アシュリー・テイラーと名乗る彼女に、最初に驚かされたこと。
それは、日本語以外で声をかけてきたことだった。
まさか外国人に自分が声をかけられるなんて思ってもみなかったから。
ぼくに声をかけた理由を尋ねたが、ぼくは自分の知らないところで有名人らしい。
クラスの誰とも馴染まず浮いている姿が、周囲からは奇異に映っていたようだ。
彼女は言葉を続けたが、ぼくは片言が精いっぱいで、とても会話を続けられる自信はなかった。
その場を逃げ出そうとした矢先、とんでもない言葉で彼女はぼくを引き留めた。
「Could you be my friend?」
友達になってもらえないか、と。
普段のぼくだったら、そっけない態度で遠ざけていたことだろう。
だけど、はぐむんとの月咲のことがあったからだと思う。
自分のことを知らない相手になら虚を張れるかもなんて下心もあった気がする。
ぼくは彼女に差し出された手を手に取り「いえす」と答えた。
それからアシュリーとの交流が始まった。
今まで同じ学び舎に友達がいなかったぼくにとって、彼女との交流は新鮮だった。
「What is Shigure good at?」
「ア、リトルビットおぶプログラミング」
「Programming? That's awesome!」
「さ、さんきゅー……」
何が得意かを聞かれたのでプログラミングを少しと答える。
得意と断言できる趣味はなかったので自信のない回答になってしまった。
だけど、すごいと言われると嬉しくて柄にもなく照れ臭くなり、自然と笑顔を浮かべた。
はぐむん以外にこんな気持ちになるのは初めてのことだ。
だけど、ぼくは不意打ちを食らうことになる。
「Shigure is a wonder that even though it's a girl, it has a penis」
「…………」
ぼくに器官が生えているのが不思議だと言うアシュリー。
……何で彼女がそのことを知っているんだ?
呆気に取られていると彼女は言葉を続けた。
「I just happened to see it the other day.」
先日の月咲との一件を偶然見かけたらしい。
あの日、ぼくも月咲も彼女の存在に全く気付いていなかった。
先ほどまでの気持ちは嘘のように消え、警戒心で体が強張る。
しかし―――
「shigure?」
アシュリーは、はぐむんとも月咲とも態度が違う。
好奇心でも悪戯目的でもなく、ただ純粋にぼくに疑問を抱いているようだ。
ぼくの体に興味を持ったのは彼女で三人目だが、彼女から悪意は感じられない。
でも、経緯を正直に答えるのは怖くて、ぼくは嘘をついてしまった。
これは昔から生えているもので僕を悩ませている問題であると。
だから公にしたことはないし、誰にも言わないで欲しいと訴える。
懸命に説明したことが功を奏したのか、アシュリーは信じてくれた。
ぼくは礼を伝えると彼女女を信じて、自ら人気のない場所へ彼女を誘う。
場所は
ぼくが月咲に悪戯をされた放課後の保健室だ。