第四話:ふたりがプリキュア!?
1、嘘でしょう?
柳生天女は、悪夢に魘されていた・・・
昨晩の海堂家での戦いで、暴走状態となったフェニックスが、ピッピを、チュッチとティティを、そしてなみを、笑みを浮かべながら殺そうとしている悪夢を・・・
(止めて、私はそんな事したくない・・・嫌、イヤァァ!!)
悪夢から目を覚ました天女が、ベッドから飛び起きると、広い室内の中で、心配そうに天女を見つめるピッピとなみ、遠巻きに天女の様子を見る、チュッチとティティであった。
「此処は私の家ですわ!昨日の出来事で、外には警察の方などが大勢来ていて大変ですけど、ゆっくりお身体を休めて下さい」
自身も、友であるアナコンダを失い、深く傷ついている事を表に出さず、天女を労るなみに、天女は感謝の言葉を述べるのだった。
「ようやくお目覚めチュチュ?昨日の威勢の良い言葉は何だったチュチュ・・・何が私一人で大丈夫だ!!結局このざまじゃ、先が思いやられるチュチュ」
腕組みするチュッチの言葉に、返す言葉もなく項垂れる天女、落ち込む天女をフォローしようとするピッピを止めたティティは、
「チュッチ、言い過ぎティティ!フェニックスは、自分と同じような境遇の娘を作りたくなかったから、あんな事を言ったティティ・・・フェニックスは優しい娘ティティ」
「ティティ・・・天女の事を分かって貰えて、嬉しいピピ」
ティティは、昨晩の天女の心を読み、自分と同じように、オロチ八人衆と戦う少女を出さないように、強がっていたのを知っていた。ティティが天女をフォローしてくれた事に、心から感謝するピッピだった。
「でも、私の心に慢心があったのも確か・・・責められて当然だわ!キュアクロウが居なければ、私は、あなた達を攻撃していたかも知れない・・・自分が・・・怖い!!」
天女にも、薄々ながら前の時と違い、記憶が微かに残っていた。キュアクロウの蔑みの目を思い出し、不甲斐ない自分自身に、顔を覆って号泣する天女を、なみとピッピが励ました。
(でも、あの人の顔・・・何処かで・・・)
うっすら見えた天満の顔を見た天女は、何処かで出会っているような気を覚えるのだった。
天女は涙を拭うと、
「私が間違っていたわ・・・今はあなた達が言うように、大地と海洋の戦士の力を借りなければ、私は、また同じ過ちを繰り返してしまうかも知れない・・・捜しましょう!新たなるプリキュアを!!」
前向きな考えにシフトした天女の様子に、ホッとするピッピだったが、天女は急になみの顔を見ると、なみに、妖精が言葉を話している事、自分がプリキュアだという事を聞かれて、焦りが生じる。
「な、なみさん・・・あなた、この子達が喋ってて、驚かないの?」
「まあ、柳生先輩ったら・・・それは昨夜に知っていましたわ!柳生先輩がプリキュアだった事も・・・」
今頃になってなみに聞いた天女に、思わずなみはクスリと笑みを見せた・・・
「畜生!あの野郎・・・許せない・・・このあたしの顔を!!必ずあたしと同じ目に合わせてやるから!!!」
魔空間、無残に顔をフェニックスに潰されたウワバミが、包帯だらけの顔を触り、怒りの咆哮を上げていた。一緒に行動していたコブラも、自分が戻った後に、ウワバミ程の者が、此処まで無残な姿にされた事に驚きを隠せなかった。
(キュアフェニックス・・・此処まで非情とはねぇ!?)
コブラは、僅かに口元に笑みを浮かべた。
「出来るのか?今の貴様は、フェニックスへの恐怖心で一杯だ・・・今はせいぜい傷を直す事だな」
羅蛇の言葉に、ウワバミは返す言葉が出なかった。羅蛇が寄越した天満が居なければ、自分はフェニックスの手によって、惨たらしい殺され方をされただろうと思い出すと、震えが起こった。
「ですが、フェニックスもまた心に深手を負った模様・・・叩くなら今かと!次は私が行きましょう・・・この、ナーガがね!!」
ナーガと言った長身の優男、長い銀髪に、ヒョロッとした優男の風貌ながら、その瞳は、陰湿そうな視線を浮かべ、長い舌をペロペロ出していた。
海堂家で泊めて貰った天女は、なみと共に学校へと向かった。ピッピ、チュッチは、天女の鞄の中に、ティティはなみの鞄の中に入れてもらって居た。
「でも、他のプリキュアさんを捜すとしても、何か手掛かりがおあり何ですか?」
なみが不思議そうに天女、そして鞄の中の妖精達に問いかけると、鞄から少し顔を出したティティが、思わせぶりな口ぶりで、
「ティティは、既に候補を見付けたティティ」
ティティの言葉を受け一同が驚く、ピッピ、チュッチは特に驚き、誰か聞くのだが、ティティはまだ秘密だと焦らすのだった。
(ティティが見付けたプリキュア・・・なみ、それはあなたティティ!!)
なみの顔を見て、ニコニコするティティを見て、なみは首を捻るのだった。
(不味いぞ!?海洋の妖精に先を越されたら、おいらの面子が・・・)
全く見当の付いていないチュッチは大慌てだった。
「う~ん、天女見たいに、魔空間でも動けるような奴が居れば、そいつがプリキュア候補なのに・・・チュチュ」
「魔空間の中で動いて・・・アッ!!」
何かを思い出したように、天女が思わず声を出すと、ピッピも思い出したように一人居たと思い出した。チュッチは天女、ピッピに、それは誰かと尋ねていた時、背後から声が掛かった。
「天女先輩、おはようございます!ゲッ、海堂さん・・・何で天女先輩と!?」
「あら、大地さん!おはよう!」
挨拶をするなみを無視するように、天女のみに話し掛けるかなめの態度に、鞄の中のティティが不機嫌になると、
「何でなみが挨拶してるのに、挨拶を返さないティティ!!」
かなめに抗議するティティに、慌てた天女となみが、鞄を抑え、半笑いを浮かべながら誤魔化すと、
「海堂さん、何か言った!?変な声も聞こえたような?」
「き、気のせいよ、かなめちゃん!ね、ねぇ、なみちゃん」
「は、はい・・・」
天女となみが親しげにしているのを見て、かなめは不満そうにしながら、天女に会釈して、先に学校に行こうとするのを、天女が引き留めた。
「かなめちゃん・・・部活が終わったら、ちょっと話があるんだけど・・・良いかな?」
「エッ!?他ならぬ天女先輩の誘いなら、別に良いですよ」
「そう、良かった・・・じゃあ、放課後に屋上で待っていてくれるかしら?」
「わかりました・・・じゃあ、放課後に!!」
かなめが天女に会釈して学校に向かうと、鞄から顔を出したティティが、散々かなめの文句を言うも、なみはティティを宥めていた。
「なみちゃんも、悪いけど放課後に話があるから・・・良い?」
天女に誘われたなみは、首を捻りながらも同意をした。
「おい、どういう事チュチュ?」
「今の子も、魔空間で何事もなかったように活動してたピピ」
ピッピの話を聞き、チュッチは仰天する。あの生意気そうな子が、大地のプリキュアかも知れないのか、と一抹の不安を覚えるチュッチであった。
3―D組・・・
天女、総司が在席するクラスである。
天女は、同じクラスの陸上部部長、佐藤早苗を呼ぶと、かなめの事を聞いて見る。
「何だ、天ちゃんの耳にも入ってたんだ?そうなの!あの子、何でか知らないけれど、海堂って子を見ると不機嫌になるのよねぇ・・・」
「そうなのよねぇ・・・私が見る限り、なみさんは、人に嫌われる性格には見えないけどなぁ」
「どうなのかしらねぇ?もしかしたら、かなめの境遇にも関係あるのかもね・・・」
「境遇?」
早苗の話によると、幼くして両親と死に別れたかなめは、親戚を盥回しにされていた。行く先々で厄介者扱いを受け、今養ってくれている従姉の所に落ち着くまで、色々あったらしい事などを知らせてくれた。
「おい、天女!あんまりそういう事に、首突っ込むなよ!」
「何でよ、総司?」
二人の会話が耳に入ったのか、席に座っていた総司は、首に両手を組みながら会話に加わってくると、天女を窘める。少し不満気に天女が聞くと、
「人には、触れられたくない事があるって事だ!お前だってそうだろう?俺も詳しくはあの子の事を知らないが、あいつ、お前に懐いているようだから、何れ自分から話して来る事もあるんじゃねぇか?それまでそっとしとけよ!」
総司の言葉を受け、納得は出来るものの、プリキュアとして、彼女達を仲間にするなら、あの二人の関係を、このままにしておいて良いのだろうかと悩む天女だった。
放課後・・・
部活動も終わり、着替え終わったかなめは、天女に言われたように屋上で待っていた。そこに、なみを引き連れた天女が姿を現わすと、なみを見たかなめの表情が見る見る曇り出すも、天女の肩に乗っているオウム、天女となみの間に居る、ネズミとペンギンを見て目が点になる。
「オウム・・・はまだ分かるけど、何でネズミとペンギンが居るの?」
「オウムじゃないピピ!ピッピ達三人は、可愛い、可愛い、妖精ピピ!僕は天空の妖精ピッピ」
「おいらは、お前の相棒になるかも知れない、大地の妖精チュッチ」
「私は、なみのパートナー!海洋の妖精ティティ!なみを虐めたら、許さないティティ!!」
かなめの言葉を自慢気に否定して、天空の妖精だと名乗るピッピ、腕組みしてかなめの事を観察し、大地の妖精と名乗るチュッチ、今度なみを無視したら許さないといった表情で、かなめを睨みながら、海洋の妖精と名乗ったティティ、ティティにパートナーと呼ばれたなみ、妖精と名乗られて、目をパチクリ繰り返すかなめ、かなめはもう一度妖精達を見ると、
「嘘でしょう?何なのこれは・・・て、天女先輩、これは一体!?」
「エエッと・・・何から話せば良いかな?」
何処から話そうかと悩んでいた天女だったが、その時、学校中が天女達を除いて静まりかえった・・・
2、誕生!新たなる戦士達!!
「これは・・・魔空間!?」
一気に表情が険しくなった天女の様子に、かなめもなみも動揺する。三人は屋上から校庭を見ると、生徒達が、先生が、時が止まったように動かなくなっていた。
「ま、またこの間みたいに・・・」
「またあの時のような、敵が居るんですの?」
互いの言葉に反応して、思わず顔を見合わせたかなめとなみだったが、直ぐにかなめは視線を外した。
「ほう、他にも魔空間で動ける者が居たとは、驚きましたね・・・」
背後から声が聞こえ、慌てて後ろを振り向いた三人は、銀色の長髪で優男のナーガを見て驚くと、
「おやおや、驚かせましたか?私はオロチ八人衆が一人、ナーガ!今日は、ウワバミを非道な行ないで、戦意喪失させたという非情の戦士、キュアフェニックスを一目見ようとこうしてやって来たのですが・・・いやぁ、伝説の戦士プリキュアにも、我らと同じような非情な戦士が居たとは、驚きましたよ!!」
天女、かなめ、なみ、三人の少女達の反応を楽しむように、言葉を話すナーガは、ナーガの話を聞き、項垂れた表情を浮かべる天女を見て、口元に笑みを浮かべる。
「いやぁ、惨たらしいものでしたよ・・・ウワバミの顔は潰れ、最早嘗ての面影など、とてもとても・・・私がウワバミなら、自ら命を絶ってたかも知れませんねぇ・・・」
「止めてぇ・・・もう止めてぇ!!」
自分のした非道な行ないを思い出したのか、天女は手で顔を覆い、首を振る。なみや妖精達は心配そうに天女を見て、かなめは何の事かさっぱり分からず、イライラしたようで、
「ちょっとあんた!何訳分からない事言ってんのよ!?頭大丈夫?」
ナーガの頭を指差し、クルクル指を回し、手をパァと開くと、プライド高いナーガの目付きが変わる。
「小娘・・・あまり私に無礼な口は聞くなよ?死にたくなければな!!」
両目が金色に輝くと、三人の少女に向けて、強烈な突風を浴びせる。スカートを抑えながら三人で固まり、突風に何とか耐えた天女は、ピッピに合図を送る。
ピッピが頷き、クリスタルフィオーレから、プリキュアの力を照射して、天女の持つシャイニークリスタルがそれを吸収していく。シャイニークリスタルが虹色に輝いた時、天女が叫ぶ、
「プリキュア!デルタフラ~~ッシュ!!」
三角形の虹色の光に包まれた天女は、衣服を何も身に付けていない感覚を覚えるも、心から湧いてくる熱き思いが、天女の身体を包んでいく。胸の中心部にシャイニークリスタルが装着され、真紅に身体が染まった時、天女の身体を赤っぽい衣装が覆っていく。長い黒髪は赤く変化し、髪は束ねられ、ポニーテールへと変化していった。
「天空の使者・キュアフェニックス!・・・推参!!」
名乗りを終えたフェニックスが、ポーズを決めた。
変身を終えたフェニックスは、かなめ、なみを庇うべく、ナーガに攻撃を仕掛け、二人から遠ざける。
「エッ!エエエエ!!!?」
かなめは、天女がキュアフェニックスに変身した事に驚き、思わず夢かと自分の頬を抓るも、これが現実なのを知り呆然とする。
(この姿・・・あたし、知ってる!じゃあ、あたしが怪物になったのを救ってくれた、赤い人の夢は現実で・・・それは、天女先輩だったの?)
なみも、天女が変身する場面は初めて見たので、衝撃を受けるのだった。
「かなめ、あれがプリキュアピピ!天女はピッピのパートナー!天空の使者・キュアフェニックスピピ」
「そして、かなめ・・・お前はチュッチのパートナー、大地のプリキュアかも知れないチュチュ」
「なみもそうティティ!ティティのパートナー、海洋のプリキュアに違いないティティ」
妖精達の言葉に、思わず互いを見つめるかなめとなみ、
「じょ、冗談じゃないわよ!何で私が・・・」
仮に自分がプリキュアだとして、天女と組むのは構わないものの、なみと組むのは承諾出来ないかなめであった・・・
ナーガは、フェニックスと戦おうとはせず、距離を取って逃げ回り続けた。
「怖い怖い、私の顔まで潰されたら、堪りませんからねぇ!」
逃げ回りながら、フェニックスの心の傷を刺激するのを忘れないナーガは、校庭を見ると、止まったように佇む人々にニヤリと笑み、人々の影に次々に黒いナイフを突き刺すと、
「さあ、目覚めなさい!マケンナーよ!!」
黒いナイフに刺された影は、まるで生き物のように蠢き、主である人々を飲み込むと、黒い塊の物体へと変化していった。
(これは・・・マケンナーに、こんなタイプも居たなんて?)
生命体とは思えないような動きをするマケンナーに、戸惑うフェニックスだった。
「あいつ、あんなにマケンナーを出現させる何て・・・大変ピピ」
「おい、悩んでる時間は無いチュチュ・・・フェニックスを助けに行くチュチュ」
「そりゃあ、あたしだって助けたいけど・・・」
まだブチブチ言うかなめに、焦れたチュッチは、
「大地の女神ガイア様、この者にプリキュアの加護を!!」
「エッ!?ちょっと、あたしまだ承諾して・・・キャア」
業を煮やしたチュッチは、大地から集まる虹色の光を、無理矢理かなめに照射する。嘗て天女が、天空の女神ディオーネと邂逅したように、かなめも何者かの声を聞いた。
・・・ヘえ、あたしにプリキュアの力を承諾に訪れる何て、何時以来だろうね?我が名はガイア!大地の女神なり!!で、お前は、何故プリキュアの力を欲しがる?名前は!?・・・
「いや、あたしは別に欲しがってないけど・・・名前は大地かなめ!何かネズミに勝手にされたんで、あたしは何の事だかさっぱりなんだけど?」
・・・何だとぉ~~!?折角あたしが話し掛けてやってるのに・・・
かなめと大地の女神ガイア、二人の邂逅は波乱に満ちていた・・・
一方ティティも、海洋から照射される虹の光を、なみに浴びせていた。
・・・我が名はティティス!私にプリキュアの力を求めるのは、あなたですか!?お名前は?・・・
「私は、海堂なみと申します!よろしくお願い致します!!」
・・・あなたからは、不思議な力を感じますね!なみ、海洋の女神ティティスの名の下に、あなたを海洋の戦士として認めましょう!!さあ、これを受け取りなさい!!シャイニークリスタルです。そして、あなたのパートナー妖精から、プリキュアの力を受け取った時にこう叫ぶのです。プリキュア!デルタフラッシュと・・・
ティティスとの邂逅を終えたなみが、虹の光から解放される。なみの手にシャイニークリスタルが握られているのに喜ぶティティ、先に虹の光に包まれたかなめが、未だにガイアとの邂逅から戻らない事に、慌てるチュッチだった。
「だから、あたしは何の説明も受けてないんだってば!!いきなりプリキュアだ、オロチだ何て言われても、分からないでしょう?」
・・・全く、こんな子をあたしの下に送ってくる何てね・・・まあいい、今は急いでいるようだから、あんたにしといてやる。あんたは頭が悪そうだから、此処で言うより、自ら変身して、他の二人やパートナーに聞いてみな・・・ほらよ、これがプリキュアへの変身アイテム、シャイニークリスタルだ!!あんた無くしそうだから、首に掛けて外すんじゃないよ!!・・・
ガイアの言葉に、頬を膨らませながら不機嫌そうにするかなめだったが、
・・・ああ、忘れてた!パートナーからプリキュアの力を授かったらこう叫びな、プリキュア!デルタフラッシュとね・・・
ガイアとの邂逅を終えたかなめが現われると、
「かなめ、その手にあるのはシャイニークリスタル・・・ガイア様に認められたチュチュ?」
チュッチは嬉しそうにするものの、かなめは微妙な表情を浮かべると、
「あんた、勝手にあたしをあんな所に・・・何であたしが貶されなきゃいけないのよ・・・別に認められたと言うか、勝手にくれただけのような・・・」
「とにかく認められたのなら、それで良いチュチュ・・・かなめ、変身チュチュ!」
「なみも変身ティティ!」
チュッチ、ティティからプリキュアの力が、かなめ、なみに向けて照射される。覚悟を決めて、シャイニークリスタルに、プリキュアの力を受け入れるなみと、
「ええ、いきなりぃ?・・・まだ、心の準備が!?」
不安そうにしながら戸惑うかなめ、二人のシャイニークリスタルが虹色に輝く、
「今ピピ!プリキュア!デルタフラッシュと叫ぶピピ」
ピッピの言葉に頷くなみと、自棄気味のかなめが鼻の穴を広げながら、
「こうなったら、やってやるわよ・・・プリキュア!デルタフラッシュ!!」
「プリキュア!・・・デルタフラ~~ッシュ!!」
かなめ、なみの身体を 三角形の虹色の光が包みこんだ。二人は、天女と同じように衣服を何も身に付けていない感覚を覚える。心から湧いてくる熱き思いが、二人の身体を包んでいく。
胸の中心部にシャイニークリスタルが装着されると、かなめは、地上から足を通して伝わる、力の漲りに安らぎを覚える。その安らぎに身を任せた時、かなめの身体を、茶色い衣装が纏っていく。フリルの付いたミニスカートから、薄茶色のスパッツがチラリと見え、茶髪の髪は少し金色気味に変わり、かなめの身体がプリキュアへと変化していった。
一方のなみは、水面の中で癒されているような感覚を覚える。その癒しの中で身を任せた時、なみの身体を青色の衣服が纏っていく、ドレスのようなその衣装は、正面に切り込みが膝まで入っていて、なみの生足がチラリと見え隠れする。髪は水色に変化し、三つ編みのように組まれていった。
「大地の使者・キュアアース!・・・参上!!」
「海洋の使者・キュアオーシャン!・・・見参!!」
変身を終え、ポーズを取る二人だったが、何処か恥ずかしそうにしていた。
かなめとなみ、二人の新たなるプリキュアが誕生した瞬間だった・・・
3、大喧嘩
「何!?新たなるプリキュアが二人も?・・・これは計算が狂いましたね」
屋上の上で、二人の新たなるプリキュアが生まれた事に戸惑うナーガ、
「かなめちゃん、なみちゃん、やっぱり二人もプリキュアになれたのね・・・心強いわ!!」
嬉しそうに屋上を見上げるフェニックスだった。
「遂に・・・遂に三人のプリキュアが揃ったピピ」
ピッピ、チュッチ、ティティ、三人の妖精達が感触深げに二人を見るも、
「う~ん、何かイマイチな感じよね・・・」
「そうかしら?私は中々気に入ったわ!」
「別にあなたに話し掛けてないわよ!」
変身前と変わらず、オーシャンを避けるようなアース、その様子に戸惑うオーシャン、
「二人共、フェニックスの援護に向かうピピ」
「オーシャン、あなたは此処に居なさいよ!とろそうなあんたが一緒に来られても迷惑・・・私と天女さん・・・ううん、フェニックスが居れば十分よ!!」
「こら、オーシャンを除け者にするな!!」
オーシャンを足手纏い扱いにするアースに、烈火の如く怒るティティ、今まで鬱憤を溜めていたなみ、いや、オーシャンの怒りが爆発した!!
「あなたねぇ!・・・私、あなたに、何か致して?今まで散々私にした失礼な数々・・・もう、我慢できない!!おまけにとろそうだ何て・・・私、別にとろくありませんし、あなたの方こそ、中々プリキュアになれなかったんじゃなくって?こちらでごゆっくりしていらしたら?」
「んだとぉ!!」
感情的になってぶつかり合うアースとオーシャン、互いに睨み合い、言い合う二人に、妖精達は、どうしたものかと戸惑いを隠しきれなかった。
「おやおや、随分仲が宜しいようで・・・頼もしい仲間を持って、あなたも大変ですねぇ?」
笑いながらフェニックスを見るナーガ、目を点にしながら二人に呆れかえるフェニックス、二人の下にも、大声で言い争うアースとオーシャンの声が聞こえていた。
(あの子達、こんな時に・・・)
フェニックスの表情が険しくなる。ナーガは、フェニックスの集中力が途切れた事で、十数体のマケンナーを分散させて三人のプリキュアへと攻撃を仕掛けた。咄嗟に気付いたフェニックスは、攻撃を避けると、
「プリキュア!ファイアー・ショット!!」
手から火の粉を出し、マケンナーの攻撃を鈍らせると、フェニックスは、マケンナーの奇襲に気付いていない、アース、オーシャンの援護に向かう。
マケンナーの体当たりを受け、吹き飛ばされるアースとオーシャン、
「ちょっと、邪魔しないでよ!」
「あなたこそ!!」
再び言い合う二人は、マケンナーが三人の妖精に攻撃するのに気付かない、三人の悲鳴で気付いた時には遅く、三人の妖精がマケンナーに飲み込まれようとした時、現われたフェニックスが、マケンナーを蹴り飛ばし、妖精達を救助する。ホッと安堵する二人だったが、フェニックスの視線は冷たかった。二人を無視するように、妖精達に安全な所に避難しているように言うと、戸惑っているアース、オーシャンに背を向けたまま、
「あなた達、いい加減にしなさい!あなた達もプリキュアになる事を選んだのなら、プリキュアとして何をするべきなのか・・・自分で考えなさい!!」
ファイアーソードを取り出し、マケンナーを浄化に掛かるフェニックス、
「アース、オーシャン、フェニックスの言う通りピピ」
「これを見るチュチュ」
ピッピ、チュッチは、自分達のクリスタルフィオーレを二人に渡すと、それでマケンナーを見て見ろと言う。二人が見ると、クリスタルフィオーレに映し出されたのは、陸上部部長、佐藤早苗、かなめや、なみのクラスメートなど、二人の見知った顔であった。
「そんな、部長が・・・」
マケンナーのマークが黄色へと変わる。
「フェニックス一人じゃ、間に合わなくなるかも知れないピピ・・・マケンナーにされてから、30分以内にみんなを元に戻せなかったら、この子達は、一生この姿のままピピ!!」
ピッピの言葉に、二人に衝撃が走る。
今は、些細な事で言い争っている場合じゃない事を・・・
「アース・・・今は、みんなを元に戻す事を、優先させましょう!!」
「そうだね・・・まだモヤモヤは残ってるけど・・・オーシャン、そっちは任せたよ!」
「ええ、アース!そっちをお願い!!」
プリキュアの自覚に目覚めた二人が、マケンナーに立ち向かうも、戦い慣れていない二人は苦戦する事もあったが、そんな時、二人は無意識の内に互いをフォローしていた。
(あの二人・・・本当は良いコンビなのかも知れない)
二人を見つめて、フェニックスはクスリと笑むと、再びマケンナーを浄化しに掛かる。
アースは両手を横に広げると、大地の力を借りて、目の前に槍を出現させた。一方のオーシャンは、両手を組み念じてゆっくり手を離していくと、目の前に氷の弓を出現させた。
「心にて、悪しき闇を突く・・・プリキュア!サンダースピア!!」
「心にて、悪しき闇を射る・・・プリキュア!アイスアロウ!!」
突進して、マケンナーを突き刺し浄化するアース、氷の矢でマケンナーを射貫き、浄化するオーシャン、マケンナーの群れは、三人のプリキュアの力で、次々浄化されていった。
「此処は撤退した方が良さそうですねぇ・・・中々面白い余興でしたよ!!」
ナーガは薄笑いを浮かべながら、次元の狭間に消えていった・・・
問題が解決した訳では無かった・・・
かなめ、なみは、再び屋上で見つめ合っていた。天女は、三人の妖精達と共に、屋上の陰で成り行きを見守っていた。
「海堂さん・・・さっきの言葉は取り消すよ!トロイ何て言ってゴメン!!」
「ううん、私の方こそ、感情的になって・・・でも、どうして、私の事を嫌うの?」
「・・・そうね、今なら言えそう・・・別に、あなたの事が直接嫌いって訳じゃないの!でも、あたし小さい時に両親を亡くして、親戚を盥回しにされて・・・その中で、あるお金持ちの親戚に預けられた時、あたし、酷い虐待を受けたんだ・・・」
かなめは、トラウマになった心の傷を、なみに語り始めた・・・
敢えてその内容は此処では書かない・・・
その親戚が、後に海堂家と関わり合いがある事を知り、かなめは、海堂コンツェルンに関わり合いある人間さえも、何時しか嫌いになっていた。
あの時のトラウマを思い出すからと・・・
「あたしにも分かってたんだ・・・海堂さんが優しい人だって事は、でも、認めたくなかった・・・認めたら、あの時誓った思いが、砕けるような気がした。でも、あなたを見ていて、心の何処かで、海堂さんの事、羨ましがって居たのかも知れない」
「大地さん・・・私も本当はあなたに憧れていた・・・何時も元気で、あなたの周りには、沢山の人達が集まる。でも、私には・・・心から友達と思ってくれる人は居ない・・・」
かなめ、なみ、互いにお互いの本当の気持ちを語り出すと、互いに涙目になりながらも、笑顔を向けた。
「何か思いをぶっちゃけたら、スッとした気がする・・・今まで、嫌な思いさせてゴメンね!海堂さん!!」
なみは首を振りもう気にしていないと答えると、モジモジしながらかなめに話し掛ける。
「私も、ゴメンなさい・・・あのぅ、喧嘩したばかりなのに、変だと思われるかも知れないけど・・・大地さん、私と・・・友達になって欲しい!!」
心の中に仕舞い込んでいたかなめへの思いを、恥ずかしそうに呟いたなみ、一瞬驚いた顔をしたかなめだったが、
「ウ~ン・・・友達なら大地さんって呼び方、何か余所余所しいよねぇ!かなめで良いよ!よろしくね、なみ!!」
「うん!ありがとう・・・かなめ!!」
なみに笑顔を向け、ウインクして名前で呼ぶかなめ、嬉しそうに頷き名前で呼ぶなみ、二人の絆が深まった瞬間だった・・・
天女、そして三人の妖精達も、その姿を満面の笑みを浮かべながら見守っていた。
「喧嘩してた時は、どうなるかと思ったけど・・・雨降って地固まるって奴ね!大地と海洋の戦士の二人には、ピッタリなことわざね!!」
天女は、絆を深めた二人の姿を、自分の事のように喜んだ。
夕暮れの中、少女達と妖精達の笑い声が、武道学園の屋上に響いていた・・・・
第四話:ふたりがプリキュア!?
完