BanG Dream! NIGHT STORY 作:黒マメファナ
僕は恋をした。長くキレイな黒髪を靡かせ、穏やかで静かで、清廉な雰囲気を身に纏う彼女に恋をしていた。
──だけどいつしかその恋は何か別のものに歪んでしまっていた。
「おはよう白金さん」
「──っ!」
肩を強ばらせる。そういえば連絡先を交換出来ていなかったなと思い返し、人のいるところで話しかけた。
白金燐子さんはとても警戒したように僕を見上げる。だけど僕は大丈夫だよと微笑みを浮かべるだけだった。
「連絡先を訊きたいだけ……それとも講義サボってする?」
「……教え、ますから」
交換しながら今日カレシさんは? と問いかけると午後からなのでと目を逸らしながらも正直に答えてくれる。
同時にカレシについても、内緒にしてほしいと訴えられてしまう。
「どうして?」
「……両親には、本当は結婚まで……そういうことはしないと、約束しているから……カレシとかも……あんまり」
ピンとこなかったけど、どうやら僕がかつて彼女に抱いていた幻想は彼女によって作られていたものらしい。
別にカレシを吹聴しても僕にメリットなんてない。だが、その言葉は悪手だろう。
「……な、に?」
「秘密にするには……それ相応の秘密が必要だよ」
「……っ、なにを」
「怯えなくていいよ、こっち」
手は繋ぐとまずそうだから少し離れていつものレッスン室にやって来る。朝の時間は人の利用はないから、ここはやっぱりカレシさんや白金さんがスリルを求めてあんなことをするには絶好というわけだ。
「秘密……って」
「口止めとも言うかな……これから朝はここで密会しようか。あんまり男といるのもよくないから、別々にさ」
「……わかりました。それで……」
「次、講義終わりが空くのいつ?」
訊きたいことはそれだった。約束を履行しようにも彼がいるようではこの間のように中途半端になってしまう。
だから彼女一人で講義の後にここに来れる日が必要なのだ。少し考えた後、白金さんはカバンからスケジュール帳を手渡してきた。
「嘘を……言うことも、できるので……」
「確かに、録音とかも危ないから、スマホ頂戴」
「はい」
それに一言でもしゃべりたくないって感じだった。昨日本当にレイプされそうだった相手と密室というのがもう恐怖なのだろう。下手なことをして犯されれば、全てが明るみに出る。どの道隠し事をしなくてはいけない彼女は、弱い立場だった。
「結構忙しいんだ……じゃあ、金曜、三日後で」
「……はい」
頷くしかない。手帳を返して、腕時計を見る。もう少し時間があるということで、僕は彼女を隣に座らせる。
行為をする時間はないけれど、僕はもう我慢が効かなかった。せめてと耳許に唇を寄せて、彼女の反応を楽しむ。
「ん……」
「キスしよっか」
「……え」
「今日から金曜まで……毎朝ここで」
「……っ」
秘密の対価、そう感じただろう彼女は苦しそうに眉根を寄せながら僕を見上げた。顎で自分からしてほしいと促すと、彼女はゆっくり泣きそうな瞳を閉じて、顔を寄せてきた。
──あの白金さんが、僕に口付けをしてくれる。それどころか僕が口を開けば、同じように開いて舌を伸ばしてくれる。
「ん、んぅ♡ は、どれくらい……っ♡」
「っは、アラーム鳴るまで」
「……あ、んっ♡ ちゅ♡ んく……♡」
その3分間はまるで時が止まったかのように静かに、淫らに過ぎていった。荒い息を吐き、唾液の橋を繋ぎながらゆっくり離れていく。彼女は昨日よりも蕩けていて、僕を満足させてくれた。
「今日もするの?」
「わかり、ません……けど」
「昨日放置したから埋め合わせてもらえるのかな……ここで」
その確認は同時に今日も聴いているという意思表示でもあった。だが事情を説明できない彼女に彼の誘いは拒絶できない。
その板挟みという状況で彼女はどう蕩けていくのか……楽しみだった。
──講義が終わり、僕はいつもの場所に陣取っていた。彼女は隣の部屋でピアノを弾いており、僕がここにいることを知っている。カレシから連絡があるまでまた僕に貪られ、彼のためにブラを外した胸を揉みしだかれたのだから。
「悪い燐子、おまたせ」
「ん……うん」
「どした、元気ねーな?」
リップ音がする。軽い挨拶のようなキスをしたのだろう。心配そうな男はだが、それよりもここで待っていたという事実が先行したようで、なんだよと言いながらリップ音を重ねていく。
「んっ♡ は……ぁ♡ あ、あの……ね」
「ん?」
「ここでするの……もう、やめよう?」
「なんで」
「……やっぱり、誰かに見られたら」
「大丈夫だって……誰もいねーよ。耳でも澄まさねーと聞こえねーって」
耳を澄ましているのだから彼女はそう言っているのに。いやもう耳も済ませていない。彼女自身のスマホを使って、ワイヤレスイヤホンでその様子を盗聴させてもらっていた。これ以上録音しない代わりにそれで承諾させたのだから。
「あ♡」
「とか言いながらブラ外してんじゃん。ほら、昨日の分もしてやるから」
「んっ♡ あっ、えあ……れろ♡」
「つかもう濡れてんの? やらしー音」
「あっ、ゆび、んっ♡ う、あ、あっ♡」
グチュグチュと水音がする。濡れているのだろうことは容易に想像できる。
──確認したのだから。クロッチにシミができているのを指で確かめ、言わせて辱めていたから。
そして結局、彼女は彼に与えられる快楽を我慢するような堪え性はない。何せ僕が相手でも、彼女は触れられる度に身を震わせ表情に艶を浮かべるくらいだ。
「あっ、あん♡ それ、それ……っ♡」
「なんだよ、言ってみろよ」
「ぅ……きもちい♡ んく、はぁ……♡ もう、だめ、イク……イッちゃ……♡」
「イケよ燐子。ほら、ここだろっ」
「あ──っ♡ あ……はぁ……んっ♡」
一際大きな声と共に彼女はあっという間に達してしまう。余韻に浸っている時のリップ音、舌が絡み合う音。
そして興奮した男がベルトを外して、壁に手をつけと命令する。
「……ああっ♡」
「おお……今日ヤバいな……っ」
イッたばかりの彼女の膣は心地が良いのだろうか、男が呻く。暫く挿入の余韻に浸っていたが、やがて腰をぶつけ合う音がし始める。
これまでとは明確に何かが違う興奮が僕の頭を駆け抜ける。彼女が隣の部屋にいる僕に……気付いているせいだろうか。
「あっあっ♡ や、今日、はげしい……っ♡」
「いつもより締めてくるからだろ、なんだよそんなに昨日のお預けでたまってたのかよ?」
「っ、ん♡ うん♡ もっと、イカせてほしかった……♡ おちんちん、ほしかった、から♡」
懇願するような声で、彼女は彼からの愛欲をねだっていく。段々と夢中になってきたような彼女の声に僕も興奮を増していく。防音の壁に手をついて、後ろから男根を受け入れ艶のある息を吐き出す彼女……そんな白金さんの壁越しの前に僕は座った。
「あっあっ♡ おく、いい♡ きもちい……っ♡」
「──よかったね」
「……っ♡ あ、ま……っあぁぁ♡」
「お、く……やば、燐子」
喘ぎ声に夢中になっているしそもそも壁に耳を当てなければ聴こえない。男には聞こえないくらいの声で僕は彼女に声をかけた。忘れてもらっては困るから、それは……結局二人の世界に入りそうになっていたことへの反抗なのかもしれない。
「めっちゃ締めてくるけど」
「え、あ♡ うん……♡」
「僕に聴かれてること思い出して、もしかして興奮した?」
「きもち、よくて……っあ♡」
「ったく、変態だなお前はさ」
「だって、僕もそう思うよ」
「あんっ♡ うん、変態で、ごめん……なさい♡ あっ、今日、いつもより……きもちよく、なってて……♡」
それは誰に向けた言葉なのだろうか? 誰に向けた言い訳なのだろうか?
どうしようもなく彼女に意識されるということが気持ちよくなる。彼女の頭の中ではカレシだけでなく僕にも犯されているのだろうか。
それで、彼女は興奮し始めているのか。
「あっ♡ きて♡ んっ、ちゅ……♡ は、あっ、またイク──っ♡」
「ヤバいな今日、そんなにいいのか」
「縛られるの好きなんだ。勝手に腰振られてキスされたり胸揉まれたりされながら掻き回されるの好きなの?」
「──んっ♡ すき♡ すき……っ♡」
「そーかよ。取り敢えず時間もアレだし、一発出して続きは家で……な?」
「それも聴いててあげるよ。通話状態にしておいてね」
「うん……♡」
蕩けた声で彼女は返事をしてくれる。後は黙って彼女が喘ぐのを聞いていく。ベルトで腕を縛られ、一方的に嬲られる行為に、溺れていく白金さんは、だが昨日よりも明らかに別の興奮を声にしていた。
「ください……♡ ナカに、んっ♡ せーし、ぁ♡」
「あ、ああ、イクぞ燐子……っ」
「あっ♡ おく、イク──っあぁ♡ はぁ……はぁ……♡」
「ふぅ……燐子、いつもの」
「ん♡ ちょうだい……えあ、ん、じゅる♡ んく♡ はぁ……♡」
じゅぽじゅぽと音を立てて、彼女が男の精液を出したばかりの男根をしゃぶる音が聴こえる。男が椅子に座り、彼女が男の股の間に跪いて残った精液を吸い、舌や唇でキレイにしていく。それを僕が要求したら彼女はどんな顔をするのだろう。いやその前に。
──彼女を犯すとき、彼女はどんな表情で迎え入れてくれるのだろう。その妄想だけで、僕は劣情が白い液体となってティッシュに吐き出されていく。
「……ん♡ また、おっきくなったね……♡」
「しゃぶり方やらしーんだよ。もう一回ここでするか?」
「時間、ないから……家で、して♡」
「おう」
その日は何度も何度も交わる二人の声を聴いていた。ベッドを軋ませ、誰もいないという安心からケダモノのように彼女を求める男に、僕は思わず笑ってしまうところだった。
──なにせ彼女はずっと聴かれているという興奮に苛まれているのだから。だからいつもよりも興奮しているし求められるということに、彼は最後まで気づくことははかった。
そして、そのまま穏やかに……金曜日がやってくるのだった。