第七話:捕らわれたプリキュア!
1、魔蛇月の企み
武道学園はこの日、一学期の終業式を向かえた・・・
柳生天女は、修行の旅から未だ帰らず、かなめとなみは夏休みを迎えようとしていた。
屋上に向かった二人は、チュッチ、ティティと合流し、明日からの修行についての打ち合わせをしていた・・・
「でも、あたしは陸上部の練習があるから、毎日とは行かないんだよね・・・」
「そうよね・・・私も、華道や弓道のお稽古を疎かに出来ないし・・・お互い都合が良い日にちを決めて、一緒にでもしようか?」
互いに、日常生活も疎かには出来ないと考えているかなめとなみの姿に、二人の妖精は不満そうだった。
「かなめ、なみ、お前達、考えが甘いチュチュ!そんな事じゃ、あの時の力を引き出すのは、到底敵わないチュチュ・・・少しは天女を見習うチュチュ」
「そうティティ・・・なみ、かなめ、もうちょっとやる気を見せて欲しいティティ」
腕組みして二人を見るチュッチ、手をバタバタさせて二人を励ますティティ、かなめとなみは顔を見合わせると、
「そりゃあ、そうだけど・・・」
「私達にも、都合というものがあるんですもの・・・」
気まずそうにしながらも、妖精達に反論するかなめとなみ、腕組みしていたチュッチとティティが、いきなりかなめ、なみに成りきり、小芝居を始めた。
互いの力不足を感じた二人が、みっちり修行して再会しようと握手をする。かなめと、なみは、目を点にしながら小芝居を見続けると、最後に背中合わせになったチュッチとティティが、
「かなめ、あなたには負けないティティ」
「なみ!お互い修行に励んで、二年後に文武町で会うチュチュ」
二人で再会を誓い合い、「二年後に、文武町で!」と声をハモらせ、反対方向に歩き出す二人に、かなめとなみは目が点になるも、直ぐに我に返ると、
「ふざけるなぁ!あたし達は中学生だ!!二年も修行に出れるかぁぁ!!!」
「そうよ、私達の本文は、あくまで学生何ですからね!!」
チュッチとティティの言葉に、思わず二年後の自分達の姿を想像してしまった二人は、慌てて二人の言葉を否定した。
「どうしたの!?言い争い何かして?」
突然屋上に現われたラミアの姿にパニクる一同、かなめとなみは、妖精達の姿がラミアに見えないように、ラミアの視界を遮り、妖精達は慌てて姿を隠した。
かなめとなみは、この数日の間にラミアとの交流を深めていた。それが、ラミアの計画通りと知らず・・・
「ラ、ラミア!?や、やだなぁ、あたし達喧嘩何かしてないよ!ねぇ、なみ!!」
「うん、明日からの楽しい夏休みに、何しようか二人で決めてたのよね!かなめ!!」
引き攣った笑みを、ラミアに浮かべるかなめとなみの姿に、ラミアは二人を見るとキョトンとするのだった。ラミアは直ぐに表情を引き締めると、注意深く二人を観察しだした。
(大地かなめ・・・キュアアースか、ウロボロスが手に入れ損なった黄のデーモンストーン!彼女が持っている確率が高い・・・魔蛇月様の報告によると、大地かなめは嘗て、首に茶のデーモンストーンを掛けて居たという・・・何とか確認したいが・・・)
「そう・・・まあ良いわ!ところで、前から気になっていたけど・・・かなめ、なみ、あなた達がお揃いで首から掛けているペンダント、中々綺麗ね!ちょっと見せて貰っても良いかしら?」
ラミアは、二人のシャイニークリスタルを引き合いに出し、かなめがデーモンストーンを持っているか確認しようとする。かなめとなみは顔を見合わせると、
「取り外して見せるのはチョットねぇ・・・首に掛けたままなら良いよ!」
「私もそれならば良いですわ」
かなめとなみが、ブレザーに隠れているシャイニークリスタルを取り出し、首に掛けたままラミアに見せる瞬間、かなめの首から、シャイニークリスタルと一緒に、黄色い球体の物がぶら下がっているのを確認するラミア、
(やはり思っていた通りね・・・ン?海堂なみにも赤い球体が・・・彼女が持っていた青いデーモンストーンは、既に我らが手に入れている・・・どういう事!?)
ラミアが知らないのも無理は無く、美里同様、赤のデーモンストーンを所持していた天音は、二人にプリキュアとして、戦士としての自覚を持たせる為、自身が管理していた赤のデーモンストーンをなみに託していた。
「お揃いのペンダント何て、仲が良いのね?」
両手に取って、二人のシャイニークリスタルを見たラミアは、ありがとうと二人の手に戻した。二人はシャイニークリスタルをブレザーの中にしまい込むと、
「まあ、色々あってね!そうだ、あたし達仲良くなったし、ラミアにも、あたし達と何かお揃いの物、身に付けて貰おうか?」
「良いわね!じゃあ、そうと決れば三人でショッピングに行きましょう!!」
かなめとなみは、ポカンとしているラミアに、先に下で待っててと言うと、妖精達を鞄に入れた後、三人でショッピングに向かうのだった。
ラミアに取って、初めて見る人通りの多いショッピングモールは、刺激的であり、興味深かった。街行く若い子達が身に付ける、おしゃれな服、アクセサリーなど、ラミアは擦れ違う人々を観察していた。
(こっちの世界には、私の知らない沢山の事があるようね・・・そう言えば、昔天満がこの世界の事を話してくれた事があった・・・)
ラミアは、魔蛇月が、羅蛇、ナーガの協力の下、作り上げられた人工生命体であった。コブラとウワバミは、魔蛇月の側近であるラミアに嫉妬し、事ある事に敵対心を燃やしていたが、天満は、ラミアに妹天女をダブらせたのか、同じ側近同士、親近感を持ったのか、ラミアの事を可愛がっていた。その天満も魔空間を去り、ラミアは、魔蛇月と居る以外は、ほとんど魔空間で一人で過ごしていた。だが、人工生命体の彼女は、寂しいという感情を感じる事は無かった・・・
「ラミア、こっち、こっち!こっちにオシャレなアクセサリーショップがあるよ!」
かなめがラミアを手招きして呼ぶと、ラミアはゆっくりかなめとなみの側に歩いて行った。
「本当、中々おしゃれなお店屋さんね・・・アッ、かなめ、ラミアさん、これ何かどうかな?」
なみが手に取ったのはハート形のブローチ、全部で4種類あるブローチの中心には、色違いに赤、青、黄、ピンクの模様が付いていた。
「へぇ、中々可愛いよね!イヤリングは没収されそうだし・・・ブローチなら、家の学校OKだしね!後はペンダントか、ブレスレット辺り何てどう?」
かなめの提案に頷くなみ、二人で色々盛り上がる中、ラミアはある商品の輝きに見入っていた。朱雀、白虎、玄武、青龍の四神を象(かたど)ったペンダントで、四点セットで売られていた。それに気付いたかなめとなみは、
「ラミア、それが気になるの!?な、中々渋い趣味してるわねぇ?」
「そ、そうね・・・でも、何か親近感あるわね」
四神とは、中国の神話、天の四方の方角を司る霊獣と呼ばれている。
東方を守護するのは、龍の姿をした青竜(せいりゅう)
南方を守護するのは、鳳凰と同一視される朱雀(すざく)
西方を守護するのは、白き虎の姿をした白虎(びゃっこ)
北方を守護するのは、脚の長い亀に蛇が巻き付いた姿をした玄武(げんぶ)
ラミアは、特に玄武が気になっていた。オロチ八人衆の魔蛇月に仕えるラミアは、亀と蛇の玄武の姿を興味深く見ていた・・・
天女はフェニックス、かなめとなみは龍虎の神獣に関わり合いを持っていた。二人も、何か惹かれるように、この商品を気に入っていった・・・
「結局、ブローチと四神のペンダントも買っちゃったね!朱雀は、天女さんが帰ってきたらプレゼントしようよ!」
「そうね・・・喜ぶかは微妙だけどね」
かなめの提案に、苦笑を滲ませるなみ、確かに、中学生の女の子が、四神のペンダントをプレゼントされても、喜ぶかは微妙であろう・・・
「天女?」
「あっ、ラミアは知らないよね・・・あたし達の一年先輩で、あたしとなみは凄くお世話になってる人なんだ!今事情があって休学してるんだけど・・・戻って来たら、ラミアに紹介するね!」
かなめの言葉に頷くラミアだったが、
(柳生天女・・・天満の妹か・・・そう言えば、私は見た事が無かった・・・)
ラミアは、まだ見ぬ天女に興味を覚えるのだった。
かなめ、なみの二人から、ラミアは玄武のペンダントをプレゼントされた。
(何だろう・・・この感情は・・・)
心の底に沸き上がってくる熱い思いに、ラミアは、知らぬ内にかなめとなみに向けて笑顔を向けるのだった・・・
その時、周りが静まりかえる・・・・
「な、魔空間!こんな時に・・・エッ?ラミア、あなた・・・動けるの?」
辺りが魔空間に引き込めれた事に気付くかなめとなみだったが、ラミアが魔空間で動けることに戸惑い、驚く、ラミアは表情に出さないようにするも、動揺していた。
(こんな時に・・・私の邪魔をするとは・・・)
「か、かなめ、何の事?魔空間って!?」
ラミアは、何の事か知らない振りをして惚けると、かなめとなみは顔を見合わせ、こちらもラミアに気付かれないように惚けるのだった。
「ラ、ラミア、何か妙な感じだから、向こうに先に避難してて、私となみは、ちょっと様子を見てくるから!」
「そう、分かったわ・・・二人共、気をつけて!!」
ラミアはそう言い残しその場を離れた。かなめとなみが辺りを警戒していると、黒いボンテージ服を着たコブラが姿を現わす。コブラは、かなめとなみを見付けるとニヤリと笑い、
「さぁ、お前らが持っているデーモンストーンを頂くとするかね・・・この種が何なのか、お前達にも分かってるだろうね?スゴイナー!プリキュアを倒せ!!」
コブラは近くに居た猫を、スゴイナーへと変貌させる。巨大化した猫は、更なる凶暴性を宿し、かなめとなみを威嚇する。
二人の妖精チュッチとティティが、自ら鞄から這いだし、かなめとなみにプリキュアの力を照射する。二人のシャイニークリスタルが虹色に輝いた時、かなめ、なみが同時に叫ぶ、
「「プリキュア!デルタフラッシュ!!」」
かなめとなみの身体を、プリキュアへと変えていった。
「大地の使者・キュアアース!・・・参上!!」
「海洋の使者・キュアオーシャン!・・・見参!!」
「「ふたりはプリキュア!」」
「魔を操る無法者よ!」
「聖なる力を受けてみなさい!!」
二人のプリキュアが、コブラを指差し啖呵を切った・・・
「またセリフが増えてるティティ」
「どうやら、これを暫く名乗る見たいチュチュ」
「二人共・・・五月蠅い!」
チュッチとティティを変顔になりながら睨むアースに、オーシャンは苦笑を浮かべた。
「行くよ、オーシャン!」
「ええ、アース!」
スゴイナー目掛け攻撃を開始する二人、アースのパンチを、オーシャンの蹴りを嘲笑うように、スゴイナーは素早く躱し続けると、二人の隙を付き強力な爪で引き裂き、吹き飛ばした。
「キャァァ」
「オーシャン!こんにゃろぉ~!!」
アースは両手を横に広げると、大地の力を借りて目の前に槍を出現させた。
「心にて、悪しき闇を突く!プリキュア!サンダースピア!!」
アースはスゴイナーに向けて連続突きを繰り出すも、スゴイナーは俊敏に躱し、逆に鋭い攻撃でアースの手からサンダースピアを吹き飛ばし、そのままアースを捕まえ締め付ける。
「ウワァァ!」
苦悶に歪むアースを、助けに向かうオーシャンだったが、スゴイナーの前にオーシャンも捕らえられる。
「ザマァないねぇ、プリキュア!さあ、スゴイナー、止めを刺しちまいな!!」
コブラの命令を受け、更に力を込めるスゴイナー、アースは左手を、オーシャンは右手を必死に伸ばし、互いに手を握り合う二人は、
「こんな所で負けられない!」
「ええ、私達は・・・負けないわ!!」
気合いを込めた二人の力が、スゴイナーを弾き飛ばすと、アースとオーシャン、二人は互いに見つめあい頷くと、
「大地の力よ!」
「海洋の力よ!」
「今、二人のプリキュアと共に!」
「聖なる力を解放せよ!」
二人のプリキュアが、まるで光を吸収するように輝くと、
「「プリキュア!スパイラル・スパーク!!」」
アースは右手を、オーシャンは左手を回転させていくと、回転が徐々に速くなり、スパークし出す。二人は回転を止め、思いっきり腕を突き出すと、螺旋の渦が放電しながら、スゴイナーを包み込んでいく。スゴイナーは為す術もなく倒され、元の猫に戻りその場に横たわった。
「チッ、合体技とは抜かったねぇ・・・」
コブラは忌々しげに舌打ちし、次元の狭間に撤退する。それと同時に、再び時が動き出す。二人も変身を解き、人通りの少ない場所に移動すると、チュッチ、ティティが大喜びで二人を称えた。
「二人共、凄いチュチュ」
「何時の間に、あんな技を身に付けたティティ?」
かなめは自信満々に鼻の穴を広げながら仰け反り、
「まあ、修行の成果って奴ね!どう?あたし達だって、ちゃんと修行に励んでるんだから!」
「ぶっつけ本番だったから、ちょっと心配だったけど、上手くいって良かったよね、かなめ!・・・あっ、ラミアさんは?」
辺りをキョロキョロするかなめとなみに、先程の二人の戦い振りを見ていたラミアが戻って来る。
(二人の絆の強さ・・・見せて貰ったわよ!)
ラミアの口元に、笑みが浮かんでいた・・・
魔空間に戻ったラミアは、魔蛇月にプリキュアに上手く近づき、友人となった事を報告するも、魔蛇月は何処か浮かない表情で報告を聞いていた。
「ご苦労!引き続きお前には、プリキュアに接触し続けて貰う・・・良いな?」
「はい、魔蛇月様!」
ラミアが下がった後、魔蛇月は腕組みして考え込む、
(どういう事だ?ラミアに感情など無い筈・・・だが、プリキュア共の話をする時、ラミアはどこか嬉しそうに俺に話す・・・まさかとは思うが、ラミアの心中に・・・羅蛇め、余計な物を加えおって・・・そろそろ頃合いかも知れんな)
魔蛇月は、デーモンストーンを奪い取る為、ラミアを使い、ある計画を実行に移そうとしていた・・・
2、ラミアの苦悩
夏休み・・・
かなめとなみは、早朝に柳生道場で精神鍛錬を、夕方までは、それぞれ部活や勉強、稽古に勤しむ生活をしていた。もちろん、中学生の二人はラミアを加え、三人で遊ぶ事も忘れては居なかった。
「ラミア、これがプリクラだよ!写真撮るよぉ!!」
初めて見る不思議な大きなボックスに、ラミアはキョトンするも、かなめとなみに半ば強引に連れ込まれると、三人で色々ポーズを取ったり、加工したりして楽しみ、プリクラを撮りまくった。自分の顔が何枚も映っている事に驚くラミア、感情を持たないラミアだったが、二人と居る時は、自然と笑顔が溢れるようになっていった・・・
(不思議だ?自分でも分からない・・・でも、かなめとなみと一緒に居ると・・・楽しい!)
二人と一緒に、こうして居られる時間が、何時しかラミアにとって幸せになっていった・・・
その間にもかなめとなみの二人は、オロチ八人衆のコブラ、ウワバミの襲撃を何度か撃退していた。二人も少しずつではあったが、プリキュアとして確実に成長していた・・・
8月になった・・・
ラミアに取って、束の間の安息の日々が終わろうとしていた・・・
「ラミアよ・・・大分プリキュア共も、お前を信頼するようになったな・・・そろそろ行動を移す時が来た!ラミア、今から俺が言う場所に、プリキュア共を誘き出せ、その隙を付き、ウワバミに行動を起こさせる。お前は動揺したプリキュアを倒せ!!」
魔蛇月の、何処か殺気の籠もった怒気に萎縮しながらも「はい」と返事を返すラミア、その表情は暗かった。自分の管理する場所に戻る時、ラミアは顔に包帯を巻いた少女、ウワバミと出会う。ウワバミは口元に笑みを浮かべると、
「あんた、私の足を引っ張らないでよね?ちゃんと魔蛇月様の言う通り、精々仲の良いプリキュア共を誘き寄せて置いてよね!!」
ラミアに皮肉混じりの言葉を吐き、ウワバミは魔蛇月の下に向かった。自分の管理する場所に戻ったラミアの脳裏に、かなめとなみの姿が過ぎる。
(遂に来てしまった・・・この日が来なければと、何処かで考えていた・・・こんな感情を持つ何て、私はおかしくなってしまったのだろうか?)
戸惑いながらも、自分の黒いワンピースに付いているブローチ、そして、胸にぶら下がる、玄武のペンダントを握りしめるラミアだった・・・
「かなめ、今日は随分ご機嫌じゃない?何かあったの!?」
かなめがお世話になっている、従姉の山地加代に聞かれたかなめは、鼻歌交じりに朝ご飯の支度をしていた。朝は基本かなめが家事を行ない、夜は、先に帰った者が家事をする決まり事を、二人で作っていた。加代は26歳、かなめとはちょうど一回り年が離れているものの、かなめを妹同然に可愛がってくれていた。加代もかなめ同様、茶髪のショートカットで、背は170cmを超える長身で、かなめは加代を羨ましがっていた。加代は、駅前でOLをしている・・・
「うん、これから友達からの誘いで、ピクニックに行くの!!」
「そう、まあ夏休み何だし、楽しんでおいで!でも、そろそろ宿題も始めなよ!じゃあ、行ってくるね!!」
加代はそう言うと、会社に出勤していった。加代が出勤した事で、隠れていたチュッチが出てくると、テーブルにあるパンに手を伸ばし食べ始める。
「遊ぶのも良いチュチュ・・・でも、ちゃんと修行も忘れるなチュチュ!」
「分かってるわよ!でも、ラミアからあたしやなみを誘ってくれる何て、嬉しくってさぁ・・・ほらほら、チュッチ、早く食べちゃってよね!後片付けもあるんだからさ!!」
みんなの分のお弁当も作り終わり、腕まくりしたかなめが、食器を流しに持って行き、洗い物を始める。
(本当に意外チュチュ・・・がさつに見えるかなめが、家事を得意にしてるとは・・・これも美味しいチュチュ)
「こら、チュッチ!何時も摘み食いするなって言ってるでしょうが!!」
かなめは、チュッチの手をピシャリと叩き、舌を出した。
意外に思えるが、かなめは体育の他に、家庭科も得意としていた。料理、裁縫の腕前は、学年でもトップクラスだった。逆になみは、勉強は学年でもトップだが、家庭科は尤も苦手としていた。
「なみさん、本当にお弁当は要らないんですの?」
「はい、お母様!今日はかなめが、みんなの分もお弁当を作って来てくれる事になってるんです!!」
なみは嬉しそうに母海堂春菜、父海堂剛史に話す。
海堂剛史は43歳、黒髪の短い髪に銀縁眼鏡を掛けていた。中年だがメタボな体型ではなく、スリムで自身も健康管理には非常に気を遣っていた。
この時剛史は、かなめの名字が大地と言う事までは知らなかった。かなめの父とは大学時代の友人で、かなめとなみは、まだお互い赤ちゃんの時に出会っていた事を、二人は知らない。
母春菜は37歳、背はなみより少し大きいぐらいで、髪は藍色で肩まで伸ばしていた。
二人とも優しく、忙しい中でも、毎日なみとは会話を欠かさない気配りさも持っていた。なみは、そんな二人が大好きだった・・・
「フフフ、なみにも良い友達が出来て、私も安心だよ!かなめさんとラミアさんと言ったか?今度家にも連れておいで!!」
「はい!でも、お父様、かなめはお父様がいらっしゃらない時に、何度か家に来てますわ!!」
「ほう、それは残念だねぇ!一度ご挨拶したいものだ・・・さて、では気をつけて行ってくるんだよ!」
「はい、お父様!」
剛史は、なみに気をつけて出掛けるよう促すと、会社へと向かった。家政婦の者が後片付けを始める。春菜に挨拶を済ませると、なみは自分の部屋へと戻った。部屋では先に食事を終えていたティティが寛いでいた。
「ティティ、今日は楽しみだね!!」
ウキウキしながらティティに話し掛けるなみに、ティティは溜息を付きながら、
「なみ、今日は許すティティ!でも、明日からはみっちり修行して貰うティティ!!」
なみはお手柔らかにと苦笑するのだった・・・
文武町駅前、朝9時半・・・
かなめとなみは、待ち合わせである駅前で、ラミアが来るのを今か今かと待っていた。もちろん、鞄の中にはチュッチとティティ、二人の姿があった。二人はハイキングに備え、足下はスニ-カー、かなめは、下はショートパンツ、上はピンクのTシャツを着ていて、なみは、ベージュのズボンと七分袖の白いシャツを着ていた。
「かなめ、なみ、待たせたわね!」
現われたラミアの姿を見た時、二人は目が点になる。それもその筈で、ハイキングには似つかわしくない、黒いワンピース姿だったのだから・・・
「ラミア・・・今日ハイキング行くんだよね?まあ、別に良いんだけど」
かなめの問いかけに、少し寂しげな笑みを見せるラミア、かなめとなみは、顔を見合わせ不思議そうにするのだった。
文武町から二駅程行くと、ハイキングに最適な野山があった。三人は奥へ奥へと入っていった。だが、鳥の囀り(さえずり)も、木々の囁きも止まったように静かだった。鞄の中に居た妖精達は、魔の気配を感じるも、ラミアが居る為喋る事も出来ず、唸り声を上げて、かなめとなみに異変を知らせようとしていた。二人もそれに気付き、ラミアにちょっと待っててと言い、場を外そうとした時、
「その必要は無いわ!居るんでしょう?妖精達も・・・出して上げたら!?」
無表情のラミアの言葉に驚くかなめとなみ、妖精達は自分で鞄から出ると、
「やっぱりそうだったティティ・・・ラミアが来てから、どうもなみやかなめの側で不可思議な気配がすると思ってたティティ」
「お前・・・オロチ八人衆チュチュ?」
妖精達がラミアを指さすと、かなめとなみは顔を見合わせ、
「二人共、何言ってんのよ?ラミアは私達の・・・」
「そうよ、ラミアさんは私達の大切なお友達よ!変な言い掛かりしないで!!」
少し怒ったように、妖精達を見るかなめとなみに、
「いいえ、その子達の言う通りよ!私は魔蛇月様の命を受け、あなた達に近づいて居たの・・・それだけよ!!」
無表情のラミアはそういうものの、フッと眉根を曇らせると、
「でも、あなた達に触れ、私の中で何かが起ころうとした事も事実・・・私は、魔蛇月様の忠実な下僕、あの方の命には逆らえない!私は、あなた達からデーモンストーンを奪い・・・あなた達を倒す!!二人共・・・プリキュアに変身して、私と戦いなさい!!」
意を決したラミアの目が金色に輝いた・・・
3、ラミア・・・死す!!
ラミアの告白を、呆然と聞いていたかなめとなみ、出会った期間は短い、だが、二人に取って、ラミアは、天女同様大切な存在になっていた。
「ラミア、冗談止してよ・・・だって、ラミアは私達のクラスメイトで・・・」
「大切なお友達だもの・・・」
戸惑いながら、頑なに変身する事を拒むかなめとなみ、ラミアは目を瞑る・・・
そして、目を開けた時、意を決し二人に攻撃を開始する。靡くラミアの黒いワンピースが、悲しげに揺れていた。
「かなめ、なみ、変身するチュチュ」
「このままじゃ、二人ともやられるティティ」
妖精達の言葉を、頑なに拒み続けるかなめとなみ、
「ほう、此処まで上手くやるとはな・・・良くやったラミア!」
上空から聞こえる声に、顔を上げるかなめとなみは、逆立った黒き髪をして、鋭い眼光を放つ、黒きライダースーツのような物を着た細身で長身の男を見た。吊り上がった目に睨まれた時、かなめとなみは、全身から冷や汗が滲み出る。
(何、此奴・・・今まで感じた事の無い威圧感を感じる・・・あの時代がかった奴など、比べものにならない威圧感を・・・)
(こんな事、プリキュアになって初めてだわ・・・何て禍々しい気なの?)
「どうした!?俺は魔蛇月!名くらいは聞いた事があるだろう?我が腹心、ラミアが世話になったようだな!礼を言うぞ・・・そして、さよならだ、プリキュア!やれ、ラミア!!」
魔蛇月の命令に、苦悶の表情を浮かべるラミアは、雄叫びを上げながら二人に攻撃を仕掛ける。かなめとなみは、魔蛇月を見ると、
「あんたかぁ、あんたの所為でラミアは・・・なみ、あいつを倒すよ!!」
「うん、ラミアさんは、あなたの操り人形じゃ無いわ!許せない!!」
「許せないだと!?俺はラミアの生みの親!ラミアは、俺と羅蛇、ナーガの手により生まれし人工生命体・・・言うなれば、俺のおもちゃも同然!どうしようが貴様らにとやかく言われる筋合いは無い!!」
魔蛇月の言葉に、拳を握り震わせるかなめとなみ、
「んだとぉぉ!ラミアはあんたのおもちゃ何かじゃ無い!!」
「私達の大切な友達に・・・許せない!!」
チュッチとティティの方を向くと頷く二人、妖精達からプリキュアの力が照射される。
「「プリキュア!デルタフラッシュ!!」」
かなめとなみの姿を、プリキュアへと変えていく・・・
「大地の使者・キュアアース!・・・参上!!」
「海洋の使者・キュアオーシャン!・・・見参!!」
「「ふたりはプリキュア!!」」
「魔を操る無法者よ!」
「聖なる力を受けてみなさい!!」
二人のプリキュアが、魔蛇月を指差し啖呵を切った・・・
「お前達の相手は、ラミアと言っただろう!やれ、ラミア!!」
「はい・・・」
ラミアは返事をすると、アースとオーシャンに攻撃を開始する。二人はラミアに攻撃しようとはせず、ただ攻撃を避け続けていた。
「ラミア、止めてぇ!」
「私達、あなたと戦う何て出来ない!」
「クッ・・・戦いなさい!で、ないと・・・」
ラミアは両手に力を込めると、エネルギー波を二人に放つ、
「守れ、水の激流!プリキュア!ウォーターウォール!!」
水の激流がバリアとなりラミアの攻撃を防いだ。
(フフフ、ここまでラミアの存在が、奴らに溶け込んでいるとは思わなかったぞ・・・さて、そろそろウワバミが行動を起こす筈だが・・・始まったな!!)
魔蛇月は、プリキュアに見下した視線を送ると、
「ラミアと戦わないのは貴様らの自由!だが、良いのか?今貴様らの街は、魔空間の中に飲まれ、人々は次々とマケンナーに変えられて居るぞ?」
「エッ?」
「そんなぁ」
二人のプリキュアが油断し、動揺したその時、
「さあ、絶望の闇に沈め、プリキュア!!」
周囲の禍々しい気が、アース、オーシャンを覆い始めると、二人の身体は、闇の中に捕らわれる。必死に手を伸ばし、互いの手を握ろうとするも届かず、二人の身体は闇の中に消えた!
コロコロと地面に転がり落ちる、黄と赤のデーモンストーンを残して・・・
「アース!」
「オーシャン!」
二人の妖精が、二つの闇に向け必死に叫び続けるも、二人から返事が返る事はな無かった。
ゆっくり地上に降りた魔蛇月は、二つのデーモンストーンを拾い、満足気に口元に笑みを浮かべた。ラミアは、まるで妖精達の姿を庇うように、魔蛇月の視線から、妖精達の姿が映らないようにする。
「この闇の中、奴らは孤独と絶望に打ちひしがれる。この闇の中で、朽ち果てるがいいプリキュアよ!」
魔蛇月の嘲笑が辺りに響き渡った・・・
「これで五つのデーモンストーンが揃った!残るは、天空、大地、海洋、それぞれの神殿に祭られている三つのみ・・・ラミアよ、俺はこれから魔空間に戻り、天空、大地、海洋、それぞれの神殿の在処(ありか)を調べ上げ、総攻撃を開始する!後の処理を任せたぞ!!」
「はい、魔蛇月様・・・」
次元の狭間へと消えていく、魔蛇月の姿を見送ったラミアは、二つの闇を見て苦悩の表情を浮かべる。
「二人を、二人を騙して、満足チュチュ?二人は、お前の事を大事に、大事にしてたチュチュ」
「あんたの所為で二人は・・・二人は・・・」
泣きじゃくり、ラミアを中傷するチュッチとティティ、ラミアは二人の妖精を見ると、
「このままにしておけば、彼女達の精神は崩壊し、廃人同然となるでしょう・・・」
ラミアの言葉に、更に号泣しながら、二人の名を呼び続けるチュッチとティティであった。
「私は・・・任務をこなした!なのに、この苦しみは何?私は、私は・・・」
ラミアの目から、止め処なく涙が流れた・・・
「オーシャン!なみ!みんな、何処、何処に居るの?一人に、一人にしないで・・・」
闇の中、アースは逃げ惑っていた。闇の中に浮かぶのは、嘗ての幼き自分、次々に目の前に浮かぶ親戚からの冷たい視線、そして、アースにトラウマを植え込んだ親戚、金光為蔵(かねみつためぞう)の姿を見た時、アースは震えだし、その場に座り込んでしまう。逃げ惑う幼いかなめを壁際に追い詰めた為蔵は、かなめの服を剥ぎ取り、その背に焼き印を押そうとしていた。
「イヤァァ、止めてぇ・・・もう」
過去のトラウマを思い出し、号泣しながら足を抱え泣きじゃくるアースだった・・・
「アース!アース!・・・かなめ、何処?ティティ、チュッチ・・・みんな、みんな、何処に居るの?」
オーシャンも闇の中を彷徨っていた。目の前に浮かび上がるのは、幼き日の自分、周囲から孤立し、共に泣き笑い、遊んだ友達など居ない、孤独に過ごした幼少時の自分を見せつけられていく。
「お父様、お母様、なみは、なみは、此処です!助けて・・・」
その場に蹲(うずくま)り、オーシャンは闇の中、孤独に耐えられず泣き続けた・・・
目を瞑り、考え込んで居たラミアが、カッと目を見開くと、二人の妖精に話し掛けた。
「彼女達を、救う方法はある・・・でも、どちらにしても、彼女達が自力で立ち直る必要があるけど・・・あなた達に、私を信じる事が出来て?」
ラミアの問い掛けに、顔を見合わせたチュッチとティティは、
「少しでも可能性があるなら、信じるしかないチュチュ!」
「早く教えるティティ!」
ラミアは頷き、妖精達に何かを語った・・・
アース、オーシャン、共に闇の中、孤独と絶望に耐えられず、屈しようとした時、遠くの方から微かに声がする気がした。徐に顔を上げた二人は、縋るような目を声のする方に向けると、闇の中一点の光が見えた。二人はその光に向かい走り出した。
「かなめ、なみ、思い出して!あなた達は一人じゃない・・・」
ラミアの声が聞こえると、それに混じりチュッチ、ティティが、二人を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ラミアさん!ティティ、チュッチ・・・何処、何処!?」
「私は一人じゃない?・・・そう、わたしにはお父様が、お母様が、そして、大切な仲間達が居るわ!」
なみの頭に優しい両親の顔が、自分を庇って散ったアナコンダが、天音、天満、美里が、そして、ティティ、チュッチ、ピッピ、ラミアの顔が浮かんでくる。
「そう、そして、私にはプリキュアの仲間が居る!!」
天女の顔が、そして、最大の親友、かなめの姿が浮かんでくる。今、オーシャンを覆っていた闇に亀裂が走った・・・
「今の声はラミア?どうして、ラミアの声が・・・」
戸惑っていたアースが、後ろを振り向いた時、狂喜の目を浮かべた為蔵が、まるでアースを追ってくるように走ってくる。アースは悲鳴を上げ逃げ惑うも、足が縺れ倒れ込んだ。
「イヤァ、おじさん・・・助けて・・・」
アースの心を再び絶望が覆うとした時、背後からアースを抱きしめる者が居た。ビクッとしながら振り向いたアースに、優しく微笑むなみ、そして、天女、三人の妖精達、加代や陸上部の仲間、天音、天満、美里が手を差し伸べる。
「なみ?天女さん?みんなも・・・!?」
驚愕しながらも、嬉しそうな表情を見せるアースは、為蔵を見つめると、
「そうだ・・・あたしには大切な仲間達が居てくれる!あたしはもう・・過去に何て負けない!!!」
アースの力強い言葉と共に闇に亀裂が走った・・・
今、二人のプリキュアは、闇の呪縛を払いのけ戻って来た。妖精達は二人の無事な姿を見て、号泣しながらも二人の帰還を喜んだ。
「アース、オーシャン、良かった、良かったチュチュ」
「二人共、無事で、無事で何よりティティ」
二人の妖精が、互いのパートナーに抱きつき泣きじゃくった。だがその側では、瀕死のラミアが横たわり、荒い呼吸をしながら二人に笑顔を向けた。
「ラミア?どうしたの、一体!?」
「ラミアさん、しっかりして!」
アースとオーシャンが、ラミアの側でしゃがみ込みラミアを介抱する。
「二人が無事に戻って来られたのは・・・ラミアのお陰チュチュ」
「ラミアが、二人を閉じ込めた闇にシンクロして、二人に声を届けてくれたティティ!でもそれは、自らの体内で、闇の力を中和させて行ったようティティ」
「ラミアは、自らの生命エネルギーを光に変えて、二人に道標を作ってくれたチュチュ」
ラミアの手を取るアースとオーシャンが、ラミアに感謝の言葉を述べるも、ラミアは首を振り、
「ううん、私は友達として、一度あなた達の心を踏みにじった・・・この程度の償いは当然よ!でも・・・不思議ね・・・私にこんな感情がある何て・・・私、おかしくなったのかな!?」
アースとオーシャンは首を振り、おかしくなんかないと泣きながらラミアに縋り付く、ラミアの目からも涙が零れる。
「もっと・・・二人と一緒に・・・過ごして・・・見たかった・・・なぁ」
二人に笑顔を向けたラミアの手が、力なく二人からずり落ちていくと、二人は慌てて手を握り直し、
「ラミア、しっかりして、ラミアァァ!!」
「ラミアさん、目を開けてぇぇ!!」
ラミアは、もう一度最期に二人に微笑むと、小声で「ありがとう」と伝え、眠りに付いた・・・
4、救えない!!
ラミアの死という、現実を受け入れられないアースとオーシャンは、ラミアの亡骸の前で号泣し続けた。
「アース!オーシャン!しっかりするチュチュ」
「気持ちは分かるけど・・・今、文武町はピンチに陥っているティティ!急がないと、マケンナーにされた人々が・・・」
チュッチ、ティティに促される二人、ラミアの亡骸に何かを伝えると立ち上がる二人、
「ラミア・・・寂しいだろうけどちょっと待ってて!!」
「私達は、あなたと過ごしたあの街を・・・」
「「必ず守ってみせる!!!」」
ラミアの亡骸に誓った二人は、妖精達に肩にしがみつくよう言うと、足下に力を溜め、文武町目掛け一気に飛び上がった・・・
柳生邸・・・
「天満、病み上がり何だから、無理はしないでね!」
「はい、お母様!」
道場から木刀を持つと、かなめと、なみが到着する時間を稼ぐ為、二人は敵の下に出掛けようと飛び出すも、家の前には羅蛇が立っていた。
「天音、天満、お前達を行かす訳には行かない・・・」
「羅蛇・・・退きなさい!今はあなたの相手をしている時じゃ無いわ!!」
羅蛇は首を振ると、目に力を込め二人の木刀を破壊する。
「クッ!羅蛇!!」
天音は厳しい視線を羅蛇に向けるも、天満は戸惑った表情を浮かべる。
「聞け、天音!天満!魔蛇月は、5つのデーモンストーンを手に入れ、今、天空、大地、海洋の各神殿を総攻撃する準備を始めた!」
「何ですって?じゃああの子達は、デーモンストーンを守りきれなかったのね・・・」
「それは仕方あるまい・・・魔蛇月の罠に嵌ったのだからな・・・ラミアのおかげとはいえ、生きて戻れただけでも幸いと思うべきであろう」
魔蛇月が動き出した事に、顔色が変わる天音、自身も嘗て、神獣フェニックスを纏い、何とか追い返した程の強敵だった事を思い出す。
(魔蛇月が相手では・・・神獣を纏っていないあの子達だけでは・・・命が助かっただけでも、幸いと思うべきね・・・)
アースとオーシャンが無事だっただけでも、不幸中の幸いだったと思う天音、
「天満、ラミアを覚えているな?あの子も、アース、オーシャン、二人のプリキュアに触れた事で、人の心を知り、そして、プリキュアを助け、散っていった・・・」
「ラミアが?」
天満の脳裏に、ラミアと過ごした日々が思い出される。
(ラミア・・・)
「俺はこれから、ラミアを弔う為、ラミアの亡骸のある場所に向かう・・・彼女の誕生に関わった一人として、見届ける義務があろう・・・天音、天満、今は二人のプリキュアに任せろ!!お前達は今後の戦いに備えるべきだ・・・」
羅蛇が何故、その事を自分達に伝えに来たのか、羅蛇の真意が読めず、戸惑う天音と天満だった・・・
「キャハハハ!さあ、マケンナー共、この街を破壊しまくりな!!」
顔に包帯を巻いたウワバミの指示の下、十数体にも及ぶマケンナーが、文武町で暴れ回っていた。ウワバミは武道学園のグラウンドに陣取るように、マケンナー達に指示を出していた。だが、学校外に居たマケンナーがグラウンド内に吹き飛ばされてきた事に眉根を寄せる。その先には、キュアアース、キュアオーシャン、二人のプリキュアが、マケンナーの群れに立ち塞がるように立って居た。
「あんた達の好きには絶対させない!」
「ラミアさんに誓ったの・・・この街は」
「「私達が絶対守るって」」
二人のプリキュアが、ウワバミを指差し険しい表情で睨み付ける。
「あ~ら、もう戻って来たの?ラミアめ、役立たずねぇ・・・まあ、良いわ!今までの借り、返してあ・げ・る!!」
「んだとぉぉ!!ラミアへの侮辱は、あたし達が許さない!!」
「必ずみんなを救ってみせる!!」
マケンナーの群れを、厳しい視線で見つめるアースとオーシャン、妖精チュッチとティティは、少し離れたところでこの戦いを見守っていた。
「フン、ところで、あの役立たずはどうしたの!?くたばったのかしら?キャハハハ!!」
(おかしい!?まるで私達を、態と挑発しているような・・・)
ウワバミの様子を訝るオーシャンだったが、アースは、ラミアを馬鹿にされた事で、頭に血が上り逆上していた。
「その包帯、ひん向いてやるぅぅ!!」
「待って、アース!無闇に突っ込んでは・・・」
オーシャンの言葉に耳を貸さず、ウワバミ目掛け突進するアース、アース一人を行かせるわけにも行かず、遅れてウワバミ目掛けるオーシャン、
「バァ~~カ、ひん向かれるのは・・・あんたたちさ!!」
ウワバミの合図と共に、グラウンドに仕掛けられた、無数の蛇が姿を現わし、二人の身体に巻き付き、まるで二人の力を吸い取るようにすると、小規模な爆発を繰り返し、二人にダメージを負わしていく。服もボロボロになり、埃まみれになる二人、
「キャハハハ!いい様ねぇ・・・さぁて、スゴイナー!あいつらをもっと可愛がっちゃて頂戴!!」
ウワバミの命を受け、兎形の巨大なスゴイナーが、凶暴そうな視線を二人に向けると、上空高くジャンプし、二人に跳び蹴りを放つと、吹き飛ばされる二人、
「無様よねぇ・・・何がみんなを救って見せるよ!さあ、よく周りを見てみな!!」
ヨロヨロしながら立ち上がる二人が、周りを見た時、マケンナーにされた人々の胸のマークが、黄色へと変化していった。驚愕する二人は、
「そんな、もう、時間が・・・」
「こ、こんな所で負けられない!」
だが無情にも、マケンナーから雨霰のように攻撃を受け、スゴイナーの蹴りを受け、吹き飛ばされた二人は、変身を解除され、かなめとなみの姿に戻る。
「これで、分かったかい?あんた達じゃ・・・救えないんだよ!キャハハハ!!」
ウワバミの嘲笑に、悔し涙を流すかなめとなみ、
「なみ・・・ゴメン!本当にゴメン・・・あの時、あたしがなみの言葉を聞いていれば・・・」
「かなめの所為じゃないよ・・・かなめの所為じゃ・・・」
チュッチ、ティティが、二人を庇うように前に出るも、吹き飛ばされ、かなめとなみは、二人を受け止め抱えると、何とか起き上がろうとするも、立ち上がる事は出来無かった・・・
周りのマケンナーを見たかなめとなみは、
「みんな、ゴメンなさい・・・あたし達・・・救えなかった・・・」
「かなめ・・・」
止め処なく溢れる涙が、二人と妖精達の目から溢れてくる。もう自分達ではどうする事も出来ず、ラミアに救われた事が、無駄になってしまう事に、二人は唯、悔し涙にくれた。
「あらら、戦意喪失かい?じゃあ、せめて止めは、あたしの手で刺してあげるよ!!」
ウワバミが両手に力を溜めると、かなめとなみは、互いに手を握り合った。せめて、最期は二人でと、覚悟を決めたその時・・・
上空からヒラヒラ舞うように、沢山の何かがかなめとなみの周りに降り注ぐ、何事が起こったのか理解出来ない二人は、呆然としていたが、降り注ぐ何かを掌に乗せると、
(これは・・・羽根?)
かなめとなみは、降り注ぐ羽根を呆然と見つめていた。
「さあ、こいつで終わりにしてやるぅぅ!!バイバイ、プリキュア!キャハハハ!!」
ウワバミから、強烈なエネルギー波が二人に向けて発射された。
だが・・・
「舞え!聖なる羽根よ!!プリキュア!ファイアーガード!!」
無数の羽に火が点り、炎のバリアとなってウワバミの攻撃を遮断した。守られたかなめ、なみ、妖精達も、攻撃したウワバミも、炎のバリアが消えた時、現われた人物を見て驚愕する。見覚えある赤いブーツに、赤っぽいチャイナ服のような衣装、背には赤き翼を生やし、三本の尾羽が風で靡いていた。その肩には、オウムのような生き物が止まっていた。
かなめ、なみ、妖精達の表情が輝く、
「かなめ、なみ、チュッチ、ティティ、何とか間に合ったピピ」
「かなめちゃん!なみちゃん!二人共、大丈夫!?・・・私の大切な仲間を・・・よくもいたぶってくれたわね!!二人の無念、私が晴らして見せる!!!」
そう言うと、険しい視線をウワバミに向け、
「天空の使者・キュアフェニックス・・・推参!!」
かなめ、なみの危機に、キュアフェニックスが、文武町に帰って来た!!
第七話:捕らわれたプリキュア
完