※この作品はR-18です。

やさぐれ天龍とヤンデレ艦娘   作:Toygun

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13.大井は色々とこじらせてる

じゅぷじゃぷと、濡れた何かが擦れ合う音がする。背から突き込まれて自身が立てる音だ。

 

―ずいぶんとまあ濡れているじゃないか、欲しかったのだろう?

 

違う

 

そう自身に言い聞かせても、体はそれを受け入れてしまう。歯を食いしばってみても、己の肉壺は凶器を迎え入れようと、はしたなくよだれを垂らす。

 

―相変わらずきれいな尻だ、まるで乙女のようではないか

 

お前のためじゃないし、私のせいじゃない。私たちは、老いるなんて出来ないんだ。そう言い訳をしても、気は晴れることなく、びくりびくりと震える体が自身の心を裏切り、追い詰める。

 

―そうら、顔を見せろ、いつものように取り澄ました顔をしてみたらどうだ

 

大きな手でつかまれて、無理やり顔を後ろに向けられる。いやだ、こんな奴に見られたくない。痛くて苦しくて、何より悔しがってる様なんて、見せたくない。

 

結局―それを見られることはなかった。振り向いた先のあいつ、首から上がなかったから。

 

「かはっ」

 

 ぜえぜえと、訓練で練兵場を走った後みたいに変に苦しい。ここ数か月、見る悪夢のあいつは首がないところで終わってる。悪夢には違いないけど、いくらかマシな部類だ。呼吸が少し落ち着いたところで、時計を見るとまだ朝の4時だった。流石に起きるには早すぎる。

 

 大井はそう考えると、もうひと眠りしようと目を閉じるが、ふと気になって隣のベッドを見る。寝返りを打ったらしい北上がこちらを向いていてドキリとするが、目は閉じられたままでほっと息を吐く。

 

 ともかくもう少し寝よう。出撃はないが非番ではないし、訓練やらなにやらある、眠っておかないとあとあと大変だ。

 

 

 

 

べたりと壁に押し付けられたまま、貫かれる。

 

―いい具合だ、まったく惜しいなぁ

 

あいつと違う声が響き、最悪だと大井は思った。眠ろうとしただけなのに、なんで続きを見るんだと。目を、覚まさなきゃ、早く、早く!でないと、

 

―旦那ぁ、勘弁してやっちゃくれませんか

 

あの人が、

 

―明日も仕事、なんですよ、そいつも

 

ずるりと肉棒が引き抜かれて、大井はその場に崩れ落ちる。それでも背後に手を伸ばそうとして、背後の彼女に声をかけようとして、体をひねる。

 

―大事なオレの盾なんだから、あまりいじめないでくださいよ

 

そう言う天龍はーあちこちの肉を食われて、ともすれば骨が露出して、死人にしか見えなかった

 

―盾とはお前もひどいやつだな、ではお仕置といこうか、天龍

 

自分を責めさいなんでいた男は、既に骨と皮のような幽鬼で、ほぼしゃれこうべのあごで天龍に食いついた。天龍の肉を食み、骨をかじる。しかしそうする程、男の残った肉が削げ落ち、骨が崩れていく

 

―やめて!

 

そう叫んだ筈の声は、まるで音にならなかった。

 

―大丈夫だって、大井、こいつら、もうお前に悪さできないって

 

―もうやめて!

 

あいつが、あいつらがバリバリとあの人の腕をかじってしまって、右腕なんてもうなくなってしまった。

 

―だから泣くなよ、大井

 

助けてと叫んでも、誰も答えてくれない。あの人に助けてほしいんじゃない、あの人を助けてほしいんだ

 

―おいおい、笑えよ、「大井」

 

―あの人を助けてよ、北上さん!

 

「大井っち!」

 

目の前に北上さんの顔が見えた。

 

「え、あれ、北上、さん?」

 

「大井っち、大丈夫?。えらくうなされてたけど」

 

まだ暗いけれど、日は昇り始めていているようでカーテンが明るくなっている。先ほどからそう時間はたっていないようだ。

 

「すみません、北上さん。少し夢見が悪かったようです」

 

そう言いながら体を起こした。

 

「ほんとに?どっか調子悪いとかじゃない?」

 

間近に見える彼女の顔―唇を意識してしまって、それに気づく。

 

「大丈夫です。ちょっと嫌な感じに汗をかいたみたいなので、浴びてきます」

 

まだ早いですから、休んでいてください、と声をかけながら、着替えを―下着も持って、共同のシャワー室へ急いだ。気付かれたくなかったから。脱衣室で、それを確認して呟く。

 

「朝から最悪」

 

脱いだショーツもそれで覆われていたそれも、濡れていたから。

 

 

 

助けて、って聞こえて文字通り跳び起きたんだ。でも別に敵襲のサイレンも鳴ってないし、砲撃音もなくて、寝ぼけてたのかな?と思ったけれど、隣のベッドで寝てる大井っちが目に入ってから気付いた。なんかうなされてる。ベッドから出て、大井っちのベッドに手をついて、ちょっと良くないけど寝顔を眺めたら、口がなんか動いてる。

 

「大井っち?」

 

びくっと彼女が動いて、またなんか呟いてる。け、とか聞こえたところで「助けて」だと分かったから、彼女の名前を何度か呼んだら、急に目を開けて、

 

「あれ、北上・・・さん?」

 

まだ寝ぼけてる感じだった。夢見が悪いって言う彼女からなんとなく離れたくなくて、調子はどうかって何度か聞いたけど、大丈夫だって言い張ってるように見えて。

 

「浴びてきます」

 

って着替えを持って行っちゃった。

 

「んー、どうしようかな」

 

少し不機嫌そうに見えたけど、うなされてたからなのか、寝顔を見られたからなのか分かりにくいし。

 

「戻ってきた時に寝てるのも薄情な気もするし」

 

戻って来たら、あの子の髪を整えてあげよう、と決めて起きてることにした。

 

「うん、大井っちの髪、整えるのは慣れてるし」

 

つい口に出してしまって、少しだけ後悔した。

 

「髪、触らせてくれるかな」

 

今の大井っちは、触られるの、嫌いみたいだから。

 

 

 

 

 寝起きは最悪の気分だった大井だったが、その後の機嫌は急上昇であった。あの北上が髪を整えてくれたのだ。手慣れたかのように自分の髪を梳る(くしけずる)彼女の手際に、流石は北上さんと世の大井の御多分に漏れず北上至上主義思考を全開にした大井だった。もっとも、その後自分なんかの髪を触らせている申し訳なさに心が急降下を始めてなんとも忙しい状況だ。それでもどうにか礼を言うと、とりあえず用事があると誤魔化して先に部屋を出た。後ろで調子が悪いなら休ませてもらえ、という彼女の勧めを聞きながら。

 

「さて、どこにいるかな」

 

用事はあって無きがごとし。昨晩の「彼女」のお相手は誰だったか、あいにくと大井は情報を仕入れていない。榛名のように一人部屋だと「彼女」は榛名の部屋から出てきたりもするし、大井のようにルームメイトがいる場合は、「彼女」の―天龍の部屋を訪ねていくのがいつものパターンだ。流石に大井も北上の横で抱かれる趣味はないし、見せられる北上も迷惑だろう、と思う。流石に衆人環視の朝食時に声を―挨拶ならいいが、この「用事」で声をかけると正気を疑われかねないので、出来れば一人でいるところで話したいものだ、そう考えたところで声をかけられる。

 

「よう、大井、早いな」

 

「おはようございます天龍・・・さん」

 

目当ての相手ではなかったために、挨拶が尻すぼみになる大井。

 

「ん?その分だと提督のオレに用事ってとこか。それなら食堂の裏口にいたぜ」

 

思わぬ情報に、大井は破顔する。

 

「ありがとうございます、天龍さん」

 

礼を言って足早に急ぐ大井。それを見送る天龍はと言うと、

 

「しかし大丈夫かね?この間の件、まだ根に持ってたりしねえか?」

 

大井、イク、ゴーヤの件は正直自分としても他人事ではなかったため、すっかり忘れていそうな大井の心配をする艦娘の天龍だった。

 

 

 

 

 

聞いた通りに食堂の裏手にまわる。浜から直接物資を搬入するルートもあったりするので、意外と眺めはいい場所だ。少し近づくとたまに嗅ぐことのある匂いが―彼女の香りにたまに混じる匂いがして、建物の角から顔だけ出してそちらを見てみる。いた。

 

「天龍さん」

 

煙草、吸うんだ、と今更気が付いた。どこから持って来たのか、喫煙所にありそうな金属柱みたいな灰皿も置いてある。

 

「ん?大井か」

 

ベンチに座ったままこっちを両目で見た彼女に、あれ?と思った。顔に出てたみたいで、天龍さんが眼帯を左目にまたつけてしまう。

 

「左目、まともに見えるの?」

 

確か、遠くしか見られないって前言ってたはずだ。

 

「ああ。なんかの弾みでコツ掴んだらしくてな。開けっ放してわけにはいかないけどな」

 

「前から使えりゃもっとマシだったかもしれないなぁ」

 

なんか、元気ない?隣に座りながら、ちょっと露骨に話題を変えてみる。

 

「煙草、吸うんだ」

 

「たまにな」

 

この匂いが嫌いだ、て奴もいるからほんとたまにな、と彼女は付け加えた。わたしは―煙草交じりの彼女の匂いが結構好きかもしれない。そういえばあの日も、吸ってたのかも。こんな感じの匂いだったし。

 

「お前、匂いフェチか?」

 

「え?」

 

無意識に彼女の襟元を覗き込むようにして、鼻を鳴らしていた。慌てて離れる。

 

「いや、なんかこの匂い好きだなって!」

 

「ほんとか?この間もやめてって言ったのにわきの下に首突っ込みやがるし。あと、悪い男にひっかかりそうだから、こういうの好きとかやめとけ」

 

「この間のはほんとごめん。わたしもどうかしてた」

 

「それで、わざわざ謝り直しに来たわけでもないだろうし」

 

「そろそろつらいんでまじでお願いします」

 

あんな夢まで見てしまうのだし。ほっといたら次は何見るかわかりゃしない。

 

「まあオレも鳳翔さんとの時間を楽しませてもらったしな。いいだろう」

 

「ねえ、この話題で他のひとの名前出すの、ひどくない?」

 

「それくらい言っとかねえとな。またやったら他の連中向けに注意喚起出すことになるから、飲みすぎるなよ?」

 

流石に女の子を強姦魔扱いはひどいと思う。

 

 

 

 なんか朝食の時、トレーを渡してくれた鳳翔さんの笑顔が怖かったように思う。もしかして聞かれてた!?

 

まあ、食堂の裏側で逢引きの約束などしていれば、聞かれることもあろう。なお、

 

「なあ、やっぱり大井の奴、北上のところ行くんだな」

 

「本土で見かけたのも大体あんな感じだぜ」

 

「あいつほんとどっちにする気だ?」

 

天龍ズに行動を注視されていることに気付かない大井であった。

 

 

 

 

 

大きさには自信のある胸を大きなてのひらで持ち上げられる。ただまあ、背中に当たってるもっと大きな柔らかいので結構ショックが大きいんだけど。天龍型とは大体互角だと思ってるんだけど、わたしの天龍さんは―顔が赤くなる、今わたしのって考えてた―多分どの天龍さんよりも体格が良くて、グラマラスだ。抱えられたまま胸の先を指で挟まれて、息を吐く。挟んだ指がまた離れると、今度は先から押さえられて、撫でるように先ごとぐるりと指が円を描いて動いて、そんな子供だましでみたいに考えるのだけど、考えるのだけど!

 

「どうした?」

 

左側から顔を出してくる天龍さんに、不満を伝えるかのように頬を膨らませる。でも乳首は固くなってるのが分かってしまって、口に出せない。そもそもなんでわたしは天龍さんの前でなすがままにされているのか。

 

「この間みたいに好き勝手されるのもなんだしな」

 

「でも愛し合うならちゃんと顔見せてくれなきゃいやかな」

 

「顔どころかオレの穴凝視したあげくいじり続けといてよく言うよ」

 

言い方が下品なのも気に入らない。もっとましな言い方だってあるだろうに。

 

「・・・ずっとされるだけってのは嫌だったし。前だって指でしかしてくれなかったじゃん」

 

「そりゃおめえ、オレなんかが他の仕方までやっちまったら、申し訳ないだろ?」

 

え?と顔を少し向けたところで、片手でおなかを撫でられる。これがなんか、とても優しい感じがして好きなんだけど。大体もう少し撫でてほしいと思うところで、手が股間に―ええい、おまんこにいっちゃって、鳴かされる。まあ声は出さないというか、出す余裕もないんだけど。

 

「相変わらず、お前声出さないな」

 

下の唇を指で撫でられて、クリトリスも―教えられてないのに知ってるってのも嫌だった知識だけど、クリトリスも押されたり、軽く、あくまで軽くつままれたりして返事をする余裕はあまりない。あいつらみたいにぎゅっと潰されて痛いよりはずっといいけど。

 

「出す、余裕ないだけ」

 

「そうか?じゃあもう少し弱くした方がいいか」

 

「逆!」

 

逆に強く、って言おうとした時にちょっと指が「ぶつかって」、声が跳ね上がる。

 

「悪い、ちょっと強く押し過ぎたな」

 

「逆」

 

「なんだよ」

 

「・・・言いたくない」

 

言いたくないし、聞かれたくもない。もっとめちゃくちゃにして欲しいなんて。真横で彼女がため息をついて、また前をつままれる。さっきより優しく、でも止まることなく続けられて。

 

「まって」

 

少し止めてほしい、それだと終わってしまうから。でも、聞いてくれなくて、手にしやすかった天龍さんの左腕を抱えたまま、イってしまった。

 

 

 

 事後のけだるさを、堪能している―ではなく、心ここにあらずといった大井。天龍の私室のベッドで、べたりと女の子座りで一応は余韻に浸っているようにも見えなくないが、この間の件もあり、事務的とは言わないが半分作業的に天龍は彼女をイかせている。当の天龍は正直そんな簡単にイくのかとも思ってはいたが、呆けた表情を見るに、天龍の技量はそれなりに効果を持っているようだ。当の天龍はと言うと、ベッドから立ち、机の上においたペットボトルに軽く口をつけたりしている。

 

「ねえ」

 

「なんだ、大井」

 

「わたしの時だけ手抜いてない?」

 

とはいえ大井とて気付く。気付かない方がおかしくもあり、天龍も気付かせるためにヤっている。

 

「手を抜いていると言うより、同じことをしているというところだな」

 

「何それ」

 

不満そうな物言いの大井の背にまた座る天龍。いつの間にか手にしたブラシで乱れた大井の髪をいじり始める。

 

「え、ちょっと」

 

「やっぱ髪の先とか、乱れ方ひでえな。毎朝大変だろ」

 

「なんでそんなに手慣れてるのよ。誰にしてるんだか」

 

「わざわざそういうこと言わないように気を付けてんのに、言わせようってのかね」

 

まあ天龍はしょっちゅうとは言わないものの、榛名の髪を整えたりしているわけだが。

 

「・・・ごめん、ちょっと妬いた」

 

髪を梳く手が止まる。

 

「オレ相手に妬くとか妬かないとやめとけよ」

 

「別にいいじゃない。実際こんな仲なんだし」

 

本気で言ってしまっているらしい大井に、言いたくなかったことを言う天龍。

 

「お前さ、オレと北上、どっちに抱かれたい?いや、抱きたいでもいいけどな」

 

「今、それを言いますか」

 

「言わねえといつまでたっても気付きそうにねえしな」

 

天龍は少し残酷な物言いをした。

 

「オレが良いってんなら、とりあえずオレが出来る範囲で色々してやるけどよ」

 

「なんかお手軽に抱かれてる感じがして嫌ってだけですよ」

 

「分かってねえな、北上を差し置いてオレに初めてなことヤられてえのかって言ってんだよ」

 

ぎょっとした表情で首を背に向け、発言者を見る大井。同じことしかしていない―かつて蹂躙された部分はそれなりにこねくり回しても、それ以外には手を付けていない、と天龍は言ってのけたのだ。その天龍が、大井のあごに左手を添える。人差し指が大井の唇に触れるか触れないかのところをさまよった。

 

「お前さ、気付いてねえようだからまず言っておくが、その唇、まっさらじゃね?」

 

「え」

 

軽巡の大井―舞鶴在籍中は天龍と組まされる場合がほとんどだった、だからこそ鎮守府からの離脱もやろうと思えばすぐ出来た。つまり、自分がいるときは天龍も鎮守府にいた。不幸にもそれは起きたものの、大体は天龍が引き受けていた。なんだかんだで自分を嬲っていたひとりの例の死人も、女の顔を眺めるのは好きだったようだが、女の唇には執着はしていなかった。まだ、大井の唇は―大井だけのものだった。誰にも唇を許そうとはしないのも、無意識にやっていた。

 

「言っておくがな、オレは嫌いな奴とする趣味はねえ。気に入ってるからしてるんだ」

 

「でもよ、好きな相手がいる奴をことさらにいじめるなんて趣味もねえ」

 

「で、お前にしてるのは、こうすれば気持ちいいぜっていうお勉強みたいなもんだ。応用は宿題な。したい相手もいることだし」

 

「でも、でも私なんかじゃ北上さんには」

 

「釣り合わない?まあそうかもしれないし、そうでないかもしれない。でもそれ、お前が決めることか?」

 

「聞けよ、あいつにさ」

 

「我慢するのも結構きついんだぜ」

 

「我慢・・・」

 

「それともなんだ、全部してほしいか?頭の上から爪先まで余すところなくオレに食われて、どうあがいても北上のところに行けねえ体にされてえのか」

 

「それがお望みだってんなら、そうだな、その唇から食って、仕上げに左目で産毛の一本に至るまで全部「見て」やるぜ」

 

宣言した天龍が、抱きすくめて自分ごと倒れるように大井をベッドの上で押し倒す。体をひねったせいで仰向けになってしまった大井に、ゆっくりとその顔を近づけていく。ひっと悲鳴を上げた彼女が、それを突き飛ばした。なんだかんだで同級の艦娘であるので、腕力などは同等だ。ベッドの下に転がり落ちる天龍の耳に、どたどたと走り去る音が響く。

 

「あー、服くらい着て行けよ」

 

床で天井を見上げたまま動かない天龍。それをゆらりと入ってきたあきつ丸が見下ろす。まあ、夜も遅い時間に服を抱えてマッパで走り去る艦娘を見れば、憲兵が飛んでくるのが普通である。なお、前話にも登場しているが特務課の不健康そうなあきつ丸とは別人である。

 

「何をしているでありますか」

 

「自己嫌悪」

 

「何をしたでありますか」

 

「ちょっと脅かしてやった」

 

「そうですか」

 

「それで済ますのかよ」

 

「この間の件もありますし、大井殿相手ならばお相子でいいでしょう」

 

「まじか、あいつ信用ないな」

 

「端から見ても優柔不断がひどすぎまして、流石にどうにかしませんと」

 

「あー、やっぱりか」

 

よっと起き上がり、べたりと床に座る天龍。同様に全裸である。多少ノッてる時の大井にはまあ色々と許していたためだが、作業的にヤったのは恨み半分と、大井自身からのお返しがなかったことである。ベッドに頭だけを載せて、天龍はそれ以上動かない。

 

「やっぱりダメだわ。しばらくムリ」

 

「何か要ります?」

 

「酒」

 

「それはルール違反でありますな。今夜は酒も―モルヒネもなしでしばらく反省すると良いかと」

 

どこかで聞いた言葉とともに、ベッドに引き上げてくれるあきつ丸。

 

「添い寝してくれねえ?」

 

「提督からのお誘いとは魅力的ですが、あいにくと同性に興味はないですな」

 

やっぱり女だと不便だ、と天龍はやさぐれた。

 

 

 

 

 

 

なんとなく作られた喫煙エリアだが、食堂の裏手と本棟の上階の廊下の端とで、2箇所存在した。今のところ煙草を吸うのは天龍一人、それも、3日に1、2本吸うか吸わないかと言ったところである。こちらは椅子も置いていない。午後の執務の合間、行き止まりの壁の窓から外を眺めて、一息ついていた天龍だったが、近づいて来る足音に首を向ける。

 

「おい、結構脅かしたつもりなんだが」

 

たったの3日で戻ってくるぐらいには、ソッチ関係では舐められてるのかもしれない、と天龍は思った。ヤってるのに安全牌とか意味不明である。

 

「・・・すみません」

 

それ以外言わず、大井がスカートをたくし上げる。唇をぎゅっと結んだままにしていて、なんとなく天龍としては面白くはない。

 

「まあ、そういうときもあるだろうよ」

 

吸い掛けの煙草を灰皿に押し付けると、少しだけ大井の意図を無視して両手で抱きしめる。びくりと震える彼女を無視して、すぐに解いた片手で頭をぽん、ぽんと軽く叩く。ちらりと大井を見れば、子ども扱いされたと思った彼女がぶすっと膨れていた。

 

「体が夜泣きして仕方ないから何とかしてくださいってことだろ?」

 

「こういう風にしているのを、見られたくないんです」

 

「北上とかにか?」

 

「そういうことじゃなくて、だらしない女みたいに見られたくないだけです」

 

行き止まりだから壁側に向けて御開帳、となればまあ背からは見られないかもしれないが、抱きしめられているよりもそちらの方が事実としてはだらしない。

 

「オレのとこ来てる時点であんまり・・・それよりさっきみたいなのやめろよ。嫌な意味で舞鶴の時を思い出すから」

 

あれ?と少し前の自分を振り返る大井がはたと気付く。

 

「ごめん、あいつらに殴られないようにしてたのと同じことしてた」

 

どっちにせよ乱暴に壁に押し付けられていた大井だったが。

 

「結構ショックだったぜ」

 

たくし上げでおねだりとかおいしいシチュがトラウマ扱いの、結構不幸な天龍だった。

 

「もしかしてわたし、結構天龍さんに見られてた?」

 

「見られてたも何も、半分くらいはしゃしゃり出てったつもりなんだが?」

 

気付く余裕もなかった、というのが実際である。息をのんで返事も出来ない大井を見て、

 

「わりい、少しいじめ過ぎたな」

 

そう言って左腕で大井を抱いたまま、右手をスカートに潜り込ませる。下着をダメにするのもなあと思ったものの、ゴムが伸びるのを無視してショーツの上から手を差し入れる。

 

「おい、まさか朝からこれか」

 

「うなされて、起きるとこれなんです」

 

ショーツの大事なところを覆う部分はしっとりと濡れ、大井自身も受け入れ準備完了とばかりに潤っていた。少しだけ中指を潜らせると、抵抗もなくやけに大きくくちゅりと音が響く。

 

「オレがまだ怖いなら、片手で口塞いどけ」

 

大井は言われた行動をせずに天龍の首に腕をまわすと、つま先立ちで天龍の左肩側に顔を逃がす。

 

「ごめん、ちょっと余裕ない」

 

敬語だったりタメ口だったりと、ぐちゃぐちゃな程度に距離感が近くなってしまった二人だ。

 

「見られても知らねえぞ」

 

人気の少ない廊下に妙に音が響いて、天龍も正直なところ、気分が高揚していく。と、大井が急に体を押し付け、浅く入れた指もやや強く締められる。

 

「・・・1回じゃ足りねえだろ」

 

続けてやりにくい姿勢ながらも、親指で陰核を押しつつ濡れた割れ目をかき回し続ける。大井の腕が力が入ったり抜けたりと反応する。さらに2度強く抱きしめられたあとで、大井の腕の力が完全に抜けた。彼女の背に回していた腕で天龍は大井を支える。

 

「立ってられるか?」

 

「あ、うん、もう少し。腰は抜けてないと思う」

 

「ちゃんと部屋に戻って着替えろよ?」

 

「換え、あるかな・・・」

 

「ちょっと待ってろ」

 

廊下側の提督用私室の扉から入り、着替えのいくつかから天龍は自分のショーツを取り出して戻る。合う合わないはあるかもしれないが、大井はスタイルがいい方なので大丈夫だろうとの判断である。

 

「とりあえず下の更衣室で履き替えとけ」

 

そう言われて退散する大井だった。

 

もっとも言われた通り行動した後、

 

「あれ?さっきの部屋で履き替えちゃだめだったのかな?」

 

と気付いたりもするのだが。

 

 

 

そして、廊下では誰にも見られなかった二人だったのだが、

 

「鳳翔さん、どったの?」

 

工廠搬入口で艤装の整備状態など確認をしていた数名の艦娘達である。鳳翔が本棟を見ているのを目にした北上が尋ねたが、

 

「いえ、なにも」

 

と普段の笑顔で返される。すぐに鳳翔が艤装のチェックに戻ると、北上は何が見えたのか?と本棟を見てみる。たまに天龍がいるあたりの窓に、天龍の背中と、大井の顔が見えた。

 

「あれ?」

 

大井の腕と顔が向こう側にするりと消えていくのが見えて、何が起きてるのか理解できない北上だった。

 

「北上さん、手が止まっていますよ?」

 

そこへ鳳翔がにこやかに注意を飛ばす。混乱したまま艤装の確認を続けてみるものの、見えたものに理解が追いつかないのと、鳳翔の笑顔が妙に圧力を感じるものであったのとで、どうにも身が入らなくなった北上であった。

 

 

 その夜、執務が長引いて遅い夕食を摂っていた天龍。食べ終えて食器類を洗おうと、配膳や受取のカウンターではなく厨房へのドアを開けてみれば、

 

「鳳翔さん、明日の仕込みか?」

 

何故か残っていた鳳翔と相対した。

 

「まあ、そんなところです」

 

鳳翔は食器を載せたトレーを受取り流しへと置くと、またすぐに天龍のところに戻る。ん?と天龍が気が付くと、腕を首に回されてキスされていた。1分、2分、鳳翔が身を離す。

 

「今夜は予定ないぜ」

 

天龍の言葉に、しかし首を振る鳳翔。天龍の唇に人差し指を当てると

 

「今夜は、お預けです」

 

そう言って、食器を洗いに厨房内に引っ込んでしまった。

 

「鳳翔さん?」

 

それっきり無反応の鳳翔に、仕方なく戻る天龍だったが。

 

「なんかやっちまったかなぁ」

 

部屋に戻る途中、「天龍解禁」の話が伝わったらしいゴーヤに背中に飛びつかれたものの、

 

「鳳翔さんにお預けですって言われちまってよ」

 

と意味不明な釈明をする天龍。もっとも何故かゴーヤには通じたようである。

 

「それはずるいでち。イクといっしょにゴーヤが抗議しておくでち」

 

「やばいことになりそうだからやめとけ、また相手・・・そういやオマエ相手だとオレの方がヤられるんだった」

 

「天龍は柔らかいから好き。ごつごつしたのは嫌いでち」

 

そういうととてとてと走って行ってしまった。後ろ姿になんか見たような既視感を覚え、しばし考える天龍。

 

「あ、服装がストパンだわ」

 

そうくだらないことを考えながら自室に戻る彼女だった。

 

 

 

 

 

さて、その夜の大井であるが・・・

 

「大井っち?」

 

まだ寝るにも風呂に入るにも早い時間だった。鎮守府の稼働状態も高くないので、自由時間はかなり多い。まあ資材その他の状態があまり改善されていないので、やたら稼働率を上げると却ってまったく動けなくなるのと、近海に睨みをきかせるのが目的の鎮守府だ。無人島群の各所から監視する方がむしろ効率がいい。

 

「は、はい!?」

 

「どしたの?」

 

補給とともに本土から届いた雑誌を眺めていて、やっぱり上の空だったりして北上に様子を聞かれる大井。ちなみにファッション雑誌・通販雑誌が多めである。何分ここは給料をまとめて支給された艦娘が多い。どうにかして出費した経費を経済に戻そうと、企業のケツを担当部署が叩いていたりする。で、見ているのはファッション、しかもページはちょうど不足している下着類だった。ベッドの上でぺたんと座って、肩越しに北上が覗き込んだりと距離が近い。そして、下着である。

 

北上さん、ちかい、ちかい!

 

ぐだぐだな思考の大井、いつぞやの朝と違ってこれだけで濡れかけである。しかも、

 

天龍さんのショーツが濡れちゃう!

 

ある意味本人にとっては二股をかけてるわたしってすごい悪女みたいなおかしな思考状態になっていた。いいとこ「あくじょ」止まりだが。

 

「これなんか可愛いよね、大井っちに似合いそう」

 

そう指し示された写真、淡いピンクで透けてはいないもののレースで飾りまでついたそれを着た自分を想像する。どういうわけだか耳元で北上に囁かれている妄想つきである。現在進行形でガールズトークで囁かれているわけではあるが。

 

「まー見せる相手とかともかくさ、カワイイの一つくらい欲しいよね」

 

「はい、欲しいです!」

 

多分ずれているかもしれない大井。

 

 で、ナニが欲しいんだ?お前

 

ピンクの下着で耳元に北上、正面にマッパの天龍を幻視、幻聴まで追加されたところで、いきなり現実に戻って立ち上がる大井。

 

「大井っち?」

 

どたどたとベッドから降りてドアを開ける。

 

「すみません!少々お花を摘みに!」

 

走り去る大井を見て、

 

「あー、ちょっと間が悪かったかー」

 

「でもなんかいい匂いだったな、大井っち」

 

と微妙にこっちもおかしくなっている。で、大井はと言うと、雰囲気もへったくれもない個室、ショーツをおろすでもなく手を突っ込んでしまい、完全に濡らしてしまっていた。

 

「どうしよう。絞って、出来るだけ拭いて湿り気取っても、気付かれるかも」

 

自分で嗅いでも、実も蓋もない言い方をするとメス臭い。じゃれあうと結構きわどい姿勢になることもある。いっそ脱いでしまおうかとも考えるが、北上の前でショーツの沁みならまだマシ、シーツに沁みを作ったらガチで死ねる。やむを得ず戻る。なお、そういう関係になったら沁み作っちゃってもいいじゃん、とならないのがヘタレである。さて、部屋に戻ると、

 

「北上・・・さん?」

 

「んあ?お帰り、大井っち」

 

「いったい、何を?」

 

見ると北上、尻をあげて突っ伏すような姿勢で大井のベッドにそのままいた。顔の片側のみ戻ってきた大井に向けたため、右目でしか大井を見ていない。

 

「いや、なんか今日の大井っち、いい匂いしててさ、シーツに秘密があるのかと」 

 

北上も今夜は大分キテるようである、匂いを嗅いでいる宣言だ。これには大井も閉めたドアに背を押し付けてしまう。

 

 スカートは絶対死守、今嗅がれたら死ねる!

 

とはいえ両手でスカートを押さえた大井に、

 

「あれ?わたしなんか間違えた?」

 

少し頭を落ち着けてみよう→いい匂いの大井っち→シーツの匂い?→座っていたところの匂い→大井っち「の」匂い?

 

「ごめん!なんかとんでもないこと口走ってた!」

 

即土下座である。お花を摘みにと言った婦女子の座っていたところの匂いをチェックとか、ド変態である。

 

「北上さん」

 

目に光がない大井。

 

「はい!」

 

ベッドの上で正座に切り替えた真っ青な北上。

 

「お風呂行きましょう」

 

「はい!」

 

「石鹸とシャンプーです」

 

「はい、石鹸とシャンプーのいい匂いです!」

 

力技である。なお、入浴後、ショーツだけ換えがないことに気付いた大井であった。あったら天龍から借りたりしていない。

 

「北上さんの寝てる横(ベッドは別)で自分だけノーパンとか・・・やばい」

 

幸い、夢見も悪くなく、どうにか翌朝乾いた洗濯済みのショーツを履くことで事なきを得た大井であった。

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