※この作品はR-18です。

輝姫(パロ)   作:夢枕 七変化

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中編

 ずっと私を見守り、愛してくれる私の家族。血の繋がりは無いのだと聞いているけど、私は両親だと思っているの。

 竹薮で拾ったと言われて居るけど、だとするならば私は捨て子だったのかしら。私は、それ程いらない存在なのかな。

 でもね、それでも構わないわ。だって今、私は愛されているもの。

 シャッキーには最近レイさんとお風呂に入って良い時期は終わったのよと教えられて、次に1緒に入ったら食べられちゃうんだからって言われたけど……いくら悪食でも人間は食べないと思うのよね。はっ!まさか、本気で私を蜜柑だと思ってるのかしら!?

 そんな事を考えながら、温泉宿よりも立派な温泉に浸かり持ち込んだ蜜柑を浮かべて突っついてみる。クルンと回転するかと思ったのに、ただ逃げて行く蜜柑につまんないのーと思った時物音が聞こえて視線を向けた。

 前は無かったお風呂周りの目隠しは、恐ろしい程の圧迫感を与えるけど……私やシャッキーのお風呂を覗いた人は血の海に沈むのよと教えられたから、深くは追求しない事にした。なんかね、突っ込んじゃいけない気がするのよ。

 物音のした方を見ていたら、続いて悲鳴が聞こえて来て、何かが折れるような音が聞こえて来た。なんとも物騒である。

 レイリーもシャクヤクも、年齢を考えたら親の可能性は確かに薄いわよね。そう思って溜息を落とせば、月明かりが私を包んでる気がした。

 まるで見守っているよと、愛しているよと言われている気がして……不思議な気持ちになる。月に、帰っておいでって言われてる気がするの。

 そうなるともしかして、本当に私は人とは違うんじゃないかって……そんな事を思ってしまう。まぁ、もしもそんな事言ったら、私の血の繋がらない両親は月さえ撃ち落としそうな気がして言えないけど。

 これが……誇張なら良いのに。この間も私への求婚者を全員追い払って、それでも残った五人の貴族に無理難題を言い渡したらしい。

 当然誰もクリアなんて出来なくて……。被害者の中には、笑い者になってる人も居るらしいのよね。

 何が悲しいって……もしそれで、その試練を乗り越えるのがいたら……本当に私を誰かの〝お嫁さん〟にしてたかもしれないって考えちゃうところ。それに、その人達に申し訳ないのよね。

 人の噂は誇張されてるから本当かは分からないけど、怪我した人がもし、レイさんやシャッキーを怨んだら……二人に何かあったらと思うと、それが怖いの。……何よりも、人様にご迷惑かけるなんて許されないわ。

 

 「なんだ、入ってたのか」

 「あ、レイさん!いい湯加減だよー」

 

 声に反応して振り向けば、タオルで隠す事さえしてない育ての父がいる。……うん、いい身体してるわ。

 無駄な脂肪とか無いし、だからって痩せ細ってるなんて事も無い。明らかに他の人達よりも背も高いし、顔だって……悪くは無いと思う。

 問題はなんか少し汚れてるところかな。こんな時間に何処へ行ってたんだろう?

 

 「そんなに見詰められると、照れてしまうな」

 「怪我、してない?」

 「おや?血は流さずに始末した筈だが、何処かについていたかな」

 「……何したの」

 「蝿をね、始末して来ただけだよ」

 

 蝿なら確かに血は流れないわよね。うん、汚れるのもわかる。

 まさか覗いてる人がいて、それを血の粛清って感じでなんかしたんじゃないかって疑っちゃった。私が虫嫌いだから、蝿を始末してくれただけなのね。

 

 「疑ってごめんね」

 「ナミは、そんなに結婚したかったのかい?」

 「したくないわよ」

 「おや、では何故、私が求婚者追い払った事をあれ程詰ったんだい?」

 

 問い掛けてくるレイさんの気配が少し怖い。でも、私はそれから逃げてはいけないと知っているの。

 怖い空気の時も、ちゃんと話せば聞いてくれる。でも、逃げたらいつも酷い目にあってきたから、私は素直に言葉を伝える事にしている。

 

 「だって……レイさんやシャッキーが恨まれちゃう。大切なのに、私はなにも出来ない。傷付けられる姿は、見たくないもの」

 「そんなに甘い事を言っていると、調子に乗って私がナミを貰ってしまうよ」

 「……?私は、最初からレイさんのものよ」

 

 意味がわからなくて首を傾げながら告げた瞬間、レイさんが湯船に浸かりその勢いのまま私を強く抱き締める。それが心地好くてホッと息を吐き出したら、レイさんの顔が近付いてきて……直後に飛んできた手桶がレイさんの頭に直撃した。

 

 「レイさん?まだ、駄目よ」

 「そろそろ食べ頃だろう」

 「その食べるの意味も分からない子供に、手を出すのは許さないわ。ほら、さっさと出る!続きは私が楽しむんだから」

 

 そう言って頭を押さえるレイさんをシャッキーはシッシッと追い払い、私はそれを無言で見送った。そうして2人になった時、口をついて出たのは私の本音。

 

 「私、お嫁さんになんて、行きたくない」

 「ナミ」

 「私、2人の傍に、ずっと居たいよ」

 

 そんな私を優しく抱き締めて、シャッキーは大丈夫よと言ってくれる。私はただ、この場に居たいと願っているだけ。

─────

 人様に迷惑かけちゃヤダ!!と、可愛い事を言われたあの日から数日。シャッキーには叱られたが、あの時は襲っても別に問題はなかっただろうと思うのだがね。

 ……いや、ハジメテはもう少し雰囲気を出してあげた方が良いのかも知れないがな。シャッキーと二人で過ごす時間が多くなりつつあるナミを、どうにか私の元に引き戻したいと願いながら、私は目の前で小さな身体を必死に動かしているそれを眺める。

 

 「今日は何をしているんだい?」

 「蜜柑の寒天作ってるの。後で皆で食べましょう。……そう言えば、誰か、雇うの?」

 「いや、他人は家にあまり入れたくないから、そんな事はしないよ。突然どうしたんだい?」

 「ううん。ただ、少し不安になっただけよ。……でもなら、まだ三人で居られるのね」

 

 嬉しそうに笑うナミに、私の限界はそろそろ来るのだろうと自覚する。それをわかっていて、ギリギリまで耐えろと意地悪を言うシャッキーは私に見せつけるように、目の前でナミの頭を撫でながら存分に甘やかすのだから狡いと思うのだよ。

 

 「……愛しているよ、二人とも」

 「あら、珍しい」

 「私も、二人とも愛してるよ!!だぁいすき!!」

 「……私、永遠にナミには勝てない気がするわ」

 「奇遇だな。私もそう思うよ」

 

 そんな会話から笑い出す私達に、ナミは小首を傾げる。こんな幸福がそう長くは続かない事を、きっと誰もがわかっていて、そのぬるま湯に浸かっていたいと願っていた。

 その日は、隠しておいた玉露を取り出して三人で寒天を食べる時に合わせて用意したが、後悔はない。いや、梅昆布茶にすべきだったかもと言う意味では、後悔したがね?

─────

 レイさんが人様にご迷惑をおかけしたらしい事を知って半月程した頃、この国の王様……帝と呼ばれる人のお使いが来た。その人は内侍中臣房子って名前らしい。

 勿論それはレイさんが門前払いした。いやもう、文字通り本当に門を通さなかったのよね。

 それでもめげないと言うか、お仕事に忠実と言うか、それからも毎日のようにその人は来た。来る度に色々持って来るけど、それに対して持ってきた物を貰うだけ貰って追い返すレイさんって、本当にがめつ……いやいや、凄いと思う。

 

 「シャッキー、あれってどうなの?」

 「いいんじゃない?だって、あの子はモンキーちゃんのお使いだもの」

 「モンキーちゃん?」

 

 親しい人なのかな?

 あれ?

 でも確か、あの人は帝さんのお使いって言ってた気がするわ。そうなると、帝さんはモンキーちゃんって名前なのかな?

 

 「レイさんの昔の弟子よ。だから、いいの」

 「……帝さんが弟子なんだ。凄いね」

 「どれ程偉いと言われてる人も、人でしかないのよ。必ず親もいれば師匠もいるの。だから何も凄くなんてないわ」

 

 帝と言うのが位を意味するから、さん付けしたらおかしいらしい事をそのついでに説明される。でもって、この国で1番偉いから様はつけても良いけど、基本的には帝って呼ぶのが正しいらしい。

 それにしても帝の師匠って……レイさんがそんなに凄い人だとは考えてもみなかった。でもなら、なんでこんな山奥で竹細工の職人してんだろう。

 そう思うけど、問いかけるより早くシャッキーがレイさんの頭を殴りに行ってしまったので、それを見送る事になった。そんな騒動もあり、不安は募ったけどそれよりも幼い頃から余裕しか見せなかったレイさんが苛立つ日が増えていて、それがつらい。

 私のせいなのかなってどうしても不安になるから。……でも、それよりも怖いと感じるのはレイさんから最近向けられるようになった眼差しだと言う謎。

 ……どうして、レイさんが怖いんだろう。私の事をこんなにも、大切に育ててくれた人なのに。

 ひとりで部屋に篭ってしまったレイさんにそっとお茶を運んだら、それだけで射すくめられる。でも、逃げたくないと部屋に入って机にお茶を乗せた。

 

 「ナミ」

 「レイさん?」

 「もう、無闇に近付かないでくれないかな。私は、ナミを無惨に引き裂いてしまいそうになるのだよ」

 

 その言葉で、なんで最近レイさんがおかしかったのか漸くわかった気がした。持て余した感情で、私を傷付けないように必死で抑えてくれてたんだ。

 だけど、私はそれが怖くない。だって、レイさんになら何されても嫌じゃないもの。

 だからと思って無言で伸ばした手は、簡単に捕らえられてしまう。その瞬間、その瞳に壊れそうな心を見てしまった。

 

 「レイさんになら、引き裂かれても構わないわ」

 

 その眼差しだけで、喉元に食いつかれてるような気がしてしまう。なのに、言葉は勝手に紡がれる。

 

 「私は、優しくはないよ」

 「なら、私が優しくするわ」

 「……愚かな子だ、もう、逃がしてはやれないよ」

 「逃がさないで、ずっと……傍に置いて……」

 

 本当に怯えているのは私じゃない。優しくないと言いながら、優し過ぎるこの人だと私は知ってしまっているの。

 だから私も本音で紡ぐ。シャッキーの事を悲しませたくはないけど、私はレイさんの事を失えない。

 そもそも、私を拾ったのはレイさんだもの。私の全ては、レイさんが好きにしていいのよ。

 

 「……シャッキーの事は、気にしなくとも構わない。既に、了承は得ている」

 

 その言葉と同時に重ねられた唇。けどそれは、私にはある意味未知の領域で、だからこそ身体が勝手に震えてしまう。

 だって、こんな感覚知らない。身体から力が、抜けてしまう程に……。

 

 「んっ……あ……きも、ちぃ……」

 「……遠慮は、しないよ」

 

 思わず声に出してしまった私のそれは、レイさんを何故か苦しみと悲しみ、そして喜びの渦に落とした様子だった。そんな時に、私が微笑んだのは何でだろう。

 ただ分かるのは、私はレイさんが愛しいと言う事だけ。レイさんの傍から離れたくないという事だけなの。

 唇が離れた時、レイさんは私を見て、苦しげに言う。まるで悪い事でもしてるみたいに、つらそうに。

 

 「私は、ナミを全ての厄災から守るつもりだったのだが……私が厄災になろうとしているね」

 「レイさんが厄災なら、私は喜んで受け入れるわ」

 「本当にこの子は……私を翻弄する、天才だな。愛しているよ、ナミ。名を、呼んでごらん」

 

 顎を抑えられて、覗き込まれて、逃げる事を許さないレイさん。そんな状態で言われた言葉に、私は内心で首を傾げる。

 

 「レイさん……?」

 「違うだろう、ナミ」

 「……レイリー?」

 「いい子だ……」

 

 言われるがままに名を呼べば、レイリーは私を優しく撫でる。その手が微かに震えていて、なのに指先から慈愛が伝わるから、私はその身体に抱き着いて想いを伝え返したいと願ってしまう。

 私がどれ程レイリーを愛しているのか、必要としているのか、伝わって欲しい。シャッキーの事も大好きだけど、その想いとこれは、何処か違うと知ってしまったから。

 誰にもこの人を傷付けないで欲しい。私の全てで守りたいと願っているのよ。

 

 「愛してるわ、レイリー。だから……好きにして」

 「末恐ろしい子だ。もう、泣いても許してはやらないが、覚悟はいいね?」

 「レイリーに拾われたんだもの。私はレイリーの取得物よ。……不法投棄は立派な犯罪よ、翁」

 

 そのまま隣室に用意されていた寝具に寝かされ、私は痛みを覚悟する。けれども与えられたのは恐ろしい程の羞恥と快楽、そして……幸福感。

 優しくないと言いながら、優しく甘く与えられるそれは、理性も自尊心も全てなぎ払われてしまうようなもの。その最中幾度も呼ばれた名は〝輝姫〟では無く、家族だけが呼ぶ〝ナミ〟と言う諱。

 後にレイリーのその名も諱だと知ったけど、今更他にどう呼べば良いのか分からなくて……困ってしまう。そのままで良いと、何があっても手放さないと誓うように告げてくれたレイリーは、もう、その瞳に悲しみや痛みを宿らせてはいなかった。

 ……その翌日、シャッキーにボコボコにされて庭にレイリーが庭先に干されたのは、なんとも言えない気持ちにさせられてしまったけど。そんな日の午後、今度は私に会いたいでは無く、レイリーに出向けと命令がくだる事となったのは何の因果なのか。

─────

 面倒だと思いながらも呼ばれるままに従ったが、内心嫌々であったのは間違いない。それでも、ルフィは弟子だからね……。

 このヤンチャな少年がアイツの跡を継いでこの国の王となったのは、どんな因果なのか。のんびりと余生を過ごすつもりだったと言うのに、老体に鞭打つとは本当に困った子だ。

 

 「ひっさしぶりだなァ!!会いたかったぞー!!んで、何で会わせてくれないんだよ」

 「表向きは私の娘だからね」

 「なら、俺が召抱えて何の問題もねェじゃんか。寧ろちょうどいいだろ。あ!お前達下がってろ」

 「表向きと言っただろう。正確には、私の女だよ」

 

 人が消えたのを確認して、私が告げた言葉に少年は首を傾げる。この子は妙な所で幼い。

 素直に告げた真実に、私は少年……ルフィが簡単に引き下がるとばかり思っていた。しかし、アイツに似ているのはその中身までだったようで、ニンマリと笑うそれに嫌な予感しかしない。

 

 「なら、その後でも良いぞ。俺は嫁取り急いでねェから」

 「何を、言っているのかな?」

 「レイリーはさ、シャッキー以外の女にこれ迄長く入れ込んだ事なんて無かったろ。なら、その輝姫を俺にくれるのは、レイリーが飽きてからでいいって言ったんだ。だからさ、とりあえず会わせろよ」

 

 この時程、これ迄の自分の行いを恥た事は無かったし、この国の文化が時代により異なる事を痛感させられる事はない。とりあえず、諦めさせる為に会わせるのが早いだろうか。

 因みにこの時代、性に関しては本当に奔放であり、父親が誰だか分からなければ、その中で1番都合のいい相手に〝あなたの子です〟と言えば、言ったもん勝ちな時代でもあった。なので、女の讓渡等は差程珍しくも無い事案である。

 男が気に入った女の家に通う時代であるのだから、当然何人もの男が通う事も珍しくは無い。その為、ルフィの言い分には何らおかしな所は無いのである。

 

 「……私の子を孕んでたら問題だろう」

 「何言ってんだ?子供産めるって証拠になるし、レイリーの子なら問題ねェよ。その子と俺の子で、この国の未来を支えて貰おう!」

 「輝姫は、私の女だよ。手放すつもりは無い」

 「ならよ、レイリーの北の方(正妻)にするつもりなのか?」

 「それは……」

 

 私が言葉に詰まれば、ルフィは楽しそうに笑う。会ってみて駄目なら諦めるからよ!なんて言いながら。

 北の方でさえ無ければ、下げ渡しや讓渡も多かった時代において、帝からのこの提案を拒む事は不可能だった。それにより溜息を落とせば、ルフィは楽しみにしていると笑うばかり。

 仕方なく帰宅後それとなくナミに、紹介したい人物がいる事を告げてみれば困ったように笑って言った。本当に、よくできた子だ。

 

 「レイさんが、それを望むなら……ね。でも、レイさん、本当は会って欲しくないんでしょ?」

 「……バレたか。では、他に私の望む事はわかるかな?」

 「うーん。……お腹空いた?」

 「正解だよ。さて、可愛い蜜柑を食べさせておくれ」

 

 そう言ってレイリーがナミに襲いかかったのは、既に必然。翌朝眠っているナミを横目に文を認め、使いを送ってから再びナミに襲い掛かり……ナミが熱を出した事でシャクヤクに縛り上げられたのはご愛嬌。

 看病しているシャクヤクは、邪魔者は居ないわよと優しくナミの傍についていて、ナミは久方振りの安眠を得たのであった。家からさえ基本でない少女との体力差を考えれば、当然の結果であったとも言えるだろう。

─────

 届いた書状を見て、帝……ルフィは笑う。余計に欲しくなったと思いながら。

 隠されれば見たくなる。それも他人に中々執着しない師匠が、姫の代わりに筆を取ってまで会わせまいとするとなれば……。

 

 「極上の女だろうな……」

 『帝がお召しになって仰られたとしても、畏れ多いとも思いません』

 

 これは、間違いなくレイリーの手だ。見慣れたその文字を間違える筈もない。

 つまりは、輝姫と本気で会わせないつもりで居るって事だよな。そうわかっていて、ルフィは素知らぬ振りで返事をしておいた。

 

 『多くの人を殺してきた心であるよ』

 

 そう返事を出して、レイリーに揺さぶりをと試みたが相手が悪い。頑なに会う事すら断るレイリーに、それこそレイリーが求めた女なら最高級なのは分かりきってるのに勿体ぶるなよとルフィは思う。

 数年なら待ってやるのに、何が不満なのかと不満を胸に宿していた。どちらにしても、レイリーができなくなれば下げ渡すしかねェだろうにさ。

─────

 その頃ナミは、レイリーにはらはらと泣いて見せていた。ナミとしては恋人に突然、他の男に嫁げと言われてるようなものだから仕方の無い事でもあるだろうが。

 

 「無理にお仕えさせようとなさるならば、消え失せてしまうつもりです」

 「仕えろなんて言う筈が無いだろう。ただ、私にも立場があるから、1度顔を見せて諦めさせて貰えないかと「レイリーは、私が帝に、レイリーにされてるような事されてもいいの?」」

 「良いなんて、私が言うと思うのかい?ナミは、私だけを知っていればいい」

 

 無駄に熱苦しい二人の時間は、終わりが見えなかった。それでもこのままには出来ない事もレイリーはわかっているのだ。

 ルフィはナミと会わせなければ、そろそろ乗り込んで来るだろう。幼い子を愛でるナミの様子を見るに、ルフィに簡単に騙されて着いていきそうな所が怖いから、お膳立てした所で会って終わりにして貰いたい。

 嫌々ながらも、帝に会って貰ってから諦めて貰おうと考えるレイリーと、会えば確実に自分のモノに出来ると信じて疑わないルフィ。二人はどうにか、帝と輝姫を会わせようと考え始めた。

 思惑は正反対でも、途中経過としては同じ事を望んでいたのだ。そしてルフィとレイリーは、狩りに行幸するふりをして会う事を決め、そして……その作戦は成功する。

 家の中で琴を演奏しつつ歌う輝姫を見たルフィは、心を奪うつもりが奪われた事を理解する。これ迄に見た誰よりも美しいその姿に手を伸ばした時、輝姫は光だけを残して姿を消した。

 レイリーとシャクヤクに育てられたナミは、剃と月歩を使いこなして触れられる直前に逃げ出しただけなのだが。だが……それがルフィの心に火を付けた。

 それ迄よりも強く、素晴らしい女だと思い、気持ちを抑えられなくなる。家の中で始まった鬼事にシャクヤクは眉を寄せたが、直後に面白いわと笑みを浮かべた。

 

 「良い女が居るんだから、男達が争うのは不可抗力よね」

 

 これで諦めて貰える予定だったレイリーは、どうしたらいいんだと頭を抱えるばかりである。そんな様子もまた、シャクヤクを喜ばせた要因であるのだろうが。

 結局ナミはルフィに捕まる事無く、逃げ果せる。ルフィは次こそ捕まえてやるからな!と言い残して去って行った。

 それからは、とりあえず意思疎通を図る為にルフィはナミとの文通を始めた。こうして輝姫は帝と言う文通友達を手に入れ、愛しい翁とその相方の傍で幸福な気持ちのまま三年の時を過ごしていく。

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