BanG Dream! NIGHT STORY 作:黒マメファナ
カレとするのは嫌いじゃなかった。きもちいしいっぱいしてくれるから。カレのことも嫌いじゃない。けれどカレにとってわたしはアクセサリーでしかない。
カレはわたしを見ていない。大学で一番美人だった女性と実は付き合って、セックスできているという優越感に酔ってただけ。悪くない。そういう愛のない行為も、興奮する。道具のように好き勝手に犯されるのは、言い知れぬ快感だったから。
「よし、イクぞ、燐子……!」
「あっあっ♡ あん♡ だして……んっ♡」
そんなカレの優越感を満たすのに最適な場所が、ピアノレッスン室だった。誰も来ないような上階の奥の部屋。そこでわたしはピアノではなくカレによって淫らな音を奏でる。
「んっ♡ あ、はぁ……♡」
「ほら、舐めろ」
「うん♡ あむ、ん……く♡ じゅるる、ん、ちゅ♡」
お掃除をしてもう一回、というところでカレのバイトの時間になってしまう。もっとじっくり楽しみたいのに……こういう時は不満だった。もっと抱いてほしい。家でも泊まることはできずに帰ることがほとんどで、泊まれたとしてもカレはすぐにやめてしまう。
家ではあまり興奮しないというカレは、やはりわたしを見せびらかしたいだけなのだろう。
「白金さんが……こんなやらしい人だと思わなかったよ」
──けど、些細なミスでわたしは途轍もなく甘い甘い秘密を持ってしまった。
秘密を共有したのは学部も学年も同じで、少し大人しく……暗い印象のあるヒト。そんな彼はレコーダーからわたしの嬌声を聴き、わたしのショーツを凝視して……オナニーをしていた。
脅され、抵抗を確かめるように触れられ、どれだけ聞かれていたのか、的確にわたしの好きな責めかたをしてくる。キスを何度もされ、いずれは抵抗をやめて夢中で舌を絡み合わせていく。
「あふ♡ んっ、ちゅ……♡ んん、は、れろ……♡ あん……やぁ♡」
声が出る。浮気をしているというのに、わたしは彼に奏でられていた。それからわたしは毎日、毎朝、彼の淫らな視線に晒され続けた。
一日目の講義終わり、彼が来るまでの時間、キスをされ胸を揉まれ、濡れたショーツを見られ指を入れられていく。
「濡れてるね」
「……っ♡ ん、んぅ……♡」
「ほら言って、濡れてるかどうか」
「濡れ、濡れて……ます、あっ……ああ、だめ♡」
「ほらおいで、イカせてあげるから」
「……あ♡」
彼は優しかった。脅されて犯されているのに変な感想だけれど、彼はわたしをアクセサリーとして、見せびらかす意味での行為ではなかった。秘密の共有だから当たり前だけれど、その当たり前がわたしには堪らなくきもちよかった。
「んん♡ ちゅ、ん♡ あっ♡ そこ、や♡」
「指に吸い付いてくる……ここ?」
「あっあっだめ♡ だめ……っ♡」
けれどイケなかった。高まっていたのにカレから連絡が来て、あっさりとそれじゃあと隣の部屋に入っていく彼の背を見て、わたしは息を吐いた。
もっとしてほしい。もっとじっくり犯して、淫らなわたしを楽しんで、それから……彼の肉棒に貫かれて、果てたい。
もう、わたしはわたしを止められない。アクセサリーとして抱かれるのではなく、あの目で見られたい。俺がしてやってるから善がってるだなんて勘違いの目ではなくて……白金燐子はいやらしくて淫らでこんなところでセックスして感じる変態だと言う目で、見て、使ってほしい。
──だからもう二日目からは、抵抗することはなくなっていた。
「後ろからされるのすき?」
「んっ、すき♡ んん……目隠しされながら、耳、すき……♡」
二日目は好きなことを沢山覚えてもらった。お昼の後のコマが休講になったこともあり、明日への準備とばかりに挿入はしてもらえないけれど、彼の指や唇に喘いだ。もうキスはカレよりもすきになっていた。
「そっか、じゃあ今日はシてもらえないんだ」
「んっ、んじゅる♡ ぷは……うん、れろ……っんく♡」
「よしよし、時間まで僕が相手になるよ」
「はぁ……ん♡ なら口に……だして♡」
カレが来るまでの時間、違う人のモノを咥えて自らフェラチオをするという背徳感は特にわたしを虜にした。いつもフェラチオと言えばただ舐めるだけ。ただカレの竿についた精液をキレイにするだけで、彼のようにしたとしても、やっぱりなにもしてこない。
でも彼はわたしを辱めてくれる。頭を撫でて、見下すようにわたしを見てくれる。そして口の中に出してくれる。頭を押さえつけられて、まるで腟内に吐き出すように、精液を遠慮なく飲ませられる。
「はぁ……っ♡ ごちそう、さま♡」
「うん。ありがと、白金さん」
「あ……うん♡」
「水いる? あれって味ひどいんでしょ?」
「そう……だね、ありがとう……ひぅ♡」
「もうちょい、していいかな?」
「……ん♡」
もうわかっていた。ただ浪費されるだけの使われ方は嫌だった。わたしがわたしである意味を……どこかでほしがっていた。
帰ってすぐ、わたしは火照る身体を慰めていく。彼の名前を呼びながら、何度も何度も果てるまで。
「もっと♡ もっと……ぐちゃぐちゃに、して♡ っん、おちんちん、ほしい……♡」
明日のことを妄想する。時間いっぱい使って対面座位で挿入され、キスをしながら何度も何度もイカされて……ああ、そんな時間が無いのが口惜しい。
もうわたしが彼に求める……求めている行為は、あの部屋の逢瀬では足らなくなっていた。もっと、もっと溺れたい。
そしてその朝、わたしはタイツを履かなかった。少し露出を増やした。夏だからと言い訳をつけて、お気に入りの少しセクシーな紫の下着をつけて、期待に胸を膨らませる。
「ああ♡ んっん♡ は、あっ♡」
「今日ここに挿入できるなんて……楽しみだよ」
「ん、だめ♡ あん♡」
朝の行為……慣らすためのキスや、触られる指もその日は激しかった。指で腟内をなぞられ、背中が伸びてしまう。待ち望んでいた日に、もう一分一秒も我慢出来なくて、きもちよくて。もう、わたしは彼しか見えなくなっていた。
「……ごめんね、バレちゃって……」
「はぁ、マジかよ」
「……ごめん、なさい」
彼からはちゃんと一緒に帰れないって言っといてねと言われたけれど、わたしは……違う意味で頭を下げていた。
当たり前だけど突然の別れ話に苛立った表情を見せるものの、家の問題で内緒で付き合っていたという弱味を持っているから、カレは断れずに下を向くだけだった。
「セフレでもダメか?」
「……うん。お迎え来ちゃうから……」
──さようなら。嘘をついてごめんね。えっちなこと、いっぱい教えてくれてありがとう。おかげで、自分の性欲の大きさに気づけた。どうしようもない性癖に気づけた。あなたのこと
「白金さん」
「……はい」
いつものレッスン室の一番奥でピアノを弾いていると、ギラギラと目を性欲に輝かせる彼がやってくる。わたしの世界に、侵入してくる。もうじんわりと、下腹部が熱を持つような感じがした。息が熱くなる。誘われるままにわたしは、彼と唇を重ねていく。この数日でカレよりも濃厚で、じっくり味見をされるようなディープキス。スカートを捲られる。脚に手が触れるその熱でもうわたしは小さく喘いでしまうくらいだった。
「おいで」
赦しをもらう。淫らに感じてもいい。蕩けて、求めてもいいと彼は赦してくれる。
挿入され、その快楽の波の中で最後に一瞬だけ、寂しそうなカレが思い浮かんだ。ごめんね……わたし、あなたにとっていい女じゃなかった。あなたのセックスじゃ……満足できなかった。そしてこの短い時間でも。わたしはもっと長くじっくりと犯されることを、望んでしまった。
「おじゃま、します……」
「ごめんね、散らかってるかも」
「ううん……キレイだよ」
てっきりワンルームのアパートかと思ったら案内されたそこはマンションだった。ダイニングキッチンとリビングと普段使っているだろうお部屋ともう一つ空き部屋のある家。一人暮らし……なんだよね?
「要らないと思うよね両親が泊まれるようにって言って聞かなくて」
「そう、なんだ」
「座ってて」
お茶でも、とキッチンに向かう彼の背中に抱きつく。そういうのはいい。いいから、一秒でも長く、わたしのナカにキミのモノを収めて、掻き回して。外泊の許可はもらった。明日はお休みでもう誰も邪魔されない金曜日。
──わたしは、熱くなっていく吐息を吐き出して……彼の唇に吸い付く。
「……好きなようにして♡ キミのしたいこと、なんでも……わたしにぶつけて♡」
返事はあの言葉だった。カレには言われたことのない優しくて、そしてわたしの本性をさらけ出すたった三文字。わたしから淫らな姿を見せなければならない言葉を耳許に囁かれ、頷く。
本当に彼は、わたしを奏でるのが上手だ。その指で、唇で、言葉でわたしを、白金燐子を奏でていくのだから。