※この作品はR-18です。

魔王城でおやすみなさい―MASEX!―   作:( ˘ω˘)スヤァーリンおじさん

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第九夜 始まりの涙

 

 

 

 

――そして、全ては始まる。

 

 

 

『人の国の姫はいただいた!

 

返して欲しくば、この世の支配をすべて魔の物に引き渡せ!』

 

 

 

 魔王による人類への宣戦布告。

 雷雲が王都の空を覆う中、魔王の言葉が大気を震わせ、人々を恐怖に陥れた。

 

 人々は理解する。

 これからの未来を知る術は持たずとも、波乱の時代が幕開けたのだと、誰もがその肌で感じ取っていた。

 

 

 

 そして人界より遥か遠く離れた、陽の差し込まぬ魔界の中心、常夜の魔王城。

 さらわれた姫の身柄は、この時の為に用意された特別な牢内へと移送される。

 

「――それではえりーといんまよ。姫を頼んだぞ」

 

 魔王タソガレはそう言って、眠る姫君を少年へと手渡した。

 姫と少年はほぼ変わらないくらい華奢な体格だったが、エリート淫魔のまーくんはふらつく事なく、しっかりと受け取る。

 

「はい、魔王様! お任せください!」

「うむ」

 

 魔王は満足げに頷くと、隠しエリアから去って行った。

 そして場には、まーくんと姫の二人だけが残される。

 

 姫はよほど深い眠りに就いているのか、少年が諸々必要な処置を済ませる間も、目覚める事はなかった。

 一応これから牢入りとなるため、念入りな身体検査を行う。(※エッチな意味ではない)

 

 その際に発見した金属製の物品、および護身アイテムの類は全て取り上げておいた。

 宝玉の嵌った姫の冠には魔力が込められており、何らかの魔術的マーキングの対象にされる可能性があった。

 さらに調べていくと、寝巻きであろうひらひらした衣服の一部に爆薬が仕込んであったのは流石に驚いた。

 

(えええっ、なにこの姫様……自爆したいのかな?

 

 蘇生魔法があるから、姫が死んでも敵を撃退できれば御の字みたいな、そういう滅殺スタイルなのだろうか?

 一瞬、この姫が影武者である可能性も考えたが、この危機感なく寝ている姿は悪い意味で箱入りの少女であり、とてもではないがそういう訓練を施された者とは思えなかった。

 

 だがそれはそれで、姫が寝惚けて暴発でもさせたらどうするつもりなのだろうと、まーくんは人類王家に恐怖を感じてしまった。

 少し見ない間に人間ってやばくなってない? とまーくんは戦慄する。

 

 そんなまーくんの視線の先で、姫はすやぁと幸せそうな寝顔を浮かべていた。

 その顔は、なんだか非常に見覚えのある造形をしている。

 

(……? さっきゅんに、似てる?)

 

 姫の顔はまーくんの妹淫魔、さっきゅんに似ていた。

 まーくんの目から見ても、その体格もほぼ同じくらいであり、髪の色を変えて淫魔の種族的な特徴を付け足せば、そのまま生き写しと言っていいほどに、姫とさっきゅんはあまりにも似通っていた。

 

(姫様の様子が落ち着いたら、さっきゅんにもお世話を手伝って貰おうと思ってたんだけど……二人が顔を合わせたらどんな反応するのか、ちょっと楽しみ) 

 

 などと妹そっくりの寝顔を見ながら、微笑ましい気持ちになるお兄ちゃん淫魔。

 世の中には似ている者が何人かいるという。

 

 ドッペルゲンガーという魔物もいるがこの場合はただの偶然だろう。

 そんな風にまーくんが観察している中、姫の瞼がうっすらと開けられた。

 

「……君、だれ?」

 

 その瞳は夜明け前の空を思わせる瑠璃色をしており、王家の証である()が浮かんでいた。

 その輝きを目にしたまーくんは、正体不明の激情を感じた。

 

 どこか懐かしく、愛おしい。

 泣きたくなるほどの憧憬と、言い様のない喪失感。

 記憶にない感情の濁流に心を掻き乱される。

 

(なんだ、この気持ち……?)

 

 生気を操り、感情を律する事に長けたエリート淫魔の少年。

 その頬に、一筋の涙が流れた。

 遠い記憶の彼方にしかないような、荒れ狂う情動に襲われ、少年はただ困惑してしまう。

 

 その涙を、姫はただ眠たげな目で眺めていた。

 

(きれいだな……)

 

 しごくどうでもよさそうに、姫は目にしたままの感想を思い浮かべる。

 寝起きのぼやけた頭の中で、なんだか状況はさっぱりわからないが、すぐにどうにかなるほど切羽詰まってはいないらしいと、なんとなく理解していた。

 

 そして目の前で涙を流す謎の存在に、姫は疑問の声を上げる。

 

「……なんで君、泣いてるの?」

「ご、ごめんなさい姫様。これは、その……僕にもよく分からなくて……」

 

 慌てて涙を拭う美少女(少年)執事を、星を宿す姫の瞳はただ見つめていた。 

 

 

 

 その後、姫は魔王にさらわれたのだと説明すると、その反応は「……そう(無関心)」の一言であり、すぐに寝心地の良いベッドで安眠し始めたことは、実に驚嘆すべき事だった。

 

(流石は人界最高の姫様……大物すぎる

 

 肝の太さが半端ではない、と少年淫魔はとらわれの姫に敬意を抱いたのだった。(ツッコミ不在)

 

 

 

 その心の裡に、どこか違和感を残しながら。

 

 

 

 

 




【 オーロラ・栖夜・リース・カイミーン 】

ねんれい:  ? ? ?
こうきさ:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

『……すやぁ』

人類統一国家カイミーン国の姫。
民達からスヤリス姫と呼ばれ、慕われている。

さらわれた先のベッドが気持ち良すぎる為、とりあえず寝た。
瞳の☆は王家の証。
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