シトリーは幻獣に蹂躙されるようです ~魔櫃の運び手アカジリと容王トリコーム~ 作:エインデュノウフ
原作:メギド72
タグ:R-18 アンチ・ヘイト メギド72 シトリー 触手 洗脳 陵辱 悪堕ち 肉体改造 無様エロ
幻獣を殲滅した彼女は心を踊らせながら宝箱を開けた――それが自身に破滅を齎すことになるとも知らずに。
自らの意思でヴィータに転生した誇り高きメギドがその矜持を捻じ曲げられ、幻獣に隷属してしまう話。
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「ゴガアアアッ! ギ、アァァァ……」
断末魔の鳴き声を遺跡中に響かせながら、多足類に似た赤褐色の巨大な虫はもがき苦しみながら地に倒れ伏した。
叫声は次第に弱まっていき、舞い上がった砂埃が収まる頃には巨大な虫――正確には幻獣という生物はピクリと動くことさえなくなった。
その幻獣から数歩離れた位置で金髪の女戦士が雷光を纏った槍を構えたまま様子を伺っていた。女戦士、シトリーは幻獣が完全に息絶えたことを察知すると大きく息を吐き、構えた槍を下ろした。
「ふぅっ……手こずってしまったわ」
そう独り言を漏らしたシトリーの身体を守る紫がかった白銀の甲冑はあちこちが腐食しボロボロとなっていた。今倒した幻獣が持っていた腐食性の毒液の影響だ。ほぼ半裸の状態で、鍛え上げられながらも女性特有の柔らかさも併せ持ったシトリーの美しい肉体が曝け出されていたが、元々羞恥心が薄い性質なのと他に誰もいないこともあり彼女はそれ自体を気にする素振りは見せていない。
「……幻獣の強さ、群れの規模。確実に増していってる。メギドラルの侵攻計画が進んでいるのね」
元々は新しい飲食店を開拓しようと来たことのない街に食事を目的に訪れたのだが、そこで幻獣が潜む遺跡の情報を得た彼女は食事を終えるとすぐさま単身でその遺跡へと乗り込んだ。そこには予想以上に多くの幻獣が生息していたが、ほとんどは小型で歴戦の勇者であるシトリーにとっては大した敵ではなかった。唯一今倒した遺跡の奥深くにいた多足類型の赤褐色の大型幻獣だけは小型のものを盾や囮に使い苦戦することになったが、それ故にこの幻獣がリーダーであるとシトリーは確信していた。そしてこいつを倒せば付近から幻獣の脅威がひとまずは消えることも。
呼吸を整えながら周囲の様子を探ったシトリーは静寂に包まれた遺跡の中で自身以外に生物の気配は感じず、もう倒すべき幻獣はいないと結論付けた。入り口から眼前に現れた幻獣は尽く屠り、逃した敵はいない。自身の前に姿を現さずに逃げた幻獣がいても、そんな臆病者はもうこの遺跡に戻ることはないだろう。
「く、ん~~~っ……さて、と」
警戒を解いたシトリーは大きく伸びをしながら大きな赤褐色の死骸の横を通り過ぎた。
幻獣を殲滅したらもうここに用はないのだが、戦闘の最中に目に入ったあるものがシトリーの足を遺跡の出口ではなく部屋の奥へと進ませた。
「鎧もボロボロだしあの街にはまだ美味しそうなお菓子が売られてたから早く帰りたいけど……その前に『これ』ね」
歩みを止めた彼女の視線の先には黒ずんでいるが豪華な装飾が施された宝箱が置かれていた。鎖で壁に繋がれたその宝箱はシトリーが入れそうな程に大きい。装飾にも蓋にも埃が被り、かなり長い間誰も手を付けていないのは明白だった。
「中、まだ何か入っているわよね? ふふっ、やはり宝箱というのは心惹かれるわ」
自身の信念に基づいてヴァイガルドに転生し、長年戦い続けてきたシトリーも宝というものには惹かれるものがある。それもこのような古代の遺跡の中にあるものには一段と期待をかけてしまう。愛用のハルマニア製の槍はここと同じような遺跡で見つけたものであるため、もしかしたらこの宝箱の中にも同じような『遺物』が入っているかもしれないという期待だ。
「まあ、『遺物』なんかが都合良く入っているなんてまずないでしょうけど……うーん、とりあえず普通に開くかどうか試してみましょう」
槍で軽く蓋を叩いてみるが感触や音では中がどうなっているかは分からなかった。流石に中身が分からないのにいきなり箱を破壊するのはまずいと仕方なく槍を傍らに置き、両手で蓋を持ち上げようと試みる。
このような宝箱に鍵がかかっていないわけがない、とはいえ解錠のための道具は手元になく運び出すにもこの宝箱のサイズならば持ち上げるにも骨が折れる。開けるためには一度出直す必要があるだろうと思いつつも試せることは試しておこうとシトリーが腕に力を込めれば、意外にも簡単に蓋は持ち上がった。
「あらっ、あっさりっ……!?」
やすやすと開いた宝箱に拍子抜けしながらシトリーは箱の中を覗いた。だがその中身は彼女が想像していたものとは全く違っていた。
箱の底と内側の壁がぬめった赤紫色の肉でできている。その肉の面から石筍のように何本もの触手が生えていた。さらに内部から立ち込める生臭さと死臭を混ぜ合わせたような悪臭はどんなヴィータでも顔を背けてしまうだろう。
豪華な装飾がなされた宝箱の外見からは想像できない、口腔と舌を思わせるような中身と冒涜的な不浄の臭いは油断していたシトリーに十分すぎる衝撃を与えた。
(迂闊っ……宝箱に擬態する幻獣の可能性を失念するなんて! しかもこのプレッシャー、さっきの幻獣の比じゃない!)
驚きながらも即座にこの宝箱が擬態していた幻獣だと気付き、戦士の思考に切り替えたシトリーは傍らに置いていた槍を掴み、後退して距離を取ろうとする。
だが一瞬で伸びた触手が彼女の頭と手に絡みつきそれを許さない。更にシトリーが僅かに怯んだ隙に、彼女を捕らえるものとは別の触手が床に置いてあった槍を弾き飛ばした。
「!? しまっ……!」
カランと音を立ててシトリーの槍が部屋の隅へと追いやられる。どこまで転がっていったのかを確認する余裕はシトリーにはなかった。絡みついた触手が彼女を箱の中へ引きずり込もうとしており、箱の縁に両手をついて必死に抵抗しなければならなかったのだ。箱の内部は幻獣の口腔内であり、体内。捕らえられればどうなるかは考えたくはない。
「ぐ、うっ……! なんて、こと……!」
勝利から一転、幻獣に対抗できる武器を失い身体を触手に絡め取られ絶体絶命の危機に陥ったシトリー。だが何度も絶望的状況を跳ね返してきた彼女はこの状況でも決して諦めていなかった。
引きずり込まれまいと必死に抵抗しつつ、まだ脚具の残っている右足で宝箱型の幻獣の外皮を蹴り続けなんとか隙を作ろうと足掻いていた。
「えっ!? うあぁっ!?」
だが両足首にぬめぬめとした何かが巻き付いた感触の直後、シトリーの身体は逆立ちをするかのように持ち上がった。突然の浮遊感に混乱するシトリーの目に映ったのは遺跡の天井と、開いた蓋の内側からいつの間にか伸びていた触手が自分の足に絡みつき「Y」の字のように身体を持ち上げていたという事実だった。
そしてもう一本、蓋の内側から伸びた一段と太い触手が彼女の身体に狙いを定めたかのように鎌首をもたげていた。
「ぐっ、離せっ……!」
狙いを察知したシトリーが暴れるが僅かに身体を捩る程度の効果しかなかった。そしてその全身を鞭のようにしならせてシトリーの腹部へと強烈な一撃を叩き込んだ。
「ごはあぁっ!!?」
シトリーの身体が「く」の字形に折れ曲がり、肺の空気が一気に吐き出される。同時に足に巻き付いていた触手が離れると共に、全身から力が抜けたシトリーの手も縁を離れ、触手の鞭打の勢いそのまま彼女は箱の中に叩き込まれてしまう。
瞬時に宝箱の蓋が閉じられシトリーは所謂『まんぐり返し』の体勢で箱型幻獣の体内へと閉じ込められてしまった。
「あぐっ!? まずっ……!? ぐぇっ、ぶ……!?」
光が閉ざされた箱の中、シトリーの全身は余すことなくどろどろの粘液を纏ったぶよぶよとした感触の肉塊に包み込まれた。さらに蓋が閉じられたことで充満した腐肉のような汚臭が彼女の嗅覚を犯していく。じゅぶり、ぐじゅりと触手と肉塊が蠢く音が耳から彼女の正気を削ぎ落とす。呼吸を求めて開いた口に粘液が垂れて舌に触れれば、味わったことのない酷い味に彼女の本能が嘔吐きを求めた。
五感全てがシトリーに全力の警鐘を鳴らす。シトリーもそれを分かっているが状況は既にどうすることもできないところまで来ていた。両手と両足の先が肉塊の中に沈み、感覚はあれどがっちりと圧迫され動かすことができない。身体には何本も触手が巻き付き彼女の全身を締め上げていた。もう僅かに身じろぐことしかできない状態だ。
「ぐぷっ、う、うぅっ……まだ、まだ何か手は……」
それでもなおシトリーは諦めていなかった。全身の圧迫、悪臭と吐き気で呼吸さえままならない状況でも、必死に頭を動かしなんとか抜け出そうと打開の糸口を探していた。
だがそれを無駄な足掻きだと思い知らせるかのように、触手が彼女の身体に突き立てられた。
ズブブブブッ!
「いぎっい、ああああぁっ!?」
突如下半身に感じた激痛にシトリーは悲鳴を上げた。思考が吹き飛び、悶えることしかできない。数秒経って痛みが落ち着いてから自分が何をされたのか、下腹部の中で蠢く感触からシトリーは理解する。
(わ、私幻獣にっ、こんな触手に犯されっ……!? うぐぅっ! う、嘘でしょう!? お尻にまでぇっ……!?)
シトリーの想像通り、触手が股間を守る鎧を剥ぎ取り彼女の体内に侵入していた。それも、二本。膣と肛門に一本ずつ、窮屈な肉を抉り分けて触手が挿入されていた。
汚れた粘液が潤滑油の役割を果たしているとはいえ、異物など入れたことのない二穴を無理やりこじ開けられれば激痛が走るのは当然のことだった。
「がっ、あぎっ、ぐっううううう!?」
ずるずると触手が抽送運動を開始した。繰り返される触手の激しい動きは戦闘でも受けたことない痛みをシトリーに与える。体内を触手が這いずる猛烈な不快感と共に彼女は思考もままならず悲鳴を上げることしかできない。
「あぐっ! ふっ……うぐっ! ……かっ、ふうっ……!」
(そうだ、フォトンは感情の影響で強くなる! この幻獣は私の恐怖や絶望を煽ろうと本来なら必要ない、こんなことをしているんだわ……! なんて、屈辱っ……!)
それでもシトリーは触手がもたらす苦痛に順応し始めた。女の身体の性が触手の暴力にも僅かに快感を感じ始めたため痛みが紛れてきたというのもある。
少しずつ生まれた思考する余裕が幻獣の目的を推測させる。そしてシトリーはこの幻獣にとって自分がもう戦闘相手ではなく狩りの獲物、いやそれどころか味付けをされる食料として扱われているのだと気付き屈辱に憤った。
だが怒りが湧いたところで八方塞がりの状況は変わらない。最早四肢は動かせずシトリーは触手にされるがままだ。そして彼女に余裕ができたことを察したのか、触手の責めはさらに激しいものになる。
「うあっ、ぎっ、ぐああぁっ!?」
(ぐうぅっ……! この、程度……!?)
シトリーの豊満ながら美しい形を保った乳房に触手が巻き付きギリギリと絞り上げた。男性を魅了するそれも脂肪の塊であり女性にとっては急所の一つだ。さらにヴァギナを貫く触手の抽送もより激しいものになっていく。女体が僅かに感じ始めた性感も更なる苦悶で上書きされていった。
だが決して耐えられない痛みではなかった。幻獣に犯される屈辱に苛まれ、悲鳴を上げながらもシトリーの目にまだ諦めの色はない。どこかで必ず隙ができる、どれだけ嬲られようとそれまで耐えてみせると、反撃の時を窺っていた。
だが次の触手の責めでシトリーのその意思は吹き飛ばされた。
「!? うっ、あ、ああ゛っ!? なっ、う、嘘でしょっ!? やめっ、あ゛があ゛あぁっ!?」
膣を責める触手の動きとは別に下腹部をずるずると蠢く感覚がより大きく、迫り上がって来るのを感じ取った。肛門から入り込んだ触手がより奥へ、奥へと侵入していることに気付いたシトリーの表情と声が初めて恐怖の色を帯びた。
下腹部の圧迫感がどんどんと増してくる。腸壁を抉りながら腹へ、吐き気とともに物理的な感触が体内を圧迫し、ついには喉にまでかけ上がり――
「いやっ、あ゛っ!? ぉぼえ゛ぇ゛え゛え゛っ゛!?」
シトリーの口から、触手の先が飛び出してきた。肛門から胃腸を通って口外まで、触手が彼女の身体を貫通したのだ。
目、鼻、口……顔中から汁が垂れ流しになりシトリーの意識は明滅する。身体を串刺しにされて臓器を中から圧迫され、止まることのない嘔吐感とかつてない苦痛にシトリーは白目を剥いて悶え苦しんだ。即座に気絶しなかったのはメギドとしての意地だろうか。
「ぁぇ……げっ……」
(こん、な……私は、ハルマゲドン、を……!)
もっとも気を失うかどうかは僅かな時間の問題だった。シトリーの魂が未だ抵抗の意思を持っていても容赦のない触手の責めにヴィータの身体が耐えられるはずもない。触手が貫通して呼吸も碌にできない状態となれば窒息で意識が急速に遠のいていく。
(私は、ま、だ……)
こんなところで死ねない、まだ為すべきことがあると自身の大義に縋るが、もう無意味だった。
シトリーの意識は、魂は苦悶に飲まれ闇の中へと消えていった。
意識を失う直前に触手の責めがピタリと止まったが、彼女がそれに気付くことはなかった。
宝箱に擬態する幻獣であるアサルトボックスやミミックは長い年月を経て災厄の魔櫃という幻獣に変化する。この幻獣はそういった種の幻獣の中でも極めて強い力を持った亜種であり、災厄の魔櫃となるのに必要な年月のさらに長い時を生き残ってきた個体だった。
そして他の個体にない特徴として自身の内部に取り込んだもののフォトンを得る際に力や知識などの情報も食らい、自身に取り込んで成長する特性を持っていた。
たまたまこの箱の上に乗っかってしまった小動物から始まり、宝物を狙って自身に手を出した冒険者や盗賊のヴィータ、メギドラルの指示でヴァイガルドのフォトンを奪いにやってきてこの遺跡を根城にしようとした幻獣……この幻獣は様々なものを食らった。特に生きている状態で体内に取り込めば骸よりも遥かに多くの、力と知識を得られた。
しかし既に大幻獣に分類される程の力と知識を蓄えながらもこの幻獣は種族の性質として能動的に活動することはなく、宝箱に擬態することでフォトンの消費を抑え貯蓄も隠していたため、誰にも存在を気付かれずにこの遺跡の中で長い月日を生き続けてきた。
知識欲や更なる力への欲望も習性を越えて幻獣に行動させる意思を持たせられなかった。
ただ自分以外の幻獣――自分に干渉してこなかったので好きにさせてた雑魚たちを全滅させる力を持ったヴィータは彼の興味を引き、念入りに力と知識を取り込んでおこうと思った。
そうして今、体内に捕らえた追放メギド――正確には彼女は追放ではなく、自らの意思でヴァイガルドに転生したのだが――であるシトリーを恐怖や絶望といった感情を湧かせるように嬲りながら、ゆっくりとフォトンと彼女の知識を取り込んでいたこの幻獣は知ったのだ。
今のメギドラルの思惑と意思、そして彼らが計画しているハルマゲドンの脅威を。
宝箱型の幻獣はシトリーを拘束しつつも圧迫する力を緩め、彼女の体内を陵辱していた触手の動きも止めた。
ゆっくりと得た情報を咀嚼し、整理し、思慮する。ヴィータであり、メギドであるシトリーから吸い上げた情報が幻獣に大きな『変容』をもたらす。
これまで習性に従って遺跡の最奥でひっそりと生きてきた幻獣に初めて強い意思が燃え上がった。
――メギドとハルマの争いなどに巻き込まれて死にたくない。
――ハルマゲドンの脅威から逃がれなくては。
――そのためにどうする?
――できればこいつは生かしておいた方が良い。
そう結論付けた幻獣はシトリーを『食らう』ことをやめた。
幻獣の体内に閉じ込められ気を失うまで嬲られながらも、彼女は食い殺される運命から逃れることになったのだった。
だがそれはシトリーが解放されることを意味していない。
シトリーを嬲っていた触手の大半が肉塊の中に引っ込んでいき、新たな触手が生えてくる。
糸のような触手が気絶して半開きになった口に侵入し彼女の舌に巻き付いて引っ張り上げ、注射器のような針を持った触手がその舌に刺さり粘液とはまた別の液体を注入する。
同じような針、しかし舌を刺したものよりは太いものを持った触手が彼女の身体のあちこちに『何か』を注射する。
そして先端に特殊なフォトンを含んだ数本の極細の触手が彼女の両耳から脳に向かって侵入していった。
ヴァイガルドを侵略せんとするメギドラル。その手先である幻獣と戦いハルマゲドンを妨害して、ヴァイガルドからメギドラルに対抗する力になろうとしたシトリー。
弱き者のため、敵がどれほど強力な存在であろうと命尽きるまで戦い続けようとする彼女の目的と信念を知った幻獣はしかしそれを理解できなかった。宝箱型の幻獣にとって大切なのは何よりも自分の命であり、死ぬまで戦いに身を投じるなど考えられないことだからだ。
だが彼女が並の幻獣より強い力があるのは確かなので利用価値はある。
宝に目が眩むという言葉通りに、宝箱型の幻獣の中には稀に他者の精神に干渉し行動を操る能力を持つ個体がいる。それはせいぜい無警戒で近付かせて自身を開けさせようとするくらいのものだが、この幻獣もその力を持っていた上に長い年月を生きたことで極めて強力な洗脳能力と言えるものにまで進化していた。
それだけの強力な効果を発揮するには直接的な接触が必要になり多大な集中と時間も必要になるが、単身遺跡に乗り込み巣食っていた幻獣を全滅させたシトリーを体内に捕らえている今、それを邪魔する者はいない。
ハルマゲドンに巻き込まれて死にたくない。だがそのためにメギドラルと戦うことも従うことも嫌だ。
そんな幻獣の自分本位の意思を叶えるための『手駒』としてシトリーは闇に意識を落としたまま身体と精神を作り変えられていった。
[newpage]
旅の女騎士が街の飯屋で化け物の巣食う遺跡の噂を聞き、その化け物を退治してくると告げて出発してから数日が経った。その女騎士は街に戻ることはなく、住人たちが彼女が化け物に返り討ちにあってしまったのだろうと思うのは当然のことであった。そして街の人々は不安を抱えた日常を続ける内に、哀れな女騎士のことは忘れていったのだった。
その化け物の巣窟とされる遺跡は静まり返っていた。数日前に現れた女騎士によってここにいた化け物はほぼ全て撃滅されていたからだ。
だが動く生物の気配が遺跡の出入り口の奥に現れ、ゆっくりと外に向かって近付いてきていた。
「はぁっ……はぁっ……!」
息を荒げながら姿を現したのは件の女騎士、シトリーであった。
消耗しきった様子の彼女は立つこともできないようで床を這ったまま遺跡の入り口へと辿り着いた。
彼女が身につけていた流麗な白銀の鎧は破片も残っておらず、素っ裸であった。さらに引き締まりつつも胸や尻には豊かな媚肉を備えた美しい身体は砂や埃にまみれている。麗しかった金髪も同様の有様に加えて乾いた粘液によってガビガビに固まってしまっていた。貧民街でさえこんな汚らしい外見のヴィータを見ることはそうそうないだろう。
その上彼女はどんなヴィータであっても顔を背けてしまうような、酷い汚臭を放っていた。何日もゴミ溜めの中に漬け込まれていればこんな臭いを発せられるだろうか。身体に染み付いてしまったその悪臭は数度の水浴び程度で落ちることがないのは間違いない。
弱者を守るために槍を振るう美しき勇者は今、あまりにも不潔で惨めな姿を晒していた。
「着い、た……!」
だがそんな有様でもシトリーは生きていた。遺跡の最奥でこれまで戦った幻獣たちを遥かに凌駕する力を持った宝箱型の幻獣に敗北し食われる寸前にまで至りながらも、彼女は生きて遺跡の外に出てきたのだ。
数日ぶりの新鮮な空気と草木の匂い、森のさざめき、肌を撫でる風、ヴァイガルド本来の美しい自然……
シトリーは上体を起こし、深呼吸をして久しぶりにそれらを味わった。
「はあ、んっ……すぅーっ……はぁーっ……あぁっ、この感じ……久しぶりだけど……」
だが深呼吸を終えたシトリーの顔には明らかに物足りなさが見受けられた。
そして彼女は背後の遺跡に振り返り、奥にいる存在に媚びに満ちた笑顔を向けた。
「やっぱり私❤ あなたが味わわせてくれるものの方が好みだわ❤」
そこにいたのはシトリーに敗北と地獄のような責め苦を味わわせた宝箱型の幻獣であった。その側面には彼女が振るうハルマニアの槍が鎖で繋がれていた。がしょん、がしゃんと音を立てながら身体を揺らして遺跡の最奥から出てきた幻獣は、僅かに蓋を開けて粘液を滴らせた触手をシトリーに向ける。
シトリーの目が待ち望んでいた絶品料理が運ばれてきた時のように輝き、急いで幻獣の元に這い進むとその身体に抱きついて垂らされた触手にむしゃぶりついた。
「んあああっ、ありがとう❤ んじゅぞぞぞぞっ❤ じゅるぅ~っ❤ じゅぞっ❤ んじゅるるるぅぅ❤」
下品極まりない音を立てながらシトリーは夢中になって汚濁の粘り汁を啜り上げる。ヴィータであれば誰でも吐き気を催すだろうその粘液の汚臭と破滅的な味は、しかし今の彼女には芳醇な香りとこの上ない妙味として受け入れられていた。
今まで口にしてきた食事がどれも味気ない、つまらないものに思えてくる。これさえ口にできるなら他の飲食物などいらないと思えるほどに。シトリーが触手をしゃぶり粘液を嚥下するごとに、これまでの美味しい食べ物の記憶とそれにまつわる思い出がもう不必要とばかりに頭から消え去っていった。
時にたった一度の敗北でも全てを奪われる。戦争社会であるメギドラルで生まれたメギドにとってそれは決して珍しいことではない。
誇り高きメギドは見かけ上の姿と所作以外は全く別物の、幻獣に媚を売り隷属する哀れな存在へと堕とされていた。
「んぢゅう~~~っ❤ ちゅる、るんっ❤ んふぅーっ、ごちそうさまでした❤」
たっぷりと触手の体液を啜ったシトリーは幻獣に対して頭を下げて感謝の意を示した。
シトリーは幻獣がもたらすものを全て極上の褒美として受け取るように洗脳されていた。常人、いや狂人であっても拒絶する汚物や汚臭、果ては痛みや苦しみでさえこの幻獣のものであれば彼女の変質した感覚は喜々として受け入れるようになっていた。
肉体のあちこちには幻獣の身体――触手の一部が植え込まれた。通常ヴィータはフォトンを操作する術を持たないが彼女に植え込まれた触手は肉体と同化しつつフォトン受容器官として働き、シトリーの肉体を強化するのだ。
そして彼女の崇高な信念も宝箱型の幻獣に寄り添ったものに変えられてしまった。もう彼女は弱者のために戦うなどという馬鹿なことは考えない。全ては同じ目的の『同士』であり、頼れる『仲間』であり、大切な『主』である幻獣のため。
シトリーは幻獣に全てを捧げ、使役されるメギドとなったのだ。
「さて……それじゃあここから先は私があなたの『足』になるわ❤ あなたのためなら私はどこへだって行ってみせる……❤」
そう言ってシトリーは両手足を広げて地面に平伏した。
ハルマゲドンに巻き込まれて死にたくないという幻獣の意思、それを叶えるためにはどうすればいいか。
答えは明瞭だった。ヴァイガルドから逃げ、メギドラルに渡ればいい。シトリーの見解ではハルマゲドンが起こってもメギドラルに勝ち目はないらしいが、戦争の舞台となるヴァイガルドにいるより長く生きられることは間違いない。そしてゲートさえ見つかれば幻獣である自分はメギドラルに渡ることは問題ないのだ。
問題は渡った後だ。ゲートを越えた先には普通フォトンの受け手となるメギドが待っているはずで、そいつをどうにかできなければフォトンの回収のためにまたヴァイガルドに送られるか、よくてハルマゲドンのための戦力として組み込まれてしまうだろう。メギドラルの意思全体に反対するつもりはないが、ハルマゲドンに巻き込まれないためなら多少は戦う覚悟はあった。だが半端な力で抵抗しても殺されるだけだ。既に弱小メギドであれば殺せるだけの力を持っていると幻獣は思っていたがそれでもメギドラルへ向かう前にできる限りより多くの力を蓄えておきたかった。
そのためにシトリーを使う。彼女は遺跡に籠もっていた幻獣と違いヴァイガルドへの土地勘があり、特別な武器が必要なものの普通の幻獣なら軽々倒せるほどの力がある。そしてどれだけ他者の力を取り込んでも宝箱の姿からは変わらないために鈍重さからは逃れられない自身の『運搬役』がこれからは必要であった。
「んぐっ……くう……!」
四つん這いになったシトリーの背中に幻獣がのしかかる。宝箱の外側の底面……普段なら見えない幻獣の外皮の底面も一部が内部のように肉でできており、そこから触手が伸びていく。潰されないよう必死に踏ん張るシトリーの肩と腰と足の付根に触手が巻き付き彼女と幻獣の身体を固定した。その姿は大きな荷物を背負わされた貧弱なロバのようだった。
「はぁ、はぁ……だい、じょうぶ❤ ぐうっ……私に、任せて❤」
シトリーはそう言うものの宝箱型の幻獣は相当な重量なようで体勢を維持するだけで精一杯の様子だった。
もっとも幻獣にとってそれは想定済みであった。自身を支えるシトリーに内部に蓄えているフォトンの一部を分け与える。潰されないように耐えるので精一杯だった彼女の身体に力が漲り、幻獣を背に乗せたまま動くことを、歩くことを可能にさせた。
「お、おおおおっ❤ 凄いっ、凄いわ❤ あなたを背負っているのに全く重さを感じない!」
ヴィータに転生してからこれほど力が湧き上がってくるのは初めてだった。興奮したシトリーは自身に漲る力をアピールするように駆け回り、更には四つん這いの体勢から何度も大きく飛び跳ねてみせた。もっともそれで不必要に大きく振動させられことが、あるいは与えたフォトンを細やかながら浪費したのが気に食わなかったのか、幻獣は粘液がほとんどついていない太めの触手を生やすと、それで彼女の尻を引っ叩いた。
スパァンッ!!
「ン゛オオォッ❤❤❤ ご、ごめんなさい❤ はしゃぎすぎたわ❤ アヒンッ❤❤❤ も、もう真面目に移動するからっ、んぐおおお❤❤❤ ゆっ、許してっ❤ キャヒィイン❤❤❤」
パァン! パァン! パァン! パァン! パァン!
懲罰の尻叩きも今のシトリーにはご褒美だったが、幻獣の機嫌を損ねたのは理解しているようで頭を地面に垂れて許しを請う。その一方で幻獣が叩きやすいようとガニ股になって尻を高々と突き上げていた。
まるで悪戯をした子どもにする折檻のような、しかし激しさは段違いの『おしりペンペン』は数分間に渡って容赦なく続けられた。
「オヘッ……❤ ごめんなさいぃ……❤」
ようやく『おしりペンペン』から解放されたシトリーの尻は猿のように真っ赤に腫れ上がっていた。
これだけ執拗に幻獣が彼女の尻を叩いたのは懲罰の他に万が一にも与えたフォトンで反逆をされないように今一度上下関係を刻み込むためでもあった。
もっともガクガクと足を震わせながらも未だにガニ股で高く突き上げた尻と股間から滴る淫蜜を見ればその心配が杞憂だったのは一目瞭然であったが。
さらにシトリーの尻の痛みが引くまで数分が経つと幻獣が自身の蓋を開けて、触手が何かを取り出した。
それは無骨な首輪だった。外に向かう最中、遺跡内の幻獣の死体から回収したものだった。幻獣はそれをシトリーの首に取り付けた。
「ああっ、これは……❤ ありがとう❤ この贈り物にふさわしい働きを誓うわ❤」
蕩けた目で首輪と、幻獣を見つめたシトリーは胴震いをして歪んだ笑顔で宣誓する。この幻獣に出会って、その配下になれて良かったと心の底から思いながら。
改めてシトリーはできる限り背負う幻獣を揺らさないように気を遣いながらのそのそと動き出した。
「まずは近くの街でヴィータを何人か襲ってフォトンを得ましょう❤ ヴィータ相手ならあなたの力を借りなくても私だけでどうにかできるわ❤」
無関係のヴィータを襲い、フォトンを得る。シトリーが忌避するメギドラルのやり方と何も変わらない方法だが彼女はもうそんなこと気にもならなかった。それが一番楽で効率がいい手段なのだし、幻獣の手も煩わせることなくできるからだ。
「ただ、あまり目立ちすぎると王都のハルマを動かしてしまう❤ メギドラルもまだまだ戦争のためのフォトンを蓄えている段階でしょうから、ハルマゲドンまでまだ猶予はあるはずよ❤ 焦らず、各地を転々としながら、私たちもフォトンを集めていきましょう❤」
シトリーの今後の動向の提案に幻獣も異議はなかった。メギドラルに渡り隠れ潜める場所へ逃げる、少なくともそれだけのことができる力を得ることは必須なのだ。これからはシトリーを使ってもっと能動的にフォトンを集める必要がある。
「それで、あなた以外の幻獣なんだけど❤ これも見つけたらできるだけ狩っていきましょう❤ メギドラルで隠れ潜むためにあなたはもっと強くなるべきだわ❤ あっちに渡るためにもどこかでゲートを見つける必要があるし、僅かでもハルマゲドンを遅らせられる一因になるかもしれないもの❤」
ほんの数日前までのシトリーが目的としていた幻獣退治。これを行うことにも幻獣に異論はなかった。もうヴィータを食らってもフォトン以外に大した力は得られないが幻獣は別である。もっとも送り込まれる幻獣を倒したところでハルマゲドンを遅らせられるとは思っておらずその程度ならメギドラルへの反逆にもならないだろうと宝箱型の幻獣は考えていた。
そんな会話をしながら――傍から見ればシトリーが一方的に喋ってるだけだが――主人を背負っての四足歩行にも慣れてきたのかシトリーの速度が徐々に上がっていく。幻獣もまた移動に慣れてきたか更なるスピードを要求し、新たにフォトンを送りつつ彼女から得た知識の一つである乗馬を参考にして二本の触手を生やした。
「こ、これはっ❤ アヒンッ❤❤❤ ええっ、完全に理解したわっ❤ んほおォンっ❤❤❤」
一本はシトリーの目の前に、今や大好物となった汚濁を滴らせたものが垂れ下がる。もう一本は既に真っ赤な尻に馬に与える鞭のように振り打たれ、更に赤い一筋の線を書き加えた。
触手のアメとムチ、そして更に与えられるフォトンからシトリーは幻獣の意図を察して四肢に力を入れスピードを上げた。
草木が肌を傷つけ、土や泥が自身の身体を汚すがシトリーはそれらを全く意に介さない。その速度はヴィータが出せるものを越え、俊敏な野生動物と変わらないものにまでなっていた。
「ホッ❤ ホッ❤ ンヒィーッ❤❤❤ ヘッ❤ ヘッ❤ おひょオオオォッ❤❤❤」
宝箱型の幻獣とシトリー。今や『獣』と言えるのはどちらだろうか。
猛スピードの四足歩行で森を駆けるシトリーは周りに注意を払いながらも目の前に垂れる触手から汚汁の飛沫を舐め取れないかと舌を伸ばし、鞭が振り下ろされる度に情けない奇声を上げていた。最早誇り高きメギドの、伝説の勇者の姿はおろかヴィータとしての面影さえ見当たらない。
そして目論見通りに『足』の役割を果たすシトリーを見下しながら、浅ましいところはあるがよい『手駒』を手に入れたと、幻獣は満足げに彼女の尻へ触手を振り下ろしたのだった。
ハルマゲドンで滅ぶことになるヴァイガルドを見捨て、メギドラルへの逃亡を図る一体の幻獣と一人の追放メギドはその後各地で数々の被害を生んだ。その出会いから数十年後、街一つを壊滅させる事件を起こした際にはそれぞれ『容王トリコーム』と『魔櫃の運び手』という名前が付けられ『二体の幻獣』は『シバの女王』が動く程の討伐対象となった。
だがその事件以後『容王トリコーム』と『魔櫃の運び手』が見つかることはなかった。街を壊滅させた後近くの森へ向かった姿が目撃されたのを最後に、二体の幻獣は姿を消した。その森では多くの幻獣の死体が見つかったが『容王トリコーム』と『魔櫃の運び手』らしき骸は見つからなかった。おそらく森にゲートがありその場にいた幻獣を全て殺してフォトンを回収しメギドラルへ帰還した可能性が高いと思われたが、真相は不明でありヴァイガルド側から確認する術もなかった。
後に二体の幻獣が再度出現した時に備え王都の騎士団や学者が詳しく調査をした結果、ヴァイガルドの各地に宝箱を背負い四足歩行で移動するヴィータの女の伝承が残されていることが分かった。もっとも一般人にはヴィータの運動能力からかけ離れた野生の獣のような動きを見せるその生物が同じヴィータと思えなかったため、姿を真似する怪物や化け物の類、あるいはせいぜい気が触れた魔女と伝承されていた。ある地域では背負った宝箱の他に真っ赤な尻を晒していたという特徴から『アカジリ』と名付けられており、ヴィータ社会の間では『怪物伝説』や『魔女伝説』のパターンの一つとして知られていたようだった。
『アカジリ』が目撃される前後に近くの街や村で数件の失踪事件が発生していたことも分かり『アカジリ』が『魔櫃の運び手』と『容王トリコーム』であることは間違いなかった。この時に討伐できていればと、『シバの女王』は簡単に動けないその地位を歯噛みしたという。
こうして、自らヴィータに転生しヴァイガルドで幻獣と戦い続けたとあるメギドの伝説は終わった。
『シトリー』、『サンダー』、『サンタ』……などに加え『アカジリ』、『魔櫃の運び手』。数々の名前で呼ばれた彼女がその後どうなったか、知る者はいない。