※この作品はR-18です。

BanG Dream! NIGHT STORY   作:黒マメファナ

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①清楚で淫らな彼女

 大学に入って、僕は彼女に恋をした。つややかな黒髪に、いつも清楚な佇まい。ゴシックでかわいらしい服装とそのスカートから伸びる夏も装着している黒タイツ。まるで深窓の令嬢かと思う一つ年上の彼女……白金燐子さんの秘密を知ったのは、秘めた想いをエネルギーに僕がストーカーまがいのことを始めてから少しした時だった。

 ──彼女は毎週金曜日にいつも、二階建てのピアノレッスン棟の最上階奥にいる、そんなことを知って、ぼくは先回りをして隣のレッスン室にいた。空きコマのその時間にはレッスン室は自由に解放されていて、自主練習に励んでいる。きっと彼女も、控えめで目立たないこの位置で練習をしているのだと思った。思って、そのピアノの音に耳を済ませようと、陣取った。

 

「……あれ?」

 

 ドアの隙間から見えた彼女に違和感があった。こそりとドアに近づき後ろ姿を伺うと……ついさっき、トイレに向かう姿を見かけた時には履いていたタイツを履いていなかった。ローファーだった靴もハイヒールのサンダルになって、それに今日はくるぶしが見えるくらいだったはずなのにセーラーのワンピースで揺れる膝上丈のスカートからは白い太腿が強調されていた。

 どうして? と疑問に感じたけれど、美しい旋律が流れ始めたため、僕は壁に耳を寄せるようにしてその音に聴き惚れていた。

 

「美しいな……白金さんの音……」

 

 引っ込み思案なのかあまり表情が動いているのは見かけない彼女とは裏腹に、旋律は様々な感情を見せてくれる。激しい旋律、優しい旋律、どれも彼女の指から奏でられるということに僕は感動すら覚えていた。

 ──誰のためでもない、僕しかいないコンサートに没頭していたその時、その世界に向かって僕のレッスン室を通り過ぎる人影がいた。男の影、おかしい、その先には彼女のレッスン室しかない。それなのに、僕が盗み見た後ろ姿は、あっさりと彼女だけの、僕だけの世界の扉を開き、踏み入った。

 

「燐子」

「あ……今日は、早かったんだね……」

「おう」

 

 いつも他者と距離のある彼女に対して、近い距離を保ち、また彼女もやや砕けている男に僕は全身に汗をかいた。

 また音楽が奏でられ始める。男とおしゃべりをしながら跳ねた楽しげなリズムが僕の耳に届いた。

 

「ねぇ……今日は、何の日か……覚えてる?」

「忘れちゃったな」

「……そっか」

「冗談だよ……記念日でしょ?」

「……うん、覚えてて……くれたんだ、嬉しい……な」

 

 呆然としている僕をよそに、ついにその音が、彼女の美しい音楽が、止まった。それと同時にナニカが聞こえて、僕はより一層耳を壁につけ、その正体を探る。

 ──すると僕は、また驚愕に言葉を失った。

 

「んむ、ん、ちゅ……は、れろ……あ♡ 」

「ん……もっと舌、出して」

「……はい♡ んぁ……あ、はぁ……♡」

 

 リップ音だ。唇と唇が触れ合う音が隣から響いてくる。それだけじゃない、喘ぎ声、彼女の艶やかな声が、口を開けて舌を出したままの舌足らずな、もっと、という声が、彼女がディープキスをしていることを悟らせた。あの清楚で大人しい彼女が……ガラガラと足元を崩されるような気持ちだった。

 

「やらしい顔……それに、言った通り、着替えてたんだ」

「んぁ……あん♡ や、ひぁ♡」

「チェックしてやんないとな、ほら立って……捲れ」

 

 乱暴な命令口調に一転する。まるで彼女を弄ぶような辱めを命じる男に僕は怒った。だが彼女はまるで分かっていたかのように、はいと呟いた。まさか、と思って固まっていると、男は感嘆の声を上げた。

 

「ちゃんと……な(・)に(・)も(・)履(・)か(・)ず(・)に(・)これたな」

「はい……♡」

「触ってわかってるけど胸まで捲って見せろ」

「……ん、どうぞ♡」

 

 彼女は羞恥することも躊躇うこともなく、見せたのだろう。男が満足そうに言う通りにできたな燐子、と優しい口調で彼女を褒めた。やめろ、これ以上は、やめてくれ。聞きたくなければ耳をすませなきゃいいのに、聞かなくていいのに、僕は可憐で清楚だと思っていた彼女の、媚びるような甘い嬌声を聞かされた。

 

「……あ♡ や、んっ♡ は、ぁ……♡」

「もう乳首コリコリだな……ノーブラノーパンで歩いてきた感想は? どうだった?」

 

 これ以上彼女を辱めないでくれ。さっきからずっと彼女に対して上から目線でなんてやつだ。僕は懇願し、憤慨した。けど……そんな僕の願いとは裏腹に彼女は艶のある吐息混じりの声で、男の質問に答え始めた。

 

「ん、ちゅ……ぁ♡ ばれたら……どうしよう、恥ずかしい……って思えば思うほど……ぞくぞく、しました……♡」

「はは、そうか……正直に言えた燐子にはご褒美だ……ほら」

「……あ♡ ろー、たー……はぁ……♡」

 

 ローター? と首を傾げた僕の疑問を解消するように、ちゅぽちゅぽと喘ぎ混じりの水音、何かをしゃぶる音がした後に、静かなモーターの駆動音が僅かに聞こえた。座って脚を開け、と声がする。返事をした彼女は、ください……はやく、ご褒美……と媚びた声を振り撒いた。

 

「んん……♡ あ、入って……うごいて、ます……♡」

「立って……撮るよ」

「……どうぞ♡」

 

 カシャっとスマホのシャッター音がした。目眩がしてくる。ローターを、挿入して……それを撮影したんだ。どういう状況かなんてわかんなかったけど、彼女は男の言いなりだ。どうして? そんなあなたを辱めるようなやつのことを、なんで? 僕ならもっと、もっと……! 

 そんな憤りを覚えているよ、より声が近くにきた。音が干渉しないように壁を隔ててないすぐ隣同士の部屋は背中合わせのようになってるから、きっと、彼女たちも壁際に移動したんだろう。彼女の嬌声が響く。その声も唇を塞がれたようにくぐもる。

 

「んぁ……♡ はぁ……はぁ……♡」

「よし、燐子……」

 

 カチャ、と金具の音が聞こえた。ベルトの音だ。ベルトの金具が外れる音。続いて壁に何かがぶつかる音。乱暴な風じゃないけど、彼女が壁に背をつけて座り込んだような……まさか。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だやめろ、やめろ……そんなの……だめだ。

 

「あ……♡」

「いいよ燐子」

「……あ、れろ……ん♡ んく、ふ……んっ♡」

 

 口に何かを含んでいる。ナニカ、ナニカの正体は……イチモツ。男の性器を、彼女は咥えているんだ。あの彼女が、ローターを仕込まれて自ら男に跪いて、口で奉仕している……清楚さの欠けらも無いいやらしい音を立てて、口に入れている。そんな光景が、この壁の向こうにある。

 

「んぐ、ぅ……ん♡」

「相変わらず……えろい顔して舐めるよね、そんなに好き?」

「ぷは……♡ れろ……すき♡」

「今日はローターのせいもあって余計に発情してんのか……まったく」

 

 彼女が? 好き? それは信じられない言葉だった。脅されてそんなことをしているのだと信じさせて欲しい。本当はこんなことやりたくないのに弱みを握られて……そうだ。さっき撮影されてたし、それで逃げられないんだ。

 

「なあ、そろそろ」

「……や♡ もっと……あむ♡ んじゅる、はぁ……♡」

「しょうがないな……燐子は」

「ふふ……すき♡」

 

 そんな悲鳴にも似た僕の願いも彼女自身の手で打ち砕かれた。目眩がする。あの白金燐子さんが、清楚で、美しくて、穢れのない彼女が……そんな、彼女を性的な目でしか見ることができないサルのような分際の男が……! 

 だが、そんな憤りとは裏腹に僕の愚息は既にいきり立ち、先走にトランクスが濡れていた。ぐぽぐぽと彼女が頭を振る音、それがしばらく続いた後、男が燐子、と名前を呼んだ。

 

「……壁に手を付けろ……命令だ」

「……っ♡ はい……あん♡ あ、あっ……はぁ……♡」

「もうローターぬるぬるだね……」

「抜いちゃ……♡」

「代わりにコイツを……っ」

「あん♡ あつい……はぁ……♡」

 

 壁の方向に燐子さんが顔を向けたらしく、すぐ側に彼女の喘ぎ声が聞こえる。声を出したらバレてしまうレベルだ。

 けど、近いからこそ、妄想してしまう。このくらいの高さならちょうど、彼女の口に……僕のが入ってしまうんじゃないかと。僕自身も、いつの間にか性欲に溺れる彼女の淫らな姿を、見て、汚したいという欲望に呑まれていた。

 

「や、隣……ひといたら……♡ きこえちゃい、ます……あっ♡」

「いいじゃん、聞かせてあげればさ……燐子がこんなところでセックスする、変態ドM女だってさ……!」

「あ……や、んん♡ へんたいじゃ……ない……あっ、ごめんなさい、抜いちゃいや……♡」

「じゃあ……嘘つきはたっぷり犯して、わからせてやるよ」

「……はい♡ お願いします……んっ♡ あん、あっ、あっ♡」

 

 ああそうなんだ、と興奮する身体とは裏腹に、その言葉に本能が刺激されるのとは裏腹に、僕の頭は冷えていった。

 彼女は愉しんでいる。彼女は穢れている。彼女は男に乱暴にされることを悦んでいる。僕が見ていた彼女は最初からいなかったんだ。清楚に可憐に振る舞う裏で、媚びるような嬌声を男に聞かせて、受け入れるような女だったんだ。

 

「あぅ、んっ、あっ♡ ひぁ……っ♡」

「どうする? 隣で聞いてるヒトが男で、お前に幻想を抱いていたらさ」

「……げん、そう♡」

「みんな思ってるよ。白金燐子は清廉で清楚で、大人しい、穢れのない女だってな」

「……あ♡ ん……ごめん、なさい♡ あん♡」

 

 もういいやめろ……! これ以上僕の理想を穢さないでくれ! 僕はただ、彼女のために生きられたらってそれだけで……なんで。なんでこんな目に遭わなくちゃいけないんだ! 

 

「わたし……カレと、ここで、えっち……あん♡ するの、すき……なんです♡ ぐちゃぐちゃされて……カレの家でも……なんにも考えられなく、なるまで……あっ、やぁ♡ えっちするの……幸せなんです♡」

「そうだよな。犯されるの、ほんと、好きだよな……!」

「んっ、すき……♡ だって……っ♡ 気持ちい……から♡」

 

 なんで……こんなにも失望してるのに、なんで、こんなにも呆然としてるのに、僕のイチモツは痛いくらいに悦んでるんだ。

 なんで……クソ、こんなに悔しくて惨めで、やるせないのに……僕は……なんで慰めてるんだ。

 僕まで彼女を穢すのか。いや、彼女が確かに男の目を引いて……時にはオカズに妄想してるのを知ってる。だけど……僕は違うと思ってたのに、僕は……彼女の内面を好きになったはずなのに……! 

 

「燐子……! イクぞ、ちゃんと……受け止めろ……!」

「はい、あ、あっ♡ わたしも……イク、イキます……♡」

 

 その言葉を最後に、二人の声はしばらく聞こえなかった。荒い息遣いだけが僕の耳に届く。

 息を潜めながらそっと、僕は壁から離れ……そしてポケットティッシュに穢らわしい劣情を吐き出した。余韻に浸ってる暇はない……立ち去らなきゃ。

 ──僕の憧れのヒトは、なんてことない。清廉でも清楚でもなくて、ああやって男に媚を売ってヤリまくるような女だ。そう言い聞かせて、僕は彼女への気持ちを忘れることにした。

 

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