第十一話:女神降臨
1、邂逅
世界は今、終焉を迎えようとしていた・・・
この地を我が物顔で支配してきた人類は、今はただ、魔の恐怖に怯え、逃げ惑う、無力な存在でしか無かった・・・
邪神八岐大蛇・・・
数キロにも及ぶその禍々しい巨体が、魔の群れが群がる暗闇の空に浮かび続ける。
その圧倒的威圧感は、人々を恐怖の底に叩き落とした・・・
魔の脅威は、天空、大地、海洋、それぞれの神殿でも始まっていた・・・
だが・・・
天空の神殿から真紅の光の球体が飛翔した・・・
大地の神殿から黄金の光の球体が飛翔した・・・
海洋の神殿から、エメラルドの球体が飛翔した・・・
三つの球体に触れた時、魔は光と共にその身を消滅させる。光を恐れた魔は、それぞれの神殿から逃げ出すように離れていった・・・
三つの球体は、世界の今の姿を探るように、世界中を飛び回り続けた・・・
魔に支配された文武町・・・
その地に邪神八岐大蛇に戦いを挑み、敗れ去った少女達が、全裸のまま横たわっていた。三人のシャイニークリスタルには亀裂が発生し、最早、彼女達にプリキュアに変身する力は残っていなかった・・・
柳生天女、大地かなめ、海堂なみ、三人の少女達の横たわるその周りには、オウム、ねずみ、ペンギンの姿に似た妖精達が、一物を膨らませ、今にも少女達に襲いかかりそうな魔の集団から、涙ながらに、必死にバリアーを張って少女達を守り続けて居た。
少女達の命運は、この小さな三人の妖精達に掛かっていた・・・
「チュッチ、ティティ、頑張るピピ!」
「お前こそ・・・」
「ピッピ、チュッチ、バリアーに集中するティティ」
プリキュアとして、この世界を守り続けてきた少女達を、最愛のパートナーを守る為、三人の妖精達が、必死にバリアーを張り続ける。妖精達に取って、長時間バリアーを張り続ける事は、自身の命の危険をも伴う・・・
だが、妖精達は必死に少女達を守り続ける・・・
その行為を嘲笑うように、妖精達が張るバリアー目掛け、獲物を狙う魔の集団は、執拗に攻撃を繰り返していた。
「ウゥゥン・・・こ、此処は!?私達・・・」
意識を取り戻した天女は、側で気を失っているかなめ、なみに声を掛け、二人を我に返すも、自分達の今の姿を互いに見つめ合い、頬を染めた三人は、そのまましゃがみ込むと、腕で成長途中の胸を隠し、もう片方の手で大事な場所を隠した。その姿に興奮したのか、無数の魔が雄叫びを上げ、更なる攻撃を繰り返す。魔にとって、種の存続は本能ともとれる行動だった。魔は目の前に居る三人の少女という獲物を前に、本能が赴くまま、襲いかかろうと必死であった・・・
「コラ!魔物を刺激してどうするチュチュ!!」
「そ、そんな事言われたって・・・あたし達、裸何だもん」
「隠したくもなりますわ!」
互いに頬を染めながらチュッチに返答するかなめとなみ、天女は辺りを見回し、現状をうっすら理解するのだった。
「ありがとう・・・ピッピ、チュッチ、ティティ、あなた達が気を失った私達を、魔物の群れから守っていてくれたのね」
「そうピピ・・・でも、このままじゃ」
本来なら、大喜びで天女達を観察して居るであろうピッピも、そんな余裕はなく、必死に三人を庇い、バリアーを張り続ける。
ピッピの言うように、時間が経つ程に、魔の数が増えてくる状況に焦りが生じる。三人は、再びプリキュアになろうとするも、シャイニークリスタルには亀裂が入り、輝きを失っていた。
「今の状態じゃ、プリキュアの力をシャイニークリスタルが吸収する事は・・・不可能ティティ」
「じゃあ、私達・・・この姿のまま・・・」
ティティの言葉を受け、なみは、天女、かなめと顔を見合わせ、今の自分達には為す術がない事を悟る。
その時、魔の集団の背後から、不気味に何かが這ってくる音が近づいてくる・・・
背後から現われる魔を恐れるように、次々道を空ける魔の群れ達、三人の少女達、妖精達の表情が引き締まっていく。姿を現わした魔を見た時、一同は驚愕した・・・
「おやおや、健気な事ですねぇ・・・でも、無駄な事ですよ!」
這いながら一同の前に現われた者・・・
それは、キュアスワンに敗れ消滅した筈のナーガであった。だが、人の姿を保っているのは頭部のみで、身体は蛇の姿で不気味に蠢いていた。ナーガは、口元に笑みを浮かべながら、バリアーを張って少女達を庇い続ける、妖精達の行為を嘲笑った。
「お前は、ナーガ!何故、お前が!?」
天女の表情が険しくなる!
嘗てナーガによって、強制的にオロチの血に目覚めさせられ、かなめやなみ、天満を傷付けてしまった事を思い浮かべる。
「フフフ、驚きましたか?私も驚きましたよ・・・あなた方、随分大胆な格好をしてらっしゃいますね?魔の集団も大変喜んでいますよ!!さて、私が生きている事が不思議ですか?私が蘇れたのも、復活なされたオロチ様のお陰!だが、キュアスワンによって失った身体を再生する時間は足りなかった・・・これも、あの忌々しきキュアスワンの所為!!奴を陵辱し、辱めを負わせ、嬲り者にしてやりたかったのですがねぇ・・・先ずは、あなた方で我慢しましょうかね・・・」
ナーガは不気味に微笑み、舌をチロチロ出すと、背後からガサガサ物音を立てながら、ナーガに近づいて来る魔の姿があった。
「ナーガ、フェニックスは俺にやらせろ!」
ナーガの横に現われた人物、それはスネークであった。だが、スネークもナーガ同様、上半身は辛うじて人間体だったが、下半身は無数の触手が付いた昆虫のようであった。
「フェニックス、貴様にも味合わせてやるぞ・・・屈辱という奴をなぁぁ!!」
スネークの目が全裸の天女を見て金色に輝く、益々劣勢になっていく一同の耳に、息も絶え絶えながら、誰かの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。よく耳を澄ますと、
「かなめぇ・・・かなめぇぇ」
不気味な声で名前を呼ばれたかなめは、不安そうにキョロキョロ辺りを見回すと、ある魔を見て表情が凍り付く、
「お、おじさん・・・」
かなめの視線の先には、かなめにトラウマを植え付けた親戚、不気味な魔となった金光為蔵が居た・・・
為蔵の身体は植物化し、手足は触手のように蠢き、身体からはまるで男の男根のような物体が、無数に生え蠢く醜い姿の魔に成り果てていた。口からは涎を垂れ流し、狂喜の視線をかなめに浴びせる。最早完全に人の心を失った為蔵は、下卑る魔その者だった。
今の何の力も持たず、一糸纏わぬ姿のかなめの心に、嘗てのトラウマが甦る。背中にうっすら残る、為蔵から受けた焼印の後が痛んでくる。
「イヤァァ!イヤァァ!!」
ガタガタ震え出すかなめを庇うように、天女となみが、自身の裸を隠そうともせず、為蔵の視線からかなめを庇った。
「大丈夫よ、かなめ!私達が居るわ!!」
「ええ、あんな奴に・・・かなめちゃんを触れさせはしない!!」
「なみ・・・天女さん・・・ありがとう」
なみと天女の言葉を受け、涙を腕でゴシゴシ拭ったかなめは、パンと両頬を叩き気合いを入れると、二人にもう大丈夫と笑顔を見せた。
「ほう、その顔が何時まで持つのやら・・・見なさい、妖精達はもう限界のようですよ」
口元に笑みを浮かべながら、ナーガが一同を見下した。妖精達は、魔の猛攻の前にどんどん押され始め、妖精達の顔が苦悶に浮かぶ・・・
天女はピッピを、かなめはチュッチを、なみはティティを背後から抱きしめると、妖精達にも彼女達の気持ちが伝わり、守りきれなかった事に涙が溢れてきた。かなめはギュッとチュッチを抱き、涙を流しながら、
「ゴメンね・・・もう、もう、いいよ・・・」
「かなめ・・・みんな・・・ゴメンチュチュ!みんなを、守りきれなかったチュチュ・・・」
「みんな、ゴメンピピ」
かなめが弱音を吐き、妖精達が限界を迎え、バリアーは無残に崩壊した。少女達が目を瞑った時、少女達目掛け、奇声を発しながら一斉に魔が襲いかかる。その姿に、ナーガ、スネークの口元に笑みが浮かんだ。
その時・・・
戒めの祠内部・・・
「天音ちゃん、聞こえるかい?今何処に居る!?」
「この声は・・・ディオーネ様?私は今、戒めの祠の内部に、天満、羅蛇と居ますが・・・」
傷つき瀕死の羅蛇を介抱するスワンとクロウだったが、突然スワンの心の中に話し掛けてきた人物に大いに驚く、
「それはグッドタイミング!天音ちゃんも世界の現状は大体分かっているね?天女ちゃん達も、オロチに敗れてヤバイ状態何だわ・・・まあ、取り敢えず彼女には知らせておいたから、あたしらが行くまでは何とかなるでしょう!天音ちゃん、そっちに生き残った人々を送るんで、後はヨロシクねぇ!!」
「エッ!?天女達がヤバイ状態?生き残っている人達をこっちに送るって!?ディオーネ様、もっと詳しく・・・ディオーネ様?・・・全く、あの方は相変わらずねぇ」
一方的に話し掛け、一方的にコンタクトを解除する天空の女神ディオーネに、20年前の事を思い出した。プリキュアとして孤軍奮闘していたスワンは、何度かディオーネと邂逅していたのだが、彼女に振り回されていたのを思い出し、スワンは深い溜息を付いた。
「お母様、天女達が危ないとは・・・直ぐに私が救援に行きます!!」
「そうね・・・でも、ディオーネ様の話じゃ、誰かは分からないけど応援を頼んでいるようだし、ディオーネ様も天女達の下に向かっているそうだから大丈夫でしょう・・・それより、これから此処に生き残った人達が送られてくるそうなの!そっちの方を手伝って!!」
スワンの言葉に頷きながらも、妹天女達の身を案じるクロウであった。妖精スアロ、カァクも、この最悪の状況の中だが、女神達がこの世界に降臨したと聞き、微かな希望を胸に抱く。
それから数分後、ディオーネが言った通り、戒めの祠内部に大勢の人間が、国籍、老若男女問わず、次々に送られてくる。その中には、かなめの従姉加代、なみの両親、総司や美里達、武道学園の関係者達なども含まれていた。
送られてくる人々は、光の球体に包まれ、女神達の力で眠らされているようだった。光の球体を凝視してみれば、女性は着衣に乱れがあるものが多く、スワン、クロウは眉根を曇らせた。
羅蛇の側に戻った二人に、羅蛇も沈痛な表情を浮かべながら、
「無理もない・・・世界は、最早魔が支配する世界へと変わったのだからな・・・だが、三人の女神が目覚めた今、微かな望みは出来たのかも知れん・・・」
羅蛇の言葉に頷くスワン、クロウではあったが、次々に送られてくる人々を見ると、
「一体、どれほどの人々が生き残ったのか・・・自分の無力さが悔やまれるわ」
「スワン・・・それは仕方が無いスア・・・邪神が相手では・・・でも、必ずプリキュアの力は必要になるスア」
パートナーのスアロに慰められるものの、スワンは、邪神の前では何の力にもなれない自分を恥じた・・・
魔の集団は呆然とした・・・
突然の背後からの攻撃を受け、吹き飛ばされる魔の群れ、更にナーガの背後で無数の魔が切り刻まれていく。動揺が走り慌てまくる魔の群れに、三人の少女達と妖精達は身を寄せ合いながら、この状況に戸惑っていた。
何故自分達が無事なのか、彼女達は状況を把握するように周りを伺った。
「ウロボロス・・・私にはこれからやるべき事がある!みんなの事をお願い・・・三人の女神が来るまで、何とか彼女達を助けて!!」
「ウム、心得た!!」
ピンク色の髪をした少女は、名残惜しそうに少女達の方を見るも、ウロボロスに後時を託すと、その場を離れた。
何事が起こったかと振り返ったナーガ、スネークの背後に、師、辰馬の刀を借り、ウロボロスが駆けながら、魔物の群れを切り刻んで、天女達の下へと馳せ参じる。
「天女殿、かなめ殿、なみ殿、無事か?」
「ウロボロス!来てくれたのね!!」
「フフフ、拙者一人では御座らん・・・まあ、再会の楽しみは、後に取って置かれるが良い」
心強い助っ人、ウロボロスが現われた事にホッと安堵する天女、かなめ、なみ、そして、安心したのか、三人の腕の中で眠る妖精達だったが、含みを残すウロボロスの言葉に、少女達は小首を傾げた。
「ウロボロスだと?貴様、何故我らの邪魔をする!?」
ナーガが、スネークが、天女達を庇うウロボロスに対し、憎々しげな視線を送った。次々天女達に襲いかかる魔の群れを、次々斬り裂いていくウロボロスは、剣先をナーガ、スネークの二人に向けると、
「そのような情けない姿に成り果ててまで・・・貴殿ら恥を知れ!!拙者、プリキュア達と戦い、目が覚め申した!貴殿らの好きにはさせぬ!!」
「驕るなよ、ウロボロス!貴様一人で、我ら魔の集団からこいつらを守りきれると思うなよ!!」
ナーガの言葉通り、次々湧いてくる魔の集団、ウロボロスは更に気合いを込め立ち向かった・・・
「天女殿、かなめ殿、なみ殿、もうしばしの辛抱でござる!それまで、拙者が身命を掛けてお三方をお守り致す!!ハァァァ・・・居合い!閃光斬り!!」
ウロボロスは剣を一旦鞘にしまうと、気合いを込め、居合抜きを繰り出す。その凄まじい衝撃派は、前方の魔の群れを斬り裂いていくも、ナーガ、スネークはその攻撃をかいくぐり、逆にウロボロスに攻撃を仕掛ける。
「貴様ら、此奴は俺達が相手をする!貴様らは早々にプリキュア共を・・・」
スネークの言葉を受け、嬉々とした魔の集団が、再び天女達三人に迫る。
「おのれ、そうはさせん!」
戦いを中断し、救助に向かおうとするウロボロスの隙を付き、ナーガがウロボロスの身体に巻き付き、締め上げる。
「グゥォォ、おのれ、ナーガ!」
「行かせませんよ!さあ、魔の群れよ!プリキュア共を嬲り者にしてやれぇぇ!!」
だがその時、上空から真紅、黄金、エメラルドの光が、三人の少女と妖精達を包み込むと、少女達の姿が消え失せた!!
「大丈夫かい?何とか間に合ったようだねぇ・・・」
眩しい光の中、目が慣れてきた天女、かなめ、なみと三人の妖精達は、一同の側に佇む三人の神々しい美女の姿に思わず見とれていた。三人の美女達は、共に神話に出てくる八百万の神々のように、白き聖なる衣装に身を包んでいた。
真紅の長髪を靡かせる女が、一同に先ず話し掛けた。
「こうして直に会うのは初めてだったね・・・あたしは天空の女神ディオーネ!まっ、天女ちゃんをプリキュアに認めたのは、あたしって事」
「あなたが・・・ディオーネ様!?」
「そういう事・・・あらぁ、あんまりにも美しくて信じられないって表情ね?」
「いえ、そう言うわけじゃ・・・」
(どちらかと言えば、女神様っぽく無い事に驚いたんだけど・・・)
「ン!?天女ちゃん、何か言ったかしらぁ?」
キッと睨むような視線で天女を威嚇するディオーネに、天女は慌てて首を振り、言ってませんと弁明する。腕組みしながらかなめを見ていた金髪で短髪の女神は、
「あたしは、ガイア!大地の女神なり!!フッ、かなめ!あの時とは違い、大分戦士らしくなったじゃないか!!」
「あんたが、ガイア様?」
「おい、口の利き方に気をつけやがれ!仮にも女神のあたしにタメ口聞くとは・・・」
「何よ、あんただって・・・初めてあんたに話し掛けられた時、あたしはあんたにボロクソに言われたんだからねぇ・・・お相子だよ!!」
「ンだとぉコラァ!!」
ガイアに威嚇され、かなめは、天女、なみの後ろに隠れ、ガイアに舌を出す。
「か、かなめ、ガイア様に喧嘩売ってどうするチュチュ!」
(ガイア様って・・・かなめにそっくりな性格チュチュ)
慌ててかなめを宥めるチュッチは、ガイアとかなめの性格が似ている事に苦笑を浮かべるのだった。水色の長髪を嫋(たお)やかに靡かせながら、清楚な雰囲気を放つ美女が、姉達の行動に呆れたように、ハァと溜息を付くと、
「お姉様方、そのようにプリキュア達を脅してどうするのですか?皆さん、初めまして!私は、海洋の女神ティティス!なみ、今まで良く戦ってくれました!この世界の為、皆さん今までプリキュアとして辛い戦いを続けてくれてありがとうございます!!ですが、皆さんの力も及ばず、邪神八岐大蛇は完全に甦ってしまいました・・・しかも、何故かは分かりませんが、オロチは嘗て以上の強大な負の力を手に入れています。事ここに至っては、恐らく我々三人の女神の力を結集させたとしても、オロチを倒す事は不可能でしょう・・・私達と共に、あなた方プリキュア、そして神獣の力も借り、オロチを封じる以外手は無いと思います」
ティティスの言葉に、プリキュア達の心に動揺が走る。女神の力を持ってしても、最早オロチを倒すのは不可能と言う言葉に・・・
シャイニークリスタルをチラリと見た天女が、三人の女神達に話し掛けた。
「ディオーネ様!ガイア様!ティティス様!私達は、邪神と戦った際にシャイニークリスタルに亀裂が入り、今はプリキュアに変身する力が・・・」
三人は、自身の持つシャイニークリスタルを女神達に見せると、
「ありゃりゃ、これはまたこっぴどくやられたわねぇ・・・まあ、あんたらのその格好見れば、大体分かってたけどね」
少女達が一糸纏わぬ姿なのを見て、プリキュアの力を失ったのだろうとは、三人の女神にも大凡(おおよそ)見当は付いていた。ディオーネは、天女のシャイニークリスタルの亀裂を触りながらそう言うと、ガイアは妖精達を見て、
「全く、妖精のお前達の力も必要になるのに、こんなにヘトヘトになりやがって・・・でも、良く彼女達を守ってくれた!姉様、ティティス!!」
ガイアに呼ばれたディオーネ、ティティスの二人も頷くと、それぞれの妖精達に、女神達の両手から発せられる光で、包み込むように暖かな光を浴びせると、
「こ、これは、力が沸いてくるピピ」
「あんなにヘトヘトだったのに・・・」
「身体が軽いティティ」
見る見る力が溢れてくる事に、大喜びでその場ではしゃぎ回る妖精達に、天女達三人も目を細めた。三人の女神達は表情を引き締め、天女、かなめ、なみを見つめると、
「さて、これからが本番だけど・・・あんた達、あと一度だけなら、あたし達の力でプリキュアにする事は可能だけど、次に変身すれば、元に戻った時、シャイニークリスタルは消えて無くなるかも知れない・・・あたし達が一度授けたシャイニークリスタルを、同じ人物が手にする事は・・・二度と出来ない!そうなれば、あんた達はもう二度とプリキュアになる事は出来ない!!それでもプリキュアとなって、あたし達と一緒にオロチと戦ってくれるかい?」
「無理強いはしないさ!もう世界を完全に戻す事は出来ない!!」
「あなた方がお決めなさい!この世界をどうしたいのか!!」
ディオーネが、ガイアが、ティティスが、天女、かなめ、なみの返答を待つ!天女、かなめ、なみ、そして、三人の妖精達が顔を見合わせ合い頷くと、
「聞かれるまでもありません・・・私達はプリキュアとして、邪神八岐大蛇と戦います!!」
「例えこれが最後の変身になっても」
「私達は決して後悔致しません!!」
天女、かなめ、なみが、三人の女神達に決意を述べると、三人の女神達は、微笑みを一同に向けた。
「よっしゃあ、分かった!ガイア、ティティス、良いね?」
「ああ、姉様」
「私も依存ございません」
「あんた達、ラミアにプリキュアの力を分け与えた影響が出ているようだね・・・今一度、決戦前にあたし達の力を授けるよ!アース、オーシャン、あんた達にも天空の力を授けるよ・・・光の翼を、あんた達に・・・」
「あたしの大地の力を、フェニックスとオーシャンに授ける!」
「私の海洋の力を、フェニックスとアースに授けます!」
三人の女神は頷き合い目を瞑ると、女神達の姿が一瞬消え去った。突然女神の姿が消えた事に驚く一同だったが、一同の前に巨大な姿となって再び三人の女神が現われた!!
その神々しい姿に見とれていた三人の少女達と妖精達を、女神達は両手で包み込むようにすると、暖かい光のシャワーが一同に降り注ぎ、一同はその暖かさに癒される。
三人の女神の力が、フェニックス、アース、オーシャンに授かった・・・
三人のプリキュアに、天空、大地、海洋の力が加わる。
天空、大地、海洋、三人の女神の力を得、身体の底から力が漲るように三人には感じられた。
女神達は、妖精達にプリキュアの力を放つように言うと、妖精達は言われた通りに、それぞれのパートナーにプリキュアの力を照射した。
そして、亀裂が付いたシャイニークリスタルが、虹色に輝いた時、天女、かなめ、なみが手を握り合い頷くと、三人が同時に叫んだ!
「「「プリキュア!デルタフラッ~~シュ!!」」」
三人の容姿がプリキュアへと変化していく。アースとオーシャン、二人のプリキュアの背に光の翼が加わった。更にシャイニークリスタルに神獣達のシルエットが浮かび上がると、
「「「プリキュア!トライアングルフラッ~~シュ!!」」」
三人のプリキュアが神獣を纏い、再び地上へと降臨した・・・
2、魔の惑星
「天空の使者・キュアフェニックス!・・・推参!!」
「大地の使者・キュアアース!・・・参上!!」
「海洋の使者・キュアオーシャン!・・・見参!!」
「三つの心を!」
「一つに合わせ!」
「悪しき魔を討つ!」
「「「トライアングルプリキュア!」」」
三人のプリキュアと妖精達が、魔の群れに対し名乗りを上げた!
ナーガ、スネークは、初めて見る神獣を纏い、そして、三人の女神の力を得たプリキュアの姿に呆然とする。
「何だ、プリキュア共のあの姿は?」
「新たなる力に目覚めたというのか?だが、我らとてオロチ様の力を受けているのだよ!」
巻き付いていたウロボロスから離れたナーガ、スネークが、プリキュア達に迫る。解放されたウロボロスが一同に忠告する。
「お三方、気をつけなされ!オロチ様の力を受け、こ奴ら以前より強さを増して居る!!」
ウロボロスの忠告に頷いた三人は、ウロボロスに妖精達を守ってくれるよう頼むと、フェニックスはファイアーソードを取りだし、
「魔を焼き尽くせ!プリキュア!ファイアー・フェニックス!!」
フェニックスが、ファイアーソードを魔物の群れに向け投げると、剣はまるで生きているように蠢き、炎の鳥となって、魔物の群れを次々聖なる炎で浄化していった。
オーシャンも身構え腕を回転させると、
「煌めけ、激流!プリキュア!エメラルド・ウォーターウィル!」
輝きながら回転していくエメラルドの水が、魔物の群れ目掛け水圧で次々切り裂いていく。
アースは、魔物と化した為蔵の卑猥な攻撃を避けながらも、何とか元に戻そうと試み、サンダースピアを取り出すと、
「心にて、悪しき闇を突く!プリキュア!サンダースピア!!」
聖なる槍で魔物と化した為蔵を突くも、為蔵の姿が人に戻ることは無く、まるで、アースの身体に興奮したように、男根のような無数の物が蠢き、アースに白い液体を浴びせようとする。アースは素早く攻撃を躱し、哀れみの目で見つめると、
「おじさん・・・そんな身体になって・・・もう、人には戻れないんだね・・・」
涙を流すアースの側にオーシャンが近寄ると、
「アース、あなただけに辛い思いはさせない!一緒にあの方を浄化してさしあげましょう・・・」
「オーシャン・・・うん、ありがとう!」
魔と化した為蔵とはいえ、親戚の者を倒さなければならないアースの苦痛を感じたオーシャンは、少しでもアースの心労を抑えようとした。そんな、オーシャンの心がアースにも伝わってきて、互いに見つめ合い頷くと、手を取り合ったアースとオーシャンは、
「大地の力よ!」
「海洋の力よ!」
「今、二人のプリキュアと!」
「今、二つの神獣と共に!」
「「奇跡の力を解き放て!!プリキュア!シャイニングフレア!!」」
アースとオーシャンから放たれた光のエネルギー波は、魔物となった為蔵を直撃し、小規模な爆発を繰り返すと、光に包まれながら魔と化した為蔵を浄化した。アースは、オーシャンに持たれ掛け涙を流した・・・
「おのれ、プリキュア共!だがこの程度で、魔の群れは減ったりしませんよ」
「そんな事は分っているわ!先ずあなた達を滅し、オロチを・・・封印する!!」
ナーガの言葉に対し、フェニックスが啖呵を切ると、アース、オーシャンも近寄って来る。見つめ合った三人は頷き合い、
「天空の力よ」
「大地の力よ」
「海洋の力よ」
「「「天地海人・・・この星の力を借りて!プリキュア!シャイニング・ジ・アース!!」」」
三人の手から、赤、黄、青の球体が照射されると、球体は目まぐるしく回転しながら合わさっていった。巨大な球体は、ナーガ、スネークを完全に飲み込むと、二人を球体内に封じ込め、身動きを取れなくする。
「こ、これは一体!?」
「プリキュアめぇぇ・・・」
球体が小規模な地球と化した時、溢れる光が内部で輝き、ナーガ、スネークを完全に浄化した。
「な、何という聖なる力・・・プリキュア殿にまだこんな力が隠されていたとは・・・」
ウロボロスは、強さを増したナーガ、スネークを一蹴した三人のプリキュアを、眩しそうに見つめるのだった。
だが、戦いがこれで終わったわけでは無かった・・・
邪神八岐大蛇・・・
魔の根源ともいうべき、強大な敵を封じなければ、魔は次々魔空間より地上へと現われる・・・
「さあ、決戦と行こうかねぇ!!」
ディオーネの合図と共に、三人の女神の三色の球体が空へと飛び立つ、フェニックスが二人の手を握り、三人のプリキュアは女神達の後を追い、魔が支配する大空へと飛翔した。
進路に立ちはだかる魔の群れは、女神達の球体に触れると消滅し、魔の群れは慌てて球体から離れ、遠巻きに眺めるだけだった。オロチの首の一つが光の力に気付き、ギロリと金色の目を女神達、プリキュア達へと向けるも、プリキュア達に以前のような恐怖心は無かった。
「その力・・・忘れぬぞ!!我らを封印し女神共・・・永きに渡る怨み、今こそ晴らしてくれる!!」
オロチの首の一つから、強大なる負の力が黒い塊となって、女神達に向けて吐き出されるも、女神達は巧みに攻撃をかいくぐっていく。だが、外れた攻撃が地上に辺り大爆発を起こし、周囲の大地が消し飛んだ・・・
「オロチ!よくも大地を!!」
ガイアの鋭い視線がオロチに向けられる。今にも単身でオロチに突っ込みそうなガイアを、ディオーネが制すると、
「ガイア、頭を冷やしな!いくらあんたといえど、オロチ相手じゃ、一人では無理だ!!」
ガイアが熱くなったのを制止、ティティス、そして、三人のプリキュアに合図を送ると、女神達が、三人のプリキュアが、散開しながら邪神八岐大蛇に対し総攻撃を開始した・・・
「オロチ、数千年前同様、あたし達が封じて見せる!!」
「戯れ言を・・・言うな!!」
真っ先にオロチに攻撃を加えたのはガイア、両手から巨大な茨の鞭を繰り出し、オロチの首に攻撃を仕掛けるも、オロチはその攻撃をものともせず、逆にガイアに対し大きく口を開いた口内から火炎を吐き攻撃する。すかさずティティスが巨大な水柱を放ち、オロチの攻撃を無効化した。水柱を隠れ蓑に利用し、ディオーネは強烈な突風を浴びせるも、オロチの口から吐き出された巨大な火の玉と相殺する。
「やれやれ、やはりオロチは、昔以上の力を得たようだね・・・この巨大さもそうだが、たかだかオロチの首一つに手間取る何てねぇ・・・ガイア、ティティス、用心しな!」
ディオーネの言葉に頷いた二人は、左右に散り、三人の女神はオロチの出方を伺った。
一方、三人のプリキュア達に対しても、オロチは新たなる首が現われ、縦横無尽に強烈な体当たり攻撃を繰り出すと、飛ぶ事に不慣れなアースは、
「ウワァァ!こっち来るなぁぁ・・・ヨッ!」
オロチの首を足場にして、馬跳びのように躱すアース、その危なっかしい行動に、フェニックスも、オーシャンもハラハラしながらフォローする。
「アース・・・お願いだから無茶な避け方は止めて!こっちの方が心臓止まりそうになるわ」
「フェニックスの言う通りよ!でも、避けてばかりでは、何時かは遣られてしまいますわ!」
オーシャンの言葉に頷くフェニックスとアースは、
「そうね・・・でも、デルタトライアングルを破られた私達の攻撃が、オロチに対して何処まで通用するか・・・」
「やっぱ、女神様達に合流する方が先決ですかね?」
会話を続けるプリキュア達の下に、ディオーネからテレパシーが伝えられる。
「天女ちゃん達、無闇な攻撃でオロチを刺激しても、奴の攻撃が地上に当たれば深刻な状況になる。こっちに合流出来るかい?バラバラな攻撃では、今のオロチには効果は無いようだからねぇ・・・一気に仕掛けるよ!天女ちゃんはあたしの下に、アースはガイア、オーシャンはティティスの下に集まっておくれ・・・デルタトライアングル、仕掛けるよ!!」
やはり女神達も考える事は一緒であった。三人のプリキュアは頷き、それぞれの守護女神の下へと向かった。
陣形を変えた女神とプリキュアの行動に、オロチは低い唸り声を発しながらも、
「フン、女神共・・・嘗てのようにはいかんぞ!!」
女神達の行動を見切ったオロチは、数万キロはありそうなその巨大な身体を地上へと降下し始める。オロチが降臨する事に、奇声を発しながら喜ぶ地上に居る魔の群れであったが、オロチはその者共をものともせず、尚も地上へと降下していった。オロチの不可解な行動に、ディオーネも、ガイアも、首を捻るも、
「いけない!お姉様方、急いでオロチにデルタトライアングルを・・・」
「どういう事だいティティス?」
突然叫んだティティスの切羽詰まった表情に、ディオーネは思わずティティスに聞くも、
「もう、遅い!・・・女神共、貴様らの負けだ!!」
オロチはそう言葉を発すると、その巨大な身体が、地中に、海底に溶け込むように消えていった・・・
「ティティス、奴は何をしようとしてるんだ?」
少し焦れたように、ガイアはティティスに問い掛けると、顔色を変えたティティスは、
「オロチは、オロチは、地球と一体化しようと・・・」
「何だって!?馬鹿な、あたしらが守護してるんだよ?オロチといえどそう易々・・・キャァァァ」
ガイア、ティティス、そして、ディオーネがオロチの行動に付いて話し合っていた最中、女神達の様子が急変していく。三人共顔を真っ赤にし、何かに耐えるように身体を弄くり、羞恥の表情を浮かべた。
地上に大地震が起こった・・・
海に巨大な津波が起こった・・・
空に猛烈な強風が吹き荒れた・・・
三人のプリキュアは、自然の猛威に必死に耐えながら、何事が起こったのか理解出来ず呆然としていると、
「やられた・・・あんた達、この場から急いで離れな!あたし達の・・・負けだ!!オロチは、地球と同化し、この地球その者と化した!!」
「奴が地球と同化した事で、あたし達三人は、オロチに陵辱されたも同じ・・・奴の力を少しでもいいから止めない限り、あたし達は・・・」
「私達は・・・オロチに力を封じられてしまったままです!」
まるで喘ぐように、荒い呼吸を繰り返す女神達の姿は、徐々に輝きを失い、人の大きさになって悶え続ける。
目の前に、力を奪われた三人の女神という、極上な獲物が現われた事に、魔の群れは奇声を発し、興奮していた。
地球は完全なる闇に覆われ、地球の周りには、巨大な首のような八つの光が蠢いていた・・・
第十一話:女神降臨
完