※この作品はR-18です。

トライアングルプリキュア!   作:鳳凰009

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第五話:プリキュア失格!!

                第五話:プリキュア失格!!

 

1、ピッピ、マケンナーになる!

 

 新たなるプリキュア、キュアアース、キュアオーシャンが誕生し、天女は昨日の事を思い出しながら、朝の稽古に励んでいた。ピッピは天女に頼んで、鳥籠から出して貰うと、屋根の上から天女の朝稽古を見ていた。

 

「三人のプリキュアも勢揃いしたし、天女も嬉しそうピピ」

 

 嬉しそうにニコニコしながら、天女の朝稽古を見ていたピッピだったが、まだ天女の朝稽古が終わるまで時間があった為、久しぶりに一人で、空から朝の散歩に向かった。

 

「鳥籠の中にずっと居ると疲れるピピ・・・やっぱり、自由に飛べるのは嬉しいピピ」

 

 散歩を楽しんでいたピッピだったが、妙な気配を感じると、天女を呼びに戻るか悩んだものの、此処から近い事もあって、一人で様子を見に向かった。

 

 

「アハハハ!まさか、こんな所に隠してあった何てねぇ・・・此処に隠した奴も、まさか後世に、デーモンストーンを探知できる者が現われるとは、思わなかったろうねぇ?」

 

 嘗てなみの家が、デーモンストーンを家の祠に保管していたように、この荒れ果てた祠に、黒きデーモンストーンは、無造作に置かれていた。知らない者が見れば、確かにただの石の塊と思われたかも知れないが、オロチ八人衆には、羅蛇が作り上げたデーモンストーンを探知する、デーモンディテクションがあった。

 

 今、オロチ八人衆の一人コブラは、三つ目のデーモンストーンを手に入れた・・・

 

(た、大変ピピ!早く天女に知らせなきゃ)

 

 ピッピは、大慌てで羽ばたいた為、コブラに見つかってしまう・・・

 

「お前は・・・こりゃあ良い!お前を餌に、プリキュアを誘き寄せてやる!!」

 

 口元に笑みを浮かべながら、コブラがピッピに迫るも、ピッピは口では近寄るなと言いながら、コブラの爆乳から視線を逸らさず、スケベ顔になる。違和感を感じたコブラは、ピッピの視線が、自分の胸に注がれているのに気付き、唖然とした。

 

「何だい、あたしの胸が気になるのかい?フフフ、そうさねぇ・・・協力してくれるなら、この胸・・・あんたの好きにしても良いんだよ?」

 

 コブラは、今にも乳輪が露わになりそうな程、胸元をはだけさせると、ピッピの目の前で胸を弾ませて、ピッピを刺激する。

 

「そ、そんな取引に、僕が応じると思うピピ?甘く見るなピピ」

 

 そうは言いながらも、必死に嘴を伸ばそうとするピッピ、コブラは愉快そうにピッピを刺激して楽しんでいた。

 

 

「もう、ピッピったら何処まで行ったのかしら?」

 

 朝稽古を終えた天女は、姿が見えないピッピを捜しに出掛けていた。家の裏山の方を探しに向かった時、辺りは静まりかえり、この辺りが魔空間に引き込まれた事を感じる。

 

(念の為、かなめちゃんとなみちゃんにも、メールしておいた方が良さそうね・・・)

 

 魔空間に引き込まれていない場所まで戻ると、天女は二人にメールをして、再び魔空間に引き込まれた場所に入っていった。

 

 ピッピが居ない今は、プリキュアにはなれないものの、天女は更に歩を進めて様子を伺うと、向こうの方から女の悲鳴と、おっぱいと連呼しながら近づいて来る、不気味な声を聞き、眉根を寄せる。

 

(何?マケンナー!?)

 

 首を傾げながらも、声のした方に向かった天女は、何かに追われ逃げ回る、オロチ八人衆のコブラを見付けて呆然とする。

 

(何でオロチ八人衆ともあろう者が・・・逃げ回っているのかしら?)

 

 逃げ回っていたコブラは、天女の姿を見付けると、猛ダッシュで近づいて来て、

 

「おい、あいつを何とかしろ~~!!」

 

「いきなり何なの?・・・エッ!?あれは・・・ピッピ!?」

 

 巨大なオウムのマケンナーが、おっぱいと叫びながら現われた。コブラ、天女を見ると、二人の胸元に神経を集中させる。二人の胸を見て、興奮状態になったマケンナーが、二人の下に突進してくる。悲鳴を上げながら、敵味方関係無しに、共に逃げ出す天女とコブラ、

 

「お前のパートナーだろう?何とかしろ~~!!」

 

「ピッピをあんな姿にしたのは、あなたでしょう?あなたが何とかしなさいよ!!」

 

「しょうがねぇだろう・・・あたしの言う事聞かないんだから・・・こんな事初めてだ」

 

 逃げ回る二人に対し、マケンナーと化したピッピは、羽を羽ばたかせ強風を巻き起こすと、二人は吹き飛ばされる。勝ち誇ったよう、ニヤニヤしながら、マケンナーは涎を垂らし二人に近づいて来る。その表情を見てドン引きする天女とコブラ、我に返った天女は、

 

「ピッピ!私よ、天女よ!!今、かなめちゃんやなみちゃんが来てくれるから、それまで大人しくしてて・・・ね?」

 

 ピッピは首を捻り考え込むと、再びおっぱいと叫び出す、

 

「チッ・・・調子に乗るなよ、妖精風情が!」

 

 コブラの目が金色に輝く、必死に攻撃しようとするコブラを止める天女に、

 

「だったら・・・お前が奴を引きつけろ!!」

 

 天女の制服に手を掛けると、一気にボタンを引き千切り、白いブラをした天女の胸元が露わになる。

 

「キャァァ!何するのよ?あなたが原因何だから、あなたが引きつけなさいよ!!」

 

 コブラの胸に手を掛け、揺らしまくる天女、何処かキャットファイトの様相を呈した女の戦いは、マケンナーをより一層興奮させるだけだった・・・

 

 

「ねぇ、なみ・・・天女さん、何やってるんだろう?」

 

「さ、さあ!?・・・一緒に居るのは、私の家に現われた、オロチ八人衆の一人ですわ!」

 

 到着したかなめとなみは、コブラと互いの胸を触りあっている、天女の姿に唖然としていた。巨大なオウムのマケンナーを見て驚愕した二人は、ハモリながらピッピ?と叫ぶ、

 

「な、何で、ピッピがマケンナーに!?」

 

「全く、妖精がマケンナーにされるなんて・・・呆れたチュチュ」

 

 二人の妖精、チュッチとティティも、マケンナーにされたピッピを見て驚くも、かなめ、なみに、プリキュアに変身するよう進言する。

 

 頷く二人に、チュッチ、ティティのクリスタルフィオーレから、プリキュアの力が照射される。二人のシャイニークリスタルが虹色に輝いた時、かなめ、なみが同時に叫ぶ、

 

「「プリキュア!デルタフラッシュ!!」」

 

 かなめ、なみの身体を 三角形の虹色の光が包みこんだ。二人は、衣服を何も身に付けていない感覚を覚えるも、心から湧いてくる熱き思いが、二人の身体を包んでいく。胸の中心部にシャイニークリスタルが装着されると、かなめは地上から足を通して伝わる力の漲りに安らぎを覚える。その安らぎに身を任せた時、かなめの身体を茶色い衣装が纏っていく。フリルの付いたミニスカートから見える薄茶色のスパッツ、かなめの身体がプリキュアへと変化していった。

 

 一方のなみは、水面の中で癒されているような感覚を覚える。その癒しの中で身を任せた時、なみの身体を青色の衣服が纏っていく、ドレスのようなその衣装は、正面に切り込みが膝まで入っていて、なみの生足がチラリと見え隠れする。髪は水色に変化し、三つ編みのように組まれていった。

 

「大地の使者・キュアアース!・・・参上!!」

 

「海洋の使者・キュアオーシャン!・・・見参!!」

 

 変身を終えた二人のプリキュアが、ポーズを取って現われた。

 

「アース、オーシャン、来てくれたのね!お願い、ピッピを元に戻して上げて!!」

 

 天女の声に頷く二人、コブラは、初めて見る新たなるプリキュア二人を、興味深く見つめていた。

 

(こりゃあ良い・・・此奴らの実力、見させて貰おうか!!)

 

 口元に笑みを浮かべたコブラだったが、直ぐにその笑みが引き攣る。ピッピは、天女、コブラの胸の辺りに、長い舌を絡ませて二人を捕らえると、舌先が二人の胸目掛け襲ってくる様は、触手のようだった。

 

「ピッピ、ダメェ!止め・・・イヤァァン!!」

 

「止めろ!スケベ鳥・・・ハアァン!」

 

 苦悶の表情を浮かべる天女、コブラが、マケンナーの舌で胸を刺激され、艶やかに悶える。アース、オーシャンが、左右から跳び蹴りを放ち、何とか二人を解放させると、邪魔をされたマケンナーが二人を睨む。マケンナーの視線が、オーシャンの胸元に注がれると、オーシャンは、マケンナーの頭の中が、おっぱいだらけのイメージなのを感じ、思わず顔を赤くして自分の胸を隠すと、

 

「ピッピ・・・まさか私まで・・・イヤァ、こっちに来ないでぇ!!」

 

 天女、コブラに加わったオーシャン、三人でピッピから逃げ回る。

 

「おいピッピ、いい加減にしろ!!」

 

 マケンナーの前に立ち塞がった、アースの胸元を凝視するマケンナーだったが、ププッと見下したような奇声を発し、アースを無視して、再びおっぱいと連呼しながら、三人を追いかけ回した。ポツンと取り残されたアースは、チュッチを見ると、

 

「あのスケベ鳥・・・何であたしには手を出さないんだろう?」

 

「まな板胸には、興味無い見たいチュチュ」

 

「んだとぉぉ!!」

 

 チュッチの頭をどつき、激高したアースは、凄まじい速さで走り、マケンナーを追いかけると、上空高くジャンプする。アースの足下が放電し出すと、

 

「このスケベ鳥、少しは反省しろぉぉ!プリキュア!サンダーキィィック!!」

 

 アースの足下が、稲光りした状態でマケンナーを蹴り込むと、マケンナーの身体は放電し、動きが鈍る。アースは両手を横に広げると、大地の力を借りて、目の前に槍を出現させた。

 

「心にて、悪しき闇を突く・・・プリキュア!サンダースピア!!」

 

 マケンナーに突進し、一突きすると、ピッピに取り憑いていた魔が消滅し、ピッピの姿が元の大きさに戻っていく。

 

(へぇ、中々やるじゃないか・・・)

 

「プリキュア、今回は礼を言っとくよ!お陰で、デーモンストーンも無事だったしね・・・アバヨ!!」

 

 天女、アース、オーシャンに、黒いデーモンストーンを見せつけ、コブラは次元の狭間に消えていった。

 

「まさか、デーモンストーンを持っていた何て・・・」

 

 呆然としながら、コブラの消えた空間を見る天女、気付かなかったとはいえ、みすみすデーモンストーンを奪われた三人だった。

 

「う~~ん・・・あれ、此処は!?」

 

 目を覚ましたピッピが、暢気そうに辺りを見回していると、天女、かなめ、なみ、チュッチ、ティティから冷めた視線を浴びる。ピッピが不思議そうに小首を捻るも、一同から次々怒られるピッピだった・・・

 

 

2、嵐の前触れ!?

 

「ファァア・・・全く、誰かさんのせいでまだ眠いや」

 

「もう、かなめったら・・・」

 

 朝からマケンナーとなったピッピと戦い、二人は戦闘後、共に学校へと登校した。天女は、コブラによってボタンを引き千切られ、取れた制服のボタンを縫う為、一旦家に戻っていた。

 

 かなめとなみ、二人が仲良く登校する姿に、武道学園の生徒達は驚き、ヒソヒソ話しをしていた。

 

 2―B組・・・

 

 かなめとなみが在席するこのクラスは、仲良く談笑する二人の姿に、パニック状態になっていた。

 

「何でかなめと海堂さんが!?これは、天変地異の前触れ?」

 

「世界の終わりの始まりかも!?」

 

 次々に失礼な事を言いまくるクラスメイト達に、なみは苦笑し、かなめは頬を膨らまし、

 

「あんたら、随分酷い事言ってくれるわねぇ?」

 

「だってぇ、昨日まであんなに海堂さんの事嫌っていたかなめが・・・驚くなって言う方が無理よ!!」

 

「まあ、色々あってさ・・・誤解が解けたと言うか、何というか・・・」

 

 なみを見て照れ笑いを見せるかなめを見て、なみはクスリと笑む、

 

「そうだ、なみはまだ餡庵に行った事無かったよね?あたしも天女さんに教わってから、あの店気に入っちゃってさ・・・なみも行こうよ!!」

 

「うん、かなめが言うんだから、美味しいんでしょうね・・・楽しみ!!」

 

 笑い合う二人を見て、クラスメイト達は、やはり天変地異の前触れかもと思うのだった。

 

 

 魔空間・・・

 

 ナーガは、巨大な蛇の石像の口内にある、自分が管理する場所で、20年前からの戦いの記録を整理していた。

 

「20年前・・・キュアスワンによって我らの宿願は阻まれた。そして、この私はキュアスワンによって深刻なダメージを受けた・・・あれから20年が経ち、新たなるプリキュアが、再び我らの前に立ち塞がった。此処までは良い!だが、キュアフェニックス・・・ウワバミの報告を聞く限り、あいつには、我らオロチ八人衆に通じる、何かがある筈だ!!」

 

 20年の間に、オロチ八人衆の面子も変わっていた。魔蛇月、羅蛇の二人は、邪神が放ったオロチ八人衆のオリジナルで、約30年前から加わったナーガを含む他のメンバーは、何代にも渡り、世代交代を重ねてきた存在だった。

 

「20年前・・・羅蛇は下界の様子を探ると言って、地上に残った・・・そして10年前、まだ少女だった天満を連れて戻って来た・・・此処に何か秘密がある筈だが・・・」

 

 ナーガは、頭の中で思考を整理していく、

 

「代を重ねる事に、オロチ様の血は薄まり、我らは魔蛇月、羅蛇の力に劣り、奴らにはとても敵わん・・・更には、奴らには腹心であるラミア、天満が居る。だが、今に見ていろ・・・キュアフェニックスの眠れる力を解明し、我が力の糧とし、奴らをも超える力を手に入れてやる!私の上に立てるのは、我らが神・オロチ様だけだ!!」

 

 長い舌をチロチロ出し、不気味に笑むナーガは、フェニックスの秘密を探るべく、行動を開始した・・・

 

 

 それから一週間が過ぎた・・・

 

 ナーガが放った生き物達、それらは全てナーガの細胞から生み出し、己が分身として、文武町に放って情報を集めた・・・

 

 ナーガは、遂に羅蛇の隠し通していた秘密を苦労の末得た。

 

(まさか、キュアスワンがまだこの街に居たとは、驚きましたね・・・しかも・・・羅蛇が何を企んでいるのかまでは分からんが・・・利用させて貰うぞ!)

 

「さあ、楽しいショーの始まりですよ!!」

 

 ナーガは嬉々しながら動き出した。

 

 

 柳生邸、昼・・・

 

「お父様、如何致しました?お父様!!」

 

 天音は、父辰馬が道場で倒れているのを見付け、慌てて介抱する。

 

「あ、天音か・・・奴じゃ!20年前、お前が深手を負わせた奴が、お前の事を嗅ぎつけたようじゃ・・・奴は何やら企んでおる様子・・・すまぬ、奴の不可思議な幻術を受け・・・わしは天満と天女の事を・・・天音、用心せよ・・・グッ」

 

「お父様、しっかり・・・私が嘗て深手を負わせた相手・・・ナーガか!!」

 

 天音は、辰馬を寝室で横にさせて看病すると、辰馬は少し落ち着いたようで眠りに付いた。辰馬の寝室を出た天音は、普段おっとりしている表情が、キッと引き締まる。来るべき時が来たといった表情で・・・

 

(ナーガ・・・あいつは悪知恵に長けた奴!私の正体も知られた以上、どんな手段を用いる事か・・・まさか、天女が危ない!?)

 

 天女の身を案じ、不安そうにする天音だった・・・

 

 

 ナーガは、何も知らないウワバミを利用し、羅蛇を引きつけさせると、天満に接触した。

 

「これは、これは、天満さん・・・そうそう、あなた、天空のプリキュアだそうですねぇ?」

 

 天満は、ナーガを嫌っていた。不気味な笑みを浮かべた時、悪寒が走った。ナーガはそんな事にお構いなく、天満の反応を楽しむように語った。

 

「それがどうした?貴様には関係無い!!」

 

「そうですか・・・でも、あなたを捨てた母親を、憎んでらっしゃるでしょうねぇ?」

 

「貴様、どうして、それを!?」

 

 天満の表情が見る見る豹変していくと、ナーガは更に薄ら笑いを浮かべ、

 

「ですが、あなたは本当の事を知らないようだ・・・どうです、少し私と散歩に行きませんか?あなたに会わせたい人もいらっしゃいますし・・・」

 

「会わせたい人・・・だと!?」

 

 ナーガが何を企んでいるのか、戸惑う天満だったが、逆にナーガの企みを知るには、敢えて誘いに乗ろうと決意する。

 

「良いだろう、貴様の誘いに乗ってやる!カァク!!」

 

「大丈夫カァ?此奴、何か企んでるカァ」

 

「ああ、分かってる・・・さあ、私に会わせたい人とやらの所に案内しろ」

 

「フフフ、ご承諾、ありがとうございます!!では、行きましょうかね?」

 

 ナーガは、天満、カァクを引き連れ、次元の狭間に消えた・・・

 

 

 放課後・・・

 

 部活動を終えた天女とかなめは、先に餡庵に居たなみと合流した。一週間前にかなめに連れて来て貰って以来、なみもまた、餡庵の和菓子の虜になっていた。

 

「かなめちゃんだけじゃなく、なみちゃんも気に入ってくれる何て、嬉しいわ」

 

 たい焼きを頬張りながら、ニコニコ顔の天女が、かなめやなみを見て微笑むと、

 

「いやぁ、天女ちゃんには感謝しないとね!こうしてお得意さんを増やしてくれるんだからね」

 

「おばさん!なみを連れて来たのは、あたしだよ?」

 

「そうだったわね!かなめちゃんにも、もちろん感謝してるわよ」

 

 恰幅良い餡庵の女主人、総司の母美里が会話に加わってくる。美里は、最近昔のように明るくなった天女が、自分の事のように嬉しかった。

 

「こうしてたい焼きを頬張ってる天女ちゃんを見ると、昔を思い出すわね・・・よく、口の周りをあんこだらけにしてたっけ・・・その都度天満ちゃんが口を拭いてくれてたわねぇ」

 

「おばさん、天満ちゃんって?」

 

 かなめとなみは、初めて聞く名に首を捻り、思わず美里に問うと、

 

「私のお姉様よ!もっとも、私も良く覚えてはいないんだけれど・・・10年前に、お父様と修行の旅に出て以来、会っていないの」

 

「じゅ、10年も!?天女さんも、色々あったんですねぇ・・・」

 

 天女に悪い事を聞いたかなと思ったかなめとなみだったが、天女はさして気にしてはいないようだった。

 

「気にしないで、でも、優しいお姉様だったのは覚えている・・・私、お姉様に憧れて、もっとお淑やかにならなきゃ、そう思ったのを覚えているわ」

 

「そうだよな、あの頃のお前、ショートカットで男勝りだったからな・・・お前を男の子と勘違いしてた奴らも、結構居たんだぜ!ハハハハ」

 

 帰ってきた総司が突然会話に加わり、天女をからかうと、天女は顔を赤くして五月蠅いと文句を言う、その様子を、かなめとなみは苦笑を浮かべながら見ていた。

 

(そう・・・天音ちゃんはまだ、天女ちゃんに本当の事教えてないのね?)

 

 愁いを帯びた顔になって、美里は天女に哀れみの視線を向けていた。

 

 

 餡庵を出た三人だったが、帰ろうとしたかなめとなみを、天女は家に寄っていかないと誘う、二人も承諾し、三人は天女の家に向かっていた。三人は、少し大きな公園の辺りが、魔空間に引き込まれているのに気付き、呆然とする。三人は表情を引き締めながら、公園に歩を進める。幸い日も暮れかけていて、子供達の姿など見当たらず、三人はホッとするも、天女は二人に、

 

「魔空間・・・かなめちゃん、なみちゃん、油断しないで!」

 

「はい!」

 

「まあ、デザート食べてる時じゃなくて、良かったですけどね」

 

 緊張感の無いかなめの言葉に二人は苦笑するも、

 

「おやおや、魔空間の中で笑っていられるとは・・・随分余裕でいらっしゃいますね?」

 

 舌をチョロチョロだしながら、口元に笑みを浮かべるナーガ、舌をチョロチョロ出すのはこの男の癖のようである。ナーガの出現に表情を引き締める天女達、

 

「見るピピ!あそこにいるのは・・・」

 

「ああ、あの時、フェニックスを倒した・・・」

 

「あの時の少女ティティ・・・」

 

 あの時の事を思い出した三人の妖精が、天女を見ると、天女は何処か不思議な感覚を覚えながら、少女を見つめていた。

 

「気になりますか?直に彼女の事を詳しく教えて差し上げますよ」

 

 ニヤリと口元に笑みを浮かべるナーガに、ゆっくりと近づいてくる天満は、不服そうに文句を言い出す。

 

「ナーガ、私に会わせたい奴とは、天女の事か?だったら必要無い!まだ、未熟な此奴に、話す言葉など・・・無い!!」

 

 天女に冷めた視線を浴びせる天満、天女は、思わずあの時の天満の蔑みの視線を思い出すのだった。

 

「いえいえ、違いますよ!そろそろ私の気配を感じ、駆けつけてくる頃だと思いますがね・・・噂をすれば何とやらですね」

 

 ナーガに釣られるように、一同の視線がナーガの見ている方向を見ると、そこにはナーガの気配を感じ、駆けつけた天音の姿があった。驚く天女は、天音に思わず声を掛ける。

 

「お母様、どうして此処に?」

 

 天音はその問いには答えず、一同を見回すと、天満の顔を見て驚愕の表情を浮かべた。それを見たナーガは、愉快そうに舌をチョロチョロ出して楽しんでいた。

 

「天女ママが、どうして魔空間で動けるピピ?」

 

 魔空間で動いている天音の姿に妖精達は驚くも、妖精達の言葉が聞こえたのか、その疑問にナーガが答える。

 

「動けて当然ですよ!彼女こそ、20年前、我らの大いなる目的を阻んだプリキュアなのですからね・・・ですよね、キュアスワン!!」

 

 口元に笑みを浮かべるも、20年前の怒りからか、時折憎しみの籠もった目を、天音に見せるナーガ、困惑する一同が静まりかえるも、その静寂を破り、大声を出す者が居た。天満である。

 

「貴様ぁぁ!よくも、私の前におめおめ姿を現わしたな!!私と父を捨てた怨み・・・今こそ晴らしてやる!!カァク!!!」

 

 天満のパートナーカァクも、天音がプリキュアと知り驚愕するも、天満に呼ばれ頷くと、

カァクが首に駆けているクリスタルフィオーレから、虹の光が天満に向けて照射される。天満は、首に掛けていたシャイニークリスタルを取り出し、虹の光を吸収し輝き出すと、

 

「プリキュア!デルタフラッシュ!!」

 

 三角形の虹の光が、天満を包んでいく、黒い黒髪が束ねられ、ポニーテールへと変貌し、胸の中心部にシャイニークリスタルが装着され、フェニックスのようにチャイナ服のような黒き衣装が天満を包んでいく。背中から生えた黒き翼を肩まで覆い、プリキュアへと変えていく。

 

「天空の使者・キュアクロウ!・・・推参!!」

 

(まさか、天満もプリキュアに選ばれていた何て・・・)

 

 天音は驚き呆然とする・・・

 

 その反応を、楽しそうにナーガは見つめていた。

 

 天満は天音を睨み付けると、突進し攻撃を仕掛ける。天音は何とか攻撃を躱し続けるも、クロウを愛おしげな瞳で見つめる。

 

「何だ、その目は!?私を・・・私を捨てた癖に・・・そんな目で見るなぁぁ!!」

 

 混乱するクロウの胸の内を感じた天音は、敢えてクロウの攻撃を浴び吹き飛ぶ、天女から悲鳴が溢れると、天女は直ぐさまピッピにプリキュアの力を解放するように頼んだ。遅れてかなめとなみも、チュッチ、ティティを見ると、頷く二人、三人に妖精達からプリキュアの力が照射される。

 

 三人が並び、それぞれのシャイニークリスタルが輝いた時、

 

「「「プリキュア!デルタフラッシュ!!!」」」

 

 三人の声がハモリ、プリキュアへと変えていく、

 

「天空の使者・キュアフェニックス・・・推参!!」

 

「大地の使者・キュアアース・・・参上!!」

 

「海洋の使者・キュアオーシャン・・・見参!!」

 

 三人のプリキュアがポーズを決めると、素早く天音を庇うように前に立ち、クロウと睨み合いになる。ヨロヨロ立ち上がった天音は、

 

「止めなさい、天満!天女!姉妹同士で戦う何て・・・止めて!!」

 

 天音の言葉に、三人のプリキュアに動揺が走った。

 

「お、お母様・・・今何て?この人が、キュアクロウが私の!?」

 

「ええ、ええ!あなたの姉、柳生天満よ!!天満、あなたを連れ出す羅蛇を、止めきれなかったのは私の責任・・・責められても仕方が無い・・・でも、妹の天女と戦うのは止めて!!」

 

「黙れぇぇ!!父と私を追い出したのは、お前だろう?何が私を連れ出す父を止められなかっただ!!」

 

 天音の言葉を否定するクロウ、フェニックスの頭の中は、グチャグチャに混乱していた。動揺するフェニックスを、心配そうに見守るアースとオーシャン、そして、三人の妖精達、

 

「いえいえ、キュアスワンの言っている事は、本当の事ですよ!元々羅蛇は、オロチの血を引くあなたとフェニックスを、我らの下に連れ帰るつもりだったようです・・・そうですよね、羅蛇?」

 

 口元に笑みを浮かべたナーガが、上空を見上げると、次元を切り裂き羅蛇が姿を現わした・・・

 

3、プリキュアレジェンド

 

「随分早かったですねぇ・・・ですが、あなたに私の邪魔をする権利はありませんよ!!キュアクロウ、キュアフェニックス、あなた達二人は、羅蛇、キュアスワンの二人から生まれた、オロチ様の血を引きし、我らの同胞でもあるのです!!」

 

 既に知っていたクロウに、さしたる動揺は見られなかった。だが、フェニックスは違っていた・・・

 

「私が、オロチ八人衆の娘・・・私の中には、邪神の血が混じっている・・・というの?」

 

 フェニックスの脳裏に、暴走状態だった記憶が甦ると、フェニックスは頭を抱えうずくまる。咄嗟にフェニックスを心配そうに介抱するアースとオーシャン、縋るような目で母天音を見つめると、

 

「う、嘘・・・ですよね?お母様、嘘だと言ってください・・・」

 

「天女・・・あなたに語るには、まだ早すぎると思っていた・・・だから、あなたの父と天満は、修行の旅に出たと教えて居たの・・・20年前、魔空間に封じたオロチ八人衆の中で、羅蛇だけはこの世界に残っていたの・・・ある時、偶然にも羅蛇と街中で出会った私は、羅蛇と決着をつけるべくプリキュアとなって戦った。勝敗は決しなかったけれど、羅蛇は自らの負けを認め、私の下に置いて欲しいと頼んできたの・・・」

 

 天音の視線が、上空にいる羅蛇を見つめる。愛憎入り交じった複雑な表情を浮かべて、

 

「最初は、羅蛇を監視する名目で家に下宿させていたわ・・・でも、何時からか私は羅蛇に惹かれていった。私達が結ばれたのも、そう遠くなかった・・・天満、天女も生まれ、羅蛇も、一人の父親として、私の夫として、私はプリキュアだった事も過去のものとして、幸せに暮らしていた。10年前のあの日まで・・・」

 

 天音は、羅蛇がこの世界に残った目的は、デーモンストーンについての情報入手、プリキュアの秘密を知る事、邪神を封印している、戒めの祠を探索する事、それらの指示が、魔空間にいる魔蛇月から、未だに送られてきている事を知る。

 

 羅蛇に真意を問うと、羅蛇はあっさり事実を認め、潔く柳生家を去ろうとした時、幼子で何も知らなかった天満が近づいて来ると、羅蛇は天満を抱え魔空間へと消えていった。

 

「羅蛇の本心を・・・行動を止められなかった私の責任は、重い!天満にも、天女にも、辛い思いをさせてしまった・・・」

 

 キュアオーシャンは、相手の心理を読み取ることが出来た・・・

 

 オーシャンは、羅蛇の心の底にある真意を感じていた。

 

「おば様・・・あの人の本心は、ナーガが言うのとも、おば様が思っているのとも、違う気がするんです・・・」

 

 オーシャンの言葉を聞いた羅蛇は、オーシャンの力に少し驚いた表情を見せるも、

 

「あまり、人の心の中を覗くのは感心せんな・・・海洋のプリキュアよ!!」

 

 羅蛇からオーシャンに向けて、衝撃派が浴びせられる。悲鳴を上げたオーシャンだったが、羅蛇が手を抜いているのは明かであった。

 

「父は自分で去ったと言うのか?戯れ言を言うな!!」

 

 そうは言いながらも、クロウは10年前の記憶を、必死に思い出していた。母、天音が語っていたように、クロウの記憶の中で、幸せな日々が思い浮かんでくる。天音が自分を捨てる理由が、思い浮かぶ事は無かった。クロウもまた、すがるような目を羅蛇に見せるも、羅蛇は目を瞑って腕組みしたままだった。少しすると羅蛇は目を開き、

 

「天満、真実を知られた上は、最早お前は用済み・・・天音の下に帰るがいい!!」

 

「そんな・・・どうして、どうしてですか?」

 

 クロウの問いかけに答える事もなく、羅蛇は沈黙したままだった。

 

(ナーガめ・・・何処まで嗅ぎつけた!?このまま俺の側に居れば、天満の身が危うい・・・許せ、天満)

 

 羅蛇は、オーシャンが言っていたように、心の奥底で何かを思案していて、天満の身を案じ、あのような発言をしていた。

 

 一同の隙を付き、ナーガが戦意を失っていたフェニックスの背後に現われると、フェニックスの額に、ヘッドバンドのような物を強引に取り付ける。それはまるで生きているかのように、フェニックスの額に取り憑き、蠢き出す。

 

「こんにゃろう、何しやがる!」

 

「お止めなさい!!」

 

 気付いたアース、オーシャンが、ナーガに攻撃を仕掛けるも、ナーガは二人の攻撃をかいくぐり、距離を取ると、

 

「ハハハ、この瞬間を待っていた!さあ、目覚めなさい!フェニックス・・・オロチ様の血を解放するのです!!」

 

 その言葉を合図にしたように、フェニックスが頭を抑えて苦しみだす。その尋常じゃない様子に、一同は驚愕する。

 

「フェニックス・・・どうしたピピ?天女、天女!!」

 

 悲痛の表情でフェニックスを、天女の名を呼ぶピッピ、アース、オーシャン、そして、天音も声を掛けるも、フェニックスから発せられる禍々しい気は、勢いを衰える事は無かった。

 

「ナーガ!天女に何をしたの?」

 

 憎らしげにナーガを睨み付ける天音の問いかけに、薄ら笑いを浮かべたナーガは、

 

「な~に、強制的にフェニックスの中に眠る、オロチ様の血を覚醒させて上げたのですよ・・・そして、彼女は私の命令には逆らえない!!さあ、フェニックス!この者共を・・・皆殺しにしなさい!!」

 

 ナーガの言葉に応えるように、咆哮を上げたフェニックスの瞳は金色に輝き、シャイニークリスタルはどす黒く変色した。

 魔の戦士と化したフェニックスは、先ずクロウに襲いかかると、戦意を失っていたクロウを一方的に痛めつけた。悲痛な声を上げるクロウ、

 

「止めてぇ、天女!目を、目を覚ましなさい!!」

 

 涙混じりに絶叫する天音の声も届かない!

 

 フェニックスは、グッタリしたクロウを空中に投げ飛ばすと、炎の翼で貫く、嘗てとは逆のように錐揉みじょうに落下していくクロウを、アースとオーシャンが何とか受け止める。

 

「もう、もう、止めてよ!あたしだよ、かなめだよぉぉ!!」

 

「天女さん、なみです!しっかりして下さい!!」

 

 そんな言葉も届かず、フェニックスは邪魔だとばかり、アース、オーシャンに攻撃を加えると、圧倒的な力の前に、二人は為す術もなくダメージを受けていく。

 

 

「どうです、キュアスワン・・・自分の娘同士が殺し合う、最高のショーじゃないですか?悔しいですか!?今の何も出来ない自分が、悔しいでしょうね・・・でもね、私が味わった屈辱は、こんなものではまだまだ、晴れませんよ!!さあ、フェニックス、クロウに止めを刺しなさい!!!」

 

 ナーガの指示通り、上空に舞い上がったフェニックスが力を溜め始める。ファイアーソードを取り出すと、黒き炎の剣となり現われる。

 

 天音は自身のシャイニークリスタルをギュッと握りしめるも、今のプリキュアになれない自分には、為す術がない事に、心が張り裂けそうになる。

 

「羅蛇、お願い・・・天女を、天満を、助けて!!羅蛇!!」

 

 自分には為す術がない天音が、羅蛇に懇願するも、羅蛇は拳を握りしめたまま沈黙を貫く、天音は駆け出し、クロウの前に出ると、両手を広げクロウの身代わりになろうとする。

 

(お・・・母様)

 

 朦朧とする意識の中、母の深い愛情を感じ、涙を流すクロウ、カァクが、チュッチが、ティティもクロウの前に出て両手を広げる。ヨロヨロしながらもアース、オーシャンも駆けつけ両手を広げた。

 

「天女、目を覚ますピピ!天女はピッピの大事な、大事なパートナーピピ!」

 

 フェニックスの攻撃から、クロウを守ろうとする一同の思いが、フェニックスの心に響いてくる。

 

(柳生天女・・・このままで良いのですか?あなたは、自分の中に眠る、魔の力に再び敗れるのですか?今の未熟なあなたに、私を纏うことは出来ない・・・ですが、あなたが望むなら、一度だけ力を貸しましょう!!柳生天女、あなたはどうしたいのですか?)

 

 心に話し掛ける何者かの声に、徐々に天女の意識が甦ってくる。

 

(私は・・・)

 

「さあ、殺しなさい!!殺せ、フェニックス!!」

 

 ナーガの命令を受け、剣を構え一同に突撃するフェニックス、加速を付けたフェニックスが、ピッピを貫くかと思われた。が、咄嗟に自らの左手で剣の攻撃を止め、ピッピに刃が届く事は無かった。フェニックスは、左手から血を流しながら、

 

「ゴメン・・・ピッピ!みんな・・・本当にゴメンナサイ・・・」

 

 涙を零し、一同に謝るフェニックスの額に付いたヘアバンドのような物が燃え落ちる。それと同時に、シャイニークリスタルから炎の鳥が姿を現わし、飛び去っていった。

 

「な、何だと!?自力でオロチ様の血を破ったと言うのか・・・信じられん?」

 

(だが、今の炎の鳥は一体!?)

 

 困惑するナーガに、攻撃を仕掛けようとするアース、オーシャンだったが、二人の体力も底を突きそうな状況で、肩で大きく息をする。

 

「そんな姿で、私に挑もうなどと・・・身の程を知りなさい!!」

 

 ナーガの目が金色に輝き、二人に対し、連続に突風を浴びせ切り刻んでいく。

 

 クロウ、そして、変身が解けて意識を失った天女を介抱する天音は、

 

(このままでは・・・全滅してしまう!ディオーネ様、一度、一度で良い・・・この子達を救う力を私に・・・私に・・・)

 

 シャイニークリスタルを握りしめ、ディオーネに祈り続ける天音、その心中を察したのか、沈黙を貫いていた羅蛇が、意外な言葉を発した。

 

「天満、お前のプリキュアの力を、天音に託して見ろ!同じ天空のプリキュア同士なら、あるいは・・・」

 

 クロウ、天音が、意外そうに羅蛇を見るも、この状況を覆す可能性に、二人は顔を見合わせ頷くと、クロウは目を閉じ念じ始め、クロウのシャイニークリスタルから、虹色の光が天音のシャイニークリスタルへと照射される。それと入れ替えにクロウは天満の姿に戻り、カァクが心配そうに天満に寄り添う。

 

 天音のシャイニークリスタルが、徐々に虹色になっていくも、完全に輝く事は無かった。

 

(天満の力を借りただけでは、おそらくプリキュアになれるのはほんの数分・・・でも・・・)

 

「プリキュア!デルタフラ~~ッシュ!!」

 

 20年の時を超え、今天音がプリキュアへと再び変身しようとしていた。

 

 天音の身体を三角の虹色の光が覆っていくと、天音は何も身に付けていない感覚を感じる。天音の妖艶な肉体を、輝く光が覆っていくと、白きチャイナ服のような衣装を身に纏い、スリットから覗く太股は、優雅さと妖艶さを醸し出していた。髪型は、ボブカットはそのままだが、少し青みを帯びていく。白き翼が羽ばたく様は、天使の羽のようであった。

 

「天空の使者・キュアスワン!・・・推参!!」

 

 プリキュアレジェンド、キュアスワン復活!!

 

4、柳生天女、暁に消ゆ!

 

「キュ、キュアスワンだとぉぉ?バカな・・・妖精も居らぬのにどうして!?」

 

「ナーガよ、プリキュアの力を甘く見たな?それが、お前の敗因だ!!」

 

 キュアスワン復活に驚愕していたナーガに、羅蛇は厳しい視線を浴びせる。

 

「敗因だとぉぉ!?私を甘く見るなよ、羅蛇!!」

 

 ナーガは20年前の事を思い出したのか、逆上しながらキュアスワンに向かって無数の突風を浴びせるも、

 

「羽ばたけ翼よ!プリキュア!トルネードウイング」

 

 スワンの翼が羽ばたくと、前方に風が生じ、その風を両手で円を描くように回転させると、風は竜巻を起こし、凄まじい威力となってナーガへと向かっていく。

 

「グゥゥオオ!!」

 

 竜巻に飲み込まれたナーガが、高速に回転しながら上空に吹き飛ばされる。

 

「こんなものでぇぇ!ハァァァ!!」

 

 両手を広げ、何とか攻撃を耐えたナーガだったが、スワンの姿を見失う、

 

「ど、何処だ!?」

 

「後ろよ!!」

 

 振り向いたナーガの顔面に、スワンの右ストレートが炸裂する。

 

「今のは、天満の分!」

 

 ナーガに一方的に攻撃していくスワンは、それぞれの一撃にアース、オーシャン、妖精達の名を加える。

 

「これは天女の分!」

 

 ナーガの後頭部に、かかと落としを浴びせ、ナーガは地上に激突する。

 

「グゥゥゥ・・・お、覚えていろぉ、キュアスワン・・・次こそは!!」

 

「あなたに・・・次は無い!!戒めの光に捕らえよ!プリキュア!クリスタルトライアングル!!」

 

 スワンが両指を付け三角形にすると、両手から虹の光が照射され、ナーガを三角形のクリスタルの中に閉じ込める。

 

「こ、これは!?おのれぇぇ、こんな事で、私は、私は」

 

「これは、私の分よ!・・・滅!!」

 

 気合いと共に、両手で作った三角形に組んだ指を、一気に握りしめると、クリスタルの中で爆発を起こした。

 

「凄い、凄い強さだね・・・」

 

「ええ」

 

 天女を介抱するアースとオーシャンは、スワンの強さに驚きの声を上げる。

 

 着地したスワンは、元の天音の姿に戻り、フゥと息を吐くと、天女、天満を見つめて母の顔に戻る。

 

「天音、天満を頼んだぞ!!」

 

「ま、待って、羅蛇!」

 

 呼び止めようとした天音の言葉を無視し、羅蛇は次元の狭間へと消えて行った。

 

 戦いは終わった・・・

 

 だが、それぞれの心に複雑な思いを残す・・・

 

 

 夜、柳生邸・・・

 

 かなめ、なみ、妖精達も、天女、天満の身を案じ、柳生家に一同は集まっていた。

 

 この事を隠し通す事は難しいと相談し、ピッピ、カァクは、天空の長老に今回の顛末を報告していた。

 

「う~む・・・恐れていたことが起こったか・・・柳生天女、柳生天満、共に天空のプリキュアとして失格じゃな!!」

 

「ま、待つピピ!確かに天女は、邪神の血に目覚めたけど・・・自分の力で跳ね返したピピ!」

 

「天満だってそうカァ!これには色々訳があるカァ」

 

「黙らっしゃい!!大地、海洋のプリキュアも居るんじゃ、ピッピ、カァク、お前達、早々に戻って来い!!直接問い詰めてくれるわ!!!」

 

 長老に雷を落とされ、しょげ返る天空の妖精達、

 

「偉そうに何言ってるチュチュ」

 

「そうよ、自分の目で見てもいないのにエッラそうにさ!!」

 

 かなめとチュッチが、長老の言葉に不満そうに文句を言う、なみも頷き、

 

「そうですわ!私とかなめは、天女さんが居なければマケンナーにされたままでしたわ!嘗て暴走した天女さんから、私達を救って下さったのは天満さんですし・・・お二方をプリキュア失格扱いは、納得出来ません!!」

 

 何時もの穏やかさは影を潜め、険しい表情で天空の長老に抗議するなみ、

 

「いや、それはそうだが・・・これは、天空の関係者の問題であってだな」

 

 困惑した長老が、二人を宥めに掛かる。天女は二人の言葉に感謝しながらも、

 

「ありがとう、かなめちゃん、なみちゃん、ピッピ達も・・・でも、今の私は、何時またオロチの血に目覚めるか分からない・・・そんな私がプリキュアでいるのは・・・」

 

 俯いた天女の肩に、天音が手を乗せ微笑むと、天女は涙を流した。

 

「抗議は受け付けん!柳生天女、柳生天満、二名は天空のプリキュアとして失格!!除名処分と・・・」

 

「お待ち下さい!!」

 

 長老の言葉を遮った者が居た・・・

 

 天音は、その声を懐かしそうに聞いていた。

 

「何じゃ、神官スアロか・・・どうした?嘗てキュアスワンのパートナーだったそちの言葉は、おいそれとは聞けぬぞ?」

 

「はい、ですが敢えて言わせて貰います!その二名の除名処分、私も納得致しかねます。と、言うのも、それでは二名を選ばれたディオーネ様の目が、節穴だったと取られます!!」

 

「何ぃぃ!?・・・う、う~む!!それはそうじゃが・・・」

 

 スアロの言葉に同意したように、ピッピ、カァクが、かなめ、なみが、チュッチ、ティティが、皆二人を庇うように、天空の長老に訴え掛ける。

 

「分かった、分かった・・・だが、カァク!お前は一度、報告に来るのだぞ?では、柳生天女、柳生天満、両名はお咎め無しとする!!」

 

 一同から歓声が上がると、天女は号泣しながら一同に感謝するのだった。

 

(ありがとう、スアロ!それに天女・・・良い仲間に巡り会ったわね・・・)

 

 天音の目からも、ポロリと涙が零れた・・・

 

 ささやかな食事会が催されていた。広間で食する一同の中に、天満、天音の姿は無かった。天音は傷ついた天満の介抱で側に付いていた。

 

「どう、あなたの部屋は!?10年前のままにしてあるわ・・・少しは覚えているかしら?」

 

 天満は懐かしそうに周りを見ると、少し笑顔を見せ「はい」と頷いて見せた。天音も懐かしそうに天満と10年振りの親子水入らずの会話を楽しんでいた・・・

 

 暫くすると、ドアをノックする音が聞こえ、「どうぞ」と答える天音、中に入ってきたのは天女であった。天女は畳の上に正座をすると、深々と二人に頭を下げ、

 

「お姉様・・・この度は申し訳ありませんでした!!全て私の不徳の致すところ、その上、お姉様をそのような惨たらしい姿にしてしまい・・・何とお詫びをすればよいか・・・」

 

「天女、もう良い・・・此度の原因は、私にもあるんだからな!だが、お前の心の中に眠るオロチの血・・・自らの力でコントロール出来るようにしなければな」

 

 頭を上げた天女は、天満、天音を見ると頷き、

 

「それについて、お母様にお頼みしたい事があります!!」

 

「私に?・・・何かしら!?」

 

 そうは言いながらも、薄々天女の考えが分かる気がする天音であった・・・

 

 

 食事会が終わり、天女はかなめ、なみ、三人の妖精達を自分の部屋に招くと、

 

「かなめちゃん、なみちゃん、ピッピ、チュッチ、ティティ・・・あなた達に頼みたい事があるの!」

 

「あたし達に?」

 

「何でしょうか?」

 

 一同は顔を見合わせながら、天女の言葉を待った。天女は一度深呼吸すると、

 

「私は、自分の中に眠る邪神の血に打ち勝つ為に・・・修行の旅に出ようと思っているの!でも、そうするとこの街を離れなければならない!こんな事言いづらいのだけれど、かなめちゃん、なみちゃん、二人にオロチ八人衆との戦いを、任せて良いかしら?今の私が残っていても・・・また同じ過ちを繰り返さないとも限らない!私は、自分の中に眠る邪神の血に・・・打ち勝ちたい!!」

 

 天女の熱き闘志を感じた二人は、天女に笑顔を向けると、

 

「天女さん・・・わかりました!天女さんの分まで、あたしとなみが頑張ります!!ねぇ、なみ?」

 

「うん・・・天女さんが戻ってくるまで、私達で守って見せますわ!!」

 

「ありがとう、かなめちゃん、なみちゃん!!」

 

 三人が手を取り合うと、互いの健闘を誓い合った。

 

「天女、当然ピッピも一緒に行くピピ」

 

 ピッピの言葉に首を振る天女に、ピッピはどうしてかと問うも、今回は自分の力で乗り越えたいと語り、天女はピッピに、自分の代わりにかなめやなみの力になって上げてと頼むのだった。

 

 手早く身支度を終えると、天女の部屋で、三人と妖精達は仲良く就寝した。この日ばかりは、ピッピも鳥籠から解放されていて、ピッピは天女に甘えるように天女の布団の上で眠りについた・・・

 

 まだ、夜明け前ながら、天女は文武町を旅立とうとしていた。その姿を見送る柳生家の面々、かなめとなみ、妖精達だった。

 

「天女、まずは奈良の本家に出向き、そこで精神修行をしてらっしゃい!きっと今のあなたに役立つ筈だわ」

 

 天音の言葉に頷いた天女は、表情を引き締めると、

 

「では、行って参ります!必ずオロチの血に打ち勝ち、戻って来るわ!!かなめちゃん、なみちゃん、それまでこの街をお願い!!」

 

「うん、なみを始め、みんなで乗り切ってみせるから」

 

「天女さんはご自分の修行、頑張って下さい!!」

 

 天女は頷き、一同に笑みを浮かべると旅立つ、ソワソワしているピッピに気付いた天音は、ピッピに笑顔を向けると、

 

「行きなさい・・・天女の修行には、必ずあなたの力も必要になるわ!!」

 

 ピッピは嬉しそうに羽ばたき、天女の側に飛び立つ、ついてくるピッピに何か言うものの、ピッピは天女の肩に止まり、天女は何か呟くと再び歩き出した。

 

 柳生天女は、自らの心身を鍛える為、暁の中を旅立って行った・・・

 

               第五話:プリキュア失格!!

                    完

 

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