※この作品はR-18です。

貞操観念のおかしいカルデアのお話   作:ソボロ

24 / 37
大変お待たせいたしました。
『お題箱でいただいたWコヤンのお話を描くために必要なプロローグを1万文字程度でサクッと書いちゃおう』、という初の試みだったのですが、結局3万文字書いてしまいました。
次はWコヤンのお話の予定で、こちらはあくまでプロローグとしての位置付けなのでちょっとエロは薄め(当社比)です。
皆さまもこの機会に本編を読み返してみたら面白いかもしれません。


コヤンスカヤの私、趣味に走りました
コヤンスカヤが初対面でマスターくんに孕まされ育っていく子供と一緒に異聞帯を巡る孕まされルートのお話


 

「はぁ……はぁ……」

 

 “バタフライエフェクト”という言葉があるように、未来は常に蝶の羽ばたき程度の些細な出来事であっても劇的な変化を起こす可能性を秘めている。

 

 同じ世界線の中でも剪定ルートに辿り着かぬ限り、未来は那由多に分岐する。

 

 となれば当然、無数に存在する並行世界、前提や因果の違う世界線ならではの“分岐ルート”が存在するのも道理である。

 

 

 そしてここ、貞操観念の緩い世界線も、今まさに独自の分岐へと足を踏み入れたのだった。

 

 

「ヤってしまった……。あの……大丈夫ですか……?」

 

「フォウ! フーッ! フォッ、フゥ!!」

 

 人理修復を成し遂げたフィニス・カルデア。

 

 そのとある空き部屋で、人類最後のマスターは立ち尽くしていた。

 

 彼の目の前にあるのは、

 

「ん゛、ふぅーっ……!♡♡ フー゛ッ……!♡♡ お゛……んっぉ゛……!♡♡」

 

 膣内射精(ナカダシ)されて床に土下座姿勢で蹲(うずくま)って痙攣し、マンコからはブビッ♡♡ と下品に精液をひり出す美人秘書、コヤンスカヤの姿。

 

 そして、何故か邂逅した時からやたら興奮してて、現在その蹲ってプルプル震えているコヤンスカヤの頭部に、てし、てし、と前足による肉球パンチを執拗に叩き込むフォウくんの姿であった。

 

 

 

ーーーー……

 

 

 

 

「お疲れ様。顔色が悪いわね、ボク。こういうオトナの世界の事情は初めて? 」

 

 人理修復という苦難の旅を乗り越えたカルデアは、喜びに湧くのもつかの間、魔術協会と国際連合から派遣された審問官の尋問を受けるという目に遭っていた。

 

 職員たちは手狭な反省室などに押し込められ、一人ひとりに長時間にわたる尋問が執行される。

 

 当然人類最後のマスターも例外ではなく、六時間にもわたる質問責めを受けてようやく解放。

 

 そんな折りに、後にカルデアを壊滅させる企みを秘めているタマモヴィッチ・コヤンスカヤはマスターへ声をかけた。

 

「あー……どうも」

 

 目の覚めるような美女だった。

 思わず息を呑むほどの妖艶な色気を身に纏い、女性として完成されたプロポーションの上からビシリと秘書スーツをキメて。

 

 その豊かでハリのある美巨乳が作る胸の谷間も引き締まったウエストも丸見えの、へそ出し秘書スーツという人間社会での一般的な着こなしでこそ無いものの、彼女の美しさと堂々とした佇まいによって気品すら感じさせられる。

 

 

 長時間の高圧的な尋問を終えて精神的に疲弊した状態で、唐突な美女との邂逅にマスターはとりあえず無難に頭を下げるしかなかった

 

 

「でもそろそろ慣れちゃってね。何事も経験ーーーーきゃっ!?」

 

 そんな何事か分からずキョトンとするマスターの様子は、コヤンスカヤの目には周囲の状況をまるで理解出来ていない哀れで脆弱な被捕食者が重なって見え、胸中での警戒レベルは更に下がる。

 

 余裕綽々で近付く彼女に、横合いから急に飛び込んで襲い掛かったのは、カルデアにて良き友達のフォウくんであった。

 

 短い悲鳴こそ挙げるものの余裕でヒョイとかわせば、力を失った小さな獣、フォウくんは着地するなり再跳躍。

 

 彼の正体を知っている彼女は、そのまま空中で叩き落として踏んづけてやろうと身構えるが、

 

「フォウくんストーップ! ダメだって手を出しちゃ! この人えらい人だから!」

 

「フォウ、フォーウ!」

 

 フォウくんの白い身体がコヤンスカヤのリーチの中に入る前に、間に割り込んだマスターがフォウくんを受け止めた。

 

 彼の胸板へダイブして受け止められたフォウくんはそれでも手を出さんともがいていたが、いつものように抱き抱えられると観念したのか大人しくなった。

 

「あの……申し訳ありません……多分彼もわざとじゃないんで見逃してもらえると……」

 

「明らかにニ撃目放ってきたわよね?」

 

 胸にフォウくんを抱えたままマスターは頭を下げる。

 

 フォウくんの方も抱えられ制止されたのもあってもう暴れようとはしていなかったが、それでもやっぱり思いっきり彼の腕の中から敵意の視線をぶつけていた。

 

「んー……そうね、じゃあキミが私とお話ししてくれるのなら許してあげなくもない。どう? お姉さんとちょっとだけ、内緒話してみない?」

 

 力を失った災厄の獣への敵意は一旦胸にしまう。

 そもそもの目的を思い出し、彼女は気を取り直して本題へと戻った。

 

「そんなことで良いのであれば、はい。……良かったねフォウくん、許してくれるって」

 

「シスベシフォーゥ…………」

 

「すっごい機嫌悪いな……」

 

「……はぁ…………さてさて、立香クンの同意も得たし、さっそく聞いちゃおっかな」

 

 コヤンスカヤに向けて器用に中指の爪だけを立てるフォウくんを宥めながら、彼はコヤンスカヤの申し出を了承する。

 

 第四の獣と何も分かってない一般マスターの気の抜けるやり取りに脱力しながら、彼女は話題を切り出した。

 

 

「キミはこのカルデアについてどこまで知っているのかしら?」

 

 

ーーーー……

 

 

「うそ。ホントに知らない? 魔術属性はおろか、彼らの名前さえ?」

 

 

 コヤンスカヤが尋ねた事について、マスターは何も知らなかった、聞かされていなかった。

 

 カルデアがどこにあるのか。

 Aチームについて。

 

 それら全てから一切の情報は得られず、コヤンスカヤの中でのマスターへの評価は更に落ちて、もはや憐れみすら覚えるレベルだった。

 

「ふぅーん、そっかー……」

 

 何も知らぬ愚かな人類。

 魔術師としても一般人に毛が生えた程度、大きな流れに逆らえず巻き込まれ、“これから起こる事”など知る由もない。

 

 ここまで何も知らない無力な存在だと一周回って愛しさすら湧いてくる。

 

 

 その“愛しさ(慢心)”が、後々長く己に影響を及ぼすなど夢にも思わない彼女は時計を取り出し、時間を確認した。

 

 時計の針はそろそろゴルドルフの相手をする時間に迫っており、収穫は無さそうだと断じた彼女はそれ以上の追求を諦める。

 

「何も知らないという事を教えてくれてありがとう♡」

 

 彼と言う存在を大きく見下した彼女は上っ面だけの笑顔を浮かべ、近付いて彼の頬を撫でた。

 

 その際に彼女が予想していた『絶世の美女からの接近、そして急なボディタッチに慌てふためき挙動不審になる』という無様な姿を見せず、“慣れた様子”で笑顔でいたのには若干引っ掛かったが、それは特に気にしなかった。

 

「お力になれなくて申し訳ない。それじゃ俺はこれで……」

 

「まぁまぁまぁ♡ 折角だから私から立香クンにお礼をしてあげようと思うんだけど、どぉ?♡」

 

 コヤンスカヤ視点から映ったマスターの無知さ、無力さ。

 

 それに無力な被捕食者に抱くような可哀想さ(可愛さ)を覚えた彼女は、人理修復を成し遂げた事で出来た自信を戯れにへし折ってやろう、と。

 

 彼を自分の肢体で骨抜きにして玩具にしてやろうと。

 

 ちょっとした味見、お遊びとして相手をしてやろうと、コヤンスカヤは誘いをかけた。

 

「立香クンもセックスぐらいやったことあるでしょう? どう? お姉さんとオトナの時間、過ごしたくない?♡」

 

 上半身を近付け美貌を押し付け、開いた胸元を更に開いて胸を揺らす。

 

 その際『顔を真っ赤にしてアワアワ可愛らしく震えながらそれでも美女からの申し出を拒否出来ない』ような醜態を晒すかと思いきや、全く照れや羞恥で距離を取ろうとせずパァッと明るい顔をうかべるマスターに若干の疑問を覚えたが、それもやっぱり、特に気にはしなかった。

 

「えっ、良いんですか? じゃあ是非お願いします」

 

「………………、…………フォーフォ……」

 

 先程あんなにも敵愾心剥き出しでいたフォウくんが、自分を抱くマスターを見上げて、そしてコヤンスカヤへ視線を移し、まるで“……あーあ……”とでも言うかのように短く鳴くのがやたら気に触ったがそれも無視した。

 

 どうせ三擦り半でピュルルと水のような射精を行い一瞬で果てるだろう。

 どうせ自分の手練手管に射精の自由を握られ情けなく許しを乞うだろう。

 

 ゴルドルフの機嫌を保ち心にもないヨイショをして接待する時間が近いが、こんな無力で無害っぽい男の相手など途中でジュースを買う程度の時間もかかるまい。

 

 人類最後のマスターが自分の手により骨抜きにされた情けない姿を想像しながら、フォウくんを抱えたマスターと一緒に手頃な空き部屋へと姿を消した。

 

 

 その際フォウくんに肉球でポンと肩を叩かれたのが無性に“頑張れよ”と言われたように感じてイラッとしたが、完全にマスターを舐めきっていたこの時のコヤンスカヤにとっては些末な事だった。

 

 

 精魂尽き果て息も絶え絶えに“なるであろう”彼には最後になんて声をかけてやれば良いだろうか。

 

 “これからは通りすがりの美女に声をかけられたら用心するようーに! ハニトラはおっかないぞ♡”

 

 ……とでも言ってやろうか。などと考えつつ、二人と一匹ーーーー正確には一人と二匹の入った空き部屋は扉を閉ざすのだった。

 

 

 

 

ーーーー……

 

 

 

「んお゛っお゛っ……゛ぅ゛っ、……っぉ゛ぉ゛~゛~…………っっ!♡♡」

 

 ぱんっぱんっぱんっぱんっ……!♡♡ と灯りの無い空室で、コヤンスカヤの尻に腰を叩き付ける音がリズミカルに響いていた。

 

(やばっ、ちょ……なんでっ?♡♡ イグっ♡♡♡)

 

 手練手管で小指程度の雑魚チンポを苛めて手玉に取る筈が、何故か自分がマスターの愛撫により指だけで意識が朦朧とするほどイカされた。

 

 オンナの快楽でキャパオーバーにして許しを乞わせる筈が、気付けば自分が朦朧としてる内に勝手にハメられていた。

 

 ガニ股立ちバックで両腕を手綱のように掴まれ、ぶるんぶるんと下品に乳房を揺らして喘ぎ声を可能な限り噛み殺す事しか出来ない。

 

「ぉ゛っぉ゛、な゛ッなかな゛かっ♡♡ 慣れ゛って、らっしゃいますっの、ね゛っ♡♡ ぉ゛イ゛ッッ……!♡♡ きゅ……きゅ、及第ってん……ぉ゛っぉぉ……!!♡♡♡」

 

 されるがままになっているが、格下認定して先程あれだけミステリアスで妖艶なお姉さんムーブをしておいて無様に喘がされるのはプライドが許さなかった。

 

 故に懸命に喉の奥から上ってくる嬌声を噛み潰しながら、何とか余裕を保っているように見せ掛けようと彼女は必死に喋っていた。

 

「フォウッ、フォウキャーゥ」

 

 横では近場の台に乗って嬉しそうにシャドウボクシングしているフォウくんの姿が。

 

 マスターに“ヤれーっ、イけーっ”と声援を送っているらしい。

 

 

「オ゛゛ッッっ……!?♡♡♡ お゛ほっ……ちょっ……待っ……つっ強ぉ゛っオ゛………………ッッ!♡♡♡」

 

 当然人理修復を成し遂げるまでにも日常的に女性英霊と交尾を繰り返していたメス殺しマジカルチンポのマスター。

 

 彼のテクニックと肉棒は最適解のみをなぞるかのようにコヤンスカヤを感じさせ、同時に彼女の膣穴も“憐れみ”を通り越した先の愛ではなく、“雌”としての愛でねっとりと媚びていた。

 

「ぉ゛っぉ゛っぉ゛っぉ゛ぉ゛~……っ!♡♡♡ そ、そうです……そこ……っイイ゛でっ……す、よ……ぉ゛♡♡♡」

 

 あれだけあった余裕は現在全て感じまくっている事を誤魔化すことのみに注がれている。

 

 本気を出せば息だけでも殺せる格下どころではない一介の人間のチンポ一本で、彼女の戦闘力は現在ゼロになっていた。

 

(これ゛マジやば、イ゛ッッ!!♡♡♡)

 

 ッップシャァァッ♡♡♡ とガニ股で潮を吹くコヤンスカヤにもはや先程までの威厳はない。

 

(ぁ゛ーイグっ♡ 私の子宮が吸い付いてるっ♡♡ ちょ、ちょっと……射精されっ、たら゛っ……!♡♡)

 

 

ーーーーびゅるるるるぅっ!♡♡♡ ぶびゅるるぶっ、びゅぐっびゅうぅぅっ♡♡

 

「オ゛゛゛ッッ゛ッ……~゛~゛~゛~゛~゛っ♡♡♡♡」

 

 予告無しの種付け射精に、コヤンスカヤは不意打ちアクメで項垂れていた顔を持ち上げ誰もいない壁に向かってガチイキ顔を晒す。

 

 幸いアクメが強すぎてかえってイキ声が潰れ、見下していたマスターにオホ声を聞かせるという事態は避けられた。

 

 とは言え経験豊かなマスターは膣の反応と全身の痙攣でイキまくってるのを全て察していたのだが。

 

 その一発で完全ノックアウトされたコヤンスカヤは、意識を快楽に押し流されて前へと倒れる。

 

 顔面を床に打ち付けないようマスターに気遣われ、ゆっくりと手を離せばそこには尻だけを掲げた土下座状態でマンコからザーメンをひり出すコヤンスカヤの姿が。

 

「ヤってしまった……。あの……大丈夫ですか……?」

 

「フォウ! フーッ! フォッ、フゥ!!」

 

 てし、てし、て頭に肉球パンチを受けるもアクメ失神して反応できないコヤンスカヤ。

 

 彼女の子宮はドロドロのザーメンに満たされ、産みたての卵子がぷちゅん♡ と受精する。

 

 哀れ、ビーストIVの幼体、コヤンスカヤは、自分が格下として見下していたただの人間のチンポにアッサリと敗北した。

 

 予想だにしていなかったとてつもない快楽で失神し、その間に妊娠したことなど分かる筈もなかった。

 

 その特殊な成り立ちから、そしてフォウくんが力を失い第四の獣の席が空いたのをきっかけに受肉していた彼女は、サーヴァントと異なりヒトの女と同じように肉のある赤子を孕んだ。

 

 

 

 ここに、“妊婦コヤンスカヤ異聞録、貞操観念の緩い世界線ver”が幕を開けたのである。

 

 

 

ーーーー……

 

 

 

「はーい、ヤガのみなさんコンニチワー! 今日も今日とて自転車操業ライフご苦労さま♡」

 

 カルデア襲撃から三ヶ月後。

 

 第一の異聞帯(ロストベルト)、ロシアにて、防寒具に身を包んだコヤンスカヤは元気に阿漕(あこぎ)な商売を行っていた。

 

 特別製の殺戮猟兵(オプリチニキ)を侍らせて、その脅威からヤガたちは逆らう事も出来ない。

 

 途中、異聞帯攻略に来ていたカルデア一行とも相対するが、

 

「だからーーーーその時まで、ネズミのように走り回りなさい? 私(わたくし)はクリプターたちの相談役。貴方たちが旅を続ける限り、必ず敵として現れるのです」

 

 この時のコヤンスカヤはまだ自分が身籠っている事に気付いていなかった。

 

 余裕たっぷりにカルデアの足掻きに笑みを浮かべ、おちょくり、煽る。

 

 一行を見逃し仮住まいであるロシアの居城に戻った彼女は厚手のコートを脱いでため息をついた。

 

「…………何だか最近熱っぽいような……。……この私(わたくし)が……? うーん……まぁ、気のせいでしょう」

 

 そして自室の豪奢な姿見の前を通った時、彼女はレディとして絶対に見過ごせぬ問題を目の当たりにして時が止まったように立ち止まる。

 

「………………」

 

 ふぅー……と息を吐いて脱力。自然体のままにして、彼女は姿見の前で横を向いてある一点を凝視した。

 

 敏腕美人秘書に相応しい絶世のプロポーション。

 形良くサイズも完璧なバストに、引き締まったウエスト、ハリのある豊かなヒップ。

 

 ……の筈が、僅かに、本当にごく僅かに変化が起きていた。

 

 キュッと引き締まり美しいラインを描くウエスト、その下腹部が……微かに膨らんで曲線が弱くなっているのである。

 

「ーーーー……日々の運動は欠かしていない筈…………」

 

 コヤンスカヤに、あの時マスターチンポに一発で敗けた時の記憶は朧気にしか残っていない。

 

 舐め腐っていた状態からの完全なチン敗け本気膣内射精アクメという、あまりにも大きな高低差が彼女からあの時の正確な記憶を奪っているのである。

 

 当然彼女に心当たりなどあるわけがなく、妊娠初期症状に関してコヤンスカヤは身体に僅かな違和感を感じるのみであった。

 

「………………?」

 

 

ーーーー……

 

 

 

「……うん、これは…………デキちゃってますねぇ……」

 

 第二の異聞帯(ロストベルト)、北欧にて。

 スカサハ=スカディから用意された氷の城で、コヤンスカヤはようやく己の肉体の変化の答えに辿り着いた。

 

 時間経過と共に育つ赤子はコヤンスカヤのお腹を明らかな妊婦のそれにして、誤魔化しようの無いほどに存在を主張していた。

 

「この様子ですと……だいたい四から五ヶ月目ぐらいでしょうか。……おかしいと思ったんですよねぇ。この私が太るなんてあり得ませんし」

 

 ベッドに座り膨らんだお腹を撫でるコヤンスカヤ。

 意識を集中させてみれば確かに血を分けた我が子の胎動が感じられ、彼女はその重みに安堵のため息をつく。

 

「霊基の変化で太ったとかでなくて安心しました。単に孕んだだけとは。……相手はー…………って、立香クンとしかヤってませんでしたね……」

 

 心当たりはそれしかない。

 

 この貞操観念の緩い世界線でも、彼女はそのプライドの高さ、危険性、そして基本的に単独で動く特性から、そもそも物理的な接触を行う所まで到達できる者がいないのだ。

 

 胎児の様子から当時を遡っても、そもそも他者と直接的に接触したのがマスターしかいない。

 

「うーん……私、正直あの時の事は何故かよく覚えてないんですよねぇ……」

 

 何となく曖昧に覚えているのは、ヤる前は一周回って愛しさすら感じるほど無知で無力だったが、セックスの時に“幾らか”評価を上方修正するに値するくらいには上手かった、と言うことだけ。

 

 その“幾らか”の詳細な値が分からないのがどうにも引っ掛かかりを覚えるが、

 

「まぁ、記憶に残らない程度だったのでしょう♡」

 

 中途半端に記憶や概要が残ってるのが災いし、それで自動的に空白を補完したことでこの時の彼女が真相に辿り着くことは無かった。

 

 残るはこの孕んだ赤子をどうするか、であるが、彼女にはどうにもこの子を捨てる選択が出来ずにいた。

 

(……人間の種で孕んだ事、それ自体は屈辱ですが……立香クンを誘ったのは私……それで孕んでデキた子は望んで作った子ではない、邪魔だからポイ?)

 

 お腹を擦りながら思案を巡らせる。

 実利だけで見るなら今孕んでる場合ではない。合理的に考えるなら捨てるなり魔力に変換するなりさっさと魔獣たちのオヤツにするのが良いだろう。

 

(……そんなの愚かで醜悪な人間たちと同じ行い、ですよねぇ……。……人類最後のマスターの子種でデキた子と思うと商品価値としても悪くありませんし……何かと今後カルデアにふっかけられると思えば……)

 

「……はぁ……経緯はともかく私の子でもありますし、産みますか」

 

 産むか産まないか、赤子の処遇について結論を出したコヤンスカヤは軽やかに立ち上がる。

 

 となれば今後の身の振り方と立ち回り方であるが、その点に関しては既に彼女の脳内で道筋は立てられていた。

 

「人前に出るのに流石にボテ腹はアレですし、変化でちょちょいっ、と……」

 

 魔術により己の姿を孕む前の理想的なプロポーションへ。

 これにより、見た目だけを元に戻した彼女は普段通りに暗躍に戻るのだった。

 

 

ーーーー……

 

 

 

「と言うわけで、雑に行く(・・・・)」

 

 第三の異聞帯(ロストベルト)、中国。

 

 コヤンスカヤの痛々しい悲鳴が、暗く、冷たい、黒い牢の壁に反響しては虚しく消えていく。

 

 単体でも耳を塞ぎたくなるような彼女の絶叫に合わせて、それとはまた別に凄烈な音が二つ、この空間には同居していた。

 

 機械の高速回転による駆動音。

 

 ぐちゃぐちゃと抉れて弾けて穴が空く、肉片と血潮の音。

 

 “気の毒だが、サーヴァントだのアルターエゴだの異界における霊魂の在り方については判断材料が足りず確証が持てぬ”

 

 “うっかり肉体だけを壊したのでは、ただ枷を解いただけ、なんて薮蛇にもなりかねん”

 

 “なので殺さず朕の手が空くまで、カルデアへの裁定が済むまで場繋ぎで動脈だけを避けて肉を削ぎ続ける”

 

 

 さしものコヤンスカヤも始皇帝相手ではペースに乗せることは出来ず、逆に完全なる対策を打たれて囚われの身となった。

 

 生かさず殺さず、再生する肉を削ぎ続ける責め苦を受け、彼女は初めて絶体絶命の危機に瀕していた。

 

 

『それに其方(そなた)、身籠っておるな? 隠形の術か何かで外見だけ取り繕ってはいるが、それなりに育っていよう』

 

「ハァ……ハァッ……! く…………ッ……!」

 

 両手を吊り上げられ、チャイナスーツで拘束されているコヤンスカヤ。

 

 四肢や背中など全身には痛々しい抉れた穴が出来ており、彼女はどこからともなく聞こえてくる始皇帝の声にキッと隠す必要の無くなった敵意をぶつけた。

 

 見破られているのなら隠す意味もない。

 

 変化を解き迷彩効果を解除すれば、スラリとした身体は途端に大きく膨らんだボテ腹の雌の身体へと戻る。

 

『ふむ……やけに腹を庇うと思えばやはりか。其方と褥(しとね)を共にし、あまつさえ孕ませるなど……そ奴、破滅願望でもあるのだろうか。朕びっくり』

 

「ぁくっ……っ……! え……えぇ……お察しの通り…………ですのでっ……お、お許しを……! 我が子のためにもどうか……っ!」

 

『ならぬ。なればこそ尚の事見過ごせぬ。其方一人でも見過ごせぬのに、その血を引く子など言語道断』

 

 

 “もろとも封じる”

 

 

 彼女の正体を危険性もろとも見抜いていた始皇帝の対策は万全で、そして一切の容赦が無かった。

 

 しかし一点、その周到な警戒はコヤンスカヤにとってただ一つだけの幸いを生んだ。

 

 “腹を破り迂闊に中身をこぼした場合、万が一中から不完全で制御の叶わぬ災厄となってまろび出されても困る”

 

 という理由で機械人形たちの肉削ぎは彼女の腹を避けて行われたのだ。

 

 腹を破られても中にいるのは本当に純粋な生身の赤子ゆえ、別に災厄は飛び出したりしない。

 

 とは言えその分、それ以外の場所に攻撃が集中し、彼女が味わう地獄の苦痛自体に全く変化はないのだが。

 

 

 その後、あわや腹の子ともども封印されてしまうバッドエンドを迎えるかと思いきや、紆余曲折を経て彼女はやむを得ずカルデアと行動を共にする事となる。

 

 身柄を確保されたダ・ヴィンチちゃんたちを救出するために、収容所に駆け付けたマスターたちの前には、取引を交わし一時的に手を結んだコヤンスカヤがいた。

 

 

「あれ? コヤンスカヤ? なんでダ・ヴィンチちゃんたちと一緒に……て言うかそのお腹……」

 

 駆け寄ってきたマスターやマシュ、現地で召喚したサーヴァントたち。

 

 彼ら彼女らは一様にコヤンスカヤの存在、そしてポッコリ膨らんだ見事なお腹へと着目した。

 

「えぇ紛う事なき立香クンとの子供です♡ あの時のワンナイトラブでデキちゃいましたの。当然優しぃぃ~い善なるカルデア所属の立香クンなら私のようなか弱き美しい乙女をヤリ捨てポイなどしないと信じておりますわ、えぇ」

 

「えぇー…………具体的に何をしろと?」

 

「んまぁ! NFFサービス最高経営責任者を孕ませておいてなんて無責任な……! もちろん認知、してくださいますよね?」

 

「そう言うこと? いやまぁそりゃ妊娠させた以上、責任取れって言うなら取るけども」

 

「ハイ録音致しました。逃がしませんからね。ほら赤ちゃ~ん、あなたのパパでちゅよ~♡♡」

 

「お腹触らせてもらって良い?」

 

「えぇどうぞ。全く……ちゃんとこの子の父親って自覚を持ってくださいね」

 

「その父親今まさに毒盛られて死にそうなんだけど」

 

 

 “先輩っ、コヤンスカヤさんとも関係を!!?”

 “ははぁ、我が主はどうやら相当に性剛なご様子。いえいえ、良いことです”

 “こう言うのは悪食(あくじき)と言うのでは? 私の呂布(野生)センサーがビンビン警鐘を鳴らしています”

 “立香君、コヤンスカヤとはどのタイミングでヤってたの? ……あぁーあの時か”

 

 コヤンスカヤの受胎、そしてその相手がマスターという突然の情報にどよめく一同。

 

 しかして事態は急を要しており、自身が助かるためにカルデアと手を組んだ彼女は、契約通りマスターへの解毒薬を提供するため一時的な共闘戦線を張るのだった。

 

 

ーーーー……

 

 

「んんー」

 

 第四の異聞帯(ロストベルト)、インド。

 

「んんんんー」

 

 律儀にインドの民族衣装、サリーに袖を通してビジュアルチェンジしていたコヤンスカヤは一人唇を尖らせて唸っていた。

 

「んんんんんー!!! あぁもう! 自分でも分かりますとも! 激しくストレスがたまっちゃってますねぇ!」

 

 異聞帯中国にて苦汁を飲まされ、そのうえ流れで敵対関係にあるカルデアと共闘して、どうにも彼女は気分が優れなかった。

 

 それには当然妊婦特有の不調も含まれているのだが、お腹の子を慈しむように腹を撫でる手の動きは穏やかそのもの。

 

 あれから更に育って誰がどう見ても妊婦然とした姿になったコヤンスカヤだが、それでも彼女の妖艶な魅力に一切の陰りが見られないのが恐ろしい。

 

「思えば始皇帝に捕まってからいまいち毒気の抜けた私……。論理的にはシャドウ・ボーダーに忍び込んだ時に爆弾の一つでも仕掛けておけばみんなオダブツ……」

 

 頭では分かっていても、やはり商売人のプライドがそれを許さなかった。

 

 律儀に解毒薬と納品書を残してそれ以上の手出しをせず、彼女は一足先にインドへと飛ぶのみに留めていた。

 

「あとは悠々自適に異聞帯(ロストベルト)観光が出来たってのに、ほんとなにやってんだか」

 

 一人ため息をつくが、当然それに答えるものはいない。

 

 嘆息と共に遠くを見つめる彼女の瞳には一見のどかで平和なインドの風景が広がっている。

 

 空を飛ぶ聖獣の優雅に大空を旋回する姿が、妙に遠く見えた気がした。

 

「………………いけないいけない。自分の過去の行いに囚われるなんてデキる才女らしくありませんとも。ここはやはり真剣にビジネスと参りましょう! 仕事を始めれば毒気も戻ると言うもの」

 

 このまま一人で腐り続けるのも自分らしくないと奮起して、コヤンスカヤは一息に頬を叩いて立ち上がる。

 

 やるべき事はこれまでと変わらない。

 

「…………それにストレスはこの子にも良くありませんし」

 

 もはや自分の足元が見えない程に成長した自分の子供。

 目を閉じてお腹を擦れば、確かに感じる胎児の鼓動が彼女の心に平穏を取り戻させる。

 

「………………。……さて、この子の為にもレッツビジネス!」

 

 元気付けられた彼女は一人奮起し、青空へと拳を突き上げるのだった。

 

 

 

「テメェ…………奴(アルジュナ)が不出来として人間たちから削ったものを、最後のユガ(カリ・ユガ)の終わりに消し去ったはずのものを…………」

 

 コヤンスカヤの眼前で焔が揺らめく。息苦しさすら感じる程の激情の熱。

 

「人間たちに思い出させてやがるな(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 憤怒、怒烈、怒髪天。

 

 焔のような怒りを纏い、インド異聞帯の最強の神将(ローカパーラ)、アシュヴァッターマンは巨大なチャクラムを担ぎ上げて身構える。

 

 当然抗議するコヤンスカヤだったが、アシュヴァッターマン曰く、“テメェのそれが抵抗活動の下地になってる、ってアルジュナに丁寧に説明したヤツがいたんだろうよ”と返された。

 

「そこだけは同情するぜ。同じ仲間(アルターエゴ)に売られたってんだからな」

 

 味方を売ったクソ坊主に内心で毒づきながら、彼女は静かに眼前の神将にも劣らぬ怒気を燃やす。

 

 商売人の仮面を外し、金色の瞳で射貫くような眼差しを向けて、冷たい吐息を吐き出した。

 

「ーーーーたかだかサーヴァント一騎で妾を潰そうなどと、怒りを通り越して悲しくなるわ」

 

 その雰囲気の変化にアシュヴァッターマンの片眉が吊り上げる。

 

 同時に肌をヒリつかせる大気の振動、コヤンスカヤの荒ぶる魔力に彼の眼差しも同様に鋭くなった。

 

「ただひとりの神となり、神将(ローカパーラ)など擁する程度で破壊者を名乗るなど笑止千万。いまだ純白の破壊装置にもなれぬ輩にくれてやる首はない。その軍門に降った虫などさらに論外」

 

 両者のぶつかり合う魔力と威圧に空間が軋み、地鳴りが起こる。

 

 それは、遠く離れた場所のインドの町々にも響く程に強く、巨(おお)きく轟いた。

 

 

「人のすべてを体現したあの皇帝ならまだしも、たかだか武人一匹、ここでかみ砕いてしまおうか!」

 

 

ーーーー……

 

 

 などと威厳たっぷりにカッコよく見栄を切ったは良いものの、相手は産地直送の神将、大英雄カルナにも匹敵する最強クラスのサーヴァント、アシュヴァッターマン。

 

 一筋縄で行くわけもなく、彼女はみるみるアシュヴァッターマンに圧されていく。

 

「っぐ…………!!」

 

 巨大なチャクラムを叩き付けられた大地はスナック菓子のように気軽に砕け、その風圧に煽られて後退するコヤンスカヤ。

 

(っ……この天竺(インド)で尻尾は出せません……! それにこのっ……! ありがたぁーいお経まで装備してやがりますね……!? クソ坊主の差し金でしょうか……!)

 

 只でさえ上澄みの強さを誇るアシュヴァッターマンのホームで、そのうえ二重、三重にバフが掛かっていてこちらの繰り出す手の全てが通らない。

 

 自分は尻尾も出せず、更には身重の身体まで合わさればさしものコヤンスカヤであっても勝ち目は無かった。

 

 

 巌のような分厚い筋肉に覆われた豪腕が振るわれる。

 

 投擲された巨大チャクラムは地表の全てを冗談のように抉り飛ばし、破滅的な破壊力をもって暴れ回った。

 

 当然コヤンスカヤが打てる手と言えば回避一択である。

 受け止めても弾き返してもその衝撃はお腹の子に障る。

 

 直撃などもっての他である。

 

(……なんだ……? ドン引くほど怒ってたかと思やぁ、やけに消極的……。大事なもんでも守るように、時には違う部位で被弾してでも自分(テメェ)の腹を庇ってやがる)

 

 本領を発揮出来ずにいるコヤンスカヤの様子に、アシュヴァッターマンも不自然さを感じていた。

 

 強い弱いではなく、明らかに力を出せていない。

 ともあれ、彼女がこの世界の外敵である事には変わり無く、戦士はその烈火の如き火力を思う存分にぶつけて追い詰めていく。

 

「ッッヅォラァ!!」

 

 全身を引き絞り、下から上へ大質量のチャクラムをブン回し、地面ごと巻き込む純粋な力の一撃。

 

「っぅ……!?」

 

 それはまるで子供が砂場で砂を掘り返すかのように、天災の如く土砂を巻き上げてコヤンスカヤを巻き込んだ。

 

 また勢いよく後退させられ、何とか着地した彼女は片膝をついてダメージに呻く。

 

 その隙を見逃さず、アシュヴァッターマンは地割れを起こす勢いで地を蹴って拳を振り上げた。

 

「死ィーーーー」

 

 体勢を崩した彼女に逃れる術はない。

 

 コヤンスカヤの命を確実に奪える一撃を構えたその時、アシュヴァッターマンの視界には思いもよらぬ光景が飛び込んでくる。

 

「く、ぁ…………!」

 

 戦闘で追い込まれ、普段の体型に見せていた変化の術が解けて、コヤンスカヤの本来の妊婦姿があらわになったのだ。

 

(っコイツ、子供が……!!?)

 

 如何に敵対していようと、異聞帯の王に使役されていようと、アシュヴァッターマンはバラモンと呼ばれる高名な僧侶。

 

 その性根は少なくとも善性に満ちた優れた人格者と言え、いくら頭で“コイツは敵である”と理解していても、“赤子を懸命に守る身重の女性”という事実は彼の拳を反射的に鈍らせるには充分すぎた。

 

「ーーーー」

 

 その一瞬の隙を見逃すコヤンスカヤではない。

 

 動揺して僅かに固まったアシュヴァッターマンの顔面に、彼女のベアナックルが叩き込まれる。

 

「ーーーーッッ゛……!」

 

 痛烈なカウンターを受けて、定規を引いたように一直線にぶっ飛ばされるアシュヴァッターマン。

 

 前歯全てをへし折るような一撃を見舞い、彼女はこのチャンスを逃がさずに一目散に離脱するのだった。

 

 

ーーーー……

 

 

 

『\私を虚海へ連れてって♡/』

 

 

 呆気なく敗走した彼女が次に姿を表したのは、神たるアルジュナの宝具発動が迫り退避に急ぐカルデア一行の前であった。

 

 “来てくんないと残りの力全部使って自爆しちゃうゾ?”と脅しをかけて、なんとか自らの位置を合流地点の中心にする事に成功する。

 

 

 シャドウ・ボーダーとの合流を急ぐマスター一行。

 

 彼はコヤンスカヤの向こう、ダ・ヴィンチちゃんと一瞬のアイコンタクトを行い、長い付き合いが可能にする一瞬の内の意志疎通を行った。

 

(交渉は?)

 

(二回まで! 余裕を持たせた筈なのに、観測したアルジュナの宝具充填速度が何だか前回より更に早くなってる! 急いで!)

 

 ドリフトで草を散らして轍(わだち)を残し、コヤンスカヤとマスターの間に止まるシャドウ・ボーダー。

 

 すぐにハッチが開かれ、一同は急ぎ車内へと雪崩れ込んでいった。

 

「まぁ、止まってくれた、という事はヒッチハイクは成功でしょうか?」

 

「いやまだ乗せるとは……。事情が分からないし」

 

 交渉のため最後尾に移動したマスターは、入り口へ手を掛けながら“停まってくれるのは分かってましたよもう☆”とでも言わんばかりにニコニコのコヤンスカヤへ意思を告げる。

 

「えっ。ちょちょちょ立香クン? ここはサラッと一言ウィットに富んだ軽口交わして乗せるくだりでは!?」

 

「一応敵対してるわけだし…………罠だったら困るので……」

 

 思っていたのと違って搭乗を渋られ、コヤンスカヤは慌てて片足をシャドウ・ボーダーへかけて乗り込もうとするマスターへ駆け寄った。

 

 しかし当然マスター側も流石にノーガードで迎え入れるわけにも行かない。

 

 中国異聞帯では貸し借りが発生していて同行するに値する理由と事態が出来上がっていた。

 

 迂闊に迎え入れて一網打尽にされては世界が終わるため、どうしても慎重にならざるをえない。

 

「じゃ、またあとで」

 

「待って待って待って! 仮にもあなたの子供を身籠ってる妻を見捨てるおつもりで!? ちゃんとギブアンドテイク、見合った情報も提供しますので!!」

 

 乗り込もうとするマスターの腕に抱き付き、彼女は必死に同乗を懇願する。

 

 交渉一回目。

 

 元よりこの時点で見捨てる選択肢は無くなっていたものの、コヤンスカヤはカルデアとは敵対関係にあるにも関わらず、あのアルジュナの宝具から逃れようとしており、自前の避難手段を使わずに必死にカルデアを頼っている。

 

 先ほど“見捨てるようなら自爆で道連れにするぞ”と脅しをかけてきたが、それはつまり今助けてもらえなければ後が無いという告白と同義。

 

 優位性を認識したマスターはまだまだ彼女から譲歩を引き出せると踏み、敢えてうわべだけの渋るフリを続けた。

 

「いくら見返り貰っても……後でシャドウ・ボーダーに爆弾の一つでも仕掛けられたら結局みんなオダブツだし…………」

 

「もっ……、もぉーそんな事しませんってばぁ♡ 約束は絶対に破らないのが私の信条ですので♡♡ ねぇ立香クンおねがぁい♡ 幾らでも私の事好きに使っていいからぁ♡♡」

 

 交渉二回目。

 

 只でさえ後がないのに加えて、“あの時シャドウ・ボーダーに爆弾でも仕掛けておけばなー”というぼやきまで懸念という形で偶然言い当てられ、コヤンスカヤは滝のような汗を流しながら必死にとぼける。

 

 いよいよなりふり構ってられなくなった彼女はしがみついた彼の腕に自身の身体を擦り付け、甘ったるい猫なで声で媚び始めた。

 

「望む拘束を受け入れますし中国で出来なかったアレやコレやも存分に♡♡ 危害は絶対に加えませんしぃ♡♡ お腹の子に障らない事であれば絶対服従のボテ腹マンコ、旅のお供に如何です?♡♡」

 

 思い付く限りの誘惑を繰り出し全力の媚びで懇願を続ける。

 

 ともあれ、マスター側としては危害を加えない事と情報提供の約束を引き出させ、収穫は上々。

 

「乗って! 早く!」

 

「やーん信じてましたわ♡ ダーリン♡♡」

 

 これ以上の猶予は無いとしてマスターは腕にしがみつくコヤンスカヤを抱き上げ、シャドウ・ボーダーへと転がり込む。

 

 そのまま大急ぎで虚数潜行を行うことによって、カルデア一同とコヤンスカヤはまたもやピンチを乗り越えたのだった。

 

 

 

ーーーー……

 

 

 

「…………うん、問題なさそうだ。赤ちゃんにも君にも異常は無し、と。すくすく育ってるよ」

 

「それを聞いて安心しましたわ。ちなみに性別とか分かったりします?」

 

「女の子だね!」

 

 コヤンスカヤを交えてのブリーフィングを終えて、カルデア一行は世界創変後の外の世界が安定を取り戻すまで休憩タイムを取ることを余儀なくされた。

 

 何だかんだ四つ目の異聞帯になっても続く腐れ縁。

 

 第三の異聞帯で彼女の子供を認知し、それなりに行動を共にしたこと。

 

 そしてマスターが父親という縁も相まって、一時的な協力関係となった今、ごく自然にエコー検査を行い彼女の子供の経過観察を行う程度には打ち解けていた。

 

「女の子か。うーん……さぞやコヤンスカヤに似て……」

 

「私に似てキュートで美しい世界の宝になると? きゃー分かりきった事をこのこのー☆」

 

 眼鏡を掛けて診察結果を伝えるダ・ヴィンチちゃん。

 

 寝台から起き上がり衣装を正したコヤンスカヤはマスターの隣へ立ち、顎に手を添えて唸る彼を肘でつつく。 

 

「いや、すんごい邪悪な子になりそうだなって。親権俺がもらって良い?」

 

「ふんっ!」

 

「うぐぅッっ!!?」

 

 失礼な物言いには然るべき制裁を。

 マスターの脇腹にコヤンスカヤの肘打ちが叩き込まれ、彼は脇腹を押さえてうずくまる。

 

「ダ・ヴィンチちゃ……! 契約違反起きたよ……! 危害加えてきたぁっ……!」

 

「うーん今のは立香君の方に問題があるから……コヤンスカヤ無罪っ」

 

 ダ・ヴィンチちゃんがコヤンスカヤの手首を掴んで持ち上げれば、彼女もそれにノリを合わせて片手を掲げて勝ち誇る。

 

 マスターがたった今口にした通り、コヤンスカヤはこのシャドウ・ボーダーに乗せてもらう代わりに幾つかの契約を交わしている。

 

 一つは相乗りさせて命を救うに見合った情報提供。

 

 そしてもう一つは、協力している間、コヤンスカヤの身の安全を完全に保証することを条件に、彼女に徹底的にデバフをかけて人間の女性並みの力まで弱体化させること。

 

 ついでにーーこちらはコヤンスカヤが勝手に付け加えたものだがーーお腹の子に影響が及ばない範囲でなら身体をいくらでも差し出すこと。

 

 つまり先程の肘打ちには何ら手加減も無く、今の彼女は見た目通りの力しかない。

 

 ただ、その状態になったとしても他の職員達が彼女との接触を不安がったため、彼女の身は自ら立候補したマスターの部屋で預かられることになった。

 

 ブリーフィングも終わり、赤子の様子も確認し、あとは外の世界の安定が戻るまで待機するしかない。

 

 コヤンスカヤは自身の身柄を預かるマスターと共に、とりあえず個室に戻って過ごす事にした。

 

 

「あぁそれと、セックスする時は気を付けた方が良いかもだ。もう安定期に入ってるし、サーヴァント……それもコヤンスカヤの頑強な身体なら理論上問題は無いけれど、労るに越したことは無いからね」

 

 診察室から退室しようとする二人へ思い出したように忠告するダ・ヴィンチちゃん。

 

 彼女はテキパキと書類を取り出し、先程の診査結果を二人に見せながら彼女は続ける。

 

「私たちが孕むような、どれだけ犯されても健康に産まれてくる頑丈なホムンクルスベビーと違って、れっきとした生命を宿した赤子である以上、過剰な刺激は母体(コヤンスカヤ)の安全のためにも避けるべきと思うな。ヤるならスローでソフトにね~」

 

 

ーーーー……

 

 

「ーーーーで、早速ですか」

 

「まぁね。基本こういう時って性欲処理する暇無いし」

 

 自室へ戻ったマスターとコヤンスカヤは、早速契約通りに性欲処理を行うことにした。

 

 ベッドに座っているコヤンスカヤの目の前にマスターが立ち、彼女はジトッとした眼差しでマスターを見上げる。

 

「少なくとも二人いらっしゃるじゃないですか」

 

「マシュとはちょっと事情があって…………。ダ・ヴィンチちゃんなんか、普段の感覚でヤったらダウンしちゃっていざと言う時シャドウ・ボーダーが全力出せないからさ。こういう異聞帯攻略の時とかはタイミングが無くて溜まっちゃいがちなんだよね」

 

「……ま、良いでしょう。約束を反故にするのは私の主義に反します。ささ、早くおチンポ出しちゃってください」

 

 言い出したのは自分であるし、人間である彼に性奉仕する屈辱を除けば特に不満もない。

 

 初めてマスターとセックスをした時の衝撃で彼のチンポの記憶を忘れていた彼女は、“ササッとヌいて満足させてしまいましょう”と手際よく下半身を露出させた。

 

 

ーーーーぶるんっ、べちんっ。

 

「ーーーーは……え……っ?♡♡」

 

 その瞬間、窮屈な衣服の中から解き放たれた彼のメス殺しチンポーーーー彼女にとっておよそ五ヶ月ぶりの、自分を完膚なきまでに敗北させたチンポが顔面に乗せられた。

 

「え…………これ……って……♡♡ ーーーーっっ??♡♡♡」

 

 その瞬間、彼女の中の欠けて(忘れて)いた情報(ピース)が、遅れていた分以上の勢いをつけて肉体に甦る。

 

 発火したかのように体温が上昇し、発情に呼吸が荒くなる。

 

(なんっ……です……コレ……?♡♡ 長さ……太さ……形、弾力っ……熱さ……密度、重さ…………ぜ、ぜんぶっ……どれを取っても一級品……っ♡♡)

 

 

 コヤンスカヤの本能がその瞬間に理解した、納得してしまった。

 

 本来プライドと理性が介在して絶対に認めなかったであろう彼女が、数式の答えを見た時と同じように、まさしくストンと“腑に落ちた”という表現がピッタリの形で、彼女はそのチンポに心奪われた。

 

 “これだけの逸品であればあの時の一発で身籠るはずだ”とーーーー前後不覚の内に孕んだせいですっぽり抜け落ちていた“知覚、認識”が、一気に肉体に追い付いた。

 

 ノックアウトされて気絶したボクサーが、ビデオで自分を沈めたパンチを確認してようやく“あっ、自分は敗けたんだ”と遅れて実感するのと同じように。

 

「すんすんすん……っすん……はぁぁ……♡♡ くっ……さ……♡♡♡ んっ……すんすん……っ……♡♡」

 

(なんって濃い匂い……♡♡ 恥垢(チンカス)も溜まって汚れてて……強っっ烈な雄の香り……っ♡♡ や、やっば……♡♡)

 

 嫌味も余裕の口も叩くことを忘れ、彼女は己の美貌に直接乗せられた肉棒の香りを一心不乱に鼻腔へ取り込んでいた。

 

 それは意識や理性からの行動ではなく、まさしく考えるよりも先に、肉体が“そうしなければ”と動いていた。

 

「ごめんね、処理する暇もないし物資も貴重だから洗う余裕無くてさ」

 

「はぁ……は……ふ……ふふ…………っ♡ っだ、だから…………成り行きで捕虜となった私におチンポ掃除をしろ、と……?♡♡ な、なんて野蛮で醜い下卑た性根なんでしょう♡ やはり人類ですねぇ♡♡ この私のお口をチンカスティッシュ代わりにしようなど……お……思い上がりも甚(はなは)……だ…………すんすんっ……♡♡ くんっ、すん……ほ、ぉ゛……っ……♡♡♡」

 

 嗅ぐ度に濃密な精臭が清潔な空気を押し出して脳味噌を犯す。

 気道を通り、肺を満たして脳が痺れる。

 

「じゃあお願い」

 

 ズイ、と赤黒い肉の塊が彼女の眼前に押し付けられる。

 

 それに対して本来の彼女なら嘲りの言葉の一つでも口にしていたのだが、コヤンスカヤは目を閉じてチュッ……♡♡ と瑞々しい唇でキスをした。

 

 愛を誓う花嫁のような口付け。

 奉仕前の挨拶を無意識に行っていた彼女は、そのまま高鳴る鼓動のままに丹念に舌でマスターのチンポ掃除を始める。

 

「ぁー…………♡♡♡ んむ、じゅりゅりゅるぅぅっ……♡♡♡」

 

 肉厚な舌をデロリと垂らし、主を上質なカーペットで出迎えるように舌を押し当て、そして一息にパクンと咥えこんだ。

 

「ン゛っ……んふーっ……んふぅ~゛っ……!♡♡ ぐぽっじゅぽっ、ぢゅぅぅぅぅっ……!♡♡♡」

 

 まるで胸の中で“幸せ”という感情を閉じ込めた風船が破裂したかのようだった。

 

 珍しい魔獣を目にした時にも勝る高揚感。

 ビリリと感じるえぐみ、酸味、苦味。オンナを駄目にする濃密な匂いが口から鼻へと抜けていき、それだけで彼女の股からプシャッ♡♡ と幸せアクメ汁が飛び散る。

 

「んっぽじゅっぽぢゅっぽじゅぷっ♡♡ ンフー゛っ……!♡♡ ぢゅぶっんっぶ、……~~ゴクっ……!♡♡♡」

 

 溢れて止まらない唾液を絡めて下品な音を盛大に響かせ、ボテ腹妊婦の熱烈なお掃除フェラはあっという間にペニス表面の全ての汚れを舐め落とした。

 

 命じられたのはあくまで掃除のみ。

 

 しかしコヤンスカヤはそれも忘れて、ただこの味と雄の存在感、そして奉仕する喜びを求めるままに首を前後させて唇を吸い付かせ、舌を肉棒に絡ませていた。

 

「じゅりるるるる~っ……! んっんっんっんっ……じゅぽっ、じゅっぽぐっぽじゅっぶっ……!!♡♡♡」

 

(孕むはずです……っ……こんなのっ……!♡ 孕むに決まってます……!♡ こんなおチンポにハメられてっ……デキない雌がいるものですかっ……!♡♡)

 

 彼女のような絶世の美女。

 それも本来こうして身体を交わすことなど不可能な敵対関係にある理想的なメスが、自分のチンポに無我夢中でむしゃぶりつく光景は大いにマスターの射精欲を刺激した。

 

 その姿にモデルとした良妻狐の面影を重ねながら、マスターは早速一発目のザーメンを解き放つ。

 

「ーーーーン゛っぶぐ!♡♡♡ ~゛ッッ゛……! …………ッ゛ン゛……!♡♡ …………ゴキュッ……ゴクッ…………♡♡♡ っゴクッ……コクッ…………♡♡♡」

 

(おっ……おっも……!♡♡ ダマになってて……濃すぎ……る……っ♡♡ 量もやっ……や、ば……っ脳、イ゛ッ……!♡♡♡)

 

 射精の際、マスターは彼女の興奮を更に煽ってやろうと頭の両耳を掴み、顔面を腰に埋(うず)めさせて喉奥を抉っていた。

 

 本来急なイラマチオ、ましてや形状、バランス、全てに秀でたオンナを啼かすためだけのチンポでそれをやられたら苦しいだけでしかない。

 

 しかしコヤンスカヤは喉奥口内射精に眉根を寄せてグリンと瞳を上に向け、マスターの腰を押して抵抗するどころか逆に自分から腰に手を回して迎え入れていた。

 

 彼女の喉奥まで達したペニスはボコォと首に陰影を作り、喉を鳴らして特濃ザーメンを次から次へ嚥下するのが外から見てとれる。

 

 呼吸も忘れてチンポを貪るコヤンスカヤ。

 ザー飲アクメと合わせて痙攣し始めた彼女の頭を掴み引き離そうとすれば、

 

「ぢゅっ……じゅるるぅぅぅぅぅっっ……!♡♡♡」

 

 酸素が抜けて真空状態となり、口内の全てを張り付けてひょっとこ顔になりながら最後まで名残惜しむのうに吸い付いていた。

 

 唇の端からピカピカになって現れてくる黒光りチンポはまさに日本刀のよう。

 

「~~゛っぢゅぽんっ♡♡ ……っこふっ、ケフッ……ケホっ、~~っ……!♡♡♡ ……げぇ゛ぇ゛ぇ゛~~……ぇ゛ぇ゛ぶっ♡♡♡ ハァーッ……はぁーっ……♡♡♡ しょ……少々射精しすぎでは……っカふっ……、ありませんこと……?♡♡」

 

 優雅で上品で悪辣で、NFFサービス最高経営責任者に相応しい立ち振舞いをする普段のコヤンスカヤからは想像もつかない下品なザーメンゲップ。

 

 本来文句の一つでも叩いてきておかしくない乱暴なイラマチオと口内射精を受けたというのに、彼女の浮かべている表情はまごう事なき“歓喜、興奮”であった。

 

「コヤンスカヤがエロいし、上手いし、つい」

 

「っっげぷ♡♡ …………っ、んっふふ……当然ですとも……♡♡」

 

 ペロリと唇を舐めるコヤンスカヤの表情はどこまでも妖艶で、そしてそこなし沼のように蠱惑に誘ってくる。

 

 口元に着いた陰毛ですら、彼女を淫らに彩る一要素として昇華されていた。

 

「んーまぁ……分かってはいましたが、一発程度で収まるわけもありませんよねぇ。特に私が相手ともなれば……♡」

 

 彼女の言葉通り、まだまだつよつよ絶倫チンポのマスターの性欲に陰りは見えない。

 

 只でさえ発散の機会が少なく溜まりがちな異聞帯攻略中のタイミングで、それも相手がコヤンスカヤともなれば当然である。

 

「となれば契約ですし、私の穴を使っていただくしかないのですが…………」

 

 彼女はそう言って体勢を変えた。

 

 シーツや枕を自分の上半身側に集め、その上に上半身を乗せて下半身は膝で支える。

 

 我が子の入ったお腹に負担がかからないよう、彼女はお腹を浮かせた状態でマスターへと尻を向けた。

 

 もっちりとして吸い付くような肌のハリ、一切の形崩れの無い安産型の尻は、そのまま後ろから覆い被さってハメ倒してやりたい欲求に駆られる。

 

 そんな雄を誘う姿勢を取った彼女は右手で尻たぶを開き、本来秘すべき排泄器官であるアナルをマスターの目の前へと晒した。

 

「おマンコはこの子の安全のためにも許可出来ませんが……ケツマンコでなら幾らでもご奉仕いたしましょう……♡♡ ……こ、こんな女性特効ザーメンを……赤ちゃんの内から与えたらそれだけで産まれる前から格付けされてしまいます♡♡ しっ……刺激が強すぎますし、なによりそんな女殺しチンポで突かれたら死んじゃいますので♡♡♡」

 

 

 ヒクヒクと期待に蠢くアナルを見せつけ誘いながら、コヤンスカヤは肩越しに挑発的な視線で尻を振る。

 

 とうに孕まされ、あの時一発ノックアウトされた記憶が戻っていようと、彼女のプライドが余裕を崩すことを許さなかった。

 

 顔を赤くして発情の汗を流しながら、鼻息荒く彼女は努めて上位者であろうとひきつり気味ではあるが笑みを向けていた。

 

 もっとも、全身からムンムンと放っている発情オーラが如実に“ハメてっ♡♡ 早くっ♡♡”と語っておりほとんど意味を成してはいなかったが。

 

「ふ、ふふ……でも精々お気をつけください……?♡ いくら私がその立派なデカマラに雌として敗北していようと、私のケツマンコの具合も敗けてはいません♡♡ うっかりその天にも昇るハメ心地に虜になって、ヘコヘコ腰を振るだけの情けなぁ~い姿を晒さぬよう、ゆ……油断しないことです♡♡ 確かに私のタマゴはあなたを番(つがい)と認めて陥落しましたが、そっ……それとあなたが堕ちるかどうかは別のもんだーーーー」

 

 

 

ーーーー……

 

 

「お゛゛っイ゛っっぐ!!♡♡♡ お゛っお゛っお゛っお゛ぉ゛~~~゛…………ッ!!♡♡♡ ケツイグっ♡♡♡ チンポっ、ぎぼぢぃイ゛ぃぃ~っッ゛……!♡♡♡」

 

 マスターの圧勝であり、コヤンスカヤの惨敗であった。

 

 彼を睨み付ける気力もなく彼女は上半身側に積んだシーツやクッションやマット類に顔を埋(うず)めて、ケモノのように喘ぐのみ。

 

 挿入れる穴に違いはあれど、自分を孕ませた番のチンポの帰還の前に、彼女の秘裂からは嬉し涙のように愛液が止めどなくあふれ出す。

 

 コヤンスカヤの“堕ちまい”と自身への激励を続ける理性、精神とは裏腹に、とっくにあの時堕ち“た”雌の身体と本能は、莫大な歓喜に打ち震えていた。

 

 普段の激しく貪るようなセックスでは無いものの、じっっとりと快楽で撫で付け快楽を染み込ませるようなアナルセックスはコヤンスカヤの爪先から頭の先まで快感の稲妻を走らせる。

 

「悦んでもらえているようで何より」

 

 チンポで内側から際限なく快感と歓喜を送り込み、外側から浸透させるように優しく尻を撫でる。

 

 緩やかに腰を引き、……ヌ゛ぷ……んっ……♡ とペニスを押し込むその一往復の間に、コヤンスカヤのケツマンコは思考力を奪うアクメに幾度も晒される。

 

 キュウキュウ♡ と離れていた伴侶に抱き着く妻のようにペニスを締め付ける彼女のアナル。

 

 腸内も快楽神経が剥き出しになったかのように、亀頭で押し拡げられ、カリ首で擦られ、竿の凹凸による摩擦の感触でイキ続けていた。

 

「ン゛っお゛ぉ゛っ……お゛、ぉ゛ほぉ゛お゛゛ぉっ……お゛!!♡♡♡ ムリ゛っ……イグ……!♡♡ っっふっぎ!!♡♡♡ お゛尻っな゛っ、撫゛でないでくださっ♡♡ しっィ゛……~っ゛、幸ぜイ゛ギずる……ッ!♡♡♡ んッギゅ♡♡♡」

 

 びぐんっっ♡♡♡ と高圧電流でも浴びたかのようにまたもや全身を震わせ、脳を蕩けさせる深イキをキメる。

 

 ッップジゥッ♡♡ と触れてもいない女陰からまたもやイキ潮を吹き、とっくに給水量の限界を超えたシーツには水溜まりが出来ていた。

 

 下半身が自分のものでなくなったかのように跳ねる。

 

 肉体が雌として勝手に屈服して媚びていくのが分かる。

 

(やっ……ばこれ堕ちるっ♡♡ 本気で堕ちるこれヤ、バ…………っっ゛!!♡♡♡)

 

 もはや彼女の腰は完全に砕け、マスターに尻を捕まれていなかったらパタリと横へ倒れていただろう。

 

 そのままボテ腹妊婦コヤンスカヤのアナル奉仕は腸内に射精されて彼女が白目を剥いて完全に気絶するまで続けられ、コヤンスカヤは数ヵ月ぶりの完全敗北を迎えるのだった。

 

 

ーーーー……

 

 

 虚数の海中と外の世界の創変という不安定な時空は、中と外とで大なり小なりのタイムラグを作る。

 

 早い話がシャドウ・ボーダー内での時間で数日を過ごす事となり、その間コヤンスカヤは毎日自身のセールストーク通りにマスターに抱かれて快楽を与えられた。

 

「おーいコヤンスカヤー」

 

 今日もマスターは彼女を呼ぶ。

 

 自らの力への一時的な縛りを受ける代わりに捕虜としては破格の自由な行動を許されている彼女は、ダ・ヴィンチちゃんと雑談しており、その自分を呼ぶ声に溜め息を着いた。

 

「はぁぁ……もうっ、遠慮と言うものを知らないのですか彼は! これでも敵で、そして一応手厚く扱うべき捕虜なんですけど私(わたくし)ぃ!」

 

「敵だからこそじゃない? ごめんねー普段なら私も性処理してるんだけどさ~。私のダウンはシャドウ・ボーダーの沈黙と同義だから任務中は相手が出来なくてね」

 

 忌々しげに立ち上がるコヤンスカヤにダ・ヴィンチちゃんが笑いかける。

 

 別に日々のマスターの性処理は嫌ではなかった。

 ーーーー嫌ではないのが、まるでどんどん心身ともに絆されていってるのを感じて嫌だった。

 

 声をかけられ勝手に身体が喜んで反応してしまうのが恨めしい。

 

「クッソ……! なんでわざわざ余計な事まで言ったんです、ワタクシッ……!」

 

 実際、赤子への負荷を考慮して行う、甘く優しい愛でるような日々の性行為は、コヤンスカヤには特に効いた。

 

 彼女はダ・ヴィンチちゃんの私物であるコンパクトを借りて鏡で己の姿に変なところが無いか、衣装の乱れは無いか、オンナとして彼の前に立つのに恥ずかしい所は無いかを無自覚に確認して立ち上がる。

 

 呼び掛けが聞こえなかったと思ったのか、ドア越しにマスターがマシュにコヤンスカヤの所在を確かめる声が聞こえる。

 

「まったく……こほん、それでは失礼します。不甲斐ない貴女たちの代わりに仕方なく、し・か・た・な・く! 相手をして参りますので!」

 

 自分でどこまで気付いているかは定かではないが、どこか満更でもない様子でダ・ヴィンチちゃんの雑談を切り上げ、彼女はわざとらしい猫なで声でマスターの部屋へと向かっていった。

 

「ハイハイ〜♡ ただいまアナタのおマンコ参りますよ〜♡」

 

 

ーーーー……

 

 

 そんな時間が続き、もうそろそろ虚数潜航からの再浮上の時が近付いてきた頃、コヤンスカヤにもとある限界が近付いてきていた。

 

「ぁ……はぁー……ぁ゛……はぁ……♡♡」

 

 マスターの個室で全身に愛撫を受け、毎度のごとく何度もイカされたコヤンスカヤが深イキでグワングワンする頭でとある欲求を渦巻かせている。

 

 その限界とは、我慢や不満の限界ではなく、真っ当なセックスをしたいという、生物としてあって当然の原始的な限界であった。

 

 

 シャドウ・ボーダーへの滞在中、彼女は赤子への影響を考慮してマンコ以外の全てで奉仕している。

 

 胸で、脇で、足で、手で、口で、喉で、アナルで。

 

 そのマンコに一切の快楽を与えないという行いが仇となり、もはや彼女の膣の疼きは指や舌での愛撫ごときでは逆効果となる程にムラムラを溜めていた。

 

 ハメて欲しい。ハメられたい。

 

 この捕虜期間の間マンコを除く全てで味わったあのチンポで、膣穴を擦られたらどれだけ気持ちいいだろうか。

 

「ふぅー……っ……はぁ…………っ……ッゴク……♡♡」

 

 想像しただけで胸が高鳴る。

 

 人間相手に、それもカルデアのマスター相手にこちらからハメ乞いなどしてたまるかと、プライドと理性だけで何とか踏みとどまっている状態。

 

 それを気持ち良くなりたいというシンプルな本能と欲求が絶え間なく揺さぶりをかけ、彼女を苛む。

 

 

『もう安定期に入ってるしーーー……』

 

 

 脳内で以前言われたダ・ヴィンチちゃんの言葉が、“言い訳”となって脳内で甦る。

 

 もちろん思い返しているのは紛れもなくコヤンスカヤ本人である。

 

『サーヴァント……それもコヤンスカヤの頑強な身体なら理論上問題は無いーーーー……』

 

 ダ・ヴィンチちゃんの言葉は診察結果に則った真っ当な診断であるが、今の彼女の脳は都合の良いところだけを思い出させる。

 

(肉体強度は人間のそれとは違い…………、もう……安定期にも入っ……て……い、る……♡♡)

 

 プライドと本能的な欲求。

 その二つのせめぎ合いの結果、彼女は無言で力の入らない身体を起こし、もはやお決まりとなったシーツや衣類を積んだ山に上体を乗せて尻を向ける姿勢へ。

 

 そこで普段なら自分の手で挿入れやすいよう自らの尻を拡げるのだが、

 

 

「……………………~っ……っ……♡♡♡」

 

 

 どうしても膣穴に欲しい。

 でもアレだけ拒んだ手前自分から浅ましくチンポを乞い願う事も出来ない。

 

 その結果彼女が取った行動は、マスターに尻を向け、震える両手でクパァ……♡♡ と白濁の本気汁を垂れ流すマンコを開く、無言の要求であった。

 

「ふっ……ふぅっ…………っ……ふぅー゛っ……!♡♡」

 

 全身が燃え上がるように熱い。羞恥と興奮で自分がどんな顔をしてるかも分からない。

 

 まるで斬首を望む者が自ら素っ首を差し出すように。

 まるで隷属をせがむ者が自ら首輪を着けてリードを手渡すように。

 

 自分からハメて欲しいと懇願しなかったのは、僅かに残った弱々しい理性の最後の抵抗でもあった。

 

「……全部は挿入れない。ゆっくり、スローモーションみたいに。軽く、手前だけね」

 

 コヤンスカヤの尻に手を置いて、意図を読んだマスターは短くそう言った。

 

 最後の一線として自分から求めない事を決めたコヤンスカヤは、静かに小さくコクン……♡ とだけ頷いた。

 

 

 ピトリ♡ と鈴口と膣口がキスをする。

 

「っ……!!♡♡♡」

 

 たったそれだけの接触で全身に緊張が走る。

 なるべく赤子に衝撃がいかぬよう、マスターは優しく、ジワジワと押し付けた。

 

 既にグショ濡れのコヤンスカヤの膣穴へ、に゛ゅる゛る゛……っ……♡♡と食い込んで行くパンパンに張った亀頭。

 

「お゛゛っ……♡♡ ぉ゛、お゛っ……ほぉ゛……っ♡♡」

 

(き、キタっ……♡♡ ちんぽキタっ♡♡)

 

 たったそれだけ。軽く触れ、少し押し付けられた接触だけで彼女の下半身全体からぞくぞくぞくっ♡♡ と期待を交えた快楽の予感が登ってくる。

 

 見えないのに鮮明に様子が浮かんでくる。

 

 プリプリの柔らかい桜色のマン肉を、グロテスクな雄の生殖器が掻き分けるようにして食い込んで、この世に生を受けてあの時一回しか使用してない新品同然の初々しい雌穴を押し拡げていく。

 

 ぬ゛ぷ、ぷ……ぷぷっ……♡♡ と亀頭の中程までが膣肉に沈み込んだ。

 

(ぁ゛ぁ゛っ、クる゛っ♡♡ クる、絶対クる……っ!♡♡♡ だいじょうぶ、ちょっと……ちょっと堕ちるだけっ……!♡♡ ぁイグ、イグイグいぐイ゛…………~~~~っ……!♡♡♡)

 

ーーーーニ゛ゅぷんっ♡♡♡

 

 

「オ゛゛゛ッっ゛゛っ゛♡♡♡」

 

 最も直径の広いカリ首を通り抜け、先端が膣穴へ侵入を果たした瞬間、彼女は己の霊基が軋む程のアクメに達した。

 

「イ゛ッッッ…………ぐ……ぁ゛が……イッ゛……イグ……っっ!!♡♡♡♡ お゛っ……オっ゛っ♡♡♡」

 

 それは単純な肉体的快楽のみではなく、喜びや愛情、己を孕ませた番(つがい)チンポとの再会など全てを引っくるめた何もかもが変換され、コヤンスカヤは歯をガチガチと鳴らしてぐるりと瞳を上向かせて身悶える。

 

 取り繕う余裕などあるはずもない。

 弱体化せず万全の肉体スペックだったらシーツを引き裂いていたと思える程に全力でシーツを鷲掴み、全身を硬直させて股からは動物のようにイキションを漏らす。

 

「すっ……ごい締まり……! 感じすぎ……!」

 

 その刺激はマスターにも伝わっていた。

 渇望を埋め尽くすが如く肉棒に肉ヒダが絡み付き吸い付いて、しかしてマスターは慎重に腰を押し進める。

 

「お゛っ、お゛ぉ゛~゛っ……!♡♡♡ イ゛ッ……ぎゅ……!♡♡ んお゛、ぉ゛お゛ぉ……!♡♡♡」

 

 ペニスの半分も行かない程度でマスターは挿入を止めた。

 ここまでが限度だろう。

 

 そう判断した彼はコヤンスカヤの尻を掴んだまま、挿入れる時と同じ速度で腰を引く。

 

「ん゛っオ゛っっ……ぉ゛~゛~゛っッ……!!♡♡♡ イ゛……イ゛ぃぐぅ゛っ……~゛!♡♡♡♡」

 

 に゛ゅる゛ろ゛ろ゛っ……♡♡ と亀の歩みよりも遅く引き抜けば、コヤンスカヤの膣口から出てくるペニスには彼女の淫蜜がベットリと付着していた。

 

 またたっぷりと時間をかけて挿入れて、そして同じ程の時間をかけて抜く。

 

 

 獣のような荒々しい支配を刻むそれではなく、人の行うような愛と快楽を余すことなく認識させて芯まで染み込ませるスローセックス。

 

 

 もはや彼女の視界は視界の意味を成しておらず、チカチカとアクメの刺激で断続的に目の前が白む。

 

 間違いなく感じているのは幸福以外のなにものでも無かった。

 

 ドッロドロの蜂蜜に髪まで浸かるような幸せだった。

 

 自分の肉体の境界線も曖昧になるほどの快楽と幸せに、コヤンスカヤはケダモノのようにイキ続ける。

 

 マスター側の刺激もコヤンスカヤの膣奉仕で過剰とも言える官能を感じており、彼女は時間の感覚も無くなるほどイキまくった果てに、限界を向かえて射精寸前にチンポを引き抜かれ、尻に熱々のザーメンの感触を味わったのを最後に意識を途絶えさせた。

 

 

 と、インド異聞帯攻略の間はそのような関係が続き、カルデア一行は無事に空想樹を伐採する。

 

 第四の異聞帯を乗り越えて、コヤンスカヤは別れ際に「これで貸し借りはなしですので!」と強調して逃げるようにしてインドを後にしたのだった。

 

 

ーーーー……

 

 

 

 第五の異聞帯(ロストベルト)、オリュンポス。

 

「心外ですわ。生命のない幽霊もどきに化け物呼ばわりなんて」

 

 

 そこで今回もカルデアと相対したコヤンスカヤ。

 

 今回の出で立ちは普段のスーツ姿。

 とは言えあれから更に胎児が育ってボテ腹は進行し、一目で妊婦と分かる姿になってはいたが。

 

「やぁコヤンスカヤ。元気そうで」

 

 もはやマスターもマシュも慣れたもので、分かっていたとばかりに気軽に手を振って敵対者である彼女に声をかける。

 

「ご無沙汰しております。そちらもお変わり無いようですね、アナタ♡」

 

「アナタ……って……え!? マ、マスっ、え!!?」

 

 オリュンポスでの同行者、アデーレとマカリオス、そして武蔵ちゃんはそんな見知った様子、そして何より目立つボテ腹と“アナタ”という呼び名に同然困惑を示していた。

 

「お腹の子の調子はどう?」

 

「元気ですよ。何よりも先にそちらを気に掛けるとは、この子のパパである自覚は健在のようで何よりです」

 

 これまでと変わらず敵対者の目で挑発的に見下しながら、彼女は大きく膨れたお腹を撫でる。

 

 そこでこれまでの接触で得てきた情報を元にしたホームズの推理が当たってしまい(・・・・・・・)、コヤンスカヤは遂に力を発揮する。

 

 いくら濃密な付き合いがあろうと、彼女は商売人であり契約は違わない。

 

 互いのスタンスは交わらず、尾を解放したコヤンスカヤはカルデアとの激闘へと移る。

 

「胎教がてら断末魔の叫びでも聞かせてもらいましょうか!」

 

 彼女にとってはその戦闘すらも顔見せに過ぎなかった。

 

 軽くーーーーと言ってもそれでも死闘には変わりなかったが、オリュンポス攻略を急ぐカルデアはその場での決着を選ばず、コヤンスカヤは満足そうに笑みながらその場から立ち去るのだった。

 

 

 

ーーーー……

 

 

 第六の異聞帯(ロストベルト)、ブリテン。

 

 

「ーーーーふん、私の後輩たちに手を出そうってんなら黙ってないわ、引っ込みなさいベリル・ガット。私には分かる。あんたのそれはーーーー“恋”ね。ずいぶん歪んで破綻した恋だこと」

 

「ーーーーは?」

 

「でも残念。ご愁傷さま。その気持ちは届かない。マシュはもうとっくに後輩に恋してる、好いてるのよ。あんたの入る余地はどこにも無いわ、ふふん」

 

「パイセンちょっあの」

 

「ぐっ虞美人さん!!?!?」

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?」

 

 たまたまその時の緊急で召喚したパイセンが、最悪のタイミングでいらん事を言ってえらい事になっている頃。

 

 

 コヤンスカヤは流行と娯楽の街グロスターにて、唯一無二の友人との一時を過ごしていた。

 

「コヤンスカヤ、それはあとどれぐらいで産まれてくるものなのでしょう?」

 

「そうですね……十月十日(とつきとうか)という言葉もありますし……もうこの子との付き合いも十月(とつき)に迫ろうかと言うところ。恐らく、そう遠くはないかと」

 

「……へぇぇ………………」

 

 ブリテンの地に合わせた貴族の装い。

 それは彼女を見事に高貴な婦人として彩っていて、コヤンスカヤは衣服の上から大きく膨らんだお腹を優しい眼差しで撫でる。

 

 そんな彼女の姿に、汎人類史とは根底から“生殖”の概念が異なるムリアンは興味深そうな視線を向け続けていた。

 

 妖精とは使命を帯びて発生するもの。

 人間とは牧場で増やすもの。

 

 身籠り、育むという汎人類史の生態はブリテン異聞帯に流れ着く希少な書物でしか知らない。

 

「……触ってみます?」

 

「いいの? ……私が触れる事で良からぬ影響とか……」

 

「ふふふ、流石にそこまで脆弱ではありませんよ」

 

 そんな彼女の視線に気付き、コヤンスカヤは座ったまま自身のお腹を見せる。

 

 ムリアンは恐る恐るコヤンスカヤへと近付いて、そして繊細なガラス細工を扱うように彼女のお腹を優しく撫でた。

 

 丸みを帯びたお腹の表面に指を滑らせ、初めて宝物に触れるような恭しさで彼女の中に息づく生命に思いを馳せる。

 

「……身籠る、と言うことは、コヤンスカヤにも番(つがい)が?」

 

「う、うーん……これには何かと流れというか成り行きがありまして……。生物学上での私を身籠らせた相手はおりますが、少なくともこの子には私一人です」

 

 貞操観念の緩いこの世界線。

 

 別に孕むに至った経緯を説明する分には全く抵抗は無いのだが、敵対しているカルデアのマスターにイキッて誘って即敗けしてついでに孕んだ、と無様な敗北談を語るのは流石に憚られた。

 

「そういうものなのですね。やはり貴女も我が子には愛情を抱いていたり?」

 

「うぅーん…………、どうでしょうね。…………ですが……まぁ……流石にこれだけ共に在れば愛着は湧きます」

 

「なるほど…………」

 

 美しき妖精國、その優雅な昼下がり。

 

 共に同胞のいない一人きりの二人は、静かに、そして穏やかに時を過ごしていく。

 

 《牙の氏族》の受け入れの時が、緩やかに近付いてきていた。

 

 

 

「……甘えて、いいかしら、コヤンスカヤ」

 

 戴冠式にてノクナレアが殺害され、それに出席していたコヤンスカヤがグロスターに戻った時、彼女の友人は血の海に沈んでいた。

 

 あわてて駆け寄り抱き寄せて、みるみる冷たくなっていくムリアンは涙で頬を濡らす血を滲ませながら友人にお代を要求する。

 

「私と同じ、この世界でひとりきりの、同胞のいない、寂しいアナタにーーーー」

 

 その言葉を最後にひとりきりの翅の氏族は息絶える。

 

 物言わぬ死体となった友人を抱き上げて、またいずれ己の霊長類圏に迎えに来る事を約束しながらベッドに寝かせ、貴族服を一息に脱ぎ捨てる。

 

 深緑色の貴族服の布地が翻り、彼女の姿はNFFサービス最高経営責任者としてのいつものスーツ姿に戻っていた。

 

「“ブリテンを真の意味でお守りするーーーー。”発注、承(うけたまわ)りました」

 

 妖術を発動し己の腹に魔術的防御を施す。

 変化を発動し見た目だけを元の姿に変えて微笑んだ。

 

「倒すのではなく守る、というのであれば何を守るかは明白です。最新、強力、総合力のNFFサービスにお任せください」

 

「えぇ。黒幕にとってもっとも目障りな勢力を、バシッと素早くお守りして見せましょう!」

 

 

ーーーー……

 

 

「…………ケルヌンノスの呪い。世界を壊す兵器、などと、優良誤認もいいところ。っ……これは外敵を呪うものではありません。同胞を……自身を呪う、自壊の呪い」

 

 友人との約定に従い、コヤンスカヤはカルデアの絶体絶命の危機を身を呈して救った。

 

 しかしその代償は大きく、ビースト形態となって尾に吸収した呪いは容赦なくコヤンスカヤの身を蝕んでいく。

 

「ッ゛ぁ゛…………ぐ……この子だけ……は……!!」

 

 自分でも無意識の選択だった。

 呪いの性質、驚異を直感的に認識した瞬間、考えるよりも先に身体が動いていた。

 

 全ての魔力を腹に回し、赤子に呪いの一切が及ばぬよう、何重にもプロテクトをかけて全力で抗う。

 

 当然守りが疎かになるお腹以外の部位に容赦なく呪いは侵攻し、彼女は無事を確かめるようにお腹を撫でながら苦悶の表情を浮かべた。

 

「……艦(ふね)を守るには吸収するしかありませんでしたが、これはーーーー……酷い不良物件に、なりそうですわ…………」

 

 無事にこの宙域、ブリテン島中心部からストームボーダーが離脱するのを見届けて、コヤンスカヤもブリテン異聞帯から脱出する。

 

 カルデア一行の存続は特に心配していない。

 どうか少しでも“黒幕”の鼻を明かしてくれることを期待しながら彼女は傷を癒すため、羽化に備えて力を蓄えるため、生誕の地ツングースカへと向かった。

 

 

 

ーーーー……

 

 

『呪いの獣よ。おまえの生誕を喜ぶ者は少ないかもしれん。だが、名くらいはあっていい』

 

 

『ヤースカヤ』

 

 

『…………うん、それがいい』

 

 

ーーーー……

 

 

 

「───ビースト退治、お見事にございます。これには狐も尻尾を巻きましょう。もちろん。悔し紛れの負け惜しみ、ですけどね?」

 

 ツングースカでの因縁の決戦の末、そして“商談”の末、コヤンスカヤは太公望の術により世界卵の中へと封神され、異星の神との決着がつくまで眠りにつくことになるのだった。

 

「……あぁ、そうそう。立香ク……いえ、アナタ。こちらへ」

 

 少しずつ彼女を包む卵の殻が形成される中、コヤンスカヤはは眠りにつく前の穏やかな表情でマスターを呼ぶ。

 

「ーーーー後日、養育費とアナタの身柄ともどもカルデアに請求致しますので。これで戦いが終わった、私という女から離れられた、と思わぬよう」

 

「了解。身の振り方を考えておくよ」

 

「当然です。…………はぁ。本当、怖気がするほどのお人好しばかりーーーー」

 

 

 

 コヤンスカヤという世界の全てを内包した世界卵はソラへと旅立つ。

 

 あとはカルデアが異星の神に打ち勝ち、ソラが開かれるのを待つだけ。

 

 どこでもない静かな時空を旅しながら、コヤンスカヤは己の鼓動と、以前よりも確かな胎動を刻む血を分けた我が子へと意識を向ける。

 

 お腹の子がぽこんと元気にお腹を蹴った。

 

「………………不思議と、不安は無いのです。母になるなど初めての事だというのに」

 

 そもそもの身籠る事になった経緯自体が偶発的なもの。

 たまたまマスターが何も知らず、そしてこの世界の貞操観念が緩いゆえに彼女が気軽にハニトラという行動を取ったからだ。

 

 決してなろうとしてなったものではなく、身籠ったと知っても浮かんだのは感動や喜びより、その後の身の振り方や実利の方が大きかった。

 

 ムリアンの“愛情を抱いているか?”という問いに返答を濁したのは、決して誤魔化したのではない。

 

 育むうちにいつの間にか抱いていた愛情に、コヤンスカヤ自身が無自覚だったためだ。

 

 

 

「……ふふ……大丈夫。太古の時代から続く親子の契約。全力で産み育て、不足のない愛を注いであげますとも。私には、立派なお手本がいるのですから」

 

 

ーーーー……

 

 

 

「サーヴァント、アサシン」

 

「サーヴァント、フォーリナー」

 

「「タマモヴィッチ・コヤンスカヤ、契約と聞いて参りました」」

 

 後日、二騎のサーヴァントが新たに観測された。

 

 召喚サークルの中央を挟んで鏡合わせのように立つ二人の姿を見て驚愕の表情を浮かべるマスターとマシュに、彼女たちは実に気分良さそうに微笑んだ。

 

「おや? 私(わたくし)が皆様の手助けをするのがそんなに意外ですか? まさか。私も自分を身籠らせた続柄(つづきがら)上の旦那を放置するほど薄情な女ではありませんので」

 

 斯くして、ビーストⅣ封神の折りに本体からこぼれ落ちた二つの欠片は、それぞれ光と闇を名乗ってカルデアと契約する。

 

「なに、全てを片付けた後の円滑な業務提携、それと“争奪戦”の根回しとお思いください♡」

 

 それは頼もしい味方でありながらも、また一つカルデアに新たな戦乱の到来を予感させるのだった。

 

「これからしばらく、お付き合いさせていただきますわね? ねぇ」

 

「「アナタ?♡」」

 

 

 

ーーーー……

 

 




元々「藤丸立香」という名前で出すとビジュアルが固定されてしまうかなと思い、今まで可能な限り出さないようにしてましたが原作が名前呼びだったので踏み切りました。しかし考えようによっては他の名前呼びのサーヴァントも書けるようになったとも言えますね。

楽しんで頂けたら幸いです。

私のツイッター(twitter/boro_soboro)のお題箱にボンボン性癖を投げつけてくれて心より感謝を。
感想、性癖、要望、何かございましたらどうぞお好きに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。