まつろわぬ神が性に忠実に生きるのは自然 作:一休
極東でも最大級の都市にまで成長した東京は、眠る事を知らない摩天楼に支配されている。
自然の光を駆逐して、人工の灯りに満たされた大都市はしかし、その裏に蔓延る闇の住人の姿を見咎める事もなく日々を回す。
聖杯戦争。
人知れず勃発した、最小にして最大の戦争の舞台装置となっている事にすら気付かぬまま。
七人の魔術師が、七騎のサーヴァントをそれぞれ召喚し、最後の一人になるまで殺しあう。
サーヴァント。
伝説に謳われる英雄豪傑の霊。英霊を、一時的に召喚し、使い魔としたものである。それ故に、単体での戦闘能力は常人を遥かに上回り、場合によっては剣の一薙ぎで周囲一帯を消し炭にする、といった荒業すらも可能とする。
闇に溶け込み、夜を駆ける少女もまた、そんなサーヴァントの一人である。
髪は邪魔にならないように短く肩の上で切り揃えられている。褐色の肌に張り付くようなボディスーツ。豊満な肉体ではないものの、男を誘う色気に溢れた肢体である。
おどろおどろしい髑髏の仮面をつけている。しかし、それでも男達は思考を奪われるであろう。彼女の身体はそのすべてが毒である。文字通りの毒婦。仮面のおぞましさすらも、少女を目にした男達には美しく見えるのかもしれない。
少女のクラスはアサシン。
密かに近付き、触れて、口付けて、その毒で殺す。
今宵も一人、敵マスターを殺害してきたところであった。
直接戦闘に不向きなアサシンは、その一方でマスターの天敵と呼ばれるほどに恐れられるクラスでもある。サーヴァントを繰り出して、無防備となったマスターを討つ事など、造作もなかった。
アサシンは動悸を抑える事ができなかった。
敵マスターを討った。
大手柄だ。
敬愛する主人、沙条愛歌の勝利に貢献する事ができたと思うと、それだけで絶頂すらも覚える。
逸る心を仮面の下に隠して、金色の少女に戦果を報告する
「そう」
ベッドに腰掛けて、愛歌は言った。
平伏するアサシンに、主人の表情は窺えない。
金色の髪を持つ、月光を思わせる少女。
触れるだけで命を奪ってしまうアサシンに、何事もなく触する事ができるのは、愛歌だけだ。
「バーサーカーは完全に消滅。……マスターがはぐれサーヴァント再契約する可能性ももはやありません」
バーサーカーなど、放っておいても自滅するのが目に見えている。とはいえ、そのマスターははぐれサーヴァントと契約する権利を保持しているのだから、念を入れて殺害するのは、基本的な戦略であろう。
「これで、また一つ……」
と言いかけて、アサシンは口を噤んだ。
「どうかした?」
「いえ、何でもありません」
これで、また一つ勝利に近付かれました……などという出すぎた事を言いそうになった自分をアサシンは責めた。
愛歌の勝利は、すでに確定している。
サーヴァントは魔術師一人につき一騎。その原則を、愛歌はすでに崩壊させている。
キャスターはマスターを裏切って愛歌の下に就く事を選び、そしてアサシンははぐれサーヴァントながら、愛歌を妄信している。アーチャーはそのマスターを屈服させた事で味方としているし、愛歌自身のセイバーは、真名こそ教えられていないながらも、第一位のサーヴァントとしてその力を惜しみなく発揮している。
何より、愛歌自身が突出した能力の持ち主だ。
そうでなければ、マスターですらないのにサーヴァントを従えるなどという離れ業ができるはずがない。
「おなかすいた?」
唐突に、優艶な笑みを浮かべて問いかけてくる。
サーヴァントは、尽くが死人である。
伝承に語られ、昇華した英霊の分霊。故に、この世ならぬ彼らには、生物としての営みがない。当然ながら、空腹に苦しむ、などという事はない。
しかしながら、アサシンは今、どうしようもない飢餓感を覚えていた。
食物は大して意味を成さない。
重要なのは、肉体を維持する魔力である。
「バーサーカーのマスターは、大して魔力を持っていなかったのね」
サーヴァントの魔力不足は、マスターの恥ずべきところだ。
それは、そのサーヴァントを維持する地力を持たないのと同義だからである。まして、階級としては最低位にあるアサシンが飢餓するほどの脆弱な魔力供給しかできないのなら、聖杯戦争に参加すべきではない。
しかし、それも仕方のない事である。
そもそも、アサシンには魔力を提供するマスターがいないのだ。
なぜならアサシンのマスターは、彼女が召喚されたその時に、アサシン自身の毒に当たって死んでしまったからだ。
愛歌はセイバー以外に魔力を供給していないので、彼女に信服した今でもアサシンは人間の魂を喰らう事で何とか肉体を維持していた。
「そうね、あなたにはもっと頑張ってもらわないといけないし」
そう言って、愛歌の指がアサシンの頬に触れた。
白い指が、頬を撫で、首筋に摩り、そして髪を梳く。心臓が弾け飛ぶかと思った。
「今日は、ご褒美を上げようかしら」
「あ……」
唇から声が漏れる。
愛歌のベッドに仰向けに寝そべるアサシンは、状況が理解できなくて困惑していた。
愛歌が顔を覗きこんでくる。地母の微笑みの如く、アサシンの心を縛り付ける。
「分かっていたけれど綺麗な身体」
アサシンは褐色の肌を曝け出し、愛歌の為すがままになっている。
依然として愛歌がベッドに腰掛けているという点に変わりはない。
アサシンの引き締まった腹部を愛歌の指が這う。それから乳房へ。
「ふ、う……」
びりびりと、胸から電流が流れた、ような気がした。
「あら、敏感なのね」
アサシンの様子を、面白そうに愛歌は眺めている。
愛歌に素肌を撫でられている。普段隠している部分すらも、しっかりと見られている。それが、アサシンの羞恥心と被虐心を刺激して、身体が芯から熱くなる。
このような事は初めてだった。
身体を舐っていた愛歌の指が、不意にアサシンの秘所に触れた。
「あ、ひッ」
ぴくん、とアサシンは身体を跳ねさせた。
「アサシン。本当に敏感な身体なのね。全身が武器だからなのかしら」
愛歌は左手でアサシンの乳首を軽く摘みながら、秘所の周囲をゆっくりと撫でた。強い刺激は与えず、弱い刺激をアサシンの身体に蓄積させるような、いやらしい手つきである。
しかし、そんな弱い刺激でも、アサシンにとっては十二分に感じるものであった。
人肌の温もりを求めて参加した聖杯戦争。まさか、敬愛する主人に愛撫してもらえるなど、思ってもいなかった。その事実だけで天上に昇り詰めてしまいそうであった。
「ん、く。ふあぁ」
ぞわぞわとする初めての感覚。身体が悦びに打ち震えている。
「んあ、あッ」
愛歌の指が膣内に抉りこむように入り込んできた時、ついにアサシンは決壊した。
焦らすような弱い刺激から、突然襲い掛かってきた快感の猛威にアサシンは耐えられなかった。身体を沿わせて、絶頂を迎えた。
人生で初めての経験。
生前も含めて、アサシンが他者とこのように交わった事はない。
荒くなった息を懸命に整え、胸を激しく上下させていると、愛歌が囁きかけた。
「魔力が欲しいのでしょう?」
「愛、歌様?」
「今日は、特別にわたしが魔力を提供してあげる」
妖精が無垢な少女をかどわかすような妖しさで、愛歌は優しくアサシンに言葉を吹き込む。
「ほ、んとうですか?」
「あら、疑うの?」
「滅相もありません。あ、ありがとうございます!」
そして、アサシンは歓喜する。
主人からの直接の魔力供給には格別なものを感じる。
「そうね。この仮面は邪魔ね。取ってしまいましょうか」
「え?」
愛歌がアサシンの仮面を外す。
アサシンは、思わず顔を両手で隠した。
「どうしたの、いきなり恥ずかしがって」
「そ、それは……んッ」
愛歌が再びアサシンの秘所に触れる。ジン、とした感覚にアサシンは唇を引き結ぶ。
「ねえ、アサシン。あなた、ここをこんなにしてるのよ。今更羞恥心も何もないでしょう」
からかうような声音。
アサシンの目の前には、愛歌の指がある。彼女の指を濡らしているのは、紛れもなくアサシンの体液であった。
しかし、それと分かるからこそアサシンは羞恥の感情を昂ぶらせる。
愛歌に触れられて、秘所をかき回されて発情している。自分では分からないが、表情にも表れているはずだ。
愛歌はアサシンの抵抗を無視してその手をどかして顔を覗き込んだ。
仮面の下にあったのは、愛歌と同じか、少し年上の整った顔立ちの少女の顔であった。
「やっぱり、可愛いじゃない」
愛歌が微笑む。
可愛い、と言われてアサシンは血液が逆流するのではと思えるほどに興奮を覚えた。
「サーヴァントは最盛期の姿で召喚される。あなたの宝具の性質からしても、きっとあなたが一番可愛い時の姿なのでしょうね」
「あ……」
愛歌がアサシンの髪を手に取る。
この髪にすら、強烈な毒素を有しているというのに、愛歌は気にかけることすらしない。アサシンが生涯を賭して磨き上げた毒の肉体が、愛歌には一切機能しない。本来ならば、それは恥ずべき事であろう。それは、暗殺教団の長の技。宝具の域にまで到達した肉体をこのように玩ばれるのは、あってはならない事である。
しかし、同時にアサシンはそんな肉体に触れられる人間を欲していた。
孤独のままに生涯を終えた元凶たる肉体の毒は、アサシンの制御下にはない。
聖杯戦争に参戦したのも、偏に孤独を癒してくれる誰かを欲したからである。
故に、アサシンの願いはもう叶った。
愛歌という至上の女神と出会った事。これを奇跡と呼ばずになんと呼ぼうか。
決して彼女の寵愛を独り占めする事などできないと分かっていながら、彼女のために死力を尽くす事になんら疑問を挟む余地はない。
身体の熱を抑えられないまま、アサシンは腰を微動させる。絶頂の余韻が、まだ残っているのだ。
その疼きを見て取ったのか、愛歌が乱暴に秘所を指で抉った。
「あッ」
アサシンは目を見開いて、空気を求めるように唇を開けた。
絶頂して敏感になった身体に、愛歌の容赦ない責めは効果的に過ぎた。ぐじゅぐじゅとすっかり発情しきった雌穴が涎を垂れ流し、愛歌の指を締め付ける。
「あら、またイクの? 淫乱な娘ね」
「ひ、ひあ、も、しわけ、ありませ……んああッ。だめ、です。愛歌さ、まぁッ」
「ダメ? 止めて欲しい?」
「ひッ……そ、れは」
視線が泳ぐ。
愛歌の指が膣内で留まり、ジンとした熱が伝わってくる。
じれったい。
早く、もっと強くかき回して欲しい。愛歌の指で、気が狂うくらいに犯し抜いて欲しい。狂える欲求は、しかし口にするにはあまりにも淫奔なもので、愛歌にねだるにはハードルが高すぎる。
「じゃあ、今日はこれでお開きにしましょうか」
「え、あ……」
愛歌はアサシンの内心を知ってか知らずか――――おそらくは知った上で、秘所から指を引き抜いた。すっかり発情しきった雌穴は、その刺激だけで軽く痙攣してしまったが、アサシンとしては愛歌が自分に愛想を尽かしたりしないかと戦々恐々としてそれどころではなかった。
「あ、愛歌様……」
「なぁに」
「ど、どうして……魔力……」
魔力の補給を受けていない。
アサシンはそう言おうと思ったが、やはり主人に対して要求するのは憚られた。言葉尻が小さくなって、最後まで口にする事はできなかった。
「でも、あなた、止めて欲しいのでしょう? 嫌な事は強要できないし」
「い、や。それは……」
「それは?」
アサシンを見つめる愛歌の視線が蛇のように全身を這う感触。仔細に観察されているだけで、どうしてこんなにも身体が疼くのか。
「魔力、欲しいです。愛歌様の、魔力が……」
「でも、続きはしなくていいっていうのは、魔力が要らないという事なのではないの?」
「続き、したいです。してください。は、あッ。お、奥が疼いて、愛歌様ぁ、あ、い、イカせて、ください」
泣きそうな顔で、アサシンは懇願した。
身体は火照って仕方がない。自らの指で、秘所を擦り腰を浮かせる。けれど、やはり愛歌にしてもらった時ほどの快感は得られない。
「あなたって、本当に淫乱なサーヴァントなのね」
愛歌の呟きがアサシンの耳に届く。
それから、アサシンは自分の口内にぬるりとしたモノが侵入した事に気付いた。熱に浮かされた頭では、反応があまりに鈍い。
「ん、ちゅ、れる……んあ」
アサシンは目を見開いた。愛歌のキスはいきなり激しく、アサシンの口内を蹂躙する。舌の裏をなぞられ、歯を舐められ、唾液を啜られる。また、愛歌の唾液を流し込まれて嚥下する。アサシンは口付けで他者を快楽の坩堝に追いやり、殺害してきたが、今、被害者達の気持ちが始めて理解できた。
これほどの快感が味わえるのなら、死んでも不満はない。
「んく、んちゅぅ……んあ、あ、んんーーーー。ふあ、れる」
愛歌は責めは続く。唇を塞ぎながら、アサシンの秘所に指を差込み、出鱈目にかき回す。アサシンの身体が悦びに打ち震えて跳ねる。逃げ回るアサシンの腰を、押さえつけて、抉りこむように指を奥まで進ませる。
「んぎゅ、ああん、んぐ、ふぐ、んむぅ、ちゅ、んんんんッ」
口を塞がれたアサシンは、嬌声を挙げる事もできずに悶える。そうしている間に愛歌との間にパスが繋がれて、魔力の供給が始まった。
「はあ、はあ、はあ、はああッ。……愛歌様、愛歌様、愛歌様の、魔力が、中に、幸せぇ……」
うっとりとしたアサシンは、視線を虚空に彷徨わせて笑みを浮かべた。口の周りは唾液でべとべとになっていて、もちろん股は漏らしたかのように濡れそぼっている。
しかし、当初の羞恥心もどこへやら、アサシンは快楽を貪り絶頂を繰り返して喘ぎまくった。
愛歌はアサシンの口に手を入れて舌を玩び、乳首に口付けて吸う。
「淫乱アサシン」
「はい」
「すごいわ。あなた、生前からこうなの?」
「違いますぅ、愛歌様だけ。愛歌様だけですッ」
舌を突き出して快感の海を行くアサシンは、愛歌の質問を正しく理解できているかどうかも怪しい。ただ、条件反射的に受け答えしている。愛歌は愛撫を激しくしてアサシンを攻め立てる。
「あああああああ、い、イクッ、また、これ、飛んじゃうッ」
「気持ちいいのね、アサシン」
「はいぃ、気持ちいいです。愛歌様ぁッ。もっと、もっと犯してくだひゃいぃぃ」
「そう、じゃあ、思い切りイクといいわ」
愛歌がクリトリスを摘みあげた。
耐える、という思考はアサシンにはもはやない。
性感という性感が爆発したような錯覚と共に、激しい絶頂を迎えた。
「あひああああああああああああああああッ、おぐ、あ、い、い゛い゛い゛……!!」
潮を噴いて、アサシンは脱力した。
絶頂の余韻に浸りながら、アサシンは愛歌への忠誠心をより明確にする。こんな風に愛してくれる人に出会った事がなかったから。
「アサシン。次はライダーのマスターを仕留めようと思うの」
「はい」
ライダー。
セイバーに匹敵する、大英雄。太陽の船を駆る、ファラオの一柱であろう。大英雄の中の大英雄である。
「ライダーのマスターは奥多摩にいるの。セイバーとライダーが戦っている間に攻め込む予定なのだけど、あなたも一緒に来る?」
「はい。喜んで……喜んで、お供いたします」
喜悦が胸に溢れ出る。
セイバーでもキャスターでもなく、自分が帯同を許してもらえたことが嬉しくて仕方がない。
「活躍できたら、また可愛がってあげる」
愛歌はそう言って、アサシンの頭を撫でた。
アサシンは、それだけですべてが報われたと思えた。
愛歌に出会えた事が何よりも幸せだった。
別名義で投稿していたものを統合