BanG Dream! NIGHT STORY 作:黒マメファナ
あの人から愛を囁かれるようになってから、また幾つもの夜が過ぎた。
その中で昼はいつも通りの白鷺千聖を、夜は乱れ、あの人の腕に抱かれるただの雌として……そんな背徳的な生活を送っていた。
──生活は至って充実。むしろ前よりも充実しているくらい。
「おはようございます」
「おはようございます、白鷺さん」
以前のような身体の疼きを独りで発散することが少なくなった。夜のことを思い出すと、それは下腹部が熱を持ってしまうけれど、それはまた夜になればあの人に抱かれ、いつの間にか満たされている。
「あ、チサトさん!」
「千聖さん、おはようございます!」
「イヴちゃん、麻弥ちゃん、おはよう♪」
「今日もドラマの撮影っスか?」
「今日は別のインタビューの収録なの」
「頑張ってください!」
「ふふ、ありがとうイヴちゃん──それじゃあ」
もう一つは、周りから見た私が変わったみたい。こうして廊下を歩いていても、同じバンドのメンバーに会ってもみんなが「最近益々キレイになったね」と言われる。
──私自身はなにもしていない。けれど、監督さんにも「色っぽい芝居が出来るようになった」と絶賛されたことから、きっと蕾だった私を「女」として咲かせた原因……つまりあの人に抱かれているところが、こんなところでも私の充実に繋がっているのだった。
「あ、白鷺さん──」
「おはようございます、どうかしましたか?」
しかし……この充実した生活は長くは続かなかった。この時の私は、すっかり忘れていた。
──充実、安定、脚光。
あの人が望んだものはそんな陽の当たるものではなくて……
つまり私は、あの人の望みに反していたのだから……
そんな陽向にしがみつく憐れな私を暗闇に突き落とす出来事、始まりはマネージャーさんのこんな一言からだった。
「──え? き、キャンセル……ですか?」
「あ、あぁ……それと、社長が呼んでる」
「……は、はい」
社長直々に呼び出される……なんて初めてのことだった。
仕事を唐突にキャンセルされ、社長からの呼び出し……頭の端に引っかかったものをすぐに振り払った。
──この時の私は、まだあの人が本当に望んでいた「白鷺千聖」がなんなのか分かっていなかった。だから、社長に突きつけられた
『……んっ、はっ……ぅん♡』
「──なんで」
それは
「……呼び出された理由は、わかったかね?」
「──この、動画は」
「無論削除させた。だが……もう手遅れだろう。SNS等でも拡散され始めている」
「……そう、ですよね」
曲がりなりにも有名人である自信と自覚はある。元の動画を削除したところで……もう、たくさんの人の目に、刻まれ、保存され……あまつさえそれに達してしまった人もいるのだろう。
「──残念だが、ここ暫くの仕事はキャンセルだ……当然、Pastel*Palettesも、ほとぼりが冷めるまで活動を休止する」
「っ、は、はい……」
そうして、話は終わり、転落してしまったその失意のまま、スマホを見て……私は手が震えるのを感じた。
『今すぐ地図の場所へ来い』
なにがあるのか分からない。危険であるにも関わらず、私は彼に対する不信と疑念、そして怒りを渦巻かせながら立ち上がり、事務所を後にした。
指定された場所、それは新たにオープンする予定の、高級ホテルの前だった。
まだ日も高いのに人通りが少なく、更に仕切りの中へと案内された。
「もうオープン寸前だから、問題なく機能しているよ……ここなら、誰の目もなく、話が出来るだろ?」
「……そうね」
彼は一介の高校生ではなかった……? いえ、そんなことはどうでもいいわね。ここなら、もし
「そんなに警戒するな。俺のせいとはいえ、今は千聖に目が注がれすぎる。だからココにしたという訳さ……どうぞ」
「……ええ」
わざわざエレベーターで階上へと上がったこと、個室へと案内したこともそう……私は、もう逃げられない。
けれど浅慮だとは思わない。逃げたらそれこそきっと、私は陽の向くところを歩けないのだから……
「……随分と意匠の凝った部屋ね」
その部屋には大きなベッドと、隣にはソファ。閉じられた暗幕と、薄ぼんやりと付けられた電気が、怪しさを醸し出していた。
私の呟きに、彼はベッドの前で楽しそうに解説をする。
「そりゃあ、千聖専用に設えたから──」
「──っ、さわら、ないで」
腰に触れてきた手を払う。彼は予想済みと言った冷たい表情で私を見下ろし、その目に思わず、あげた手を胸元へと引っ込めてしまった。
「……理由が知りたい、か?」
「ええ……なんで、動画を?」
「そりゃあ……白鷺千聖を、本当の意味で堕とすためさ」
「え──んっ」
カシャン、という音と共に私の手には拘束用の錠がされ、唇を塞がれ舌を差し込まれる。
──来ると思った。けれど、これまで刻まれた快楽が、逃げることを拒絶したようだった。
「は、ん、ちゅ……んんぅ♡」
「ふ……、言っただろ? 千聖専用に設えた、ってな。この部屋にはお前をメスに剥いてやるために用意した」
「や、ふぁ、んっ、やめ、て……あっ♡」
抵抗してみようとするが、身体は言う事を聞かず、ベッドに座り、後ろからの胸や腿への愛撫に耐えることも出来ず、やがて甘い嬌声へと変わっていった。
「──今は、抱かれたくなんか……んっ♡」
「いつ……お前の意思で拒絶していいと言った?
あぁ……俺に隙があったのも否定できないが……千聖に拒否権はない」
「あっ、そ、ソコはっ、や、んぅ♡」
ショーツ越しに秘部を擦られただけで、あっという間に身体が熱く、愛撫を求めてしまう。
耳に吹きかけられる熱の篭った吐息と言葉は、私を次第に快楽へと誘っていく。
自然と脚は開き、体重を預けて彼の責めに夢中になっていた。
「んっ、はぁ、ぅん♡」
頭の中で叫ぶ私の声が「やめて」「どうして」から「きもちい」「もっと」へと染まっていく。どれだけ裏切られても、悦びを刻まれた身体は、淫らに性欲を溢れさせていく。しかし、頭の芯まで染まるまさにその瞬間……私に快感を与えていた手が離れていった。
「……やはり、ダメだな」
「──ん、はっ、はぁ……ど、どう、して……ぇ♡」
「お前は今……裏切られて、そして犯されてるんだろう? 何故そんな悦びに満ちた顔をしている?」
「そ、それは……」
ゾクッとするほど、冷たい声。けれど、どんなに裏切られても、彼の目に熱が無く冷たく鋭利な光を放っていようとも、私は、わたしは──
「──それでも私はあなたが、好きなの、愛してしまっているのよ……」
「そう、か……ならば」
「──っぅ♡ あ、あっ、は、んぅ♡」
ショーツをずらされ、膣内に指が挿入った瞬間、甘い痺れが全身を駆け巡り思考を真っ白にされる。
挿入ってくるだけでなく、ゆったりと前後に動かされる指に、また嬌声が漏れてしまう。
「……嫌がろうとすらしない、か」
「あっ、んっ……そう、身体に刻みつけたのは……ん、あなたよ、ぅん♡」
「そうだったな……なら」
私の反応を気に入らない、というような表情で、首を振った後、空いた手でスマホを見せてくる。その画面は──もちろん、私が独りで秘め事に悶える姿。はしたなく自らの指で慰めている動画だった。
「や、やめ──んぁ、だ、めぇ……」
「コレを──はい、アップしてあげたよ」
「……そん、な」
これでまた、それはネットの海を漂う。消したと言ったあの動画を、素直になれば広めることはないと言ったのに……どうして……
そんな思考が返ってきたところを見計らったのか、うつ伏せに押し倒され、膣に彼の一物がねじ込まれていくのを、感じた。
「や、やめて……はいって、こないで……」
「聞けない……な」
「あっ、お、おく……んっ、やっ」
「本当の意味で無理やり犯されるのは久しぶりだろう? どうだ?」
「んっ、なんでこんな……っ、ひどいわ、んぅ」
今の彼は愉悦に歪んだ顔をしているのだろう。四つん這いで振り返っても彼の顔は微塵にも変化することはない。
しかし、お互い快楽へと溺れるのも、また早かった。私を無理やりシている、という状況に彼も高まっているようだった。
「──射精すぞ」
「あっ、あっ……こんなの、やだ、いやなの、に……っ」
裏切られた悔しさに泣きながら首を振って抵抗しても、お構いなしに奥まで捻じ込まれ、射精されてしまった。私はその快感に声もなくイッて身体を震わせて、それでも涙は止まらない。
「ひぐ、ぐす……こんなのって」
「それだ……その顔だよ」
彼は私から一物を引き抜くと倒れ伏した私の耳元で囁いた。
──まだ、地獄は終わらない。
「ほら、千聖──受け取れ」
「や、やだ、い──っんぁぁ♡」
もう、何回目か……忘れてしまった。正常位で千聖を犯しナカに射精したところで、俺は荒い息を整え千聖の隣に寝転がった。
裸に剥かれた上に腕を拘束され首輪にリードを付けられた白鷺千聖。そんな彼女はもう抵抗する体力もないようで抱き寄せて空気を求めて開いた口に舌を差し込みキスをしても、受け入れていた。
「ん、んぅ……んぁっ、はぁ、はぁ……」
「酷い顔だ。だが……それがそそる」
「も、もう……やめ、て……」
──やはり俺は歪んでいるのだろう。淫らに求めて咲く以前の千聖よりも、汚され、犯されて散ってしまった千聖の方が……愛おしい。
「そうだな……そろそろ、潮時だ」
「…………え?」
千聖の頭を撫で、スマホを操作し、動画を消す寸前の画面を見せる。
──ついでにコレをコピーした全てに仕込んであったウイルスによって……データは、もう残らない。
その事を千聖に教え、身体を起こした。
「……なんで、どうして?」
「教えてやりたかったんだ。堕ちるとはどういうことかをな」
腕の拘束も外してやりながら、言葉を紡ぐ。
今の千聖は、光と影を行ったり来たりしている。そんなものは「堕ちた」なんて呼ばない。影を生きるなら、光は全て捨てなければならないことを……俺は示した。
「──さて、汚されても咲く花は……どれを選ぶ?」
「……どれを」
「汚れた女優として流出した動画と共に芸能界に残るか……残らない代わりに他の全てを捨てるか」
迷いの表情をみせる千聖の目の前に勃立した肉棒を見せつけ、眼前に出す。
「……あ」
「それに口を付けるか背くかで決めてやる。背けばそこまで……口をつければ──っ!?」
しかし、言葉はぬるりとした感触と驚愕でかき消されてしまった。
──下半身には、肉棒を咥えて吸い付いてくる、千聖の姿があった。
「ん、はぁ♡ふぅ、んっ、あ……もっと、もっと……ちょうだい♡」
「……なにをしているか、分かっているのか?」
口をつければ、消してやる。ただし、お前に光はない──そう言おうとしたが、そんな間もなく千聖は……淫らな笑顔で俺を見上げていた。
「もう……どうだっていいの、消すとか……消さないとか……私は、あなたのモノよ? 支配して、調教して、あなただけのペットにして?」
それは、彼女が子役として積み重ねてきたものを、あっさりと捨てる言葉。
二択を迫ったとは言え、迷いのない千聖に俺はやや戸惑いを顔に浮かべてしまった。それに気づいた千聖は、またゆったりと肉棒を口内に収めていく。
「はぁ、んぅ♡んっ、んっ、は……どう? ご奉仕、きもちいかしら?」
「……捨てるのか、全て」
「ええ♡なにもいらないわ……あなたに抱かれるのなら、それでいいの♡」
「……なぜ?」
理解ができない。なぜ迷わない? さっきまであれほど拒んだ行為をなぜ今はそんな顔で、受け入れている?
──答えは、すぐに得られた。
「堕ちているからよ……身も心も……あなた無しではいられないくらい」
「……なん、だって?」
「それに……光に縋りついていた私を迎えにきてくれたのよね? 堕ちて、穢れた私を、あなたは愛してくれる……それ以上にほしいものなんてないわ」
……千聖は、この時になっても、淫らで、穢れていて、それでも美しく、妖艶に咲く花のようだった。
堕ちた花弁を広い集めて、また花になって……彼女にとっては最初から俺に望まれた自分以外、必要としていなかったのか。
「……俺の、負けだ」
俺は、彼女は闇に落とせば、光を失い、枯れる。そこらじゅうにいる女どもと何も変わらない、醜い存在だということを証明したかった。
──だが、彼女は輝き続けた。花弁は淫らで艶やかな黒に染まり、それでも、彼女は美しかった。
性に溺れ、男に屈したその笑顔に醜悪なんて言葉は到底似合いそうもなかった。
「俺に勝った千聖にはご褒美をやろう。穢れた花弁でも、光を浴びるといい……」
「──それじゃあ」
「夜は……俺のモノへと戻ってきてくれ、愛しているよ……千聖」
「……はい……はい、私も、愛しています……私の、ご主人様♡」
ああ、彼女のことを正しく「美しい」と言うのだろう。
俺は、この時初めて……千聖が自慰をしていた時に抱いた劣情に特別な名前があることを知った。
──これが俺の持つ、愛、だと……
「さて……今日は、もうこの部屋から出られるとは……思うなよ?」
「んっ、あっ♡はい……あなたの心のままに……犯して♡」
「なにも分からなくなるまで、貪ってやる」
思考も晴れたところで、千聖に誘われるまま彼女をベッドに押し倒し、肉棒を突き入れていく。
「あっ、あぁ……はぅん♡ きて、あなたの精子で、おなか、いっぱいにして……♡」
「おねだりが上手だ──なっ」
「んぁっ、あっ、あっ、はげしいっ、の……♡ 乱暴なのに、おまんこ、よろこんでるの……♡」
抽送に、悦楽の表情を浮かべる千聖に、俺もまた悦楽に口許が歪んでいるのだと思う。
掻き回して、子宮口に肉棒を押し付け、刺激してやる度、絶頂する。
俺との行為に蕩けていくその顔すら、今はただただ……満たされていた。
「──っ、んはぁ、あっ、もう、おちんぽ、膨らんできてる……♡イッってるのに、また、イかされちゃう……♡」
「締まるな……っ、射精すぞ、千聖……」
「ゃあ、んっ♡押さえつけて、注ぎ込んで……♡」
「もちろん、その、つもりっだ──っぅ」
目の前が真っ白になるような快感の爆発、肉棒への解放感とともに、千聖のナカへ精を注ぎ込む。
彼女の望み通り、両手の自由を奪い押さえつけながらの射精に、千聖は満足そうに笑って見せた。
「はぁ、はぁ……大好きよ♡」
「……まだ、ピロートークには早いからな」
「……はい、いっぱい使って……♡」
こうして、俺と千聖の関係は……続いていく。
これからは夜な夜な、俺は彼女の艶やかな嬌声を聞きながら、彼女は俺に求められながら、満たされる愛を味わっていくのだろう。それはまるで麻薬のように甘美で──忘れられない快楽だ。
──穢れ行くサギソウの花弁 END