第一話:誕生!キュアフェニックス!!
1、少女と妖精
「面!!!」
気迫のこもった少女の声が、室内に木霊する。少女の鋭い踏み込みが、相手に迫った時、勝敗は決していた。三人の審判が、一斉に赤の旗を掲げる。
対抗戦とはいえ、対戦相手の少女に、三本勝負中二本を、圧倒的実力差を見せつけて勝利した少女が、深々と礼をして、仲間の下に戻る。沸き上がる仲間を余所に、少女は面を外し、頭に巻いたタオルを取ると、長い黒髪が腰まで垂れる。少女は、仲間に少し微笑むも、何処か寂しげだった。
私立武道学園中等部三年、剣道部主将柳生天女(やぎゅうてんにょ)、長い黒髪を腰まで伸ばし、モデルのような容姿を持つ彼女は、女性でありながら、その天賦の才能で男女の剣道部を束ね、男女問わず憧れの的であった。
かの柳生新陰流の創始者、柳生石舟斎の子孫でもある。弱小と言われた、武道学園剣道部を立て直した天才少女であった。
「みんな、今日はお疲れ様!ゆっくり休んで下さい・・・今日は解散、ありがとうございました!!」
天女の挨拶で解散したものの、天女は、後輩の新入部員達と共に片付けを手伝い、個々にアドバイスを送った後、ようやく下校した。
そんな天女を、後輩達は憧れの視線で見つめ続ける。ひそひそ話ながら、天女の耳にも聞こえてくる彼女達の会話、天女が居れば、女子団体戦は兎も角、女子個人戦は、今年も天女が日本一になり、天女の三連覇は間違いないだろうと、そんな言葉も、天女にとっては何の喜びにもならなかった。
(対抗戦なら、私が出るより、他の人に経験を積ませて上げたかったのに・・・)
顧問の意向には逆らえず、学校に取っての客寄せパンダのような扱いに、溜息を付く天女だった。
天女は、剣の修行は、幼き頃からの習慣で大好きだったが、武具を着けて行う剣道を、あまり好きでは無かった。中学に上がり、天女は、剣の修行と同じぐらい好きな、絵を描ける美術部に入部するつもりだったのだが、学園の理事長とも親しい祖父、柳生辰馬の命により、嫌々ながら剣道部に入り、その才能で、弱小剣道部を立て直したのだった。
ふと空を見上げた天女は、澄みきった青空を、自由に飛び回る鳥の姿を見て溜息を付く、
(私も・・・自由に生きたい!!)
武道学園がある文武町(ぶんぶちょう)、嘗てこの地は、文武両道を唱え、栄えた街だったが、度重なる戦乱の後、住宅街へと様変わりをしていた。天女の住む柳生道場はこの地にあった。
考え事をしながら歩いていた天女だったが、その時、背後に気配を感じ、咄嗟に身を躱すと、避けられて思わず転ぶ男子生徒を見て天女が呟く、
「総司じゃない!?全く、あなたは毎度毎度・・・普通に声を掛けられないのかしら?」
「な~に言ってんだ!そんな辛気くさいオーラ出して歩いてたら、声何か掛けづらいだろうが?」
天女が総司と呼んだ人物、松田総司、黒髪の短髪で細マッチョな体型、右目には縦に傷が付いているものの、見えない程ではなかった。天女とは幼なじみの間柄で、幼き頃から天女の家、柳生道場で修行していたが、ある日を境に剣の道を捨てた。
「まあいいや・・・天女、たまには家の店に顔出せよな!お袋がまた心配するからよ!!」
「おばさまが?そうね、そういえば、進級してから忙しくて、行ってなかったっけ・・・試合も終わったし、今から行ってみようかな!?」
「おお、そうしろよ!」
総司と共に歩き出した天女、幼なじみの総司の前では、嘗てのような本当の自分で居られ、気が休まる天女であった。
総司の家は、甘味処を営んでいた。幼き頃から洋菓子より和菓子が好きだった天女は、総司の店「餡庵(あんあん)」によく通っていた。
幼少時は、母、柳生天音(やぎゅうあまね)に連れられ、あんみつや、白玉ぜんざいなどを食べさせて貰っていた。最後には必ず、天女が大好きなたい焼きを買って貰っていた。今でもその頃と変わらず、天女は週一ぐらいのペースで餡庵に通って英気を養っていたが、進級してからは、剣道部主将としての多忙な日々から、次第に足が遠のいていた。
「ただいま!お袋、天女が来たぞ!!」
「おばさま、ご無沙汰してます!」
二人の声を聞き、奥から顔を出した恰幅の良い中年女性、総司の母、松田美里は、天女の顔を見ると満面の笑みを浮かべ、天女を歓迎してくれた。
「まあ、天女ちゃんいらっしゃい!最近ご無沙汰だったから、おばさん寂しかったわよ・・・今日は何にする?」
「今日は、あんみつでお願いします!お土産でたい焼きも四つ下さい!!」
天女も微笑み返しながら注文すると、あいよと返事をして、奥に引っ込む美里、
「じゃあ、俺は出掛けてくるけど!ゆっくりしてけよ!!」
「うん、ありがとう、総司!」
天女は、久しぶりに味わう餡庵のあんみつを食べ、束の間の息抜きを行うのだった・・・
久しぶりに総司の母、美里との会話を楽しみ、つい長居をしてしまった天女は、夕食前の稽古時間が迫っているのに気付き、慌てて店を出るのだった。
「いけない・・・ついおばさまとの話に夢中になっちゃった。急がなきゃ、またお爺様にお叱りを受けてしまうわ」
澄みきった青空だったさっきまでとは変わり、少し黒雲が頭上に流れてくる。更に歩を速めた天女だったが、道中、妙な気配を感じ、思わず歩みを止めてしまう・・・
「何かしら!?何か・・・悪しき気配を感じるような?」
天女の表情が見る見る強張っていく・・・
「こっちだわ!!」
持ち前の正義感からか、天女は、悪しき気配漂う場所に、急ぎ歩を進めるのだった・・・
天女が悪しき気配を感じた広場は、まるで、時が止まったように静まりかえっていた。人も、動物も、機械の音も、その場に動いているのは、オウムに似た人の頭程の大きさをした生き物と、それを狙っている、茶髪の短髪に、黒き繋ぎ衣装を纏った、20代後半に見える男が一名だけだった。
「さあ、観念しろ、天空の妖精よ!貴様は持っている筈だ・・・我らが神を復活させる、八つの石の内の一つを・・・さあ、渡して貰おうか!」
男は右手を前に出し、目的の物を差し出せと迫った。オウムに似た天空の妖精は首を振り、そんなの知らないと答えると、妖精の直ぐ横にエネルギー波を放ち、男が妖精を威嚇する。
「そうか・・・何なら貴様を殺した後で、ゆっくり探しても良いんだぞ?さあ、早くしろ!!」
(これはどういう事なの!?何故みんな動かないの?あの人は・・・一体何なの!?)
次々に頭に湧いてくる疑問の数々に、天女は混乱した。だが目の前で今、オウムのような生き物が、殺され掛かっている現実に直面し、天女は一心にあの鳥を助けたいと心に決めると、素早く行動を開始した。
突然現われた天女に気づくのが遅れた男は、天女の体当たりを喰らい、思わずよろめく、その隙を見逃さず、天女はオウムを胸に抱くと、一目散にその場から離れるのだった。
(こ、この感触は・・・噂に聞く、おっぱい!!)
天女に抱かれたオウムに似た生物は、制服越しながらも、弾力ある天女の胸の中で恍惚の表情を浮かべ、顔を天女の胸に擦りつける。思わずキャッと悲鳴を上げた天女は、オウムに似た生き物を放し、得体の知れない生き物を見るように、険しい表情を向けるのだった。
「君、女の子ピピ?あの感触は間違いないピピ!助けてくれてありがとう!僕は、天空の妖精ピッピピピ!!」
「ハァ?ピッピピピ・・・さん!?エッ?鳥が・・・鳥が喋ってるぅぅ!?」
「違うピピ、ピッピだピピ!でも、君のおっぱいの感触・・・間違いないピピ!君こそ僕の捜して居た・・・アッ、何するピピ?」
勝手に喋りながら、天女の胸を、スケベそうな視線で凝視するピッピと名乗る妖精に、天女は、持っていた道具袋に入れた竹刀で突っつき、不快感を露わにする。
「や、止めるピピ・・・ピッピは決して怪しい者じゃ無いピピ!可愛い、可愛い、妖精ピピ!!」
ピッピの言葉を受け、冷めた視線を向けた天女は、尚も竹刀でピッピを突っついて、
「何が可愛い、可愛い妖精よ?可愛い妖精が、女の子の胸触って、そんなスケベそうな顔しないわよ!!」
天女は、ピッピと名乗るスケベな妖精に、不快感を露わにするのだった・・・
2、マケンナー現わる!
「クッ、この俺とした事が、油断したぜ・・・オロチ八人衆が一人、このスネーク様が、あんな小娘に・・・あいつら何処行きやがった!?」
(だが、あの女・・・何で魔空間と化したこの地で、活動出来るのだ?)
魔空間・・・
この世界と、邪悪な生命体で、魔と呼ばれる物体漂う魔の空間を、次元の狭間で結び付ける空間の事である。この地に飲み込まれた時、飲み込まれた場所は、時が止まったようになる。
スネークは、魔空間で動ける天女に疑問を持ちながらも、キョロキョロ辺りを伺うが、完全に天女とピッピを見失っていた。忌々しそうな表情を浮かべたスネークだったが、停止した人々の中の一人に目を付けた。
「ほう、此奴の心・・・利用させて貰うぜ!魔よ、この印に宿り、全てを破壊せよ!!目覚めよ!マケンナー!!」
スネークが、懐から取り出したお札のような物体に、次元の狭間から禍々しい黒い光が宿り、その札を停止している人に貼り付けると、札は体内に吸収されるように消えた。
スネークがお札を貼った人物、それは天女の幼なじみ総司だった。
総司の身体を、体内から異変を生じさせ、総司の姿を徐々に醜い怪物へと変化させていく。総司の身体が魔に支配された時、マケンナーとなった総司が、雄叫びを上げ動き始めた。
その姿は、龍人と呼ぶに相応しかった・・・
「さあ、マケンナーよ、あの妖精から、我らが神を復活させる八つの石、デーモンストーンを見つけ出し、取り返すのだ!行け!!」
マケンナーと成り果てた総司は、雄叫びを上げ、命令通り動き始めた。
幼なじみの総司が、怪物と化した事に気付かない天女は、天空の妖精ピッピの理解し難い話を聞き、眉根を曇らせるのだった。
「そんな話、信じられる訳ないでしょ?邪神だの、光の女王に闇の女王、荒ぶる神に、三人の女神、光の戦士プリキュアだの・・・プリキュア!?・・・何処かで聞いた覚えがあるような気はするけど・・・とは言え、あなたが喋って、私と会話してるのも事実だし」
「信じて欲しいピピ!さっきの奴は、邪神を復活させようとしている、オロチ八人衆ピピ!奴らは、邪神の封印を解く、八つのデーモンストーンを狙っているピピ!!」
光の女王と呼ばれる、光溢れる世界を作り上げた光の女王は、この世界を三人の女神に託した。天空の女神ディオーネ、大地の女神ガイア、海洋の女神ティティス、彼女達三神の女神は、この地を繁栄させた。
だが、この地は闇の邪神の襲撃を受けた!!
三人の女神は、協力して邪神を迎え撃ったものの、邪神はあまりにも強く、三人の女神を持ってしても苦戦する。それを知った光の女王は、闇の女王と相談し、荒ぶる神と呼ばれた、自身の弟を女神達の下に差し向けた。何とか協力して、邪神の精神と肉体を分離させ、戒めの祠に精神を、次元の狭間に肉体を封印する。
邪神は封印される前に、この世界に八つの己が分身を送り出していた。
その邪神の分身とも呼べるべき存在、オロチ八人衆!
それに気付いた女神達は、邪神復活を阻止させるべく、魔を封じる石、デーモンストーンを作り出し、天空の神殿、大地の神殿、海洋の神殿、そして、残りの石をこの地の何処かに隠し、魔の力を封じていた。力を使い果たした女神達は、長き眠りに付く前に、天空、大地、海洋の神殿に、自分達の力を受け継ぐ、プリキュアと呼ばれる力を与える。
それぞれの神殿に住む、パートナー妖精に選ばれた者のみ、女神の承諾を得られれば、伝説の戦士プリキュアへと覚醒する事が出来ると・・・
一方、光の女王の弟はこの地に止まり、この地に住む娘と結ばれ、子孫に対し、戒めの祠を守護する事を家訓とした。
天空、大地、海洋の女神達に後時を託された、それぞれの長老達は、長きに渡り、邪神の分身、オロチ八人衆と戦い続けてきたのだった・・・
「ピッピが生まれる前、今から約20年前、この時デーモンストーンを守護していたのも、ピッピと同じ、天空の妖精と、天空のプリキュアだったそうピピ・・・当時のプリキュアの活躍で、オロチ八人衆は魔空間に引き込まざるお得なかったそうピピ!でも・・・」
「約20年経って、その者達が再び行動を開始した・・・って言う事かしら?」
天女の言葉にピッピが頷いた。天女は、憂いの表情を浮かべながらも、頭の中で整理を始めた。このスケベな妖精の言う事を、全て信じた訳では無いものの、まるでこの街は、自分達以外止まったような状態、妖精とオロチ八人衆の姿を、目の前で見た天女にとっては、認めざるお得ないと・・・
「でもそれなら、20年前に戦っていたっていうプリキュアに、助けを求めれば良いんじゃないのかしら?」
天女の疑問も尤もで、たった一人でオロチ八人衆と戦い続け、追い返した嘗てのプリキュアに、救援を求めるというのは妥当な判断だろう・・・
「それは無理ピピ!嘗てのプリキュアのパートナーだった方は、今じゃ天空の神殿で、重要な地位に就かれて、この地には来れないピピ!プリキュアだった人も、20年経った今じゃ、何処に居るのかさえ分からないピピ」
その時、近くからマケンナーと叫ぶ声と、破壊音が聞こえてくる。天女は何事かと驚愕しピッピを見ると、ピッピは震え始めていた。
「マケンナー・・・天空の長老に聞いた事があるピピ!生き物の心の闇を喰らい、怪物化させた者を、マケンナーと呼んだとか・・・た、大変ピピ!!」
(マケンナーですって?)
天女はピッピの言葉に、何処かで聞いた事があるような、無いようなと小首を傾げながら考えていたが、マケンナーは、肉眼でも分かるほどに近づいてきていた。ピッピは、首に掛けていた万能アイテム、丸い水晶の形をしたクリスタルフィオーレで、マケンナーを覗き込んだ。そこには、マケンナーとされた人物、総司の姿が映し出されていた。
「これを見るピピ!このクリスタルフィオーレは、マケンナーにされた人の姿を見る事も出来る、貴重な万能アイテムピピ!」
ピッピから渡されたクリスタルフィオーレで、マケンナーを見た天女の表情が、見る見る驚愕へと変わっていく。
「あ、あれは・・・総司!?そんな、総司が怪物にされたって言うの!?」
「君の知り合いピピ?た、大変ピピ!!マケンナーとなった者を元に戻すには、30分以内に取り付いた魔を滅ししなければ、二度と人に戻る事は出来なくなるって、長老が言ってたピピ・・・」
「そ、そんなぁ・・・じゃあ、総司は!?」
首を振るピッピを見て、目に涙を溜めた天女は、マケンナーとなった総司の下に駆け出した。その後を大慌てのピッピが追う。
必死に総司の名を叫び、元に戻そうとする天女の行為を、オロチ八人衆のスネークが嘲笑う、
「無駄、無駄、無駄!その者が貴様の知り合いだったとわな・・・一つ良い事を教えてやろう!マケンナーの胸の中心部に、青く輝く、菱形のマークが付いているだろう?あれがやがて、おっと、もう黄色に変わったか?やがて真っ赤に変わった時、マケンナーとされた者は・・・二度と本来の姿に戻れず、身も心も完全にマケンナーとなって、我らが下僕として生き続けるのだ!!さあ、自分の不甲斐なさを嘆くがいい!!!」
マケンナーと化した総司のマークが、青から黄に変わり、嘲笑うスネークを、涙混じりに睨み付ける天女の姿に、スネークは、何処かで出会っているような、不可解な感覚を覚え戸惑うのだった。
暴れ狂うマケンナーの攻撃を、何とか躱し続ける天女とピッピ、スネークの指示通り、攻撃を繰り返すマケンナーと化した総司の姿に、天女は為す術がない自分の不甲斐なさに、心が折れそうになった。
「もう時間が・・・君、ピッピを信じるピピ!これしか方法が無いピピ・・・君がプリキュアとなって、マケンナーになった君の知り合いを救うピピ」
「私が・・・プリキュアに!?」
ピッピの言葉に、呆気に取られたように天女が呟くと、ピッピは頷き、
「君に抱かれて助けられた時、確信したピピ・・・僕のパートナーは、君しか居ないピピ!!君なら、きっと天空の女神、ディオーネ様も認めてくれるピピ!!!」
ピッピはそう言うと、ブツブツ小言を呟き、
「天空の女神ディオーネ様!ピッピの願いを叶えたまえ!この娘に、プリキュアの加護を!!」
天空より虹色の光が、ピッピが首に掛けていたクリスタルフィオーレに集められると、クリスタルフィオーレは、天女に向けて虹色の光を反射させ、虹色の光が天女を包み込んだ・・・
3、プリキュア!デルタフラッシュ!!
虹の光に包まれた天女は、不思議な感覚を味わっていた。何処か懐かしいような、暖かな虹の中に居た・・・
天女の心の中に、何者かが話し掛けてくる・・・
・・・あんたは何故プリキュアの力を欲するんだい?名前は!?・・・
「私の名は・・・柳生天女!プリキュアとなれるなら・・・大切な人を救いたい!そして、私の大切な人を巻き込み、この世界に混沌を招こうとして居る者達に・・・立ち向かいたい!!」
天女の告白を、声の主は意外そうに、何処か楽しげに聞いている様子だった。
・・・そう、これも因縁なのかねぇ?わかったわ!認めましょう・・・柳生天女、汝を天空の女神ディオーネの名の下に、プリキュアとして認めます!!・・・
ディオーネは、天女をプリキュアとして認めると、天女の手に変身アイテムであるペンダントのような形をした、赤い菱形のシャイニークリスタルを授けた。
(何故かしら!?私はこのペンダントを、何処かで見た気が?)
シャイニークリスタルを懐かしそうに見つめる天女だった・・・
・・・今後そのシャイニークリスタルに、パートナー妖精からプリキュアの力を受けた時、こう叫びなさい・・・
・・・プリキュア!デルタフラッシュ!!とね・・・
ディオーネはそう伝えると、虹の光は、徐々に発光を沈静させていった
ディオーネとの邂逅を終えた天女は、現実に戻って来る。先程までとは打って変わり、自信に満ち溢れた表情となって・・・
ピッピが嬉しそうに、ディオーネに認められたか聞くと、天女はピッピにシャイニークリスタルを見せ首に掛けると、ピッピは嬉しそうに何度も頷いた。
(何だ?何が起きた!?)
目の前で起きた出来事に、呆然とするスネークだったが、我に返るとマケンナーに指示を出し、天女達を攻撃するように命じる。
「時間が無いピピ!変身ピピ!!」
ピッピの言葉に頷いた天女に、ピッピはシャイニークリスタルに向け、胸に掛けているクリスタルフィオーレから、プリキュアの力を照射する。虹の光をシャイニークリスタルが吸収していく。クリスタルが虹色に輝いた時、
「プリキュア!デルタフラ~ッシュ!!」
天女の掛け声と共に、シャイニークリスタルは、三角形の虹色の光を天女の全身に包み込んだ。天女は、まるで何も身に付けていないような感覚を味わうも、不快感は無く、虹色の光に身を清められているような感覚すら覚える。
やがて、心の底から沸き上がってくるような、熱き鼓動を身に纏っていくように、胸の中心部に、シャイニークリスタルが装着され、天女の身体を、赤に近い衣装が覆っていく。身に付けられていく衣装は、何処かチャイナ服を連想させた。背中から肩に掛けて、鳥のようなピンクっぽい羽が覆い、更に天女の黒髪までも真紅に変え、ポニーテールのように髪を纏め上げていった。
変身を終えた天女が姿を現わすと、ピッピも、スネークも、共に驚きの声を発していた。
「天空の使者・キュアフェニックス!・・・推参!!」
変身を終えた天女が、キュアフェニックスとなってポーズを決める。威風堂々した凛々しい姿に、ピッピは目をウルウルさせて見つめた。
「プリキュアだとぉ!?・・・再び我らを阻止する為に、現われたというのか?望むところだ!マケンナー、プリキュアを殺せぇぇ!!」
雄叫びを上げたマケンナーが、パンチを繰り出し、尻尾で攻撃を加えて来るも、フェニックスは避けようともせず、その場に踏みとどまり、右手で攻撃を捌ききる。咆哮を上げたマケンナーが、上から振り下ろす右の拳を、カウンターの右蹴りで跳ね返したフェニックスだったが、フェニックスのスリットから、チラリと見えた太股に、マケンナーは欲情を催し、荒い呼吸を繰り返し、股間を膨張させた。
不愉快そうに見たフェニックスは、
「総司・・・あなたがこんな事を思う筈がない・・・今、今、元に戻してあげるからね!総司の身体から出て行きなさい!!ハァ!!!」
フェニックスの強力な右ストレートを受けて、吹き飛ぶマケンナー、
「フェニックスの名に於いて・・・この手に宿せ!ファイアーソード!!」
フェニックスの手の上に、火が点ったかと思うと、それが見る見る剣の形へと姿を変えた。剣を軽くピュッと振ったフェニックスは、
「心にて、悪しき闇を斬る・・・プリキュア!フレイムブレイド!!」
炎を纏った剣で、マケンナーに突進したフェニックスが、マケンナーを一刀両断にした!!
だがそれは、総司に取り憑いた魔を、切り裂いただけであった。マケンナーは断末魔の悲鳴を上げると、徐々に縮小して、元の持ち主である総司の姿へと戻り、その場に倒れ込む。
フェニックスは、愛しそうに総司を見ると、直ぐにキッとスネークを睨み付けた。
(な、何だ?あの娘、プリキュアに成り立ての筈なのに・・・あの強さは一体!?)
「クッ、覚えていろ!次こそはデーモンストーンを手に入れてやる!!」
スネークは、今後の作戦を練り直す為、一旦退却するのだった・・・
スネークが撤退した事で、止まっていた時が再び動き始めた。人々は何があったかも気付かず、再び動き始めていたが、所々に破壊された場所があるのに気付き、騒動になっていた。
変身を解いた天女は、総司を介抱していた。
「あれ、天女!?俺、一体どうしてこんな所で倒れてたんだろう!?・・・何か怪物になった夢を見たような・・・」
「イヤァね・・・まだ夕方よ?きっと疲れているのよ!送ってあげるから、今日は帰りましょう!!」
元に戻った総司だが、マケンナーになった記憶は、少しあるようだったが、天女は笑いながら、倒れて夢でも見ていたんでしょうとフォローして、総司を家まで送るのだった。
ピッピは、塀の上で嫉妬しながら見ていたが、天女の後を羽ばたきながら追っていた。
「結局、夕方の稽古さぼっちゃったわね・・・でも、私がプリキュアに、キュアフェニックスになるなんて・・・これからどうなるんだろう?」
「君はこれから、プリキュアとして、オロチ八人衆からデーモンストーンを、人々を守るピピ!そう言えば、君の名前を聞いてなかったピピ?」
天女の肩に止まって会話するピッピは、天女の名前を聞き、嬉しそうにしながら、上から見える天女の胸の谷間にスケベ顔になる。天女はそれに気付き、手で追い払うと、一目散に駆け出した。
「ま、待つピピ!?プリキュアと妖精は、一心同体ピピ!!」
「冗談じゃないわ!エッチな妖精のあなたに付きまとわれたら、私の心が安息する時間が無いわよ!!」
日が暮れた街中を駆け抜ける天女と、羽ばたきながら追いかけるピッピ、二人の戦いは、今始まったばかりだった・・・
第一話:誕生!キュアフェニックス!!
完