第九話:神殿の攻防!
1、キュアクロウ復活
柳生家に戻って来た三人と妖精達、天女、かなめ、なみは、それぞれ天音、天満に状況を説明し、デーモンストーンを守れなかった事を詫びるのだった。
「魔蛇月相手では仕方が無い事よ・・・でも、まだ手はある!それと、ラミアって言ったわね?確かに彼女は、家でお預かりします!羅蛇が誕生に関わり、天満とも親しい間柄なら尚更だわ!私も、彼女が再び生を得られる事を祈ってます・・・」
天音は、嘗て羅蛇が使用していた一室に、ラミアを安置していた。
「そして・・・天女も戻り、神獣を纏えた今ならば、あなた達三人は、最強の技を放つ事が出来る筈・・・私がナーガを倒した技を覚えているわね?」
「はい、先程天女さんも使って居られました!クリスタルトライアングルでしたね」
なみの言葉に頷いた天音は、更に言葉を続け、
「あれは、未完成の技なの!嘗て、三人の女神が邪神を封じ込めし技・・・その名を、デルタトライアングル!!」
「デルタトライアングル!?」
かなめが思わずその名を繰り返すと頷く天音、
「天空、大地、海洋、三つの力が合わさった時、女神の力を引き継ぎしプリキュアが放つ事が出来るという、最強の技!でも、私は一人で戦っていたから、苦肉の策で改良型のクリスタルトライアングルを編み出した!今のあなた達ならそれが可能の筈!今後の戦いできっと役立つ筈よ!!」
天音の言葉に頷いた三人だった・・・
その時、ピッピ、チュッチ、ティティ、三人の妖精達のクリスタルフィオーレに通信が入った。天空、大地、海洋、それぞれの神殿に居る長老達からであった。長老達は、それぞれの神殿に、強大な力を持った何者かが近づいている事を一同に伝える。
「分かりました!私達が行くまで、何とか持ち堪えて下さい!!二人共、覚悟は良い?」
「もちろん!」
「私も大丈夫です!!」
三人で手を握り合う天女、かなめ、なみの姿に、天音も、天満も厳しい顔で今後の激戦が思い描かれ、緊張感が走る。
「同時に襲撃してくるとは思わなかったわね・・・プリキュアの力を分散させるのが狙いなのかも知れない・・・三人共、気をつけて行きなさい!!」
天音の忠告に頷いた三人だったが、突如妖精達が騒ぎ始める。
「た、大変ピピ!この家が魔空間に飲み込まれたピピ」
「ああ、おそらく現われたのは・・・」
「ウロボロスティティ!」
外に出た一同は、腕組みしながら立ちはだかるウロボロスを発見する。天女は初めて見るも、その威圧感に緊張が走った。
「ムッ、貴殿は、あの時の・・・それに天満殿も居るとは!?プリキュアよ、本日は貴殿らと最後の決着を付けに来た!!貴殿達が勝つか、それがしが勝つか・・・いざ、勝負!!」
背中の長刀を抜き、構えるウロボロスは、初めて見る天女の顔を見ると、
「もしや・・・貴殿がキュアフェニックスか?」
「そうよ!あなたがウロボロスね・・・」
「これは幸い!拙者、貴殿との勝負を楽しみにしておった・・・さあ、いざ勝負!!」
指名された天女は、表情を険しくして身構えると、ピッピを見つめる。ピッピも頷き、プリキュアの力を照射しようとした時、天満が天女を止めた。
「待て、天女!お前はこれからの戦いに備えるべきだ!!」
「ですが、お姉様・・・」
「ウロボロスとは、私が戦おう!!」
天女を後ろに下げると、ウロボロスと向き合う天満、ウロボロスは拍子抜けしたような表情で、
「天満殿、確かに貴殿の腕前は、拙者も重々承知をしておる!だが今の貴殿に、それがしの相手が務まるとは思えぬが・・・」
「ウロボロス、その心配・・・無用!カァク!!」
何時戻って来たのか、天満の呼びかけに、カァと鳴きながらカァクが天満の肩に止まった。ピッピは、カァクが天空の神殿から戻って来ているのを知り、驚き声を掛ける。
「カァク!?何時天空の神殿から戻ってきたピピ?」
「昨日カァ・・・中々長老の許しが出なかったカァ」
上空に舞ったカァクから、プリキュアの力が天満に照射されると、天満のシャイニークリスタルが虹色に輝いた。
「プリキュア!デルタフラッシュ!!」
三角形の虹の光が天満を包んでいく、黒い黒髪が束ねられポニーテールへと変貌し、胸の中心部にシャイニークリスタルが装着され、フェニックスのようにチャイナ服のような黒き衣装が天満を包んでいく。背中から生えた黒き翼を肩まで覆い、キュアクロウが再びその姿を現わした。
「天空の使者・キュアクロウ!・・・推参!!」
クロウは両手を天に掲げるとゆっくり開いていく、
「出でよ、天空の剣!シャドウソード!!」
空中に浮かび上がる黒き剣を手に取ると、軽くピュッと振ったクロウが、剣先をウロボロスに向けると、
「これなら文句は無いだろう?行くぞ!!」
八相の構えでウロボロスの出方を見るクロウに、
「う~む、これはあの御仁と同じ構え・・・と言う事は、天満殿の母御と言う事か・・・納得致した!相手にとって不足無し・・・参る!!」
互いにジリジリ間合いを計るクロウとウロボロス、緊張が続く中、両者は同時に踏み込み、刃と刃が激しくぶつかり合った。クロウの胴抜きを、ウロボロスの袈裟斬りを、互いに打ち躱す、両者互角の鍔迫り合いを続けていた。
(流石だ・・・以前より確実に強くなっている・・・)
(ウ~ム・・・流石は天満殿・・・これは迂闊に動けん・・・)
再び互いに間合いを計り合う両者、一同に沈黙の時が過ぎる・・・
「ヤァァ!!」
「デヤァァ!!」
気合いを込めた両者が、同時に踏み込んだ!
二人が擦れ違った時、勝敗は決した・・・
ウロボロスの剣を受け、クロウの胸元の服が裂け、クロウの豊満な胸が露わになるも、クロウは隠そうともせず、剣を握ったまま動かない・・・
「クロウ!!」
「そんな、クロウが負けたなんて・・・」
かなめとなみが驚き、クロウに駆け寄ろうとするのを、天女と天音が止めた。
「二人共、大丈夫よ・・・この勝負、お姉様の勝ちよ!!」
その言葉と同時に、片膝付いたウロボロスは豪快に笑いだすと、ウロボロスの長刀は真二つに折れ、地面に突き刺さった。振り向いたクロウを見たウロボロスは、その美しき姿に、潔く自身の負けを認めた・・・
2、三匹の魔獣
「拙者の愛刀を折られては、負けを認めぬ訳にもいかぬからな・・・敗者は勝者に従おう!拙者の身、好きに致すが良い!!」
その場に胡座(あぐら)を掻いて座るウロボロスに、クロウは胸を露わにしたまま、シャドウソードを構えると、
「心にて、悪しき闇を斬る!プリキュア!ダークネスブレイカー!!」
気合いの一閃をウロボロスに浴びせるも、ウロボロスの黒き鎧を打ち砕いただけであった。逞しいウロボロスの全裸が一同の前に現われると、慌てて天音はかなめ、なみの目を隠し、天女に何か服を持ってくるように伝えた。
「お、お前、鎧の下には何も着てなかったのか?」
「それは貴殿も同じ事、堪能させて頂いた・・・」
ウロボロスに言われ、急に恥じらい胸を隠すクロウだった。本来なら真っ先に喜ぶ筈のピッピは、カァク、チュッチ、ティティによって目隠しをされ、クロウの胸を見る事は適わなかった・・・
「拙者をこのままに致すとは、どういう了見でござろうか?」
「フッ、貴様ほどの男なら、オロチの血に打ち勝つ事も出来るだろう・・・修行仕直すが良い!!」
変身を解き、天満は、ウロボロスに人として再び生きる機会を与えた・・・
敗者は勝者の言葉に従うものと語り、ウロボロスは天満の言葉を受け入れた・・・
「拙者が、貴殿らと最後の勝負を決しようとしたのには訳がござった・・・魔蛇月殿は、同胞であるアナコンダを、そして此度、ウワバミを見放し申した!コブラ、そして拙者をもスゴイナーへと変えようとした魔蛇月殿の非道な行ないに、羅蛇殿が現われ、間一髪我らは救われ申した・・・だが、羅蛇殿といえ、三匹の魔獣を従えた魔蛇月殿に敵わず、深手を負われた!拙者は羅蛇殿を連れ、全ての決着を付けるべく、こうして現われた次第・・・」
ウロボロスの言葉に、天音、天満、天女の顔付きが変わる。皆が羅蛇の安否を問い詰める。ウロボロスは口元に笑みを浮かべると、
「大丈夫でござる!羅蛇殿程の御仁、あの程度では・・・勝者である貴殿らに敬意を表し、一つお知らせ致す・・・三匹の魔獣には気をつけなされ!!」
「ウロボロスの言う通りだ・・・三匹の魔獣には気をつけろ!!」
よろめきながらも羅蛇が姿を現わすと、天満と天女が羅蛇の側に駆け寄った。天満と天女の二人の娘が、羅蛇に肩を貸し、一同の側に連れて来る。愛憎を超え、天音は心配そうに羅蛇を見つめるも、中々声を掛けれなかった。羅蛇は天音を見て少し口元に笑みを見せるも、直ぐに表情を引き締めると、
「三匹の魔獣とは、天空の魔獣ガルーダ、大地の魔獣ベヒーモス、海洋の魔獣リヴィアン、元々は、六神獣と称えられし、三人の女神に仕える存在だったが、奴らは我らの神、オロチに屈し、魔獣と成り果てた・・・魔蛇月は、眠っていた奴らを目覚めさせ、天空、大地、海洋、それぞれの神殿の破壊と、デーモンストーンを奪う為に、行動を開始した!!プリキュア達よ、奴らと戦う際は用心しろ!!」
魔蛇月の言葉に、それぞれの神殿に向った者が、三匹の魔獣と知り、天女、かなめ、なみに更なる緊張感が走った。三人は顔を見合わせると、頷き合い妖精達を見る。妖精達も頷き返し、三人にプリキュアの力を照射した。シャイニークリスタルが虹色に輝いた時、三人が同時に叫ぶ、
「「「プリキュア!デルタフラッシュ!!」」」
三人の身体をプリキュアへと変えていく・・・
「天空の使者・キュアフェニックス・・・推参!!」
「大地の使者・キュアアース!・・・参上!!」
「海洋の使者・キュアオーシャン!・・・見参!!」
「三つの心を!」
「一つに合わせ!」
「悪しき魔を討つ!」
「「「トライアングルプリキュア!」」」
三人のプリキュアが変身を終えポーズを決めた!!
「では、私達はそれぞれの神殿に向います!!」
「天音さん、ラミアの事頼みます!」
「皆さん、行ってきますわ!!」
天音、天満が、くれぐれも気をつけるように三人を激励する。三人のプリキュアは頷き、互いを見つめ、右手を前に出し握り合うと、
「必ず無事に再会しましょう・・・」
フェニックスの言葉に頷く二人、アースは突然声を出すと、何かを思い出したように首に掛けていたペンダントの一つを外すと、
「フェニックス、これを受け取って!」
アースから渡された、鳥のようなペンダントを手に取ると、「これは?」と聞き返すフェニックス、アースは、四神の朱雀のペンダントだと言うと、自身も身に付けている白虎を、オーシャンは青龍をフェニックスに見せる。
「残りの玄武は、ラミアが身に付けてます・・・」
そう言うと、柳生家の中に横たわるラミアを思うアースとオーシャン、フェニックスは二人に微笑み、礼を言うと、表情を引き締め、
「行きましょう!それぞれの神殿に・・・」
フェニックスの言葉に、力強く頷くアースとオーシャン、それぞれのパートナー妖精が肩にしがみつくと、フェニックスは上空に舞い、アースは山岳部に、オーシャンは海に目掛け散っていた・・・
「油断するなよ・・・魔獣は手強いぞ!」
羅蛇は、三人のプリキュアの後ろ姿を見送った・・・
3、大地の神殿・・・戦士の誇りと巨大な魔獣
山間部を直走るアースとチュッチ、チュッチから、大地の神殿が山と山の間に祭られている事を教えられ、その場所目掛け直走った。
「そろそろ、大地の結界に近づくチュチュ」
チュッチの言葉に頷くアースだったが、前方に人影を発見する。それは、オロチ八人衆のコブラだった・・・
「待ち兼ねたよ、プリキュア・・・あたしと一対一で戦いな!決着を付けてやる!!」
「あんたまだそんな事を・・・あんただって、魔蛇月にスゴイナーに変えられそうだったんだろう?もう、あんな奴の言う事何か・・・」
「違う・・・それは、もう関係無い!これはあたしとしてのケジメだ!!」
コブラが何かを決意したような表情を見たアースは、
「やれやれ・・・何言っても無駄のようだね・・・分かった!チュッチ、少し離れていて!!」
アースはチュッチを下ろすと、チュッチは二人の戦いを見届けるべく、少し離れた岩陰に移動した。
先に動いたのはコブラ、コブラは紫髪をゆらゆら蠢かすと、まるで生き物のようにアースに攻撃する。アースは俊敏に動き回り躱していく。
「フン、更に腕を上げたじゃないか?あたしが何故コブラと呼ばれるか・・・その身で味わいな!」
コブラの長い紫髪がざわめき出すと、アースは表情を引き締めた。コブラの紫髪を躱すアース、躱した場所が、毒でも浴びたように溶け始める・・・
「あんたの髪に触れたら、お陀仏ってわけ?」
「そういう事さね・・・何時まで避けれるか!」
防戦に回るアースを見て、チュッチは何やってるのかとアースに言い、早く神獣を纏えと忠告するも、アースは首を振り、
「駄目!あいつはあたしに一対一の戦いを挑んでるだもん・・・神獣を纏ったら、一対一とは言えない!!」
アースの言葉を聞き、コブラの動きが止まる・・・
アースの思いに気付き、思わず口元に笑みをうかべたコブラは、
「フフフ、あんたが相手で良かった・・・次の攻撃で決着を付けるよ!!」
「望むところ!!」
コブラは両手に力を集中させると、紫色の禍々しいオーラを両拳に纏った。アースは足下に力を込め、コブラ目掛け突進し、大きくジャンプすると、コブラも大きくジャンプしアースを迎え撃つ、
「食らいな!ポイズンブロズナー!!」
「いっけぇぇ!プリキュア!サンダー・トルネード・・・キィィック!!」
毒を拳に纏い、アース目掛け拳を振るうコブラ、凄まじい回転に回りが放電しだし、そのままの勢いでコブラに蹴りを放つアース、二人の技と技が激突する。ぶつかり合った互いの技だったが、アースのサンダートルネードキックが、コブラの拳を弾き飛ばし、そのままコブラの身体にヒットさせる。互いに地上に降りた両者だったが、
「キュアアース・・礼を言うよ・・・あんたの・・・勝ちさ!」
ドッと地面に横たわったコブラは、潔く敗北を認めた。アースがコブラに何か言おうとしたその時、大地の神殿から凄まじい轟音があたりに響き渡った。
「な、何、何なの!?」
「アース、急ぐチュチュ!大地の神殿が、敵の攻撃を受けてるチュチュ」
チュッチの言葉に、顔色を変えたアースが、そのまま大地の神殿目掛け直走った。
(おそらく大地の神殿はもう・・・キュアアース、無駄死にだけはするなよ)
コブラは、アースの後ろ姿を見つめながら、ゆっくり目を瞑った・・・
大地の神殿・・・
岩山と岩山に囲まれた聖なる神殿、その神殿は、巨大な象のような生物の攻撃を受け、崩壊寸前であった。
「ああ、オイラ達の大地の神殿が・・・」
崩壊寸前の大地の神殿を見て、落胆の声を上げるチュッチ、アースも呆然とするも、直ぐに神殿崩壊の張本人、ベヒーモスの巨大な姿を見たアースは、
「何、あのデカイの?まさか、あれが魔獣・・・」
(そうだ、あれこそが嘗て、我と共にガイア様に仕えしベヒーモス!奴のパワーは凄まじい・・・用心せよ!!)
アースの心に話し掛けたエイガー、その言葉に頷いたアースのシャイニークリスタルが金色に輝くと、
「プリキュア!トライアングル・フラッシュ!!」
アースは神獣エイガーを纏い、スーパー化すると、ベヒーモス目掛け攻撃を開始する。だが、ベヒーモスの巨体は、神獣を纏ったアースの攻撃すら、さしたるダメージを負う事は無かった。ベヒーモスは、アースを邪魔とばかり攻撃するも、アースの素早い動きを捕らえる事は出来なかった。
ベヒーモスは、苛ついたように雄叫びを上げると、力を溜め始める。ここをチャンスと見たアースはジャンプすると、
「行けぇぇ!プリキュア!サンダートルネード・キィィック!!」
高速回転しながら稲光を纏ったアースが、回転しながら強烈なキックをベヒーモスにお見舞いするも、回転は途中で止まり、逆にベヒーモスは、自身を中心に大爆発波を放ち、アースを吹き飛ばす。岩山に激しく激突したアースは、一瞬気を失うも、直ぐに頭を振り何とか堪える。
「一筋縄には行かないかも・・・チュッチ、あんた先に大地の神殿の様子を見てきて!あいつはあたしが引きつけるから!!」
アースはベヒーモスを神殿から遠ざけさせると、チュッチに神殿の様子を見に行くように伝えた。チュッチは、アースの意を汲み、神殿目掛け突き進んだ。
神殿に着いたチュッチだが、入り口は今にも崩れ落ちそうなほど崩壊し、内部は無残にベヒーモスの攻撃で崩れ果て、チュッチの知っている姿を保っては居なかった。負傷して倒れる仲間達に、大地のプリキュアが駆けつけて来た事を教え、激励するチュッチ、最深部の女神の間に着いた時、年老いた猫のような大地の長老が横たわっていた。
「長老!プリキュアを連れて来ました!長老!!」
「おお、チュッチ・・・よくぞ、戻った!だが、遅かった・・・奴らに我らの持つ、金のデーモンストーンを奪われた・・・もう、此処はよい、大地のプリキュアを連れ、直ぐに他の神殿を守ってくれ!!」
チュッチは、間に合わなかった事に、拳を振るわし悔しがった。だが、此処で悔やむより、アースの下に戻り、この事態を伝える事が急務と、再び神殿の外へと走り出した。
チュッチが戻って来た時、既にベヒーモスの姿は消えていた。アースも元の姿に戻っていたが、大分疲労していた・・・
「チュッチ、神殿はどうだった?こっちはあいつのパワーの前に防戦一方だったけど、何故かあいつが急に撤退しちゃったのよ」
「おそらく、目的を果たしたからだチュチュ・・・アース、大地の神殿は、金のデーモンストーンを奪われたチュチュ・・・天空の神殿には、おいら達の力だけで行くのは無理チュチュ・・・オーシャンの援護に行くチュチュ!」
アースはチュッチの言葉に頷くも、
(あたしは間に合わなかった・・・オーシャン、フェニックス、何とか阻止して!!)
アースはチュッチを肩に乗せると、海洋の神殿の援護に向かう為、再び直走るのだった・・・
4、海洋の神殿・・・荒ぶる龍と海の戦士
キュアオーシャンは、急ぎ海洋の神殿目掛け深海を泳ぎ続ける。その優雅な泳ぎを見た者は、オーシャンの姿を人魚と見紛うだろう・・・
フリルは、まるで鰭の役割を果たしているかのように、オーシャンの思い描く通りに、海底を自在に泳ぎ続ける。
「不思議ねぇ?海の中でも、地上に居る時と同様に動ける何て・・・」
「海洋の女神、ティティス様のご加護ティティ!オーシャン、海の中であなたに匹敵する力を持った者は、そうは居ないティティ!!」
ティティスの加護を受けたオーシャンは、海でも呼吸することが出来、自分が思い描くように動ける事に驚く、
「確かに、さっきのマケンナーとの戦いも、私の思うように動き、私の技の威力も上がっていたような気がするわ・・・」
魔蛇月が送り込んだであろう、魚形マケンナーの集団も、今のオーシャンの前では、何の時間稼ぎにはならなかった。オーシャンは、マケンナーの群れを圧倒し、今、海洋の神殿に近づきつつあった。
「オーシャン、もうすぐティティ!海洋の神殿の結界の中に入ったティティ!!」
だが、そう言ったティティの表情が曇った。海洋の神殿の結界の中・・・の筈だった。ティティにも、オーシャンにも、此処が結界内と思えなかった。
「これは、どういう事ティティ?」
「気をつけて、ティティ・・・何か、底知れぬ苛立ちを持った何者かが、この付近に居る!」
禍々しい気を感じたオーシャンは、ティティに注意するよう促し、辺りを警戒した。
(こちらの出方を伺っている!?ここは・・・)
「ティティ、私に構わず海洋の神殿に向かって!敵は私が引きつけますわ!!」
自らを囮とし、ティティを海洋の神殿へと向かわせるオーシャン、オーシャンの考えは上手くいき、巨大な龍がオーシャン目掛け襲いかかってくる。
(オーシャン!あれこそ私と対を為すリヴィアン・・・私を纏いなさい!!)
レヴィアンの心の声を聞いたオーシャンは頷き、
「プリキュア!トライアングル・フラッシュ!!」
オーシャンのブーツに、エメラルドのような光が覆っていくと、横には鰭(ひれ)のような物が付属し、エメラルドグリーンへと変わる。徐々に光が上がっていくと、エメラルドグリーンと青を主体とした服装に変化し、腕のサポーターには鱗のような模様が浮かび上がった。
(この力・・・レヴィアンか!?我の邪魔をするならば・・・貴様とて容赦はせん!!)
リヴィアンの凄まじい咆哮が、衝撃派となって辺りに渦を巻き起こす、華麗に渦を躱し続けるオーシャンは、両腕を回転させると、
「煌めけ、激流!プリキュア!エメラルド・ウォーターウィル!」
輝きながら回転していくエメラルドの水が、リヴィアン目掛け水圧で切り裂いていく。だが、リヴィアンの強固な身体を切り裂く事は出来ず消滅する。
「全くダメージが無いなんて・・・」
少し動揺するオーシャンを見逃さず、リヴィアンは自ら回転しながら勢いを付けると、渦巻きはまるで生き物のようにオーシャンを追尾する。逃げても、逃げても付きまとう渦巻きは、遂にオーシャンを飲み込んだ。激しい回転の中、オーシャンはウォーターウォールで辛くも脱出し、再びリヴィアンと睨み合いになる。
その時、海洋の神殿の方角から、轟音が聞こえてくる。
(これは・・・ティティ、無事で居て!!)
戦いより、海洋の神殿、並びにパートナーのティティの救助を優先したオーシャンは、海洋の神殿目掛け泳ぎ出す。後を追おうとしたリヴィアンに、魔蛇月の声が聞こえてくる。緑のデーモンストーンは手に入れたと・・・
その報告を受けたリヴィアンもまた、その姿を消した・・・
海洋の神殿に着いたオーシャンだったが、神殿は無残に潰れかけ、神殿の従者達である海の生物達は、皆傷を負っていた。
「酷い・・・フェニックス程では無いけれど・・・癒せ!水よ!!プリキュア!ウォーターヒーリング!!」
癒しの水が、優しく怪我人を包み込んでいくと、痛みに苦しんでいた者も安らぎの表情に変わっていった。オーシャンは更に奥に進むと、女神の間で、ティティと、年老いた亀の姿をした海洋の長老を発見する。女神の間は無残に荒れ果て、オーシャンにも最悪な状況なのが瞬時に理解出来た。
「おお、プリキュア殿か!すまぬ、貴殿が来るのを持ち堪えられず、むざむざ奴めに緑のデーモンストーンを・・・しかも奴は、大地の神殿からも金のデーモンストーンを奪い取ったようじゃ・・・」
「オーシャン、遅かったティティ・・・このままじゃ」
沈痛の表情を浮かべる二人に、頷き返すオーシャン、オーシャンの思考が目まぐるしく回転をしていく、現状を見れば、魔蛇月が、天空の神殿に全戦力を投入してくるのが考えられた。
それに対抗するには・・・
「事此処に至っては・・・長老様、天空の神殿に連絡し、天音さんのパートナーだった妖精を、至急天音さんの下に向かわせて下さい!!スワン、クロウの力も借りて、私とアースも、天空の神殿に駆けつけます!!」
最早此処に至っては、地上に居るプリキュアの力を結集し、天空の神殿で魔蛇月と決着を付ける意外ないと決意するオーシャンだった・・・
5、天空の神殿・・・魔獣VSプリキュア
キュアフェニックスは、天空の神殿に向かう途中、魔蛇月と遭遇し戦闘を開始していた。大地、海洋のデーモンストーンを、魔蛇月が奪った事を知ったフェニックスは、神獣フェニックスを纏い、魔蛇月を天空の神殿に向かわせまいと、必死に魔蛇月を足止めていた・・・
「チッ、貴様の相手をしている暇は無いと言うのに・・・しつこい奴め!」
「むざむざあなたを、天空の神殿には向かわせない!!ピッピ、あなたは先に行って、デーモンストーンを守って!!」
「・・・分かったピピ!フェニックス、気をつけるピピ」
必死に翼を羽ばたかせ、天空の神殿へと向かうピッピ、その後ろ姿を見た魔蛇月の口元に笑みが浮かび、
「良いのか?天空の神殿には、天空の魔獣ガルーダが居るのだぞ?」
「私が此処で時間を稼げば、きっと他のプリキュアが加勢に来てくれる・・・私はそれまで、あなたを食い止める!!」
ファイアーソードを手に取り、魔蛇月の行動を制限させるフェニックスだった・・・
柳生家・・・
天空の長老よりの連絡が、カァクを通じて天音と天満の下にもたらされる。状況は最悪な方向に進み出していた・・・
「分かりました!スアロが到着次第、アース、オーシャンを連れ、天空の神殿に向かいます!!」
天音の言葉を聞き、羅蛇が口を挟んでくる。
「天音、先ず生き残る事を考えろ!デーモンストーンは、魔蛇月にくれてやれ!」
「羅蛇、何て事を・・・」
天音も天満も、羅蛇の言葉を不服そうな表情で見つめるも、
「いいか、もう一度言う・・・生き残る事を最優先しろ!魔蛇月は、デーモンストーンを全て手に入れ、戒めの祠を見付けた時、奴は必ず勝ちを確信して油断する・・・その時こそが決戦の時だ!!」
羅蛇が遂に本心を打ち明ける・・・
「お前達も嘗て、三人の女神は、荒ぶる神の協力の下、何とか我らが神オロチを封印したのは聞いているだろう?」
羅蛇の言葉に、天音も天満も頷く、羅蛇も頷き返すと、
「オロチを封じているのは、何もデーモンストーンだけでは無いのだ!荒ぶる神が持っていた剣・・・それこそが、オロチの肉体と精神を切り裂き、分離させた聖剣!」
「そんな物が!?私もそれは知らされて居なかったわ」
心底驚いたように、羅蛇に語る天音に頷く羅蛇、
「知らなくて当然!三人の女神達も、そこまで聖剣に付いて知っては居ないだろうからな・・・知っているとすれば、封じられしオロチの分身である俺や魔蛇月くらいのものだろう・・・オロチを封印し続けていても、何れはデーモンストーンといえど、抑えきれなくなる」
羅蛇はそう言うと、両目を瞑り頭の中で考えを纏め、
「この時代こそが、オロチを倒す最大のチャンスなのだ!この時代には光と闇の申し子である我らの娘・・・天満と天女が居る!!天満と天女ならば、伝説の聖剣を抜き取る事が出来る筈・・・その時こそ、プリキュアの力を結集し、完全に力を取り戻す前のオロチを打ち倒す唯一の時!!」
羅蛇の話の途中、燕のような姿をした紺と白のツートンカラーをしたスアロが、猛スピードで飛翔してくる。
「スアロ!懐かしいわね・・・何年ぶりかしら?」
「天音、元気そうで何より・・・でも、再会の挨拶はまた今度スア」
スアロの言葉に頷いた天音は、天満を見て準備はいいか聞くと、天満も頷き返した。スアロ、カァクのクリスタルフィオーレから、天音と天満にプリキュアの力が照射されると、二人のシャイニークリスタルが虹色に輝いた時、
「「プリキュア!デルタフラッシュ!!」」
天音と天満の身体を、白と黒のプリキュア、キュアスワン、キュアクロウへと変えていく・・・
「天満、あなたはアースをお願い!私はオーシャンを連れて行く・・・天空の神殿で会いましょう!!」
「重ねて言うぞ、天音、天満、生き残ることを最優先させろ!!」
羅蛇の言葉に頷く二人のプリキュアが大空に舞った・・・
魔蛇月は、中々天空の神殿に近づけさせないフェニックスに苛立つと、
「おのれ、フェニックス・・・やむを得まい・・・魔獣よ!此処に集い、フェニックスを倒せぇぇ!!」
魔蛇月の叫びを聞き入れたように、天空の神殿の方角から、数十メートルはありそうな、巨大な鷲を連想させる怪鳥ガルーダが、うねりを上げながら現われたリヴィアンが、フェニックス目掛け現われた。二体の魔獣を前にしては、魔蛇月と戦う所では無く、魔獣を相手にするのがやっとであった・・・
魔蛇月は、捨て台詞をフェニックスに残すと、猛スピードで天空の神殿へと向かう。
(クッ・・・海の魔獣まで・・・これでは後を追えない!)
動揺したフェニックスの隙を付き、ガルーダが鋭い爪でフェニックスを捕らえると、そのまま急降下して地上へと向かった。
(私を、このまま地上に激突させる気か!?だが、そんな事・・・エッ?)
だが敵は一枚上手だった・・・
荒れ果てた大地には、巨大なベヒーモスが待ち構えていて、ガル-ダが放り投げたフェニックスを、その長い鼻で思いっきり叩き付け、フェニックスを吹き飛ばす。一瞬軽い脳震盪(のうしんとう)を起こすも、直ぐに我に返り、何とか体勢を整える。だが、三体の魔獣は、獲物を捕らえたようにフェニックスを包囲していた。
(まさか、三体も呼んでいた何て・・・このままじゃ・・・)
フェニックスは激しく動揺した・・・
天空の神殿も、他の神殿同様、ガルーダの攻撃を受け半壊状態だった。ピッピは、女神の間に居るフクロウに似た年老いた長老に、魔蛇月が直ぐそこまで来ている事を報告する。
「ウム、分かって居る・・・ピッピ、お前はフェニックスの下に戻れ!そう易々デーモンストーンを渡しはせんわい!」
「でも、長老・・・」
「黙らっしゃい!これは命令じゃ!!」
長老の雷を受け、大慌てで再びフェニックスの下に戻っていくピッピだった。
(許せ、ピッピ!お前を巻き込む訳にはいかぬわい・・・お前を叱りつけるのも、恐らくこれが最後になるじゃろう)
散々叱りつけたピッピとの出来事を思い出す長老、その時天井が崩壊し、不敵な笑みを浮かべた魔蛇月が現われる。
「よう!早速だが、最後のデーモンストーンを頂こうか?」
魔蛇月は、天空の神殿の女神の間を見渡すも、他の神殿とは違い、何処にも祭られてはいなかった。険しい表情を浮かべながら、長老を問い詰める魔蛇月だったが、長老は此処には無いと突っぱねた。
「そうか・・・だが、残念だったな!俺達には、デーモンディテクションがあるんだ!!」
魔蛇月は反応を確認すると、反応は長老から発せられていた。魔蛇月の口元がニヤリとすると、
「成る程、考えたな!自らの体内に封じるとは・・・だが、」
魔蛇月に見つかった長老は目を瞑り、カッと見開くと、自身が持っているクリスタルフィオーレの力を解放し、
「天空の者共、並び、大地、海洋の長老達よ!わしの命運も尽きようとして居る。スアロ、お前がわしの後を引き継ぎ、天空の神殿を治めてくれ!大地、海洋の長老達よ・・・後を頼むぞ!!さらばじゃ!!!」
「遺言は終わったか?・・・」
魔蛇月の目が金色に輝くと、魔蛇月の手刀が長老を貫く!グリグリと長老の体内を掻き混ぜ、魔蛇月は血塗れになった銀のデーモンストーンを手に入れる。天空の長老は、それと同時に永遠の眠りに付いた・・・
「フハハハ!遂に、遂に8つのデーモンストーンが揃った!!俺の宿願が果たされる時が来た!!」
魔蛇月の嘲笑が天空の神殿に木霊した・・・
三匹の魔獣の前に、フェニックスは窮地に陥っていた。ファイアーガードも破られ、ダメージを負う・・・
「たとえ私が倒れても、アースが、オーシャンが、そして、お母様やお姉様が居てくれる・・・せめて、一体だけでも道連れに!!」
フェニックスが死を覚悟した時、
「大地の力よ!」
「海洋の力よ!」
「今、二人のプリキュアと!」
「今、二つの神獣と共に!」
「「奇跡の力を解き放て!!プリキュア!シャイニングフレア!!」」
空中より落下しながら、アースとオーシャンから放たれた光のエネルギー波が、ベヒーモス目掛け炸裂する。
「羽ばたけ翼よ!プリキュア!トルネードウイング」
スワンの翼が羽ばたくと、前方に風が生じ、その風を両手で円を描くように回転させると、風は竜巻を起こし、凄まじい威力となってリヴィアンへと向かっていく。
「闇に舞え!プリキュア・シャドウウイング!!」
クロウの瞳が金色に輝くと、クロウは黒き翼を纏い、ガルーダに不意打ちの攻撃をヒットさせる。
「アース、オーシャン、お母様、お姉様」
一同を見たフェニックスの顔に、満面の笑みが浮かぶ、
「天女、今天空の長老の最後の通信が入ったわ・・・長老は殺され、魔蛇月は全てのデーモンストーンを手に入れた・・・しかし、私達には最後の切札がある!でもその為にも、此処で魔獣の脅威は排除した方が賢明!みんな、決着をつけるわよ!!!」
スワンの言葉に頷く一同・・・
アースとオーシャンがベヒーモスに、スワンとクロウがリヴィアンに、そして、フェニックスがガルーダにそれぞれ戦いを仕掛けた。肉弾戦では分が悪いプリキュア達は、距離を取って連携技で攻撃していると、
「天女、アース、オーシャン、私と天満で、クリスタルトライアングルで魔獣の動きを何とか封じ込めてみるわ!あなた達は、今こそ伝説の技!デルタトライアングルを放つ時!!」
スワンの言葉に頷いた三人、フェニックスは大空に飛翔し、アース、オーシャンが左右に散って三方に別れる。三人を追いかけようとした魔獣に対し、スワンとクロウは、
「天満、行くわよ!」
「はい、お母様!」
「「戒めの光に捕らえよ!プリキュア!クリスタルトライアングル!!」」
クリスタルトライアングルが、魔獣を結晶の中に閉じ込める。だが、魔獣の力の前には、結晶に脆くも罅(ひび)が入る。
「今よ、三人共!!」
スワンの言葉を合図にしたように、
「三つの心を!」
フェニックスが叫び、
「三つの希望を!」
オーシャンが叫び、
「三つの思いを!」
アースが叫んび、
「「「一つにして!プリキュア!デルタトライアングル!!」」」
三人のシャイニークリスタルから、三角形の虹の光が、三匹の魔獣目掛け照射される。虹の結界は三重に連なり、魔獣の動きを押さえ込む。
「「「ハァァァ」」」
プリキュアの掛け声と共に、徐々に圧縮していく三角形の虹の結晶によって、完全に動きを止められた時、
「「「魔よ!光になれぇぇ!!」」」
虹の三角形の結晶が、光と共に爆発を起こし、三匹の魔獣は光に散った・・・
「デルタトライアングル・・・凄まじい技ね!みんな、一先ず天空の神殿に向かいましょう!!長老様の弔いも含め、今後の事を話しておきたいわ・・・次こそ、魔蛇月と雌雄を決する時!!」
スワンの言葉に、表情を引き締めるプリキュア達は、天空の神殿へと向かっていった・・・
第九話:神殿の攻防!
完