BanG Dream! NIGHT STORY 作:黒マメファナ
①輝石の色は、黒曜
──この人は、
「……やめて、ください……」
「……あ、す、すまない。久しぶりにキミに会って……ボクも舞い上がっているみたいだ」
「あ……え、えっと……その……」
「困らせるつもりはなかったんだ。この通りだ、許してくれないだろうか」
「べ、別に……困って、なんか……いませんから」
いっそ見惚れてしまう程、キレイに腰を45度折って謝意を示されてしまい、益々本当の気持ちが宙ぶらりんになってしまう。
この人と一緒に歩いて、話して……もう半年も経つのに、本音が言えず、一体何度この謝罪を目にして、目を伏せる動作を繰り返しているのだろう。考えていたらまた、自己嫌悪が膨れ上がって、彼の顔を見れなくなってしまう。
「キミは優しいな。いつも、こうして罪を赦してくれる」
「……貴方の、言葉はいつも……大袈裟です」
「大仰なものか! ボクはいつだってキミをまっすぐ見つめているさ!」
「……そ、そういうところが……大仰なんです」
彼はまっすぐな好青年、という印象が常に付き纏うし、わたしもその通りだな、と思う。真面目で正義感が強く、意志も強くて……就職した会社でも、早速上司に気に入られたみたいで……なんだか「完璧な人」というイメージがある。そんな彼の唯一後暗い……と思っていなさそうだけれど、後暗い経歴は……
高校生と付き合っているなんて……彼はどう思っているんだろうと、一度、勇気を持って切り出したことがある。
「関係ないよ。ボクはキミに惹かれた。年齢や、場所、総てを飛び越えて、キミに惹かれたんだよ。邪推に耳を貸す程、ボクは浅ましくはない」
──迷いもない言葉は素直に、カッコイイ、と思った。世間体よりも自分の気持ちにまっすぐになれる彼は、格好良い。
「……んこさん、
「……あ、す、すみません……ぼーっと、しちゃって……」
「何か悩みがあるのなら、遠慮なくボクに言ってくれていいんだよ。恋人として、燐子さんを知りたい」
「いえ……悩み、というわけでは……」
この人の中で、年齢はお互いの序列を決めるものではない。相手が世間的に
──けれど、悩み、ではなく不満がある。もしかしたらわたしの取り越し苦労なのかも知れないから、怖くて口に出せない、小さな不満が。
「それより、ボクの家で勉強……の日だね」
「……はい」
「そんな声を出さないで……これは、燐子さんのためなのだから」
優しい声、けれどその優しさの奥にある感情を読み取って、少しだけ俯いてしまう。彼とのふたりきりの時間、勉強……この先のことを考えると、少しだけ億劫だ。
彼の住む家はわたしの家からそれほど離れていない。大学生の時から住んでいるアパート、親元を離れて独り立ち……わたしにはできるか不安なのに、彼はもう何年もそんな生活をしている。
そんな彼がわたしに恋人になってほしい、と口説いたのは、まだわたしが高校一年生の秋口のことだった。
たまたま、わたしがあこちゃんと買い物をしていた時に財布を落とし、それを彼が届けてくれたことが始まり、その時、彼はわたしを……わたしの服をじっと見ていた。
「その服、もしかしてオーダーメイドかな?」
「……え、お、オーダーメイド……じゃなくて、じ、自分で……」
「自作でこの完成度……! よかったら話を聞かせてほしい!」
「……あ、え、そ……そんな……」
彼はこの時、わたしを大学生だと思っていたみたいで、最終学年で、卒業研究に行き詰まっていた彼は研究素材としてわたしを選んだ。迷ったけれど、詳しい事情をあこちゃんが一緒に聞いてくれて、悪い人じゃないという言葉に押され、彼の研究を手伝うことになった。
「よかったら、ボクもそのRoseliaの衣装を考えさせてくれないかい?」
「それは……研究だから、ですか?」
「……どうだろうね。キミと一緒にいることが、居心地いいのかも知れない」
「そう……ですか……」
半年にも満たない程の短い、けれど濃密な時間を、彼と一緒に過ごした。今まで男の人に恐怖感を抱いていたわたしだったけれど、その時間は彼の言葉通り居心地が良くて、いつしか……恋に落ちていた。
「ありがとう、燐子さん! おかげで、教授方にも褒められてしまったよ」
「おめでとう、ございます……」
「……それで、なんだけど。ボクは、このまま燐子さんと会えなくなってしまうのは……寂しい」
「え……?」
だから……と、彼は珍しく歯切れ悪い言葉で、わたしから目を逸らしながら、「付き合ってほしい」と、一言……そう、わたしを好きだと言ってくれた。泣くことしかできなかったけれど、きっとわたしが弦巻さんや戸山さん、あこちゃんのようなヒトだったら、飛び上がる程……嬉しかった。
──それから春が来て、夏が来て、それももう過ぎようとしている頃、わたしは何度目かの彼の家を訪れていた。
「お茶を出すよ……少しだけ待っていて」
「……はい」
社会人となった彼の背中は、初めて会った時とちっとも変わらない。広くて、大きな……優しい匂いのする背中。
待っていて、と言われたのにやっぱり待てなくて、わたしは彼の腰に手を回し、息をゆっくり吸ってゆっくり吐いた。
「……今日は、勉強を見る約束でしょう?」
そんな言葉が頭上から降ってくるのを、わたしは首を横に振って拒否する。もうすぐ学校が始まってしまうから、学期始めの実力テストを乗り越えるために彼は家に上がることを許可してくれた。わかってる、わかってるけれど……それ以上に、恋人との逢瀬を、蜜を味わっていたい。そう、期待してしまう。
──もうすぐ学校が始まってしまうからこそ……沢山愛して、ほしい。
「……こうして、いるだけです」
「キミの嘘がわからない筈ないだろう? これはキミが誘う時の仕草だ。このままでは机ではなくベッドに向かってしまう……悪魔の誘い」
「す、すき……ですから」
「ボクだってキミを愛している。けれど、その性欲に任せてキミを手折ることを、ボクは是とは思わないよ」
いつもよりも難しい言い回しをする時は、大抵焦っているか、困っている時……そんなより理屈っぽく、空々しい言葉を羅列されてしまうと、わたしは不満が溜まってしまう。無意識的に頬を膨らませてしまう。どうやらそんな子どものような仕草も、彼には愛らしく写っているようで……また不満だ。
「……燐子さん」
「嫌、です……」
「未だ何も言っていないよ」
「ここで触れてもらえない……なんて、そんなに……わたしに魅力はありませんか……?」
いつもよりも大胆になって、彼を煽っていく。正直、自分に魅力があるとは思えないけれど……再三彼に「キミは魅力的な女性なのだから──」とまるで同じ舞台を見ているように聞かされているせいで、つい、こんな言葉が出てしまう。
──どちらかと言うと、氷川さんや友希那さんのようにスレンダーな方が、魅力的だと思うのだけれど。
「……っ! キミはそうやって……!」
「質問に……答えて、ください」
「……魅力的だよ。キミは……いっそ触れることを受け入れてくれることすら奇跡だと感じる程に……」
「だったら……」
「けれど、今日はダメだ」
「……そんな」
離れていく彼の背中を見ながら、わたしは肩を落とした。触れてほしいのに……それだけじゃない。触れる時も、まるで壊れ物を扱うかのような手つきで、わたしに触れる彼が、とても不満だった。
──宝石のようだから、彼をそうさせているのだとすれば、いっそ……そんなあらぬ妄想に思考を馳せていると、彼はスマートフォンを見て、溜息をついた。
「急用だ……少し、出てくるよ。キミは勉強の用意をしててくれ……いいね?」
「わかり……ました」
慌ただしく去っていく彼を見送りながら、わたしもまた、溜息をついた。否、それは溜息ではなくて……吐息。身体が熱い。一瞬だけ彼が見せた、情欲の篭った視線に焼かれてしまったように、わたしはふらふらと覚束無い足取りでトイレに入った。
「……やっぱり……濡れて……ぁ♡」
下着を降ろし、そこから粘液の糸が引くのを見た瞬間、熱は更に上がる。便座に座り、スカートをたくしあげ、ソコに触れる。くちゅりという水音と共にぞわぞわと腰や背中に快感が昇ってくる。こうなったらもう……止まらない。
「……ん、こんな、の……だめ、なのにぃ……♡」
直ぐに自慰をする指は加速し、膣の浅い部分を擦り、陰核に愛液を塗りたくる。彼は絶対にしない指遣い。卑猥で、淫らな……秘所を刺激し激しく蠢く指が……きもちい。
「あ、あぅ♡ もっと、もっと……♡」
ぐちゅぐちゅと個室にいやらしい粘液が混ざって泡立つ音が響く。反響するそれは、わたしの脳を揺らし、より淫らに染めていく。もっとほしい。もっと、もっと……優しくなんてなくていい、
「は、ぁん、やぁあ♡ だめ、止まら、ない……♡」
妄想の中で、彼に責められる自分を想像していた。嬲られ、それに嬌声を上げるわたしを、どんどん追い詰めるように……触れてくれる、そんな妄想が、わたしの自慰を更に激しくさせた。
「ひぁ、ん、ぅあ……♡ あ、そろそろ……イッちゃ……ぁ、んぅ……っ♡ は、ぁ……はぁ……♡」
──しかし、妄想は妄想で……絶頂し、指が止まれば夢想の中の彼は触れてはくれないし、ましてや指よりも奥まで入ってくることは、ない。だから、結局はまたやるせない欲求ばかりをトイレから持ち帰って、ソファを目指した。
「……あれ、もう、帰って……?」
そこにはよく見知った彼の背中があった。その姿に、下腹部が熱を持つ。そしてこの時わたしはちょっとしたイタズラを思い浮かべてしまったのだった。
──後ろから抱きついて、キスをねだって、困らせてしまおう、と。触れてくれないのなら、せめてそれくらいで、不満を解消しよう、と。
「……魅力的だと言うのに、放置は……ひどいです……せめてキスを……っん!?」
その目論見はあっさりと打ち砕かれ、次にわたしが感じたのはぬるぬると口内を這い回ってくる、彼の舌。待ちに待った、淫靡な、男女の睦みあい。いつもよりも強引に捩じ込まれる舌を、わたしは夢見心地で受け入れていく。
「ん……ぅ、ぁ……♡ ちゅ、れろ……♡ はぅ、もっと、くら、さ……んっ♡」
こんなに激しく、まるで奪われるようなキスは初めてで……頭がぼーっとしてくる。そうしているうちに、彼はわたしの手を自分の股間に誘導してくる。もう固くなっているソレを、ズボン越しに撫でて、開かれたチャックから現れたものを、直接触れていく。
「ん……ちゅ、もう、大きく……なって、んぅ♡」
……でも、キスが終わって、ふわふわとなる頭でも、わたしはとある違和感に気づいた。知ってる背中、知ってる手、だけど……シャツの色は
「あ、ん……こんな、格好、嫌、です……♡ やぁ……みみ、なめないで……ください♡」
臀部には先程まで触っていた男根がわたしを貫こうと待ち構えており、まるで嬲られ、犯されるような愛撫に、どんどん被虐的な思考に染まっていく。はやく、はやく、脚や胸だけじゃなくて……秘所に、触れて、指でかき回してほしい。それだけじゃなくて、大きくなった肉棒で……貫いてほしい。犯してほしい。いつの間にか、わたしはM字に脚を開き、彼の指を愛液に満ちた秘所に誘っていた。
「ひ、ぁ……♡ ゆび、あ、ん……ぅ♡ そ、そんな……かき混ぜたら……ぁ♡」
もう我慢しきれないのか、指を抜いて、わたしを抱き寄せながら、彼は対面座位の格好で肉棒をあてがい……そして
「ん、ぅ♡ だめ、だめです……ゴム、付けて……っぁあ♡」
けれど、ズンズンと膣を押し広げられ、わたしは情けない嬌声をあげてしまう。おかしい、いくらなんでも……彼がこんなことするはずがない。そう思い顔を上げると、今度は唇を奪われ、激しく突き上げられてしまう。
「んぅ、ん、んん……っは、あ、れろ♡ や、これ、だめ……いっちゃ、イッちゃい……ます、んぅん♡」
「……
「……え、っあ、や、だ──っぅ♡」
イク寸前に見えたのは、彼と瓜二つ、けれど……髪色がやや明るくて、前髪の長いヒト。
──彼ではないヒトに、わたしは、身体を貪られてしまった。そんな、つもりじゃ……なかったのに。
「は……ぁ、だ、だれ……です……か、ん、ぅ♡」
「……なんだ、やっぱり、弟はオレのこと、話してないんだな」
「あ、あんっ♡ お、とう……と……?」
「そ、オレはアイツの双子のにーちゃん、ってこと。よろしく♪ 白金燐子ちゃん?」
「っ、いや、やだ、突き上げ、ちゃ……♡」
「いやいやむりむり、燐子ちゃんのナカ、良すぎ……射精すよ……っう」
「え、や、ぁ、あっ、んぅ……あ、やだ、いや……ぁ」
ビクビクと肉棒がナカで震えている。熱い粘液が吐き出されている。
──犯されてしまった。本当に、彼ではない、別の人に……。
「……はは、これから楽しくなりそうだなぁ……?」
これが……わたしの、大きな、アヤマチ。全てが狂い始め、全てが始まる……その序章だった。