第二話:スネーク最後の挑戦
1、オロチ八人衆
禍々しい気配漂う魔空間、不気味な巨大な石像の上で佇む七つの影があった。
「ほう、再びプリキュアが現われ、お前の邪魔をしたと言うのだな?」
薄暗い世界の中で、男はスネークの報告を聞き問い詰める。
「ハッ!で、ですが、油断しなければあんな小娘!!」
スネークの反論に、笑い声が聞こえてくる。顔を真っ赤にしたスネークは、激高して必ず次こそデーモンストーンを持ち帰ると宣言するのだった。
「良いだろう・・・だが、これが最後のチャンスだぞ?」
「ハッ!」
スネークは、悲壮な表情で誓うと姿を消した。
「魔蛇月(まじゃつき)様、宜しいのですか?スネークなどにお任せして!?」
女の声が、スネークに指示を出していた、魔蛇月と呼ばれた人物に確認を取ると、魔蛇月は、どうせ最後だ!好きにさせろと、含み笑いを浮かべるのだった・・・
キュアフェニックス誕生の夜、柳生邸・・・
ピッピは天女に頼み込み、何とかオウムとして柳生家で飼って貰える事にはなったものの、天女の部屋では、必ず鳥籠に入るよう念を押され、渋々同意していた。
(でも、よくピッピがくつろげる程、大きな鳥籠が家にあったわね?)
天女がオウムを飼いたいと、恐る恐る祖父と母に伺ってみると、意外にも二人とも即断でOKをしてくれた。
(お母様が若い頃に、鳥を飼ってた時に使っていたそうだけど・・・)
天女が鳥籠を見ると、ピッピは気に入ったようで寛いでいた。
天女の部屋は、年頃の娘の部屋とはとても思えない程殺風景だった。和室の8畳部屋で、勉強机と洋服ダンス、机の横に立て掛けてある竹刀と木刀、そして、ピッピが入っている鳥籠が置いてあるだけで、その鳥籠の中で、天空の神殿の関係者に報告するピッピの姿があった。
「な、何じゃと!?新たなるプリキュアが誕生したじゃと?う~む、オロチ八人衆め、再び行動を開始しおったか・・・だが、3年前に下界の様子を見に行かせた、お前の先輩にあたるカァクの奴からは、一向にそんな報告はなかったのだが・・・奴め、今頃何処で何をしておるのやら・・・それでピッピよ、新たなるプリキュアの名は?・・・柳生天女?キュアフェニックスじゃとぉ!?」
ピッピは、自身が身に付けている万能アイテム、丸いレンズ形のクリスタルフィオーレで、天空の長老とコンタクトを取っていた。報告を聞いた長老は、困惑したようにしていたが、ピッピは気にせず報告を続けた。
「ウ~ム、柳生じゃとぉぉ!?いや、今はこっちの方が重要か・・・キュアフェニックスが今の時代に誕生するとは・・・よいか、ピッピ!フェニックスとは、我らが女神、ディオーネ様を守護してきた神獣、その名を受け継ぐプリキュアが現われたという事は、世界に嘗て無い危機が迫る前触れかも知れん・・・わしの方から、大地、海洋、それぞれの長老に連絡しておく・・・今後も気をつけて行動するようにな!!」
長老は慌てているようで、向こうから通信を切っていた。顔を見合わせた天女とピッピは、互いに首を傾げながら、
「どういう事?世界に嘗て無い危機が迫る前触れって・・・」
「ピッピにも分からないピピ・・・」
天女、ピッピも、これから起こりうる危機と言う言葉を聞き、身が引き締まる思いで居るのだった。
「くそ、あいつら馬鹿にしやがって・・・見てやがれ、必ずデーモンストーンを手に入れて、あいつらを見返してやる!」
夜中になって、再び文武町に姿を見せたスネークは、歯軋りして先程受けた屈辱を思い返していた。そこに突然次元に亀裂が入り、姿を現わした二人組が居た。
「フフフ、ご機嫌斜めのようだな、スネークよ!」
「これは、羅蛇(らじゃ)様・・・あなたも俺を笑いに?」
羅蛇と呼ばれた銀髪の男と、その側に付き従う黒髪の少女の姿があった。少女は、何処か天女に似た面影を持っていた。
羅蛇は含み笑いを浮かべたまま、スネークにあるアイテムを手渡した。腕時計のような形をしているが、画面上には何も映っては居なかった。スネークは、受け取りながらも小首を傾げ、
「羅蛇様、これは?」
「これか?これはデーモンストーンに反応する特別なアイテム、デーモンディテクション!まだ試作段階だが、効果は俺が保証する・・・これがあれば、デーモンストーンの探索に役立つ事だろう・・・これを持って行け!!」
スネークの表情が、見る見る明るくなっていく、自分はまだ見捨てられた訳ではないと、
「ら、羅蛇様、ありがとうございます!オロチ八人衆の中でも、魔蛇月様と並び称され、二神と称えられる羅蛇様に、このような事をして頂けるとは・・・必ずデーモンストーンを持ち帰ります!!」
「うむ・・・よいか、この街の何処かに、封印の祠はある。デーモンストーンは、天空、大地、海洋の神殿に保管されている3つ以外、この街から離れる事は無い!この街の何処かに必ずある筈だ・・・行け!!」
スネークは、畏まって一礼すると姿を消した。羅蛇は、側に居る黒髪のポニーテール少女と、少女の肩に乗っている、人の頭程の丸々したカラスのよう物体を見つめると、
「さて、スネークが何処までやれるか、見届けてやるか・・・行くぞ、天満(てんま)」
天満と呼ばれた少女は、羅蛇と共にその姿を消した・・・
2、デーモンストーンと少女
翌朝になって、スネークは朝早くから行動を開始した。羅蛇から貰った、デーモンディテクションの効果を試す為でもあった。スネークが腕時計形のデーモンディテクションを見ると、微かな反応が一つ動いていた。スネークの表情が見る見る喜びに満ちる。
「おお、早速反応があるとは、付いているぜ!羅蛇様、ありがとうございます!!」
スネークは、反応がある場所へと急ぎ、空を駆けた・・・
スネークが反応のあった場所に近づくと、デーモンディテクションは素早く点滅を始め、警戒音が鳴り出した。辺りを見回したスネークは、武道学園の制服を着た、茶髪でショートカットの少女を目に止めた。
(あいつか?)
口元に笑みを浮かべたスネークが、少女の前に舞い降りると、少女は突然空から降りてきたスネークを見て驚きの声を上げた。
「な、何よ、あんたは?・・・アッ、ち、痴漢ね!・・・お巡りさ~ん、此処にうら若き女の子を襲おうとしてる、変な人が居まぁす!!」
スネークを見て痴漢と大騒ぎを起こす少女に、一瞬怯んだスネークだったが、少女の騒ぎ声で、集まってきた近所の人々を威嚇すると、
「チッ、小娘如きに振り回されてたまるか・・・魔の結界、魔空間・・・召喚!!」
スネークの言葉の後、不気味に空間が歪み、嘗てのように、生き物も、機械も停止した。
「な、何!?何でみんな動かないの?・・・分かった、ドッキリね!カメラ何処?」
動じない少女に、思わずスネークは唖然とする。
(何なんだ、この女は?余程の馬鹿なのか!?しかし、何故この女も、あいつ同様に魔空間で動けるのだ?)
疑問が沸くスネークだったが、直ぐに我に返り、スネークは少女に手を出し、渡せと迫るも、少女はスネークを変質者でも見る表情で見つめると、
「あんたさ・・・いくらあたしが可愛いからって、下着を渡せって言われて・・・渡すか、変態!!」
「違う!お前の下着などいるか!!俺が欲しいのは・・・」
「下着じゃないなら・・・ハッ!?制服ね!!」
「貴様、ふざけてるのか?そんな物俺が着るか!!俺が欲しいのは、貴様が持っている、デーモンストーンの事だ!!」
会話が噛み合わない少女とのやり取りに、イライラしたスネークは、ようやく要件を切り出すも、少女は小首を傾げ、そんな物知らないと答える。
「惚けるな!貴様から反応が出ているのは確かだ・・・ならば、力尽くでも頂くまでだ!!」
スネークの表情が一気に豹変する。目は更に吊り上がり、金色に輝き、陰湿な表情を浮かべると、少女も先程までの余裕が消え、思わず後退り、逃げようとする。逃がすまいとしたスネークは、少女に向けて衝撃派を放つと、少女が吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。その衝撃で少女の胸元がはだけた時、スネークは、少女が首から掛けていたゴルフボールぐらいの茶色の球体を目に止めた。
(見付けた・・・遂に見付けたぞ!!)
口元に笑みを浮かべたスネークは、ゆっくり少女に近づくと、少女の胸元に手を入れ、嫌がる少女から、遂にデーモンストーンを奪い取った。
「返して!返してよ!!それはあんたの捜してるような物じゃないんだから・・・お願い、返して!それはあたしが子供の時に亡くなった、両親の唯一の形見何だから・・・お願い、返してぇぇ!!」
先程の強気な態度は消え失せ、半ばスネークに哀願するように返してと頼む少女の心は、悲しみと怒りに満ちていた。
「ほう・・・これは利用出来そうだ・・・貴様の心と身体、頂くぞ!!魔よ、この印に宿り、全てを破壊せよ!!目覚めよ!マケンナー!!」
前に総司をマケンナーに変えたように、少女の身体に消えていったお札のような物体は、少女の身体を怪物へと変化させていく、少女は、二足歩行の猫形のマケンナーへと変えられた。
「さあ、出てこいプリキュアよ!昨日の借りを倍にして返してやる!!」
遂にデーモンストーンを手に入れ、自信に満ち溢れているスネークが、マケンナーを駆使し、プリキュアへの報復に動き出した。
3、フェニックス、荒ぶる力の目覚め!!
柳生道場にて、朝の鍛錬を終えた天女は、食事も終え、学校へ出掛ける準備をしていた。天女は、ピッピのスケベさを嫌い、着替える時には鳥籠事、部屋の外へ追い出すのだった。
「天女、鳥籠に入ってるんだから、中に入れてくれても良いピピ」
「嫌よ!あなたの嫌らしいその視線に、私が気付かないと思ってるの?」
ドア越しにピッピの頼みを断る天女、ピッピの騒ぎ声を聞き付け、天女の母、天音が部屋の前にやって来る。
柳生天音(やぎゅうあまね)・・・
天女の母で柳生道場の師範代、学生時代にはその美貌と強さで美少女剣士と騒ぎになった事もあった。現在もその実力は健在で、天女の祖父辰馬を上回ると噂される。
天音は肩まで伸びたボブカットの黒髪で、35歳とはとても思えない若々しさをもち、天女と共に外出した時など、姉妹と間違われる程だった。
「あらあら、オウムちゃんは何を騒いでいるのかしら?」
しゃがみ込み、鳥籠をチョンと指で突っつきピッピをあやす天音、ピッピの目からは天音の豊満な胸の谷間が覗け、思わず涎を垂らしながら興奮するピッピ、ピッピの異変を感じたのか、天女は着替えを終え部屋のドアを開けて、天音、ピッピ、相互を見ると、目を点にしながらも鳥籠を掴み上げ、激しく揺らしながら、
「お、お母様、何でも無いんです・・・さあピッピ、部屋に・・・戻りましょうねぇぇ!!」
引き攣った笑顔を天音に向けて言うも、ピッピを見る視線には、鋭い眼光を放った。ドアを閉めた後、ピッピのゴメンなさいという哀れみの声が、部屋の中から響き渡り、
「天女、オウムちゃんを虐めちゃ駄目よ・・・ウフフ」
(懐かしいわね・・・あのオウムを見ると、あの子を思い出すわ・・・)
天音は、昔の事を思い出しクスリと笑うと、部屋の前から立ち去った・・・
「全く、あなたは私だけじゃ無く、お母様にまで・・・恥を知りなさい、恥を!!」
険しい表情でピッピを睨み付けながら叱る天女に、ピッピは申し訳なそうにペコペコ頭を下げ続ける。
「ウ~・・・魅力的なおっぱいに、つい目が・・・」
突然言葉を止め、まるで何かを探るようなピッピの姿に、天女の表情も今以上に険しく変わる。
「ピッピ、どうしたの?まさか!?」
「そのまさかピピ!天女、オロチ八人衆が、またマケンナーを召喚したピピ!!」
天女は頷き、ピッピを鳥籠から出すと、大急ぎで家を出て、悪しき気配のする場所へと駆けて行った・・・
少女に取り憑いたマケンナーは、武道学園近くで暴れ回っていた。空中に浮かび、手に入れた茶のデーモンストーンを手に、満足そうにニヤリとするスネーク、
その時・・・
「お止めなさい!!」
燐とした声が響き、息を切らせながら天女とピッピが到着する。ピッピは首から掛けている万能アイテム、クリスタルフィオーレで猫形のマケンナーを見ると、少女が苦しむ姿が映る。
「天女、マケンナーにされたのは、天女の学校の子ピピ」
天女もクリスタルフィオーレを覗くと、確かに苦しむ女の子の姿が見えていた。
「この娘は確か・・・中等部二年で、陸上部の大地さん!待ってて、今助けてあげるから!!」
マケンナーを哀れみの視線で見つめる天女に、上空からスネークが声を掛ける。
「フン、ようやく現われたかプリキュア!だが、遅かったな・・・デーモンストーンは確かに頂いた!!」
先程少女から奪い取った茶色のデーモンストーンを、天女に見せつけるようにして嘲笑するスネーク、
「あれが、デーモンストーン・・・想像していたよりも小さいのね・・・でも、取り返してみせる!ピッピ!!」
天女に呼ばれたピッピは頷き、クリスタルフィオーレからプリキュアの力を照射して、天女の持つシャイニークリスタルが、それを吸収していく。シャイニークリスタルが虹色に輝いた時、天女が叫ぶ、
「プリキュア!デルタフラ~~ッシュ!!」
三角形の虹色の光に包まれた天女は、衣服を何も身に付けていない感覚を覚えるも、心から湧いてくる熱き思いが、天女の身体を包んでいく。胸の中心部にシャイニークリスタルが装着され、真紅に身体が染まった時、天女の身体を赤っぽい衣装が覆っていく。長い黒髪は赤く変化し、髪は束ねられポニーテールへと変化していった。
「天空の使者・キュアフェニックス!・・・推参!!」
名乗りを終えたフェニックスが、ポーズを決めた。
スネークからの指示通り、猫形のマケンナーは俊敏な動きを見せるも、フェニックスは鋭い視線でマケンナーを見ると、マケンナーの攻撃を華麗に躱し続ける。攻撃が当たらず焦るマケンナーの隙を突き、フェニックスは、マケンナーの右腕を掴み、投げ飛ばすと、マケンナーは空中でクルクル回転して着地し、攻撃を軽減する。突進したマケンナーが、怒濤のパンチを繰り出すも、フェニックスは楽々攻撃を受け流し、動きが鈍ってきたマケンナーを見たフェニックスは、
「フェニックスの名に於いて・・・この手に宿せ!ファイアーソード!!」
フェニックスの手の上に、火が点ったかと思うと、それが見る見る剣の形へと姿を変えた。剣を軽くピュッと振ったフェニックスは、
「心にて、悪しき闇を斬る・・・プリキュア!フレイムブレイド!!」
嘗てのように、炎の剣を両手で構えると、一気にマケンナーに突進し、一刀両断する。少女に宿っていた魔は消滅し、徐々に元の少女の姿へと戻っていく。
少女を介抱していたフェニックスは、少女が泣きながら譫言のように、スネークに奪われた、両親の形見である、石を返してと呟き続けているのを聞き、胸を痛める。
少女を優しくその場に横に寝かせ、立ち上がったフェニックスは、スネークをキッと睨み付けると、
「返しなさい!その石は、この娘の大切な物なの・・・あなたにそれを奪う権利は無いわ!!」
「ふざけるな!デーモンストーンは、我々が持ってこそ価値があるのだ!!そんな、軟弱な小娘が持つ意味など無い!!欲しければ、実力で・・・奪い取って見ろ!!!」
スネークの目が再び怪しく金色に輝くと、フェニックスに向けて無数のエネルギー弾を放つ、最初こそ素手で払いのけ続けたフェニックスだったが、徐々に勢いを増すスネークの攻撃に、少し焦りが生じる。
(こんな攻撃、避けるのは容易いけど・・・今は)
避ければ側に居る少女に当たるとも限らない、迂闊な行動は出来無かった。
横たわる少女をチラリと見たフェニックスは、両手を羽ばたかせ、無数の羽を周りに散りばめると、
「舞え!聖なる羽根よ!!プリキュア!ファイアーガード!!」
無数の羽に火が点り、炎のバリアとなってスネークの攻撃を遮断した。動揺したスネークの隙を見逃さず、フェニックスは背に生える小さき翼を広げ、空中に上昇すると、スネークに肉弾戦を仕掛ける。
「彼女の大事な物を奪い、更には嘲りの言葉を掛けるなんて・・・望み通り、実力で奪い取ってあげるわ!!」
キッとスネークを睨み、拳をギュッと握ったフェニックスに変化が生じた。
まるでスネークと同じように、両目が金色に輝くと、フェニックスは怒濤のパンチを連打でスネークに浴びせる。気合いを込めた強力な右アッパーを受けて、スネークは更に上空に吹き飛ばされる。狼狽えるスネークを、口元に笑みを浮かべたフェニックスが、人差し指で掛かって来いと挑発を浴びせる。激高したスネークが攻撃を仕掛けるも、フェニックスは楽々スネークの攻撃を右手で捌き、強烈な右蹴りで吹き飛ばす、
(な、何て強さだ!?デーモンストーンは手に入れたんだ・・・一先ず引くか)
時空に歪みが生じ、撤退しようとするスネークを、雄叫びを上げたフェニックスが追う、フェニックスの翼に炎が点ると、炎の翼はスネークを切り裂き、スネークが悲鳴を上げながら地上に落下していくのを見て、口元に笑みを浮かべるフェニックス、
(フェニックスは・・・天女は一体どうしちゃったピピ?)
何処かスネークをいたぶることに、狂喜しているように見える様子に、ピッピは狼狽するのだった。
地上に降りたフェニックスは、苦痛に歪むスネークに近づくと、その頭を踏みつけてニヤリと笑む、
「フェニックス!いや・・・天女、もう止めるピピ!勝負は決したピピ!!」
羽ばたきながら近づくピッピを、睨み付けたフェニックスの目は、次なる獲物を探るようだった。必死に天女の名前を何度も呼び続けると、次第にフェニックスの瞳は、元の赤き瞳の輝きを取り戻す。
「ピ・・・ピッピ!?私・・・エッ!?」
スネークの頭を踏んづけているのに気付き、慌てて足を退けるフェニックス、解放されたスネークは、口から血を吐き、掠れる目でフェニックスを見ると、
(さっきとは・・・まるで別人のようだ!?さっきの此奴は、まるで・・・)
再び血を吐くスネークを、狼狽えながらも、フェニックスが介抱しようとする手を、スネークが払いのける。
「哀れみは受けん・・・例え俺が死んでも、デーモンストーンは・・・渡さんぞ!!」
最後の力を振り絞ったかのように、上空高くデーモンストーンを投げるスネーク、その上空で、デーモンストーンをキャッチした者が居た!
天満を連れた羅蛇である。
「羅蛇様、申し訳ありません・・・せめて、せめて、デーモンストーンだけでも」
「ああ、お前の忠義、必ず皆に伝える!!永久に眠れ・・・スネークよ!!」
羅蛇の言葉に、安らぎの笑みを浮かべながら、スネークは徐々に消滅していった。
(天女の奴、魔の力に目覚めつつあるな・・・)
羅蛇は、天女を何処か懐かしそうに見つめると、天満を伴い、時空の狭間に消えた。自分がしでかした事に戸惑い、戦意を失っていたフェニックスは、呆然と二人が立ち去るのを見送り、唇を噛んだ。
(取り返せなかった!私の・・・負けだわ・・・)
変身を解いた天女は、横たわる少女を見つめ、心の底から詫びるのだった・・・
スネークが倒され、魔空間から解放された町は、再び時が動き出す。天女は少女を優しく起こすと、少女はハッと我に返り、辺りを見回すと、胸元に手を入れ、両親の形見が奪われた現実を思い出す。
「無い、やっぱり・・・無い!そんなぁぁ!?」
大泣きする少女を優しく抱きしめ、天女も共に涙を流すのだった。
「あら、大地さんじゃない!?こんな所で泣いてる何て、どうか致して?」
話し掛けてきた青い長髪に、白のカチューシャを付けた少女を見ると、茶髪の少女は不味いところを見られたと言った表情で、慌てて涙を拭うと、
「あんたには関係ないでしょう?さっさと学校に行けば良いじゃん」
「そう、それではお言葉に甘えまして・・・柳生先輩、おはようございます!」
天女に深々お辞儀をして、少女はその場を去って行った。その後ろ姿に、茶髪の少女は、アカンベェをするのだった。二人のやり取りに、天女は呆然としていた。
「本当に嫌みっぽい奴・・・あっ、先輩ゴメンナサイ!まだ、名前言ってなかったですよね?あたしは、大地かなめです!かなめって呼んで下さい!!」
「エッ!?かなめ・・・さん?私は、柳生天女よ・・・よろしくね!!ところで、さっきの子は?」
「ああ、海堂さんの事ですか?名前は海堂なみ、海堂コンツェルンのお嬢様・・・って奴です!」
かなめの話を聞いた天女も、海堂コンツェルンの噂は耳にしていた。名だたる財閥で、日本の企業の中枢を担う企業だと・・・
「あたしは、ああいうお嬢様って奴を見ると、虫酸が走るんですよね・・・嫌なところ見られちゃったなぁ・・・」
泣いている所をなみに見られて、困惑の表情を見せるかなめだった。天女は自分にも責任があると感じ、放課後にかなめを餡庵に誘うと、かなめは大喜びで同意した。
放課後、部活動を終えた二人は、待ち合わせて、餡庵でデザートを食べ、かなめに御馳走した天女だったが、天女の奢りと分かると、かなめは遠慮せずに食べまくり、小柄な身体の何処に、こんなに食べ物が入るのかしらと、天女を唖然とさせる。財布の中身が心許なくなった天女は、店の主で、総司の母美里に頼み、サービスして貰うのだった・・・
「ハァ、お財布の中が・・・かなめさんって、意外に良く食べるのね?」
「まあ、元気娘って感じピピ」
「でも、元気を取り戻してくれて良かったわ!ねえ、ピッピ・・・あの時、私どうしちゃったんだろう?自分でも覚えてないの・・・」
家に戻り、ピッピと自分の部屋で会話した天女は、朝の戦いを思い出し、モヤモヤした気持ちになっていた。
「感情が高ぶっただけピピ!心配要らないピピ!!」
天女にそうは言いながらも、底知れぬ不安を覚えるピッピであった。
第二話:スネーク最後の挑戦
完