BanG Dream! NIGHT STORY 作:黒マメファナ
あれ以来、僕は白金燐子さんの行為を盗み聞きするのが習慣になっていた。清楚な見た目の彼女が、男に触れられ、媚びるように喘ぐ。穢れた幻想は、けれど僕をここから離れられなくした。
「あっ♡ ん……はぁ♡ ん、ん♡」
「揉み心地最高」
「よかった……♡ は、んっ♡」
今日も隣の部屋で彼女は男に胸を揉まれて恍惚の息を吐いていた。壁に背を預けて向かい合いながら、予め下着を外した白金さんのたわわな胸を、男が好き放題揉みしだいている。時折聞こえるリップ音も、妄想を掻き立て、愚息が反応してしまう。
「んく♡ んぁ……♡ もっと、いじめて……いいよ♡」
「いじめてほしーんだろ?」
「はい♡ あ♡ んん……♡ ちゅ、ふ、んく♡ すき……♡」
乱暴な言葉に、乱暴な行為。今でもぞわっとしてしまうくらいに、今すぐ止めたいと思うくらいに一方的に感じる行為だが彼女はそれこそを悦びとしていた。シャッター音なんてしょっちゅうだ。恥ずかしい姿を撮影され、辱められるように嬲られ……それを彼女は一番悦んで受け止めていた。
「ほら脚開けー。エロいパンツ丸見えで腕縛られて興奮する変態を撮ってやんねーと」
「ん……♡ 撮って……♡」
カチャカチャとベルトを外す音、ほんの少しだけ聞こえたキツくねーか? という声。ベルトで手首を縛ったのだとわかった。その後すぐに目隠しもという彼女の声が媚びるような色を持っていたから、きっとそっちも。
──扉の向こうで、あの清廉な白金さんが、男に目隠しをされ腕を縛られ、ピアノの椅子に座り脚をM字に開いていやらしい下着を晒している。
スマホのカメラの音がして、またリップ音と、くちゅくちゅという音が僅かに聞こえる。
「あ、あ♡ んん……っぅ♡ もっと……もっといじめて♡ 好きなように……使って♡」
「わかってるって、口か?」
「ううん……このまま、挿れて……♡」
「ならやらしくおねだり……できるよな?」
「……ん、はい♡」
静かな声で、透き通った宝石のような声で紡がれる。それは僕に異様なまでの興奮を呼び起こす。優等生の彼女が、いつも美しい歌を紡ぐ声で、その身体を男にまさぐられながら……淫らな言葉を吐き出した。
「準備万端の、おまんこに……大好きなおちんちん、好きなように出し入れして……奥で、射精……してください♡」
続いてやや苦悶ともとれる、けれど艶を含んだ声が耳に入ってくる。個人レッスンの部屋で、ついに男女の行為が始まってしまう。
彼女はそういう女だと、だからもう忘れようと思ったけど、何故か強烈に耳にこびり付いて離れなかった。何度も何度も、彼女の嬌声を、ここで聴いていた。
「あっ、あん♡ 乳首、カリカリしながら……きもちい♡」
「燐子、早くするぞ」
「んっ♡ あっあっ、ひぁあ♡ んんっ♡ んく♡ ぷは♡ あん♡」
愚息が痛いくらいに勃起していて、構わずその場で自慰をする。壁の向こうではお淑やかで清らかな彼女が、淫らに喘いでいる。
わかっていた。僕は今まで目を背けて紳士ぶってただけなんだ。彼女の身体は、男を虜にする。たわわな胸、すらりと伸びているけれど触り心地の良さそうな脚、柔らかそうな臀部。男を獣にする魔力が彼女には秘められていた。
「あっあっ、あう♡ も、もう……わたし……♡」
「ほら燐子、こんなところでイクのか? 誰かに聞かれてるかも知れねーのに、イキ声晒すのか?」
「んっ、ちゅ♡ ぷは、あん♡ イキたい……♡ なんでもいいから……イキたい♡」
「そーかよ!」
「──っぅ♡ あっあぁぁあ♡」
響く。夕焼けのピアノレッスン室で彼女は果てたようだった。
甘美な彼女のイキ声は、僕の脳を揺さぶる。リップ音を響かせながら余韻に浸っている彼女の蕩けた息遣いが堪らなく……そそる。
「もっと……♡」
「……ちょっと待て」
「え……なに……?」
「やっべバイト! 忘れてた! 行くぞ燐子」
「え、ええ……?」
しかしそのタイミングで我に返ったらしい男が喚き始め、バタバタと去っていってしまう。凄く高まっていたのに中途半端になったまま、僕はなんとも言えない気分になってしまう。
──少しの落胆を感じながら彼女たちが去った部屋にそっと入っていく。この部屋には予めレコーダーを録音状態にしているから続きは家で……そう思っていた。
「これ……!」
そこにあったのは下着……ショーツだった。プレイ用のではなく普通の可愛らしい白のショーツ。彼女はいつもここでする時に下着を替えてるから、忘れてしまったんだ。相当慌てていたし。
「……白金さんの」
鎮まりかけていた愚息が反応してしまう。もう暖かさはないけれど、思わず手に取ったまま、さっきまで彼女が座って、淫らな顔で脚を広げていたであろう椅子に座ってレコーダーを再生する。
『あっ♡ ん……はぁ♡ ん、ん♡』
まずい、これは異様なまでに興奮する。イヤホンもつけずに下着を視界に入れながら一心不乱に慰めていく。僅かに部屋に香る酸味のあるような匂いも、壁越しでない彼女の喘ぎ声もそれを助けていく。その興奮故に気づかなかった。失念していた。
「あの、すみま……っ!」
「あ!? し、白金さん……!」
「なに……して……」
それはここに置いてはいけない忘れ物なのだから。バイトではない彼女は取りに来るということに全く頭が回らなかった。言い訳もしようがない。手にしっかりと持って性器を露出しているのだから。しかも、彼女にもついさっきの情事が再生されているのが聞こえているだろう。
「……っ、それ……録音、ですか……?」
「これは……」
「聴いて、いたんですね……あれを」
怯えるような瞳、でもなんでかしっとりと……熱を感じる声。
──心の中に潜む悪魔がそれを使えと喚き立てる。僕に彼女を脅迫しろと叫ぶ。壊れた思考回路は、既に彼女と同じように……穢れている。
「白金さんが……こんなやらしい人だと思わなかったよ」
「……それは、カレに……」
「でもきもちいから、って……ショックだった」
「……う」
ぎゅう、とスカートの裾を握りしめ、羞恥に耐えるその表情。ドンドン悪魔は増長する。見たくないのか? 聴くだけじゃなくて蕩ける彼女を、乱れる彼女を、想像するだけで満足かと。
ああ、そんなわけないだろう? 見たいよ……穢れた彼女の蕩け顔が、堪らなく見たい。
「おいで、白金さん」
「……っ、いや……です」
「おいで。それともさ……このショーツ、もらっていい?」
「だめ……っ!」
「ならおいで」
有無は言わせない。彼女はそれでも少しの拒絶感があった……だが、諦めたように僕の傍にやってきた。扉から遠いところに座らせて、髪や肩に、腰や脚に触れていく。
「……いや……やめて……やめて、ください……」
「乱暴しないよ。ただ見たいんだよ、この声を出してる時の白金さんが……どんなやらしい顔してるのか」
「や……消して、お願いします……! それは……消して……!」
ひどい、これじゃ僕だけが一方的に悪いみたいだよ。ピアノ以外の用途でピアノレッスン室を使ってはいけないのは学則にもある。下手すると半期単位取り消しもありえるのにさ。それを言うと白金さんは黙ってしまう。
「それに中途半端だったでしょ? わかるよ……聴いてる僕もお預けくらっちゃったし」
「あ……やっ」
胸に触れる。身体を逸らされるものの抱きつくようにしてゆっくり感触を確かめるように揉んでいく。
髪やうなじからいい匂いが漂ってくる。シャンプーなのか、なんなのかはわからないけれど、声だけじゃわからなかったものを堪能していく。
「……ん、やめて……あぅ♡」
「そっか、耳弱かったね……かわいい声」
「あ♡ いや、だめ……あっ♡」
嬌声が漏れ始める。どんどん力が抜けていって、彼女の表情には艶が含まれていく。やっぱり敏感なままだ。お預けを食らってかわいそうな白金さん……でも大丈夫、代わりに僕が、あなたを使ってあげるからね。
「つか……って、あ♡」
「こうやって乳首カリカリされるのも好きだったよね。大丈夫、白金さんの好きなこと、僕はたくさん知ってるよ」
「あ……ん♡ だめ、だめで……っん、んく♡ やら……ん、ちゅ♡ んく、はぁ……はぁ……♡」
奪うようにたくさんキスをしていく。彼女がいつも好きだと言う舌を絡み合わせ犯すようなキス。一度目は首を振られる。二度目は頑張ってもがく。三度目は舌が絡み合う。
「あふ♡ んっ、ちゅ……♡ んん、は、れろ……♡ あん……やぁ♡」
四度目は諦めたのか、それとも別の理由か……蕩けた瞳で、息遣いで恋人同士のようなキスをしていく。
そのタイミングを見計らってスカートの中に手を入れようとすると、はっとしたように裾を抑えてくる。
「あ……だめ、ん♡ んぅ、あ♡」
「ほら、手を離して」
「ちが、ここ……そろそろ見回り、きちゃいます……っ」
そう言われて逃げられないように肩を抱きながら腕時計を見ると……確かにもうそんな時間だった。やっと拒絶感なくなって、いいところなのにまたお預けだなんて……でも頭の中の悪魔はまだ諦めていなかった。
「じゃあ」
「あ……♡」
肉棒に触れさせながら耳にキスをする。逃がすつもりはないということを態度で示していく。そもそも僕がこの部屋で行われている情事を知ってる時点で僕が絶対的に有利だ。焦らずやろう。
「また今度ね、その時に返してあげる」
「……ん♡ そんな……っ♡」
「それとも僕の家くる? 一人暮らしなんだけど……」
「それは……だめ、です……っん♡」
また今度かウチにくるか、そんな極限状態に与えられた選択肢、だけど実質一択だ。白金さんは結局また今度、という選択をした。僕にさせられて、頷くしかなかった。レコーダーもショーツもそれまで預かっておくねと最後にキスをして、僕は彼女から離れ帰りの用意をする。
扉を開けて手を振って、恐怖と罪悪感に泣き出しそうな彼女を一人部屋に置いておく。
「は、はは、あはははは……!」
触れたんだ。憧れて焦がれてやまなかった白金さんに、僕は触れた。おかしくなりそうなくらい……いやもうおかしくなっているのかもしれないが、おかしくなりそうなくらい興奮していた。今までは隣の部屋の壁に耳を当てて浅ましく聴くことしかできなかったのに……胸の感触、髪の感触、全てが美しくて……僕が穢せるんだと思うと、それだけでトイレに駆け込まないといけないくらいだった。
レコーダーにイヤホンを刺して、彼女の声を聴きながら便器に満たされなかった欲を吐き出していく。
──彼女は穢れている。けれど、まだまだ美しくて……それが嬉しかった。