだが。

 

「あの遺跡はいまだ生きています。

 望み、挑むのならば、私と同じものが得られますよ?」

 

 私はあっけらかんと囁く。

 それをフォルテス導師は寂しそうに笑った。

 

「そのバッグを持ってか?

 考えなかったと言えば嘘になる。

 何処までこの化け物が広がるのか理解しているのか?」

 

 私が言わなかった事をフォルテス導師はあっさりという。

 そう。

 あの迷宮最後でアイテムは全て複製される。

 つまり、このミスリルゴーレムが入ったバッグも複製されるのだ。

 もちろんそれはオランとオーファンの魔術ギルドには報告している。

 私が得たもう一体のミスリルゴーレムの貸し出しすら提案して。

 私の提案にバレン導師率いる『見つける者』たちが複製された無限のバッグを持って既にあの迷宮に入っている頃だろう。

 ナノス島はゴーレムたちの警備下で灯台兼砦として整備され、この迷宮はオラン王国管理下に置かれる事が決定し、『見つける者』の次に王国騎士たちが挑む事が決まっている。

 今やゴーレム工房とこの魔戦士の修練場によってオラン王国は軍事大国化の道を進みつつあり、魔戦士率いるゴーレムの大軍がブリシス救援に向かうのもそう遠くない未来になるだろう。

 

「お前の報告書を読んだその夜、夢を見た。

 このミスリルゴーレムを操り、迷宮を走破し、全ての魔術の英知を得た自分が最後に戦う自分自身を見た。

 みっともない姿で杖とカバンを持ち、血走った目で魔術の英知を語る自分自身を見た。

 そして、心から軽蔑した。

 こんなにも儂はみっともなかったのかと。

 あの夢を見せたのはお前か?」

 

「さぁ?そんな魔法ありましたっけ?」

 

 あったりする。遺失魔法のマインドスピーチというのだが。

 色々世話になった人なので、リウイやラヴェルナに潰されるのがかわいそうだったから少し蜘蛛の糸をたらしてみただけである。

 彼が才能への嫉妬で狂う前に、その道への選択肢を提示しただけなのだが、彼は狂う事も挑む事もせずに、退く事を選んだ。

 

「このギルドの偉大なるカーウェス最高導師が現役だったころの話だ。

 このギルドにはジーニアスとミシェイルという優れた魔術師が居た。

 最高導師を目指していたが、知っての通りカーウェス最高導師がその座につき、二人は野に下った。

 その不満の声は若かった私の耳にも届くぐらいだったが、ギルドはカーウェス最高導師を認めざるを得なかった。

 その実績が不満や愚痴を全てかき消したのだ」

 

 フォルテス導師の声は穏やかだった。

 そして、年相応に老けたように見えた。

 

「何でもできる事のなんと寂しい事か。

 何でもできる事のなんと醜い事か。

 最高導師には国王陛下と最高司祭が居た。

 お主にもルーファスという剣士が居た。

 きっと、そういう事なのだろう。

 それを知るには、30年ばかり遅かったがな」

 

 ポリモルフで若い体になれるが、心まで若返る事はできない。

 体の若さと心の老いの軋轢に多くの魔術師が壊れてゆく。

 体を、人生をやり直すリスクと、知り合った人たちとの別れに心が耐えられなくなるからだ。

 

「儂の最後の仕事は、きっと最高導師が連れてきたラヴェルナを鍛える事になるだろう。

 お前がカーウェス最高導師の後を継いで、あのラヴェルナという小娘に最高導師の座を渡すまで厭味ったらしく扱いてやって、お前みたいにならないようにしてやるのが最後の仕事になるのだろうな」

 

「え?

 継ぎませんよ。最高導師なんて」

 

 私のあっさりした拒絶にフォルテス導師は年相応の苦笑で返事をする。

 まるで前々から決められていたかのような口ぶりで、私にゆっくりと頭を下げた。

 

「どうせお前はルーファスが興す国の宮廷魔術師になるつもりだろうが、それまでにこの国で王や貴族との付き合い方ぐらい学んでおけ。

 たとえ、お前の思惑がどうであれ、この国に貢献した事は国王陛下以下誰も忘れてはいない。 

 王や最高導師、最高司祭に変わって感謝するよ。

 導師ゼラニウム」




ジーニアスとミシェイル
 『名乗れ!今こそ大英雄』より。

『青き像の眠る丘』のミスリルゴーレムの安置場所。
 広さ5m四方、高さ4mって書いてあるんだよなぁ……
 まぁ、穴があってもアイデアで押し通す予定。
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