第三話:新たなる脅威
1、驚愕、アナコンダ登場!
魔空間、スネークを失ったものの、デーモンストーンを手に入れた事で、オロチ集は活気づいていた。
「フン、やられはしたが、スネークにしては上出来だな!」
魔蛇月は、羅蛇から渡されたデーモンストーンを手に取り、満足そうに弄り回していた。
「そう言ってやるな・・・奴は奴なりに成果を上げたのだ」
羅蛇はスネークの行為を褒め、魔蛇月を窘めた。
「次・・・俺が行く!!」
二メートルを超える、体格のいいスキンヘッドの大男、黒き衣装に身を包んだこの男、何処で手に入れたのか、サングラスを掛けた姿は、殺し屋を連想させる。
「ほう、アナコンダ・・・お前が行くか?良いだろう!プリキュアの抹殺、及びデーモンストーンの回収を命ずる!行け!!」
魔蛇月の指示に無言で頷き、アナコンダは、天女の住む文武町へ向かい姿を消した・・・
スネークを倒してから、一週間が過ぎた・・・
この街に来ている筈のアナコンダは、何故か襲って来ず、平穏な日が続いていた。
そんなある日・・・
「オッス!天女!!」
「あっ、総司!おはよう!!」
通学途中の天女は、幼馴染みの総司と出会い、一緒に歩き出す。まだ、スネークと戦った時の出来事を引きずっては居たものの、普段通りに過ごす天女だった。
「もうすぐ、ゴールデンウィークだけど、お前、やっぱ剣道部で忙しいんだろうな?」
「そうね・・・出来れば試合も近いし、新入部員の実力も知っておきたいしね・・・そうなるでしょうね!」
ゴールデンウィークに、空手の試合がある総司は、天女に応援に来て貰いたくて、さり気なく天女の予定を聞いて見るものの、忙しそうな天女の言葉を聞き、少しガッカリする。
剣道部の話をしている天女と総司の背後から、
「おっはようございま~~す!!天女先輩!!」
元気よく挨拶して現われたかなめに、苦笑しながらも天女は挨拶を返す。天女と総司を交互に見つめると、意味深な笑みを浮かべたかなめは、
「もう、天女先輩ったら、朝っぱらから見せつけてくれちゃってぇ・・・お邪魔虫は消えますね!!」
「ち、違うわよ!?総司とは幼馴染みってだけで・・・ねえ、総司?」
「お、おう・・・」
複雑な表情を浮かべながらも同意する総司、かなめは口元に右手を置くと、笑いを堪えた表情をする。顔を赤くした天女は、かなめにからかわないでと苦笑を浮かべながら言うのだった。三人で歩いていた天女達だったが、不意にかなめの顔がしかめ面になる。
「どうしたの、かなめちゃん?」
首を傾げながらかなめに聞いた天女に、
「いえ、コンビニに海堂さんが居たもんで・・・ハァ、朝から見たくない顔に・・・あれ?」
かなめはコンビニになみが居るのを見掛け、不機嫌になったのだが、そのコンビニの中で、なみは体格良いスキンヘッドの大男と、何やら会話しているようだった。お嬢様のなみとは、共通点が見つからなかったが、かなめは、どうせボディーガードか何かだろうと舌を出す。
「でも、確かに変ね?ボディーガードにしては、漫画読んでいるようだし・・・」
「まあ、コンビニで誘拐される事もまず無いからな・・・気にしすぎじゃねぇ?」
少し気になった天女だったが、総司の言葉にも一理あったため、三人でその場を後にした。
「おい、あの客・・・少女漫画読んで号泣してるぞ」
「あ、ああ・・・でも、笑って見ろ・・・あの体格で暴れられたら、俺達殺されるぞ!!」
コンビニの客や従業員のヒソヒソ話しを気に止めず、オロチ八人衆が一人アナコンダは、コンビニで一心不乱に少女漫画を読んで泣いていた。人目も憚らず大きな声で号泣するアナコンダ、周りの者は関わり合いになるまいと、見て見ぬ振りをしていたのだが、
「あのぅ・・・あまり長時間立ち読みなさっては、それに、大声出されるとお店の方にご迷惑ですよ!」
そんななみの言葉に、レジに居た店員二人は、引き攣った顔で激しく首を横に振っていた。
普段、コンビニなどで買い物する事は無いなみだったが、この日はクラスで話題になっていた、このコンビニ系列の特選ロールケーキが気になり、買いに来た所でアナコンダと遭遇してしまった。
「何、お前?俺、迷惑!?じゃあ、迷惑ならないようにする・・・ウ~~ガ!!」
良いところで邪魔され、少し不機嫌そうにしたアナコンダは、雄叫びを上げると、コンビニの店員や客、外の人達や車までもが停止した。アナコンダが魔空間を召喚したのである。
辺りを見回したなみは、自分と、目の前の大男以外、人や物が動かなくなった事に驚愕していた。
「これは・・・どういう事なの?」
「お前・・・何故この空間で動ける?」
なみが、何事もないように動いていることに、首を捻って考え込むアナコンダだったが、考えが浮かばずイライラし出すと、
「お前、俺の邪魔した・・・マケンナーになって反省しろ!!」
アナコンダの目が金色に輝き、読んでいた少女漫画に魔を召喚し、思わぬ出来事に後退たなみに、少女漫画を埋め込むと、なみの身体が本のマケンナーへと変貌していった。
再び時が止まった!
学校に向かっていた天女とかなめ以外が止まる。嘗てと同じ出来事に、トラウマが甦ったのか、かなめは激しく動揺して天女に縋り付く、
「て、天女さん、あたし達以外動いて無いよ・・・あの時と同じ、あたし・・・嫌だよ!!」
「大丈夫よ、かなめちゃん!でも、此処に居たら何があるか分からない・・・かなめちゃんは陸上部でしょう?学校まで急いで避難していて!私も直ぐ後を追うから!!」
天女の言葉に、不安そうに何か言おうとしたかなめだったが、自分の頬をピシャンと叩き、気合いを入れると、天女に直ぐ来て下さいよと言葉を掛け駆け出した。それを見送った天女が、かばんを開けると、中からピッピが飛び出してくる。
「天女、マケンナーが出たピピ!あっちピピ!!」
天女はピッピの言葉に頷き、元来た道を引き返すのだった。
2、大地の妖精と海洋の妖精
マケンナーとなったなみは、コンビニの入り口を突き破り、辺りを徘徊しだすも、アナコンダは再び少女漫画を読み始めていた。
「あれが噂に聞くマケンナーチュチュ?」
「そうみたいティティ!でも、あのマケンナーにされた娘・・・気になるティティ」
物陰から、この様子を隠れながら見ていた者達が居た。
大地の神殿からやって来た、人の頭程のネズミのような妖精チュッチと、海洋の神殿からやって来た、ペンギンのような妖精ティティである。
二人は、天空の長老からの要請で、大地、海洋、両長老より、この世界の様子を調べに派遣されていた。先ずは天空の妖精と、天空のプリキュアに会うべく、文武町にやって来た所、この場面に出くわした。
「チュッチ、あなたは天空の妖精を捜すティティ!私は、あのマケンナーを追ってみるティティ!」
「分かったチュチュ・・・気をつけるチュチュ」
チュッチが駆け出そうとした時、マケンナーの前に立ち塞がった少女が現われ、二人の妖精は思わず顔を見合わせた。
「ひょっとして・・・あの娘が天空のプリキュアチュチュ!?」
「魔空間で動き回っている所を見ると・・・きっとそうティティ」
二人の視線が天女に注がれた。
ピッピから渡されたクリスタルフィオーレで、マケンナーを見た天女は、なみがマケンナーに変えられた事を知る。
「海堂さん!でも、何時ものマケンナーと違うわね!?」
「マケンナーは、それを操る者によって姿が変わるそうピピ・・・今回の敵は、物に変える奴なのかも知れないピピ」
「じゃあ、新たなる敵が現われたって事ね?その割には姿が見えないけど・・・」
辺りを見回し、マケンナー以外の敵が居ないことに訝る天女だったが、
「ピッピ、今は海堂さんを元に戻すのが先ね・・・変身よ!!」
ピッピが頷き、クリスタルフィオーレからプリキュアの力を照射して、天女の持つシャイニークリスタルがそれを吸収していく。シャイニークリスタルが虹色に輝いた時、天女が叫ぶ、
「プリキュア!デルタフラ~~ッシュ!!」
三角形の虹色の光に包まれた天女は、衣服を何も身に付けていない感覚を覚えるも、心から湧いてくる熱き思いが天女の身体を包んでいく。胸の中心部にシャイニークリスタルが装着され、真紅に身体が染まった時、天女の身体を赤っぽい衣装が覆っていく。長い黒髪は赤く変化し、髪は束ねられポニーテールへと変化していった。
「天空の使者・キュアフェニックス!・・・推参!!」
名乗りを終えたフェニックスが、ポーズを決めた。
「やっぱり、あの娘が天空のプリキュアだったティティ」
「じゃあ、あの間抜けそうなのが、天空の妖精チュチュ?」
マケンナーとの戦いを始めたフェニックスを応援していたピッピも、二人の妖精に気付いたようで近づいた。
「君達ひょっとして、大地と海洋の妖精ピピ?」
「そうティティ!会えて良かったティティ・・・私は海洋の妖精ティティ!」
「おいらは、大地の妖精チュッチ!」
対面を果した三匹の妖精が自己紹介を終え、和やかに会話する。
マケンナーが、がむしゃらに投げてくる本の群れを片手で捌き、フェニックスがマケンナーに近づき、マケンナーの腕を取り宙に浮かべると、空中にジャンプしたフェニックスがオーバーヘッドキックで蹴り飛ばす、チラリとフェニックスのスリットから魅惑的な太股が見え、妖精達は思わず感嘆の声を上げた。
着地したフェニックスは直ぐに体勢を整え、
「フェニックスの名に於いて・・・この手に宿せ!ファイアーソード!!」
フェニックスの手の上に火が点ったかと思うと、それが見る見る剣の形へと姿を変えた。剣を軽くピュッと振ったフェニックスは、
「心にて、悪しき闇を斬る!プリキュア!フレイムブレイド!!」
一気にマケンナーに突進し、一刀両断する。なみに宿っていた魔は消滅し、徐々に元のなみの姿へと戻っていく。
「あれが天空のプリキュア・・・あんなに強いチュチュ?」
フェニックスの強さを目の辺りにして、大喜びする妖精達だったが、ゆっくり近づいて来る巨大な人影にビビリ出す。少女漫画を読み終えたアナコンダが、ようやくやって来た。それをキッと見つめるフェニックス、見つめ合った両者だったが・・・
「あれ、マケンナー居ない!?お前、倒したのか?・・・ところで、お前のその服・・・良いな!!俺、欲しい!!!」
突然アナコンダにプリキュアの衣装を褒められ、欲しいと言われたフェニックスは、思わず目が点になった。三人の妖精達も口をアングリ開けて呆然とする。
「あ、あなた、何を言っているの?この服を欲しいって言われても・・・大体、あなたにこの服が着れる訳無いじゃない!」
フェニックスにこの服は着れないと言われ、首を傾げるアナコンダに、
(何なの、この敵は?・・・もう、帰りたい・・・)
思わず溜息を付くフェニックス、突然力を込めたアナコンダは、着ていた黒い繋ぎ服の上半身を弾き切らし、上半身裸の姿で自慢の筋肉でポーズを取り、フェニックスに披露する。
「あ、あのぅ・・・もう、帰っても良いかしら?」
「フェニックス、何言ってるピピ!敵はまだ目の前に居るピピ」
思わず呆れ果て、もう帰っていいかアナコンダに問うフェニックスに、ピッピが突っ込みを入れると、
「だって・・・戦いたくないもの」
「気持ちは分かるけど・・・敵が撤退するまで駄目ピピ」
ピッピに駄目だしをくらい、渋々ながらアナコンダを見るフェニックス、今にも下半身まで脱ぎそうなアナコンダを慌てて止めるフェニックスは、
「ちょと、それ以上は止しなさい・・・似たような衣装を売っているお店教えるから・・・ネ?」
子供に言い聞かせるように、アナコンダを窘めるフェニックスだったが、アナコンダは首を傾げる。思わず溜息を付いたフェニックスの側で、なみが目を覚ました。
「私、どうして此処で眠っていたんでしょう?あら、あなた達は!?」
フェニックス、アナコンダ、双方を見てなみの思考が著しく回転する。夢で助けてくれた人物に似ているフェニックス、自分を怪物にしたような気がするアナコンダ、
「そう・・・あなたに助けて頂いたのね!ありがとうございます!私は海堂なみと申します!!」
「エッ?あっ、ご丁寧に・・・私はキュアフェニックスです!!海堂さん、此処は危ないですから避難していて下さい!!」
なみを庇うようにフェニックスは、アナコンダに向きあうと、アナコンダの姿が消えていた。思わずホッとしながら帰ったかと思うフェニックスに、
「あのう、あの大きな人なら、あそこにいらっしゃいますけど?」
なみが指さした方角を見て、フェニックスは呆然とする。アナコンダは洋品店の前で可愛い衣装に見とれていた。
「あれも・・・欲しい!これも・・・良い!!下界は楽しいなぁ!!」
嬉しそうに服を見続けるアナコンダになみが近づいて行く。気付いたフェニックスが慌てて止めようとするも、なみは大丈夫ですからと笑顔を向ける。フェニックスは、万が一に備え、渋々ながらなみと共にアナコンダの側に移動した。
「何だ、お前!?また、俺の邪魔するか?」
アナコンダの言葉を、首を振りながら否定したなみは、
「いいえ、邪魔は致しませんわ!確かにそんな格好で出歩かれるより、お洋服を着て頂けた方がこちらも助かりますし・・・よろしければ、私があなたの衣装を選んで差し上げますわ!!」
なみの言葉に喜んだアナコンダは、なみの言葉通り魔空間を解除して元に戻す、慌ててフェニックスも変身を解除し、和やかに買い物をするなみとアナコンダを見て、
「私・・・海堂さんってわからないかも?」
呆然と立ちすくむ天女だった・・・
なみにピンクの特大ワンピースをプレゼントされ、上機嫌のアナコンダは、先程なみをマケンナーにした事を素直に詫びると去っていった。
「あら、さっきまでいらっしゃったキュアフェニックスさんの姿が見えませんわ?」
キョロキョロ辺りを見回すなみを見て、
(ハァ・・・何か朝から疲れちゃった・・・)
疲れ切った表情で、トボトボ学校に向かう天女と、チュッチ、ティティを連れ、柳生家に先に戻るピッピだった。
3、私一人で大丈夫!
奇妙な一日も終わり、天女は家に戻った。自分の部屋で、新たなる妖精である大地の妖精チュッチと、海洋の妖精ティティから自己紹介を受けた天女は、妖精達と共に今後の行動を考える。
「やはり長老達が言ってたように、オロチ八人衆が動き出した見たいティティ!さっき、海洋の長老に報告したら、天空のプリキュアと協力して、海洋の戦士を捜し出すように言われたティティ」
「おいらもそうさ、この地に止まり、大地の戦士を捜さなきゃ・・・」
「ピッピも協力するピピ」
オロチ八人衆との戦いも、今まで以上に熾烈になるだろうと考え、妖精達は新たなるプリキュアを捜し出す事を相談し合うのを、天女は複雑な表情を浮かべ聞いていた。
(確かに、大地、海洋の新たなるプリキュアが、仲間に加わってくれれば心強いわ!でも、それじゃ・・・)
心の中で決心した天女は、妖精達に真顔で向き合うと、
「みんな、聞いて!今のままで十分よ・・・20年前の天空のプリキュアも、一人で戦い続けたんでしょう?私一人で大丈夫!!」
妖精達を心配させまいと、笑顔で語る天女に、妖精達は顔を見つめ合い、複雑な表情を浮かべるのだった。
なみからプレゼントされた、ピンクのワンピースを着たアナコンダは上機嫌だった。ポーズを取り鏡を見るも、フェニックスの衣装と違うようで首を捻る。何かに気づいたアナコンダは、ワンピースを手で引き裂き、チャイナ風にすると、再び満足そうにポーズを取りだした。
その時、次元に亀裂が入り、羅蛇が姿を現わすも、思わず羅蛇はアナコンダの不気味な格好を見て驚愕する。
「な、何だ、その姿は!?まあいい・・・アナコンダよ、一週間も連絡を入れず、何をやっていた?魔蛇月の奴がイライラしていたぞ」
羅蛇に言われ、報告を怠っていたのを思い出したアナコンダは、目を点にして激しく動揺した。
「報告・・・忘れてた!!どうしよう?」
巨体の割に、何処か子供じみているアナコンダに、思わず羅蛇は笑みを浮かべると、
「まあ、いい、俺から報告しておいてやろう・・・アナコンダ、これを持って行け!!」
羅蛇は、嘗てスネークに渡したデーモンディテクションを渡すと、これでデーモンストーンを探し出して手に入れろと言うと、姿を消した。
「連絡忘れた・・・魔蛇月様に殺される・・・何とかしなきゃ」
魔蛇月の顔を思い出すと、ガタガタ巨体を震わすアナコンダは、何処かに消えた。
魔空間・・・
不気味な巨大な石像の上で沈黙する魔蛇月の前に、羅蛇が姿を現わす。
「戻ったか!」
「ああ、アナコンダは、この一週間で情報集めに追われ、連絡を怠ったそうだ・・・許してやれ!」
アナコンダをフォローする羅蛇の言葉に、魔蛇月は口元に笑みを浮かべると、
「そうか・・・だが、遅かった!奴は裏切り者として、最早切り捨てた!!今、コブラとウワバミを派遣した。お前がくれたデーモンディテクションを渡してな・・・」
「何だと!?早まった真似を・・・」
羅蛇は、背後に控える天満に目で合図を送ると、天満は無言で頷き、何処かに消えた・・・
なみの家は、やはり豪邸と呼ぶに相応しい壮観をしていた。巨大な門と塀に囲われ、まるで公園のような庭が広がり、その奥に立派な邸宅が広がっていた。
なみは、四十畳はありそうな自分の部屋で、朝に買い損なったロールケーキを、帰りがけに買って部屋で食べていた。
「中々、美味しいですわね・・・」
広い部屋の中、ポツンと一人で寛ぐなみの心は、寂しさで一杯だった。なみは、クラスの中で孤独感を味わっていた。同じクラスのかなめとは違い、学級委員もこなす程しっかり者であるなみだが、何処かクラスのみんなの態度は、余所余所しかった。
この広い自分の部屋を、訪れた友人も居ない、なみは寂しかった・・・
ロールケーキを食べながら、寂しさを紛らわせていたなみは、窓を誰かが叩いているように感じ、部屋の窓に近づくと、スキンヘッドの大男、アナコンダが窓にへばり付いていた。なみは、慌てて窓を開け、アナコンダを部屋に招き入れると、
「まあ、あなたは・・・ウフフ、早速朝のワンピースを着て頂けたのね!」
「ウガ!お前に見せたかった・・・お前、俺に協力して欲しい!!」
「協力?私に出来る事なら手伝いますけど・・・」
自分をマケンナーに変えたアナコンダと、何処か奇妙な友情を育む、なみだった。
アナコンダは、なみにデーモンストーンと呼ばれる石を捜している事を、その石が、なみの家から反応している事を教えた。なみには身に覚えは無かったが、保管庫とは別に、庭の片隅に、小さな祠のような物が祭ってあるのを思い出すと、
「もしかしたら、あそこかも知れないわ・・・差し上げても宜しいですけど、一つお願いがあるの?」
「お願い・・・何?」
「私と・・・お友達になって頂けませんか?」
少しはにかみながら、なみがアナコンダに頼んでみると、アナコンダは満面の笑みでニッコリ微笑むと、
「何だ・・・俺とお前、あの時からもう友達!!」
「ほ、本当ですか?」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべるなみは、心の底から嬉しそうだった。なみとアナコンダに奇妙な友情が生まれていた。
なみは祠にアナコンダと共に向かい、祠の鍵を開けると、その中に敬われているように置かれている、水色のデーモンストーンが祭られていた。
「これの事かしら?」
「ウガ!!」
大きく頷くアナコンダの大きな手に、デーモンストーンを渡すなみ、アナコンダは、嬉しそうにデーモンストーンを弄くっていた。
その時、邸宅の方が騒がしくなる。思わず何事が起こったのか戸惑ったなみに、
「これは・・・誰か、魔空間この場所に作った・・・」
「魔空間?」
聞き返したなみに、アナコンダは魔空間の事を教えた。なみの住むこの家に、アナコンダ以外のオロチ八人衆の何者かがやって来ているのは確かだった。
「アハハ、さあ此処にデーモンストーンがあるのは確か何だ!構わない、こんな場所破壊し尽くしても捜してみせるさね!!」
無造作になみの家の庭を破壊しだす、黒いボンテージ姿をしたスタイルの良い女、長い紫髪は、自分で意思を持っているように蠢いていた。この女の名はコブラ、金色に輝く目からは、残忍さを滲ませ、まるでデーモンストーンを捜す事より、日頃の鬱憤を晴らすように、辺り構わず攻撃を繰り出す。
「やれやれ・・・あんたにも困ったものね・・・まあ、良いわ!さっさとデーモンストーンを捜しちゃおう!!」
もう一人の女は、黄色の長い髪をツインテールにして結い、黒のメイド服のような物を着ていた。コブラとは違い、何処か幼さを残す少女のような風貌であった。
「止めてぇ~~!私の家を壊さないでぇぇ!!」
絶叫しながら二人に駆け寄るなみを、チラリと見たコブラとウワバミは、
「おい、確かこの場所は、魔空間に引きずり込んでたよな?」
「その筈だけどね?何であの娘平然と動いてるわけぇ?」
なみが、魔空間の中で平然と動いている事に、首を捻る二人だったが、なみの後ろから、巨体を揺らしながら駆けてくる、不気味なピンクのワンピース姿のアナコンダを見て、ウワバミは吹き出し、指を指して大笑いする。
「キャハハハハ!!何、あの格好?あんた、相変わらず変わった奴だねぇ」
「フン・・・貴様はあたしらオロチ八人衆の面汚しだ!捜す手間が省けた・・・その娘と共に、始末してやるよ!!」
コブラは不快そうに、鋭い視線をアナコンダに浴びせると、コブラとウワバミ、二人の毒女が、獲物を捕らえたように、なみとアナコンダを見つめる。
自分が用済みになった事を悟ったアナコンダは、二人の前に立ち塞がり、なみを庇うような行動を取る。
「ハァ?何だいそりゃ!?あんた、その娘を庇おうって言うのかい?」
「キャハハハ、あたし達二人とやろうって言うの?・・・生意気だね!!」
二人の目が金色に輝くのを見たアナコンダは、
「なみ・・・逃げろ!」
「アナコンダ・・・さん!?」
戸惑いながらも、何度も逃げろと絶叫するアナコンダの言葉に、涙を流しながらその場を離れるなみだった。
「急ぎましょう!禍々しい気がぶつかり合っている・・・」
キュアフェニックスに変身した天女は、三人の妖精達を手に抱えながら、空を飛び続ける。
悪しき魔が漂う空間を目指して・・・
目的の場所に着いたフェニックスは、なみを発見し、地上に降り話し掛けるも、なみの様子が尋常で無い事に、表情を引き締めた。
「お願い、あの人を助けてあげて!私の、私の友達何です!!あの人を!!」
なみが指さす方向を見て、フェニックスと三人の妖精達は、オロチ八人衆同士で戦い合っている、アナコンダ、コブラ、ウワバミを見て驚愕する。
「どういう事?仲間割れ!?」
「凄いおっぱいピピ・・・」
「ピッピ、何言ってるティティ?」
仲間割れをしている事に驚くフェニックスと、黒いボンテージ服からこぼれ落ちそうな爆乳のコブラの胸に驚くピッピ、思わずピッピに突っ込みを入れるティティであった。
泣きながら懇願するなみの髪を優しく撫でると、フェニックスが戦いに参戦する。
「お待ちなさい!!」
フェニックスの姿を見た三人に、戸惑いが生まれる。初めてフェニックスを見たコブラとウワバミだったが、フェニックスから発せられる威圧感に思わずたじろぐも、
「お前がプリキュアか?だが、今は裏切り者への制裁が先なんでね・・・」
(裏切り者?じゃあ、この人が海堂さんの言ってた友達!?)
オロチ八人衆を友達にしたなみに、驚愕するフェニックスだったが、コブラが、海堂家で飼われていた三匹のドーベルマン犬を、マケンナーに変えてフェニックスへと差し向けた。コブラの能力は、魔が取り憑いた本体に似せたマケンナーに変わるようで、巨大な三匹のドーベルマン形のマケンナーが、唸り声を上げながらフェニックスを威嚇する。
「こんな事で私が倒せると思って?」
フェニックスは、素早く動き回る三匹のマケンナーの動きを見切り、逆に確実にダメージを与えていく。
「思っちゃいないさ・・・でも、足止めぐらいにはなるだろう?」
コブラはニヤリと笑うと、アナコンダに強烈なボディブローを浴びせる。その強力な一撃を受け、思わずアナコンダが地面に倒れ込むと、その拍子に、持っていた水色のデーモンストーンが転がり落ちた。それを見たコブラ、ウワバミの顔が綻ぶと、
「何だい、捜す手間が省けたじゃないか!アナコンダ、あんたが持ってた何てね・・・ちゃんと任務は果たしていたのに、裏切り者にされる何て、哀れだねぇ・・・あんたの代わりに、これはちゃんとあたしが、魔蛇月様に届けておいてやるよ!!ウワバミ、後の始末は任せたよ!!」
「返してぇぇ、それは私がその方に差し上げた物なの・・・返してぇぇ!!」
なみの絶叫を嘲笑うように、コブラは次元の狭間に消えていった・・・
「クッ、目の前でみすみす・・・フェニックスの名に於いて・・・この手に宿せ!ファイアーソード!!」
フェニックスの手の上に火が点ったかと思うと、それが見る見る剣の形へと姿を変えた。剣を軽くピュッと振ったフェニックスは、
「心にて、悪しき闇を斬る!プリキュア!フレイムブレイド!!」
炎の剣を両手で構えると、三匹のマケンナーに突進し、一刀両断して元の姿に次々返す、だがその時、なみの悲鳴が木霊した・・・
「あんたにも消えて貰うよ!魔空間で自在に動ける奴など、そのままにしておけないからね・・・キャハハハ、死にな!!」
ウワバミが両手に強大な力を溜めると、なみにエネルギー波を放った。なみの悲鳴が木霊する。
「しまった!間に合わない・・・」
ファイアーソードを手に持ったまま、急ぎなみの下に駆けるフェニックスだが、ウワバミの攻撃は、フェニックスが到着するより早かった。だが、なみの前に立ち、攻撃を防いだ者達が二人居た。その身を挺して、ウワバミの攻撃を一身に受けて悲痛な咆哮をあげるアナコンダと、バリアを張ってなみを庇った海洋の妖精ティティである。
「チッ・・・邪魔なのよぉぉ!!」
更に力を加えたウワバミを、追いついたフェニックスが回転蹴りで吹き飛ばす、フェニックスの背後で、今アナコンダの命が消えようとしていた。アナコンダに縋り付き、泣きじゃくるなみの頭を撫で、
「お前・・・優しいな!お前と友達になれて・・・良かった・・・」
振り絞った声で、優しくなみを撫でたアナコンダは、徐々に消滅していった。
「オロチ八人衆にも、あんな奴が居た何て、知らなかったピピ」
「ああ、おいらも・・・」
「それだけ、彼女の優しい心が、あの男にも何かの変化を与えたティティ」
妖精達は、地面に崩れ落ちながら泣きじゃくるなみを、哀れみの視線で見つめていた。
「よ、よくも・・・よくも~~~!!!!」
泣きわめくなみの姿を見て、怒りの咆哮をしたフェニックスが雄叫びを上げると、フェニックスの両目が金色に輝く、
「な、何よ?・・・あれじゃまるで、あたし達オロチ八人衆・・・」
困惑していたウワバミの顔面に、フェニックスの強烈な右ストレートが炸裂し吹き飛ぶウワバミ、凄まじいスピードで吹き飛ばしたウワバミの左手を掴むと、右足で空中に蹴り上げ、飛び上がったフェニックスが左手でウワバミの右手を捕まえると、右手でサンドバックのようにウワバミの顔面を集中して殴り続けるフェニックス、その口元には笑みが浮かんでいた・・・
「ヒィィィィ・・や、止めぇ・・・」
戦意を喪失したウワバミを、一方的に攻撃しまくるフェニックスに、三人の妖精達も、泣きじゃくっていたなみも呆然と見つめていた。
「い、いくら何でも・・・あれは、酷すぎますわ」
なみの呟きに我に返ったピッピが、フェニックスの名を呼ぶも、フェニックスは五月蠅いとばかりに妖精達となみを睨み付けると、その禍々しい威圧感に、思わずゴクリと一同は唾を飲み込んだ。
ウワバミを更に宙に浮かべると、左肘でウワバミの顔面に駄目押しの攻撃を加えると、ウワバミは物凄い勢いで地面にめり込み、ピクピク痙攣する。その顔は血塗れで、あまりにも無残に潰れていた。
フェニックスは止めとばかりに、笑みを浮かべながらゆっくり降りてくる。
「もう、もう、止めるピピ!」
「フェニックスは、どうしちゃったティティ?」
「何がプリキュアチュチュ!これじゃ、オロチ八人衆と一緒チュチュ!!」
そんな言葉もフェニックスには届かず、尚も下降してくると、そこに次元を切り裂き、一人の少女が姿を現わした。それは、羅蛇の腹心とも呼べる天満であった。
天満は、妖精達、なみ、ピクピク痙攣するウワバミ、そしてフェニックスを見ると、
「愚かな・・・魔に飲まれたか・・・仕方が無い、カァク!!」
「カァァ!!」
カァクと呼ばれた、人の頭程の丸々したカラスに似た生き物、それを見たピッピが仰天する。
「あ、あれは、カァクピピ・・・何で行方知れずになったカァクが、あの少女と!?」
「じゃあ、あれも天空の妖精チュチュ?」
「訳が分からないティティ?」
ピッピの言葉に呆然とする妖精達・・・
何故この場所に、もう一人天空の妖精が居るのか?
あの少女は何なのか?
理解出来るものは居なかった・・・
カァクが首に駆けているクリスタルフィオーレから、虹の光が天満に向けて照射されると、天満は首に掛けていたシャイニークリスタルを取り出し、虹の光を吸収し出すと、
「そ、そんな?あの少女も、プリキュアピピ!?」
驚愕する妖精達を尻目に、天満が叫ぶ、
「プリキュア!デルタフラッシュ!!」
三角形の虹の光が天満を包んでいく、黒い黒髪が束ねられポニーテールへと変貌し、胸の中心部にシャイニークリスタルが装着され、フェニックスのようにチャイナ服のような黒き衣装が天満を包んでいく。背中から生えた黒き翼を肩まで覆い、新たなるプリキュアが姿を現わした。
「天空の使者・キュアクロウ!・・・推参!!」
「そんな、天空の使者は、フェニックスの筈じゃ・・・分けが分からないピピ?」
頭が混乱するピッピ、そんな一同にお構いなく、クロウは一気に上昇すると、フェニックスと睨み合った。先に手を出したのはフェニックス、雄叫びを上げた連続攻撃を、クロウは見切り、フェニックスの攻撃は空を切り続けた。
「あの攻撃を躱し続ける何て・・・あのプリキュアも、とんでもない強さティティ」
「敵?味方?どっちチュチュ!?」
「僕にも分からないピピ・・・」
妖精達は、キュアクロウの強さに驚きを隠せなかった。
「魔の力に暴走したお前は・・・なるほど、攻撃力だけ見れば、私を遙かに上回る・・・でも、防御が甘い!!」
逆に怒濤の連打をくらい、フェニックスが吹き飛ばされる。信じられないといった表情を浮かべたフェニックスは、雄叫びを上げ、嘗てスネークを倒した炎の翼を繰り出すと、
「そう、ではこっちもそれ相当の力で戦わせて貰う!!闇に舞え!プリキュア!シャドウウイング!!」
クロウの両目も金色に輝くものの、クロウは、フェニックスとは違い、自我を失う事は無かった。
闇の光に包まれたクロウの翼が、炎の翼と激突する。互角のぶつかり合いを続けるも、雄叫びを上げたクロウの攻撃が、フェニックスを貫き、フェニックスは錐揉みじょうに落下していった。
地面に衝突したフェニックスは、変身を解除され天女の姿に戻り、気を失った。
天女の側に集まる妖精達となみ、
「そんな、キュアフェニックスさんは・・・柳生先輩だったのですか?」
なみはプリキュアの正体を知り、呆然とするのだった・・・
「止めは刺さない・・・自分の未熟さを、反省する事ね!!」
クロウの声に、朦朧としながら天女が視線を向けると、変身を解いた天満は蔑みの目を天女に向けた。ピッピの問いかけに一切答えず、ウワバミを肩に担ぎ、次元の狭間へと消えて行った。それを見て再び天女は意識を失った。
再び時は動き出した・・・
柳生天女=キュアフェニックスは、自らの心に、キュアクロウの前に、完全敗北を喫した・・・
第三話:新たなる脅威
完