終盤のオチの部分にセミラミスの絆礼装のネタバレみたいなものがあるのでご注意ください。
また、最初の一ページにエロ要素は無いので、「濡れ場だけ読みたい」って人は一ページ目は完全に読み飛ばしてもらっても大丈夫です。
個人的な趣味で戦闘シーン書いてたら結構なボリュームになってしまった( `ᾥ´ )
お題箱に寄せられた複数の妖精騎士ガウェイン、バーゲストのお題を可能な限り取り入れミックスしたお話となります。
そのおかげで文字数が過去最大に……!!
バーゲストが捕食衝動すらねじ伏せられる勢いで激しく愛され尽くしハメ倒されメス犬となるお話
「サーヴァント、セイバー。バーゲスト、召喚に応じ参りました。……
身長百九十センチ、体重百二十キログラム。
見上げる程の威圧感のある風体の女性、妖精騎士ガウェインもとい、バーゲストがカルデアに召喚されたのは、カルデアが異聞帯であるブリテンの終わりを見届けた後の事だった。
男性のマスターを上回る巨体に三桁を越す体重。しかしそこに駄肉や贅肉の類いは存在せず、全て鍛えられ研ぎ清まされた筋肉と目を見張るほどの立派な骨格によるもの。
白銀の鎧、左手の鎖。ボリュームたっぷりのプラチナブロンドの長髪、勇猛さと高潔さを携えた瞳にマスターとマシュが映る。
彼女はフッと薄く微笑むと、右手を胸に当てサーヴァントとして力になる事を誓うのだった。
――――……
「え? バーヴァン・シーもメリュジーヌも既にカルデアにいる? モルガン陛下に至っては一度に五人来た? 五人…………?」
召喚されてから間も無くして聞かされた、まさかの妖精國の同僚や仕えていた主人が既に召喚に応えているとの情報。
さしもの彼女であってもこの情報はそれなりに驚嘆に値するものだったらしく、絵本に描かれるような騎士であるバーゲストも目を丸くして驚いていた。
「えぇ。皆さん快く召喚に応えてくださいまして。……モルガンさんだけは……何ならあちらの方から押し掛けてきたと言いますか……」
マシュが語るには、モルガンにおいては保存していた呼符の内の一枚が独りでにヒラヒラと動き、召喚部屋まで辿り着いた瞬間に勝手に召喚を始めてそのまま召喚されたらしい。
一人召喚部屋に佇むモルガン。凄まじいスピードで自身の霊基の調子を認識した彼女は即座にその場でマシュの大盾も用いず独自の魔術で召喚を開始。
四人の自分自身を召喚し、また召喚された四人のモルガンはまたもや爆速で状況を認識。
その場で即座に目の前のモルガンと同化して宝具を最大に強化した状態となり、日々をこの貞操観念の緩いカルデアで過ごしているのだとか。
「後でみんなの部屋も紹介しておくよ。それと、その口振りからしてバーゲストも妖精國での記憶も引き継いでいるんだね」
「……えぇ、全て」
元より異聞帯、妖精國出身の彼女達に起きたあの出来事は全て生前の事であり、皆等しく記憶を保有している。
理由は不明だがバーヴァン・シーのみ全ての記憶は保有していないらしいが、それ以外は軒並み覚えているのだとか。
それもあってかバーゲストの態度も柔らかく、ある程度の好感度を最初から得られていたのがプラスに働いていた。
カルデアの紹介を終える頃にはマシュと仲良く気兼ねない会話を行えるほどに自然に打ち解けており、そうして一日を過ごした後バーゲストはマスターとマシュに声を掛けた。
「カルデアのマスター。……いや、今はもう私のマスターでしたか。最初に述べた通り、私はこれより貴方の騎士として力を奮います。…………しかし、依然私の信念に変わりはありません。弱肉強食。どうか、私より強くなってくださいませ」
彼女による誠実な告白。現時点で既に一定の信頼を得られており、素の彼女を知っている彼に向かって、バーゲストは今一度誓いの言葉を口にした。
“うん、頑張るよ”と言って笑うマスター。薄く微笑んだ彼女は次にマシュへと向き直り、優しく語り掛ける。
「マシュ・キリエライト。君には大きな借りがある。このバーゲストの魔剣、必要な時があればいつでも言いなさい。万難を排して駆けつけましょう」
「……ふふっ……ありがとうございます、バーゲストさん。とても心強いです」
全ての記憶を保有している。つまりそれは獣の厄災となった自分を、一時的に召喚に応えてくれた円卓の騎士達と共に終わらせてくれた事も記憶にある。
妖精國を駆け抜けた事に多大なる恩義を感じているバーゲストは改めて自らの力を捧げようと宣言した。
こうして、正式に彼女もこのカルデアの一員となり、貞操観念の緩いカルデアに時間を掛けて無事に馴染んでいくのだった。
――――……
荒涼とした平原、青い空にまばらに浮かんだ灰色の雲。
身を潜ませられるようなオブジェクトは辺りに無く、その一帯で激しい戦いが繰り広げられていた。
こちらが擁する戦力は六騎の英霊。
ライダー、牛若丸。
アサシン、ジャック・ザ・リッパー
フォーリナー、アビゲイル。
セイバー、沖田総司。
アサシン、ふーやーちゃんこと武則天。
そしてセイバー、妖精騎士ガウェイン改め、バーゲスト。
「■■■■■■!!!」
名だたる英霊達と相対する巨大なドラゴンが、天に咆哮を轟かせる。
同時に口から迸った無数の火焔弾が空へとバラ撒かれ、そして一気に雨のように降り注いだ。
「「「………………!!」」」
敏捷性に秀でた牛若、沖田、ジャックは絨毯爆撃の如き火焔弾を巧みに見極め、一発の被弾も許すこと無く掻い潜って回避する。
着弾時の爆風を利用して更に加速した三騎は、巨竜を取り巻く無数のワイバーンや竜牙兵の群れへと突っ込んだ。
「ぬぅゥんっ!!」
「出番じゃ。酷吏達よ」
バーゲストのこそぎ取り、抉り取るような豪快な斬撃が降り注ぐ火焔弾を消し飛ばし、ふーやーちゃんがパチンと指を鳴らせば召喚された複数の酷吏達が盾となってそれらの攻撃を相殺する。
「動かないでね? マスター」
残った第三再臨姿のアビゲイルが虚空に鍵を差し込めば、門から現れたタコのような触手が彼らに牙を剥いていた火焔弾を打ち消した。
「ありがとうアビー!!」
巨竜による攻撃を凌いだマスターは再び地を蹴って走り出す。
礼を言われた。自分がマスターを守った。便りにされた。その事に対して“悪い子モード”のアビーは適切に戦場を駆け回るマスターへ得意気な笑みを浮かべる。
敵はドラゴンのみならず無数の竜牙兵とワイバーン。
牛若達の討ち漏らした数体の竜牙兵がマスターへと骨の武器を振り上げる。
「っぶな……!!」
スカサハを始めとした数多の武勇に秀でた英霊達に鍛えられたマスターは物怖じすること無くそれらの攻撃を紙一重で回避。
足を止めず、跳んで、転がり、巧みに逃げ続ける。
数体の竜牙兵が徒党を組んでマスターへ襲い掛かり、あわや負傷するかと言うところで竜牙兵の足元で何かが爆発。
「うむうむ、良い誘導じゃ♪」
それはふーやーちゃんの仕掛けていた毒の香炉の爆発であった。
衝撃に巻き上げられた骨の兵隊達の体勢が崩れ、そのタイミングで二体の酷吏が大振りな剣で激しく打ち据える。
「逃げ惑うように見せかけての一ヶ所への誘導。ご苦労じゃったの」
吹き飛ばされた数体の竜牙兵達は後続の群れと激突。
団子となった骨の化け物達を、夥しい数の紫色の魔力針が取り囲む。
「くっふっふー♪ そぉーれっ!!」
ふーやーちゃんの耳を蕩けさせるような甘い声、高笑い。
それを合図に瞬時に加速した魔力の針が、固まった竜牙兵達を一網打尽に叩き伏せた。
「そぉうらッ!!!」
バーゲストの空間ごと削り取るような豪快な振り下ろし。
それは彼女の前にいた数体のワイバーンを纏めて捉え、地面ごと真っ二つに砕き斬る。
マスターが思わずよろけるような強烈な振動が大地を通して波及して、爆風と共に砂塵を舞い上げた。
「――――」
その砂塵をボフッと内側から貫いて飛び出す影が一つ。
それは一歩踏み込む度に加速して、三歩目にして空間を跳躍した。
「ハァッ!!」
縮地を用いて突進した沖田総司。
彼女の煌めく刀の切っ先は、ドラゴンの顔の横を通り抜け、最後尾にいた指揮系統を司っていた灰色の鱗のワイバーンの急所を一突きで串刺しにする。
トップを失い統率を失うワイバーンの群れは途端に群れ単位での動きが乱れ、甲高い鳴き声がひしめき合う。
再度、大ボスであるドラゴンが雄叫びをあげると、そのとてつもない質量でもって左前足を地面に叩きつける。
地盤が砕け、地表がめくれる。水の存在しない土砂のみで構成された殺意の津波。
迫り来る砂色の壁を前に、バーゲストが一歩、覇気を纏わせ立ちはだかる。
「そこにいろマスター。見ていろ、私だけを」
妖精剣ガラティーン。重厚な鉄塊の柄を鎖もろとも握り締め、大きく雄大に構えて振りかぶる。
アビーが不満げながらも万が一に備えてマスターに蛸足触手を巻き付けた。
そしてドラゴンの前足による衝撃の波が眼前に迫ったその瞬間、
「ォォオオ゛――――」
彼女の雄叫びは途中で途絶えた。
バーゲストの発するそれよりも大きな轟音に掻き消され、力強く振り上げられた剣の斬撃の前に、ドラゴンの攻撃は真っ正面から真っ二つに引き裂かれる。
「■■■……!! ■■……?」
長い時を生きたドラゴンは力も強ければ知能も高い。
こちらの攻撃を凌がれた事を認識し、そして忌々しく思って歯を食い縛る程には。
そして、自身の視界を急にヒラヒラと遮り始めた何かの影に疑問を覚える程に。
「これで……最後ッ!!」
そこでようやくドラゴンは現状を認識する。
電光に近付きすぎた羽虫のように、ボトボトと落下してきているのは共生関係にあったワイバーン達の骸。
そしてまるで八艘の舟を跳び移るかのごとく、牛若がワイバーンの体を蹴り付けて身軽に空中を駆け回りながら首を刈っていたのだと。
ドラゴンは即座に巨体をくねらせ、狙いを空中で身動きの取れない牛若へと絞った。
体長と同じ長さを誇る長大な自身の尻尾を鞭のようにしならせ、彼女の肉体を引き裂く算段だった。
並みの武器では傷一つ付かない鱗に覆われ、鋼のような強靭さとしなやかさを兼ね備える靭尾は、一振りで大木すら寸断する。
「牛若丸さんっ!!」
思わず沖田が声を張り上げる。しかし牛若の得意気な笑みはこれっぽっちも陰らない。
「心配御無用! ――主殿っ!!」
牛若の合図と共にマスターが温存していた礼装効果を発動。“緊急回避”の魔術が彼女に掛かる。
風切り音を上げてドラゴンの尻尾の横薙ぎが牛若の脇腹に命中――――した瞬間彼女の姿は真っ二つに引き裂かれる残像を残して掻き消えた。
確かに命中した筈の攻撃が空を切り、ドラゴンが戸惑いを覚えた頃には牛若は既に着地してドラゴンの懐に。
納刀した薄緑の柄に手を這わせ、既に脱力まで完了している。
「遅いッ!!!」
肺の中の呼気を吐き出すのと同時に地を蹴った牛若は突風のように姿を消して、ドラゴンの体躯に深い十字傷を付けて斬り抜いた。
「……ッ゛……■■■■……!!」
目の覚めるような鮮烈なる斬撃。
身を刻まれたドラゴンは、今が好機と接近を試みる他の英霊達を一睨みするなり大きな翼で力強く羽ばたいた。
「ぬ…………ぐ……!!」
「っぷわ……この……!!」
不可視の壁がぶつかったのかと錯覚するほどの凄まじい風圧。
追撃を加えようとしていたバーゲストがその場に踏ん張り、ふーやーちゃんが風と共に舞い散ってくる小石や砂塵に腕を盾にして睨み付けていた。
大空を背にして浮かび上がったドラゴンは、羽ばたき続けて高度を上げていく。
同時に地上から見上げていても分かるほどにドラゴンの口元へ凄まじい熱量が収束しており、こちらが手の届かない空からブレスで一掃しようとしているのが一目で分かった。
「――――ふふ……待って?」
ガチャリ、とどこにも扉の無い空間に、起こる筈のない
次の瞬間、空を飛ぶドラゴンの背後の虚空にどこからともなく門が開き、中から巨大な“手”のような物質が現れる。
その巨大な“手”はドラゴンの両翼を紙屑でも鷲掴みにするかのように、乱雑に握り潰した。
声にもならぬ悲鳴を上げて、巨竜は滞空状態を維持出来ずに地上へ自由落下。
轟音を立てて振動が波紋のように辺り一帯に伝わっていく。
その門を用いた攻撃をよく知っていたマスターは、喜びながら近くの少女へ声をかけた。
「アビー流石!!」
「御安い御用よマスター。それじゃあ……これでどう?」
アビーの持つ黒紫色の鍵が大地に突き立てられる。
大鍵の先端は砂の地面にではなく虚空に空いた何処とも知れぬ空間へ。
ガチャリ。アビーが鍵を開けば今度は地に堕ちたドラゴンの足元に極彩色の波紋が広がり、突如砂中に大ダコでもいるのかと錯覚するほどの大量の巨大な触手が巨竜の体躯を絡め取った。
凄まじい力で縛られて、山のように巨大なドラゴンの膂力でも抜け出せない。
今度こそ好機。
その場の誰もが同じ思いを胸にして駆け出した。
「フッ…………!!!」
瞬きの内に放たれる沖田の無数の斬撃。
それは大地に引き倒されまいと踏ん張る巨竜の右前足を斬り刻み、支えの一つを失ったドラゴンはガクンと体勢を崩す。
三本の足で辛うじて転倒を堪えた巨竜の眼前で、妖しい紫色の香炉が炸裂した。
ふーやーちゃんの毒の香炉を顔面に浴びたドラゴンは、衝撃と毒でクラリと大きく力を失う。
「バーゲスト!!」
マスターが指揮を下せばバーゲストはそれに従い身動きの取れない巨竜へと突き進む。
「うむうむ、着実に相手の手札を削り……正面から分かりやすい驚異をぶつける。悪くない」
「ォォォオォオオオ゛オ゛ッ!!!」
蹴り上げた地面が数メートルも舞い上げられるほどの力強い踏み込み。
誰よりも大きい体躯を活かし、バーゲストは高度の下がった巨竜の顔面に全力で剣撃をブチ込んだ。
「■■■■゛■゛……ッ……!!」
大型トレーラーでも衝突したかのような凄まじい衝突音。グワンと揺らめくドラゴンの巨躯。
しかし全身の内で最も硬い鱗に覆われた頭部は両断には至らず、驚異的な生命力で巨竜は意識を保ち、“今自分を確実に殺し得る火力”をまず消そうとブレスを放った。
大きなタメのある本意気のそれではないが、竜種の早撃ちのブレスは並の生命体なら容易に肉体を消し炭にする。
迫る光の奔流。
それに対し、マスターからのバーゲストへの追加の指示は、何もなかった。
(了解した。つまり“こう”しろと言うことだな……!!!)
言外の意図を読み取ったバーゲスト。
彼女が取った行動は、避けずに巨竜のブレスに正面からぶつかりにいくと言うものだった。
白銀の鎧に覆われた女騎士が、ドラゴンの光線に飲み込まれる。
人智を越えた力を持つサーヴァントであっても、多少の耐久力が無ければ直撃はそれなりに応える。
巨竜は自身の攻撃が直撃した事による手応えで、まず一騎は落としたと確信した。
しかし、
「――――ぅゥ゛ぅ……ォオ゛オ゛あア゛ァ!!」
あろうことか目の前の女騎士は自身のブレスの中を突っ切ってきた。
激流を正面から撃ち破るように。
濁流を引き裂いて進む重機のように。
縦長に開いた獰猛な瞳孔は確かに自らを獲物として捉えており、一片の怯みも見当たらない。
「無力だな、本当に!!!」
二度、最初に顔面に受けた箇所と同じ場所に、バーゲストによる剛撃が叩き込まれてドラゴンはその身を大きくのけ反らせた。
さしもの巨竜も視界が白み、否が応でも何よりの驚異であるバーゲストへと意識が集う。
そして、それこそがマスターが狙っていた絶好の好機であった。
注意が反れマークから外れた牛若が巨竜の体を駆け登り、大きく跳躍して中空に躍り出る。
「うーん、妾の教えをしっかりモノにしているようで何より」
全体の動きを見ていたふーやーちゃんが、勝負は決したと言わんばかりに満足げに自前の扇で顔を仰ぐ。
マスターを鍛える者は様々な分野に存在している。
その中には当然、共に次の国を統治しても良いと考えているふーやーちゃんも含まれる。
未熟なマスターに教えた部隊指揮の術は問題なく身に付いているようだと、彼女はまた高笑いを浮かべた。
「――――ジャック殿!!」
「うんっ!」
空中で身を逆さにした牛若が一言叫べば、“今まで気配を遮断して着実に雑兵を減らし、機を窺っていた黒衣を纏った暗殺者”が、彼女の元へと現れた。
無垢なる殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーを足に乗せ、牛若は全力で彼女をドラゴンの首筋へと蹴り飛ばす。
タイミングを合わせて牛若の足から跳躍した小さい暗殺者は、黒い残光を残しながら完全に巨竜の意識外から接近し――――
「解体するね」
無邪気な笑顔を浮かべたまま、バーゲストへと集中しているドラゴンの頚を刈り取り、確実に絶命させるのだった。
――――……
「お疲れみん――――ぶぇっ!!?」
「わぁい!! わたしたち頑張ったよおかあさん!! ほめてほめて!!」
巨竜の死体、ワイバーンの死体の山、竜牙兵の残骸達の前で、ジャックが正面からマスターにダイブして顔面に抱き着いた。
当座の危険は周囲には無く、これで無事にこの微少特異点の先に進める。
幼女の小さい身体を抱き止めたマスターは、彼女が望むままに抱き締めて、そして地面に下ろすと思う存分頭を撫でてやる。
よく懐いた子猫のように、ジャックは気持ち良さそうに目を細めてえへへと笑った。
「主殿! 如何でしたか牛若の身のこなし!」
「沖田さん大勝利ー! マスターもまた指揮の腕を上げましたね!」
次いで牛若と沖田が彼の元に駆け寄ってくる。
マスターは口々にそれぞれに労いの言葉を投げ掛けた。
そのまま試しに労いと称賛の言葉をかける“だけ”に留めてみれば、
「……………………」
「……………………」
これが漫画の世界なら二人の顔の周りには“ワクワク”、“そわそわ”と言った擬音が浮かんでいるのだろう。
そう思えるほどにその後の何かを求めて目を輝かせ、二人は何も言わずに待っていた。
「……ふふ、ありがとね。本当に助かったよ」
マスターは思わず顔を綻ばせ、まず牛若の頭に両手を伸ばした。
「よぉーしよしよしよし……」
「わぷっ、……えへへ…………」
右手で頭を、左手で頬を。
顔全体を包み込むようにして丹念に撫でてやれば、遣いを果たした忠犬のように牛若は笑顔を浮かべてされるがままに撫でられていた。
次に沖田を撫でてやれば、
「ふっふっふ、また頼ってくださいねマスター!」
戦闘中の容赦の無い人斬りとしての姿から一変、年相応の少女のように可愛らしく微笑んで見せる。
そうして忠犬系サーヴァント二騎を手厚く労っていると、不意にマスターの背後から僅かな重みがのし掛かった。
疑問に思って振り返れば、そこには何も言わないながらも構ってオーラを隠そうともしていないアビーが背中を預けて立っており、タコ足触手でクイ、と軽く自分の手を引いていた。
気恥ずかしさと絶妙な年頃の精神年齢で素直になれないアビーによる精一杯のご褒美の催促であり、彼は意を汲んで後ろから抱き寄せながら頭を撫でる。
「ありがとねアビー。何度も助けられたし守ってもらって」
「……ううん、御無事で良かったわ」
素直に率直に感情をぶつけてくる牛若や沖田と比べると、やや引っ込み思案かつ悪い子モードであっても変な所で遠慮するアビー。
誰を敵に回してでもマスターのために行動する積極性と年齢相応の幼さを兼ね備える彼女のために、彼は優しく満足するまで頭を撫でてやるのだった。
一頻り彼女が満足するまで撫で終えればアビーはピタリとマスターの身体にくっつき、ジャックと両サイドから挟んで密着する。
そんな状態で後ろから咳払いが聞こえたためそちらへ向き直れば、ご満悦ながらも何かを求めているような、そんな表情のふーやーちゃんが立っていた。
「前回の妾直々の指導、しっかりと身に付いているようで安心したぞマスターよ。褒めて遣わす」
幼い童女の姿ながらも彼女は中華を統べた、れっきとした皇帝の一人。
皇帝直々の称賛とあれば謹んで受け取るのが礼儀であるとして、マスターはピタリと抱き着いているアビーとジャックを一旦離して跪いた。
「「………………」」
そして起こる沈黙。
最初にその沈黙を破ったのはふーやーちゃんからであった。
「……何をしておる、早く妾も同じように撫でるが良い」
「えっ、今のくだりで俺が撫でるの? 逆では?」
「阿呆!! 臣下の側から皇帝たる妾に褒美をねだるなど言語道断じゃぞ!!」
「いや……目上の人の頭を許可も無しに撫でるの怒られるかなって……」
「妾の要求に答えないなど不遜すぎるわ! 撫でよ!!」
首を傾げながらもマスターはふーやーちゃんの頭も要求通りに撫でていき、求められるがままに称賛の言葉、感謝の言葉を口にしていく。
「………………」
そんな和気藹々とした一同のやり取りを一歩離れた所でジーッと眺めている人物が一人。
妖精騎士バーゲスト。
高潔たる武人である彼女は、一人黙したまま、表情に出さぬまま、頭を撫でられて喜ぶサーヴァント達を見ながら一つの事を考え続けていた。
(…………良いなぁ…………)
――――……